井上繁樹の最新通信機器事情

ASRock「G10」

〜赤外線リモコン学習機能搭載で、HDMIドングル兼トラベルルーターを合体収納できる変わり種

 ASRockの「G10」はゲーム特化を謳った11ac対応の無線LANルーターだ。Miracastに対応でルーターにもなるHDMIドングルを本体に収納できたり、スマートフォンやタブレット端末から操作できる赤外線リモコンの学習機能を搭載するなど、今までに無かった機能を搭載した変わり種だ。

概要

 ASRockのG10は最大接続速度が2.4GHz帯時800Mbps、5GHz帯時1.733Gbpsの無線LANルーターだ。有線LAN部分の最大接続速度は1Gbpsで、WANポートが1つ、LANポートが4つの標準的構成となっている。

G10本体。左斜め前から
背面。上からHDMIドングルの給電用USBポートとLANポート、リモコン用の赤外線発光/受光器、5GHz帯用WPSボタン、2.4GHz帯用WPSボタン、1Gbps対応の有線LANポート×4、WANポート×1、USB 3.0×2、リセットボタン、電源ボタン、DCコネクタ
右斜め後ろ。HDMIドングルはマグネットで優しく固定されている
HDMIドングルを少し取り出したところ
HDMIドングルには給電用のマイクロUSBのポートと100Mbps対応の有線LANポートがある
ロゴと同じ面にある白い丸は動作ランプ。背面も含めて吸排口多数。HDMI端子の横幅の長い面にMACアドレスとシリアルナンバーがプリント
本体以外の同梱物一覧。冊子類、設定シール、ACアダプタやHDMIドングルが入る巾着袋、HDMI延長ケーブル(0.1m)、LANケーブル(1m)、給電用のMicro USB-USBケーブル(0.6m)

 非常にユニークなのが無線LANルーターにもなるMiracast対応のHDMIドングル「H2R」を本体に収納(というより見た目は「合体」)できること。本体に収納した状態では、電気的電波的に接続されるわけではない。マグネットで固定されるだけだ。格好良く収納しつつ必要な時にサッと取り外せるアイデア機能だ。

 G10本体の大きさは80×183×266mm(幅×奥行き×高さ)、重量は626g、電源はACアダプタを使用し、消費電力は6.3W前後(以上数字は実測)。特異な形状から察しが付くとは思うが設置は縦置きのみ。底面以外平面がなく横置きは安定しない。

 USB 3.0ポートを2つ搭載しており、USBストレージやプリンタを接続することで、NAS機能やメディアサーバー、プリントサーバー機能が使える。AndroidやiOS搭載の端末であれば、無料で提供されている専用のアプリで、設定管理やストレージのファイルの閲覧ができる。ファームウェアの更新はインターネットに接続していればボタン1つクリックするだけでできるお手軽仕様だ。

 H2Rの大きさは35×115×18mm(幅×奥行き×高さ)、重量は42g(以上数字は実測)。2.4GHz帯の無線LANに対応し最大接続速度は300Mbpsだ。HDMI端子、100Mbps対応の有線LANポート、給電用のMicro USBポートを搭載している。出力可能な最大解像度は1,920×1,080で、対応ビデオ形式はMPEG-1/2/4、H.264。

詳細

 G10の動作モードは「Wireless router mode」と「Repeater mode」の2種類だ。管理画面を開くために用意されている専用のアドレスはモードごとに異なり、前者のいわゆる「ルーター」モードでは「http://ASRock.router」、後者のいわゆる「アクセスポイント」モードでは「http://ASRock.repeater」になる。

LANの接続が完了すると自動でインターネット接続の設定画面へリダイレクトされる
インターネット接続の設定が完了するとファームウェアの更新だ。発売間もないこともあってか頻繁なアップデートがあるようだ
設定が終わると管理画面トップが開く。ビジュアル化されつつも無駄な情報のないシンプルな画面だ
5GHz帯の無線LAN設定
QoS設定。ゲーム利用なら優先度の設定は必須になるだろう
USBアプリケーション画面。NAS、メディアサーバー、ダウンローダー、プリントサーバーなどが利用できる
ステータス。無線LANのパスワードも含めまとめて確認できる
ルーターの動作モードは無線LANルーターとリピーターの2種類
セルフヒーリング。いわゆる省電力モード設定
省電力動作の週間スケジュール設定はボタン操作で行なう

 搭載されている主な機能は、通信の優先順位を設定するQoS、いわゆる省電力機能である「セルフヒーリング」、セキュリティ系の機能であるファイアウォールやペアレンタルコントロール、USB 3.0ポートを活用するNAS機能やメディアサーバー、ダウンローダー、プリントサーバーなど。

