井上繁樹の最新通信機器事情

Synology「DS415play」

〜Windows感覚で簡単に使える高機能・高速NAS

Synology「DS415play」

 Synologyの「DS415play」はストレージを4台まで内蔵できるNAS製品だ。管理画面はWindows感覚で使える平易なもので、Webベースながら非常に軽快であり、モバイル環境を含むインターネット経由で利用する際も「重く」感じさせない。今回最新のHDD製品と併せて借りる機会があったので、その実力を調べてみた。

概要

 Synologyの「DS415play」はビジネス用途も視野に入れつつ、どちらかと言うと家庭での利用を想定したNAS製品だ。3.5インチもしくは2.5インチのストレージを内蔵可能で、入出力はGigabit Ethernetの有線LAN×1、USB 2.0×3(前面×1、背面×2)、USB 3.0×2(背面)。USB接続の無線LAN子機に対応しており、無線LAN接続も可能だ。

本体は立方体に近い形状
正面。ストレージはマウンタに装着してセットする。右側に縦に電源ランプ、ストレージの動作ランプ、USB 2.0ポート×1、電源ボタンが並ぶ
正面から見て右側面。本体ロゴがスリット状に掘られており、吸排気孔になっている。左側面も同様
背面。92mmの排気ファンが横に2つ並ぶ。排気ファンの下、左からリセットボタン、USB 2.0ポート×2、電源ポート、Gigabit Ethernet有線LANポート、ケンジントンセキュリティスロット、USB 3.0ポート
底面。周囲に吸排気のための穴がある。本体を支えるのは4つの四角いゴム足
正面の蓋。4つのゴム足状の部品で固定
マウンタ。3.5インチ、及び2.5インチのHDDとSSDに対応する。SSDはキャッシュとしての利用も可能。2.5インチ使用時はネジで固定する
本体以外の同梱物一覧。AC電源コード、AC電源アダプタ、LANケーブル、2.5インチドライブ固定用ネジ×18
記事作成の為に使用したWestern Digital製「WD Red WD60EFRX」。先日発売されたばかりのNAS用途想定のSATA接続3.5インチ6TBのHDDだ。一般向けとしては保証期間が3年と長め

 主な機能として挙げられるのがLAN内、あるいはインターネット経由でのファイルの共有や同期、保存しているファイルのオンラインストレージへのバックアップ、あるいはオンラインストレージのファイルのバックアップなどのファイル操作系機能だ。ほかにも、画像、動画、音楽ファイルをLAN内の機器で再生可能にするメディアサーバー系の機能、iTunesサーバー、SNSやブログなど外部に開かれたサービスへの投稿(共有)機能、FTPやHTTPはもちろんBitTorrentを始めとするP2P形式のプロトコルに対応したダウンローダなどがSynology推奨(メーカー自身によるリリース)の機能として紹介されている。

 大きさは203×233.2×165mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.03kgとなっている。ボディ表面はザラザラした手触りのプラスチックで、本体を支えるのはややソフトなゴム足。ストレージを内蔵するスロットの蓋は取り外し式で、四隅に付いたゴム足状の部品でソフトに固定する。ストレージは専用のマウンタに装着して使用する。

 吸排気については、前面の蓋の側面に大きめの隙間があるほか、本体側面のロゴにスリット状の穴が掘られていて、背面に排気ファンが2つある。消費電力はHDDハイバネーション時が17.3W、アクセス(フルロード)時が41.95W、ノイズレベルは20dB(以上はメーカーによる参考値)。

RAIDを手軽に使える「Synology Hybrid RAID」

 内蔵するストレージはExt4形式でフォーマットして使用するが、USBで外付けするストレージについてはFATやNTFS、HFS+、Ext3形式にも対応する。ファイルシステムの最大サイズは16TBで、作成できるボリュームの数は最大256だ。ストレージ容量の合計が16TBを越える場合は、16TB以下のボリュームに分割して使用することになる。

最初に電源投入した時に表示される初期設定画面。ストレージは全て初期化される
初期設定終了後開く管理画面のサインイン画面。NASというよりスマートフォンやタブレットのサインイン画面だ
推奨フォーマットはSHRだ。予備知識がなくても設定できるので初心者向けと言える
SHR-2では最大2台までストレージが故障してもデータは守られる。ただし、冗長性確保のためにその分速度と容量が犠牲になる

 対応するRAIDタイプはBasic、JBOD、RAID 0/1/5/6/10で、さらに、使用するストレージからボリュームの容量と性能を自動的に最適化してくれる「Synology Hybrid RAID」(以降「SHR」)と呼ばれる方式にも対応している。SHRは使用するストレージのうち1台(SHR)、または2台(SHR-2)故障してもデータが失われないよう冗長性を持たせることができる。利用可能な容量はそれぞれRAID 5とRAID 6と同じだ。

デスクトップのようなWebベースの管理画面

 管理画面はWebベースで、Windowsのようなデスクトップ画面がWebブラウザ上に表示される。全画面表示にするとNASと言うよりほとんどデスクトップPCに見える。設定は「コントロールパネル」でできるし、CPUやメモリ、ネットワークの利用状況やストレージの温度などハードウェアの状況の確認がリアルタイムで確認できる。「パッケージセンター」と呼ばれるアプリで必要なアプリのインストールができるあたりは、LinuxやiOS、Android、Windows 8のストアのようでもある。

