石井英男のデジタル探検隊

ムーアの法則50周年を記念して開催された「インテル親子PC体験教室」体験記

~2-in-1 PCを使ってオリジナルうちわを製作

 Intel創業者の1人であるゴードン・ムーアがムーアの法則を提唱したのは、1965年のことであり、今年(2015年)でちょうど50周年となる。ムーアの法則は、いわゆる経験則であり、物理の法則のように常に成り立つわけではないが、この50年、ほぼムーアの法則に沿う形で、半導体は進化してきた。

 インテルは、ムーアの法則の50周年記念展示を、8月1日~21日までの3週間、東京・北の丸公園の科学技術館で開催している。実は科学技術館もちょうど今年50周年を迎えており、同じ50周年繋がりということで、科学技術館で記念展示を開催することになったそうだ。

 イベントでは50周年記念展示だけでなく、8月7日~9日の3日間、午前10時からと午後2時からの1日2回ずつ、コンピュータの歴史や内部の様子を学ぶとともに、最新のPCを利用したモノ作りを行なうなど、親子でPCの楽しさを体験できる「親子PC体験教室」を開催した。この親子PC体験教室の対象は小学3年生以上中学生以下で、保護者と一緒に参加する必要がある。筆者も小学5年生の娘と参加してきたので、その様子をレポートしたい。

まず、インテルのプロセッサの進化について学ぶ

 筆者と娘が参加したのは8月7日の午前の回である。親子PC体験教室は、科学技術館4Fにある実験スタジアムLで開催され、参加者は各回10組程度であった。この親子PC体験教室は、3つのパートに分かれており、最初のパートがインテルやプロセッサについての解説であり、次のパートが2-in-1 PCを使ったモノづくり、最後のパートがRealSenseなどの新しいUI技術と、NUCやCompute Stickといった新しいスタイルのPCの紹介である。

 まず、インテルのスタッフが、インテルのロゴを子供たちに見せて知ってるか訊ねたのだが、反応は薄かった。しかし、インテルのサウンドロゴを再生したところ、CMで聴いたことがあると数人から反応があった。続いて、インテルは、マイクロプロセッサを作っている会社であり、ほとんどのコンピュータの中にインテルのマイクロプロセッサが入っているという説明がなされた。

 さらに、PCの主な部品の役割やインテルのプロセッサとコンピュータの歴史、ムーアの法則の解説が行なわれた。プロセッサの進化により、これまで作れなかったものが作れるようになり、将来は人が運転しなくても自動で走る車やボタンくらいの大きさのコンピュータ、目の動きで使えるPCなどが登場するという。プレゼンの資料も、子ども向けにやさしく書かれており、子供たちも熱心に話を聴いていた。

科学技術館の外観。科学技術館も今年50周年を迎えており、ここでムーアの法則50周年記念展示や体験教室を行なうことになったのも、50周年繋がりによるものだという
親子PC体験教室は、科学技術館4Fの実験スタジアムLで開催された
実験スタジアムLの中の様子。まだ受付開始直後で、参加者はまばらだ
インテル親子PC体験教室は8月7日から9日の3日間に渡って開催された
教室では1組に1台ずつ、2-in-1 PCの「Surface Pro 2」が用意された
ムーアの法則50周年記念のパネルも置かれていた
参加者にはお土産として、フリクションマーカーやメモパッドが配られた
まず、インテルのスタッフが、インテルやプロセッサについての説明を行なった
最初の質問は、「このロゴを知っているか?」というものであった
その答え。「ほとんどのコンピュータの中には、インテルが入っている」
2つ目の質問は「マイクロプロセッサって聞いたことあるか?」というものであった
PCの主な部品の役割解説。プロセッサは頭脳に、メモリは机に、保存装置は本棚にたとえられていた
実はプロセッサは身のまわりの多くのモノに使われている
インテルのプロセッサとコンピュータの歴史。プロセッサの進歩にともなってコンピュータは進化してきた
ムーアの法則についての説明
4004からCore i5までの44年間で、プロセッサの性能は3,500倍以上、電力効率は90,000倍以上、コスト単価は60,000分の1に
ムーアの法則を他のものに例えての説明
プロセッサの進化によってこれまで作れなかったものが作れるようになった
プロセッサの進化により、将来は人が運転しなくても自動で走る車やボタンくらいの大きさのコンピュータ、目の動きで使えるPCなどが登場する