 QoSの設定は「ゲーミングルーター」らしいシンプルで分かりやすいものだ。ほかのルーターではサービス単位で帯域を割り当てるが、G10では接続している機器の順位付けで設定する。また、「ストリームブースト」ボタンは、英語版のマニュアル表記では「Gaming boost」となっており、ゲームやストリーミングに帯域を優先的に割り当てると説明されている。

 セルフヒーリングは省電力動作を週間スケジュールで設定できる。その設定方法がユニークで、ボタンのオン/オフ操作で行なう。1時間単位の荒い設定だが、画面の小さなスマートフォンでも比較的操作がしやすい。この週間スケジュール設定はペアレンタルコントロール機能とも共通だ。ちなみに、ペアレンタルコントロールはフィルタリングではなくネットワークの利用を制限するシンプルなもの。

 ほかにもダイナミックDNSに対応しているのだが、対応しているサービスが7種類と多めなのは珍しいかもしれない。対応しているサービスは「Dyndns.org」、「ZoneEdit.com」、「No-IP.com」、「3322.Org」、「easyDNS.com」、「TZO.com」、「DynSTP.org」だ。

ベンチマーク

 測定には2台のPCを使った。1台は1Gbpsの有線LANでG10に繋いで、もう1台を(1)1Gbps有線LAN、(2)11ac-1.3Gbps、(3)11n-600Mbpsの3種類の形態で繋いだ。それぞれの速度はiperf 3.0.11(以下「iperf3」)とCrystalDiskMark 5.0.2(以下「CDM」)で測定した。

 iperf3による測定では有線LANに繋いだままの側のPCを「サーバー」、もう一方のPCを「クライアント」として使用した。CDMによる測定ではサーバーに作成したRAMDISKをネットワークドライブとしてマウントして速度測定に使用した。

 使用したPCはどちらもCPUがCore i5、メモリ8GB、SSDを搭載。OSはサーバー側はUbuntu 14.04、クライアント側はWindows 10。クライアントの無線LAN子機はASUS PCE-AC68だ。

【表1】iperf3による速度測定結果(Mbps)
1000-Base-T 11ac-1.3Gbps 11n-450Mbps
送信 941 376 124
受信 940 324 139

11ac-1.3Gbps接続時のiperf3ログ(SEND)

$ iperf3 -c 192.168.1.4
Connecting to host 192.168.1.4, port 5201
[ 4] local 192.168.1.5 port 52009 connected to 192.168.1.4 port 5201
[ ID] Interval Transfer Bandwidth
[ 4] 0.00-1.00 sec 42.8 MBytes 358 Mbits/sec
[ 4] 1.00-2.00 sec 44.5 MBytes 373 Mbits/sec
[ 4] 2.00-3.00 sec 44.5 MBytes 374 Mbits/sec
[ 4] 3.00-4.00 sec 45.2 MBytes 380 Mbits/sec
[ 4] 4.00-5.00 sec 45.8 MBytes 384 Mbits/sec
[ 4] 5.00-6.00 sec 45.1 MBytes 379 Mbits/sec
[ 4] 6.00-7.00 sec 46.0 MBytes 386 Mbits/sec
[ 4] 7.00-8.00 sec 45.4 MBytes 381 Mbits/sec
[ 4] 8.00-9.00 sec 44.5 MBytes 374 Mbits/sec
[ 4] 9.00-10.00 sec 45.0 MBytes 378 Mbits/sec
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
[ ID] Interval Transfer Bandwidth
[ 4] 0.00-10.00 sec 449 MBytes 376 Mbits/sec sender
[ 4] 0.00-10.00 sec 449 MBytes 376 Mbits/sec receiver
iperf Done.

 iperf3による測定結果は表1のとおりで、1Gbps有線LAN時は送受信共に940Mbps前後、11ac-1.3Gbps時は送信376Mbps、受信324Mbpsだった。11n-600Mbps時は送信124Mbps、受信139Mbpsだった。

【表2】RAMDISKを使ったCDM結果(Mbps)
1000-Base-T 11ac-1.3Gbps 11n-450Mbps
リード 986.9 168.7 175.9
ライト 986.4 179.2 249.4
11ac-1.3Gbps接続時のCDM速度測定結果

 CDMによる測定結果は表2の通りで、読み込みは1Gbps有線LANが送信受信共に980Mbps前後、11ac-1.3Gbpsが読み込み約169Mbps、書き込み約179Mbpsだった。11n-600Mbpsは読み込み約176Mbps、書き込み約249Mbpsだった。

