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ノートPCからMPサーバーまで投入されるIntelの「Sandy Bridge」



●少なくとも3種類の異なるSandy Bridgeダイが存在

 Intelの次のCPUアーキテクチャ「Sandy Bridge(サンディブリッジ)」が、いよいよ姿を見せ始めた。来週、北京で開催される「Intel Developer Forum(IDF)」でも、Sandy Bridgeに関する新たな情報が一部公開されると見られる。最初のSandy Bridgeの投入時期は来年(2011年)第1四半期の予定であり、スムーズに進むなら前倒しで今年(2010年)中に投入される可能性もある。Intelは、来年中にはハイエンドのMPサーバーから超低電圧版モバイルまで、広いレンジでSandy Bridgeファミリを投入する予定だ。

 Sandy Bridgeのマイクロアーキテクチャは、Core Microarchitecture(Core MA)→Nehalem(ネヘイレム)の過去2世代マイクロアーキテクチャの延長にある。Sandy Bridgeの大きな特徴は、SIMD(Single Instruction, Multiple Data)型の浮動小数点演算性能の向上を図る新命令「Intel Advanced Vector Extensions (Intel AVX)」を実装したこと、GPUコアを完全統合したこととなど。AMDは来年のBulldozer(ブルドーザ)から、CPU整数演算コアをシンプル化してパフォーマンス密度を高める方向へ転換する。しかし、Intelは依然としてCPUコアを、付加的に拡張し続ける。

 Sandy Bridge(サンディブリッジ)には、少なくとも3種類のダイがある。パフォーマンスPC向けの4コア(クアッドコア)+GPUコア、メインストリームPC向けの2コア(デュアルコア)+GPUコア、サーバー向けの最大8コア(オクタコア)のダイだ。少なくともと書いたのは、最低でも3種類のダイのバリエーションがないと、現在予定されているSandy Bridgeのラインナップのバリエーションを満たせないからだ。実際には3種類以上のダイがある可能性もある。

Intel CPUの移行図(PDF版はこちら)

●デスクトップに4コアと2コアと8コアの3バージョンが登場

 上の図は推定を含めたIntelのx86系PC&サーバー向けCPUの移行予想図だ。最初に投入されるのは4コアと2コアのダイで、メインストリームデスクトップ、パフォーマンス&メインストリームノートPC、エントリサーバーの市場に展開される。DP(Dual-Processor)サーバー向けは遅れて来年後半からで、最上位のMP(Multi-Processor)市場向けCPUも来年終わりに登場する。

 デスクトップバージョンのSandy Bridgeは「Sandy Bridge-DT」と呼ばれることもある。4コア版と2コア版があり、どちらもGPUコアを統合し、ソケットは「Socket 1155(Socket H2)」。対応チップセットは「Cougar Point(クーガーポイント)」で、正式にはIntel 6シリーズチップセットとなる。5シリーズと同様にチップセットにP/H/Q/Bの区分があり、P67/H67/Q67/Q65/B65の5種類が用意されている。Sandy Bridge-DTとCougar Point-DTを中心に構成されるデスクトッププラットフォーム「Sugar Bay(シュガーベイ)」と呼ばれる。

 大まかな流れとしては、デスクトップでは、LGA1156ソケットでCore iブランドのCPUを、LGA1155ソケットのSandy Bridgeが置き換える。4コア「Lynnfield(リンフィールド)」を4コアのSandy Bridgeが置き換え、2コア「Clarkdale(クラークデール)」のCore iブランドCPUを、2コアのSandy Bridgeが置き換えると見られる。さらに、来年中盤には8コアのハイエンドバージョンが6コアの「Gulftown(ガルフタウン)」を置き換えると見られる。

IntelのデスクトップCPUのロードマップ(PDF版はこちら)

●LGA1156からのジャンプが小さいLGA1155版CPU

 デスクトップPC向けのSandy Bridgeは、4個または2個のCPUコア、2個または1個のGPUコア、デュアルチャネルDDR3メモリインターフェイス、20レーンのPCI Express Gen2を搭載する。L3キャッシュは4コア版が6MB、2コア版が3MBだと見られる。CPUコア1個につき、1.5MBのL3キャッシュスライスが付帯する計算だ。また、PCH (Platform Controller Hub)との接続に、汎用のDMIとグラフィックス用のFDIを備える。

Sandy Bridgeのシステムブロックダイヤグラム(PDF版はこちら)

 メモリは、Unbuffered DIMM(UDIMM)でDDR3-1066/1333に対応する。1チャネルにつき2DIMMで合計4DIMMをサポートする。I/O回りはPCI Express Gen2を20レーン備える。Nehalem系よりPCIeが4レーン増えているが、インターフェイス回りの基本は、現在のLGA1156(Socket H1)ベースのCPUとよく似た構成となっている。これは、上位のサーバー用Sandy Bridgeとの大きな違いとなっている。