子供たちがノートPCのライブ分解デモに興味津々

 続いて、ノートPCを目の前で分解してプロセッサを探すという、ライブ分解デモが行なわれた。ライブ分解デモの前に、「プロセッサのできるまで ~砂からプロセッサ~」と題したムービーが流された。このムービーでは、シリコンの単結晶インゴットからウェハを切り出し、パターンの転写やドーピングを行ない、トランジスタを集積してプロセッサができるまでの流れが、アニメーションで分かりやすく解説されていた。

 ノートPCの分解の様子はカメラで撮影され、液晶ディスプレイに映し出されるようになっていた。子供たちは、インテルのスタッフが手慣れた様子でノートPCを分解する様子を、興味深そうに見つめていた。マザーボードからCPUの上に装着されたヒートパイプとヒートシンクが外され、CPUが取り外されると、子供たちから歓声が上がった。

座学の次は、PCの中から「プロセッサ」を探すというライブ分解デモが行なわれた
ライブ分解デモの前に、「プロセッサのできるまで ~砂からプロセッサ~」と題したムービーが流された
いよいよノートPCの分解を開始。分解の様子はカメラで撮影され、液晶モニターに映し出されるようになっていた
バッテリと裏蓋の一部を外し、HDDを取り外したところ
残りの裏蓋を外したところ。マザーボードが全て姿を現した
CPUの上に装着されているヒートパイプを外しているところ
ヒートパイプとヒートシンクを外し、CPUを取り外したところ
PCのマザーボードの解説。従来のマザーボードには、プロセッサとチップセットがある
最近は2-in-1 PCと呼ばれる1台2役のPCが増えてきたが、それらにもインテルのプロセッサが入っている
ここまでの解説のまとめ。マイクロプロセッサはコンピュータの頭脳であり、いろいろな所で活躍している。ムーアの法則に従って速く、小さくなってきたコンピュータが私たちの生活を便利にしている

2-in-1 PCを使ってオリジナルうちわを作成

 2つ目のパートが、2-in-1 PCの「Surface Pro 2」を使ってオリジナルうちわを作成するワークショップである。Windows 8用アプリの「FreshPaint」を使って、オリジナルうちわのデザインを行ない、プリンタでうちわシールに印刷。シールを剥がしてうちわの骨に貼り付けるという手順になる。

 写真の撮り方やオリジナルスタンプの使い方、撮影した写真をスタンプの写真枠に貼り付ける方法、スタイラスペンを使ったお絵描きの方法などが解説され、参加者は思い思いにうちわのデザインを行なった。なお、うちわシールは2枚配られたが、1枚にはあらかじめインテルの絵やロゴが印刷されており、参加者は片面だけのデザインを行なった。

 ほとんどの参加者が、FreshPaintを初めて使ったようだが、すぐに使いこなしていた。Surface Pro 2は、標準で感圧対応のスタイラスペンが付属しており、今回の用途には最適である。デザインが完成したら、プリンタを使ってうちわシールに印刷を行なう。まずは、テスト用の紙に印刷して確認用枠を重ね、サイズがあっているか確認する。問題なければ、本番用のうちわシールに印刷を行なう。

今度は2-in-1 PCのSurface Pro 2を使って、オリジナルうちわを作成するワークショップが始まった
FreshPaintを使って、写真やスタンプ、お絵描きを組み合わせてデザインを行ない、うちわシールに印刷してうちわの骨に貼り付ければ完成である
うちわの材料。骨とうちわシール2枚、確認用枠が配られた。シールの1枚にはあらかじめインテルの絵やロゴが印刷されており、参加者は片面だけデザインを行なった
まずは、写真の撮り方の説明から
Surface Pro 2のカメラを使って、写真を撮っている娘
このイベントのために用意されたオリジナルスタンプの使い方も説明された
FreshPaintの使い方を一通り学んだら、自由にデザインを行なう
撮影した写真をスタンプの写真枠に貼り付ける方法も説明された
Surface Pro 2の感圧対応スタイラスペンを使って、お絵描きをしているところ
写真枠付きの背景スタンプを選んだところ
先ほど撮影した写真のサイズを調整して、写真枠にはめ込む
参加者が自由にオリジナルのデザインを作成中
Surface Pro 2を平らに寝かせて、スマートフォンで検索した絵をお手本にしてお絵描きをしている娘
デザインが完成したら印刷を行なう。まずはテスト用の紙に印刷して、確認用枠を重ねて、サイズがあっているか確認する
うちわシールに印刷したら、シールを剥がしてうちわの骨に貼り付ければ完成だ。娘は、まどか☆マギカの魔女オクタヴィアを描いたらしい