【表3】USBメモリを使ったNAS機能のCDM結果(Mbps)
1000Base-T 11ac-1.3Gbps 11n-450Mbps
リード 973.3 629.1 182.9
ライト 103.4 183.2 94.8
1Gbps有線LAN接続時のNAS機能のCDM速度測定結果

 G10に接続したUSB 3.0メモリを使ったNAS機能のCDMによる測定結果は表3の通りで、読み込みは1Gbps有線LANは約973Mbpsで、書き込みは約103Mbpsだった。11ac-1.3Gbps時は読み込み約629Mbps、書き込み約183Mbpsで、11n-600Mbps時は読み込み約183Mbps、書き込み約95Mbpsだった。最近のハイエンド製品らしく、NAS機能が非常に高速だ。

【表4】iperf3によるH2Rの速度測定結果(Mbps)
11n-300Mbps
送信 0.5
受信 37.3

 H2Rを無線LANアクセスポイントとして使った場合は表4の通り、送信約0.5Mbps、受信約37Mbpsだった。大きなファイルの送受信には向かないが、メールやブラウジング用途としては十分な性能で、出先のホテル等で有線LANポートを無線化する持ち運び用のアクセスポイントとして十分活用できそうだ。

その他

 G10にはAndroidやiOSに対応した無用の専用アプリが用意されている。管理画面へのアクセスや、赤外線機能の利用、接続したストレージのファイルの閲覧ができるもので、利用にはメールアドレスをIDとしたアカウントの登録が必要だ。

スマートフォンアプリ
スマートフォン、タブレット向けアプリの初期画面。メールアドレスとパスワードを入力してユーザー登録する
アプリのログイン後トップ画面。ルーターの設定、赤外線アプリ設定、USBストレージへのアクセスができる
ルーター設定画面。Web版をそのままアプリ内で表示しているようだ
赤外線アプリ設定画面
アクセスしたストレージのファイルは再生可能(単曲再生のみ)。日本語表示には対応していないようだ
画像表示。スライドショー表示もできる。画像の切り替え間隔は3/5/10/15秒の4種類

 専用アプリで開ける管理画面はWebブラウザで開ける管理画面と見た目も機能も大きさ以外は同じだ。赤外線機能についてはWebの管理画面では一切表示されず、専用アプリ内でのみ操作可能だ。ファイルの閲覧機能についてだが、音楽ファイルの閲覧や画像ファイルの表示、スライドショー表示も可能だ。

HDMIドングルのH2Rをディスプレイに接続した際に表示されるトップ画面。無線LANのSSIDやパスワード、アプリへのリンクなどが表示される
H2RのWeb版管理画面トップ。すべての機能や設定が一覧できるグラフィカルなUIだ
有線LANを使わず無線LAN経由でインターネットに接続できる
EzCastアプリを使ってHDMIドングル経由でスマートフォンの画像を液晶ディスプレイに表示させたところ
EzCastアプリで音楽ファイル再生時にディスプレイに表示される画面。画面の一番下はシークバー

 HDMIドングルのH2Rは、MiracastやAirPlayに対応したアプリ、あるいは専用アプリの「EzCast」を使うことで、スマートフォンやタブレット、PCの画面と音声を、無線もしくは有線のLAN経由で、HDMI対応のテレビやディスプレイに配信できる。実際にEzCastで画像のスライドショー表示や音楽再生を試してみたがストレスなく利用できた。出先のホテルなどでTVに繋いでスマートフォンで録った画像を表示するといった用途には最適だろう。

 また、H2Rは有線LANポートを無線化する無線LANアクセスポイントとしても利用できる点も見逃せない。ただし、有線LANポートを使う際はほかの機器のUSBポートから電源をとるのではなく、ACアダプタから直接電源をとる必要がある。

まとめと感想

 実勢価格で3万円前後ということで手を出しにくい価格設定ではあるが、最上位クラスの無線LANルーターと、赤外線リモコンまとめ機能、映像及び音声のワイヤレス配信ができるHDMIドングル兼トラベルルーターが手に入ると考えれば、まずまず納得できるのではないだろうか。

 ちなみに、ゲーミングルーターと銘打たれているということで、PlayStation 4にて普段から遊んでいるFPSのオンラインマルチプレイを試してみたが、普段使いのルーターとの違いは分からなかった。QoSの設定の「Gaming boost」が日本語表記では「ストリーミングブースト」としている辺り、日本国内のインターネット環境では差を感じにくいということなのかもしれない。

(井上 繁樹)