 Socket B2/RのSandy Bridge(EN/EP/EX)は、インターフェイス回りが大幅に機能拡張される。メモリでは、従来のDDR3だけでなく、インターフェイス電圧を1.5Vから1.35Vに落とした低電圧版のDDR3Lをサポートする。また、UDIMMだけでなく、Registered DIMM(RDIMM)とLoad-Reduced DIMM(LRDIMM)に対応。メモリスピードも最大1,600MT/secのDDR3-1600までをサポートする。この他、Socket B2/R系では、PCI Expressも2倍の転送レートのGen3を新たにサポートしている。しかし、Socket 1155版Sandy Bridgeではそうした拡張は行なわれない。悪く言えば大人しい、良く言えばボードコストの上昇を抑えた仕様となっている。

 CPUパッケージの内部の構成でのNehalem世代との大きな違いはGPUコア。Nehalem系LGA1156クアッドコアCPUのLynnfieldにはGPUコアが搭載されていないが、Sandy BridgeではクアッドコアにもGPUコアが入る。また、Nehalem系LGA1156デュアルコアCPUのClarkdaleでは、GPUコアはCPUとは別ダイだが、デュアルコアSandy Bridgeでは同じダイに統合されている。

Sandy Bridgeのダイレイアウト(PDF版はこちら)

●ノートPC向けにはHuron Riverプラットフォームが登場

 ノートPC向けSandy Bridgeの概要も、デスクトップ向けとほぼ同様で、こちらは「Sandy Bridge-MB」と呼ばれる場合がある。Cougar Point-MBチップセットで、プラットフォームは「Huron River(ヒューロンリバー)」。LV(低電圧)版とULV(超低電圧)のカテゴリの製品も投入される。

ノートPC向けのモバイルCPUロードマップ(PDF版はこちら)

 Sandy Bridgeのサーバー系CPUは、やや複雑な構成となっている。

 デスクトップと共通ダイのエントリーUP(Uni-Processor)サーバーのプラットフォームは「Bromolow(ブロモロウ)」。チップセットはCougar Pointで、ソケットは1,155ピンのSocket H2。上位のエントリ2ソケットサーバー向けは「Sandy Bridge-EN」で、2/4/6/8コアのバリエーションがある。対応チップセットは「Patsburg(パッツバーグ)」でプラットフォームは「Romley-EN(ロムレイEN)」、ソケットは1,356ピンの「Socket B2」だ。

 2ソケットサーバーでは、より上位の「Sandy Bridge-EP」がある。こちらは4/6/8コアのバリエーションで、対応チップセットはENと同じPatsburg。プラットフォームは「Romley-EP(ロムレイEP)」、ソケットは2,011ピンの「Socket R」だ。

 さらに最上位には、MP(Multi-Processor)市場向けの8コアの「Sandy Bridge-EX」がある。Sandy Bridge-EPと基本的には同じで、PatsburgチップセットSocket Rで、プラットフォームは「Romley-EX(ロムレイEX)」。

 Sandy Bridge-EXは最上位だが、QPIは2リンクで、廉価版の4ソケットサーバー向け。本当にMP向けに最適化(QPI 3リンク以上)されたBridge系アーキテクチャは22nmの「Ivy Bridge(アイビーブリッジ)」世代の「Ivy Bridge-EX-A」(Brickland-EXプラットフォーム)からとなる。それまでは、8コアのNehalem-EXと、来年第2四半期に登場する10コアの「Westmere-EX」のBoxboroプラットフォームが続く。ちなみに、Sandy Bridgeのプラットフォームは、ほとんどがIvy Bridge世代でも引き継がれる。

Sandy Bridgeのソケット(PDF版はこちら)

●ハイエンドデスクトップCPUはDPサーバーCPUから派生する?

 デスクトップに来年中盤に投入されると言われるハイエンドSandy Bridgeは、UPサーバー向けのSandy Bridge-ENベースになると推測される。これは、ハイエンドデスクトップ向けのNehalem系CPUが、DPサーバー向けCPUからの派生だったのと同じだ。

 Sandy Bridge-EN系であるなら、メモリインターフェイスは3チャネルのDDR3/DDR3LでDDR3-1600までをサポート、I/OはPCI Express Gen3対応となる可能性が高い。DPサーバー版Sandy Bridgeの仕様に準ずるなら、通常のデスクトップ版Sandy Bridgeとの差は大きく広がることになる。CPUコア数だけでなく、インターフェイス回りでの差が開くからだ。トレードオフはコストで、CPUダイはかなり大きく製造コストが高い。Intelにとって、ハイエンドでなければ、元が取れないCPUだろう。