ユーザーインターフェイスの将来や新しいスタイルのPCを解説

 最後に、ユーザーインターフェイスの将来や新しいスタイルのPCの解説が行なわれた。ユーザーインターフェイスについては、Intel RealSense搭載PCを使って、手などのジェスチャーで楽器を演奏するアプリケーションが紹介された。新しいスタイルのPCとしては、手のひらサイズの小型コンピュータNUCやスティック型のCompute Stickが紹介されたのだが、参加者のほとんどはそんな小さなコンピュータがあることを知らず、その小ささに驚いていた。

 これで親子PC体験教室のカリキュラムは全て終了だ。2時間という限られた時間の中で、プロセッサやムーアの法則の解説から、2-in-1 PCを使ったモノ作り体験、次世代ユーザーインターフェイスや新しいスタイルのPCの紹介まで行なうという充実した内容であり、参加者はみな満足していたようだ。今後も、こうした親子向けのPC体験教室が開催されることを期待したい。

うちわの作成が終わったら、再び座学とデモの時間に。今後は、キーボードやマウスを使わずに、声や動きなどで、より直感的にコンピュータを扱えるようになる
RealSenseを利用したアプリケーションのデモ。手などの動きで楽器を演奏できる
新しいスタイルのPC、NUCとCompute Stickが登場した
NUC。手のひらサイズのコンピュータだ
NUCの実機が登場。片手で簡単に持てる大きさである
こちらはさらに小さいCompute Stick。その名の通り、スティック型のコンピュータだ
実際にCompute StickをTVに繋いで動かしてみたところ。ほとんどの参加者が、Compute Stickを見るのは初めてであり、その小ささに驚いていた。これで親子PC体験教室は終了である

江田社長による記者説明会も

 親子PC体験教室の初日には、インテル株式会社代表取締役社長の江田麻季子氏による記者説明会も開催された。江田氏は、ムーアの法則に基づくプロセッサの進化がPCを進化させてきたと語り、科学技術館2Fの記念展示は、ショーケースを左から右に歩くだけでITテクノロジが全て分かる作りになっていると説明した。

 科学技術館2Fのショーケースには、世界初のマイクロプロセッサである4004から第5世代Coreプロセッサまでのインテル歴代CPUの実物や最新の14nmプロセス技術で製造されたウェハなどが展示されているほか、親子PC体験教室でも利用されたムービー「プロセッサのできるまで ~砂からプロセッサ~」を見ることもできる。プロセッサやコンピュータに興味がある人には、必見の展示と言える。夏休みの自由研究のテーマがまだ見つからないという人にも、いいヒントとなるだろう。

親子PC教室の初日には、インテル株式会社代表取締役社長の江田麻季子氏による記者説明会も開催された
インテル株式会社代表取締役社長の江田麻季子氏
ムーアの法則は、半導体進化の将来予測を実現したものである
プロセッサの進化がPCを進化させてきた
ムーアの法則50周年を記念して、科学技術館2Fで行なっている記念展示の解説。ショーケースを左から右に歩くだけでITテクノロジが全て分かるつくりになっている
まとめ。科学技術は未来の基盤であり、子供たちに科学とコンピュータへの興味を喚起する。ムーアの法則がもたらすパワーを活用し、地球上のすべての人々にスマートにネットに繋がる機器を届けることがインテルのミッションである
科学技術館2Fに8月21日までの期間限定で公開されている「ムーアの法則」についてのインテルショーケース
中央には4004から第5世代インテルCoreプロセッサまでの歴代CPUの実物が並び、下には解説パネルが並んでいる
懐かしいカセット型のPentium IIやPentium III
最新の14nmプロセス技術で製造されたウェハーも展示されていたが、これはなかなかレアな展示だ
第5世代インテルCoreプロセッサを搭載した2-in-1 PCも展示されていた

(石井 英男)