Webベースの管理画面。全画面表示にするとWindowsのデスクトップ画面と見た目が変わらない。テキストの編集や画像、動画、音声の再生も可能
管理画面の左上にあるボタンをクリックするとメインメニューが開く。デスクトップにショートカットがないアプリはここからアプリを起動できる
初期状態から使えるテキストエディタ。日本語の入力も可能
パッケージセンターの推奨アプリ。Synologyがメンテンナンスして提供している基本機能が並ぶ
推奨アプリのメディアサーバーをインストールして、PS3でのクロスメディアバーで確認しているところ。もちろん、対応ファイルであれば再生可能だ
メディアサーバーをWMPで表示しているところ。赤い×印は、DRMなどで保護されていたり、対応していないので再生できないファイル
推奨アプリの1つ「ダウンロードマネージャー」。FTPやHTTP以外にBitTorrentなどにも対応する
ほかにも、ウイルス対策ソフトや、Wiki、ショッピングサイト構築、サポートセンター構築、等々各種アプリが揃っている
「Antivirus Essential」のウイルススキャン完了画面
「Glacier Backup」を使って「Amazon Glacier」にDS415playのファイルをバックアップした例。Glacier Backup自体は平易だが、多くの人にはAmazon Glacier自体が壁になるかもしれない
「HiDrive Backup」。有料アカウントでないと利用できない点に注意
「Cloud Sync」。GoogleドライブやDropboxに保存しているファイルをまとめてバックアップする
共有フォルダは初期状態では作成されない。作成した共有フォルダは権限の設定が必要だ

 パッケージセンターで推奨となっているアプリは全てSynologyがメンテナンスしているもので、画像・動画・音楽のメディアライブラリとメディアサーバー、スマートフォンやタブレットにも対応した同期ソフト、IPカメラの管理・録画ソフトだ。IPカメラ対応のソフト以外は、より廉価なNASでも見かける機能だが、実はここまで述べた以外のアプリが充実している。

 まず、ファイルを預かるNAS本来の機能をサポートする機能として、保存しているファイルをオンラインストレージにバックアップする「Glacier Backup」(Amazon Glacierを使用)と「HiDrive」(主に欧州でサービスを展開している「HiDrive」を使用)。そして「Dropbox」や「Google Drive」などに保存しているファイルをまとめてバックアップする「Cloud Sync」は、ぜひチェックしておきたい機能だ。セキュリティソフトの「Antivirus Essential」と「Antivirus by McAfee」(有料)も外せないだろう。

 ほかには、Wikipediaで使われている「DokuWiki」や「Drupal」、「Joomla」などのCMS、ブログツールの「WordPress」、「Mail Server」とWebベースのメーラー「Mail Station」、アクセス解析ソフトの「Webalizer」、「VPN Server」などがある。PerlやPythonなどの言語や、MariaDBなどのデータベース、Git Serverなど開発環境となるものも含まれていることも興味深い(しかもDS415playはSSHアクセスに対応している)。

ベンチマーク

 速度の測定は、DS415playの共有ドライブを、Windows PC上でネットワークドライブとしてマウントして、CrystalDiskMark 3.03(以下「CDM」)を使って行なった。DS415playとWindows PCはどちらもGigabit Ethernetの有線LANで同じルーターのLANポートに接続した。Windows PCのスペックは、OSはWindows 8.1 Proで、CPUはCore i5-4590S、メモリは8GB、ストレージはSSD。

 DS415playにセットしたストレージは先日発売されたWestern Digital製SATA 6Gbps接続の3.5インチHDD「WD60EFRX」4台。フォーマットは、速度が一番出ると思われるRAID 0、一般的によく利用されるRAID 5とRAID 6、そしてSynology推奨で容量がそれぞれRAID 5とRAID 6と同じになるSHRとSHR-2の5種類作成して、それぞれの速度を測定した。

【表1】シーケンシャルアクセス時のCDM測定結果(MB/sec)
フォーマット RAID 0 RAID 5 SHR RAID 6 SHR-2
読み込み 106.0 88.4 108.9 66.3 70.9
書き込み 105.2 101.7 102.6 77.8 82.9
RAID 0のCDM測定結果
RAID 5のCDM測定結果
SHRのCDM測定結果
RAID 6のCDM測定結果
SHR-2のCDM測定結果

 結果は上の表および図の通りで、シーケンシャルアクセスについては、RAID 0およびSHRの場合、読み書きともに、RAID 5は書き込みの場合のみ約100MB/sec(約839Mbps)を越えた。RAID 6は読み込み約66MB/sec(約557Mbps)で書き込みが約78MB/sec(約653Mbps)、SHR-2は読み込み約71MB/sec(約595Mbps)で書き込み約83MB/sec(約695Mbps)だった。数字を見ると、RAID 5よりSHRが、RAID 6よりSHR-2の方が速かったということになる。

外部アクセスとモバイルアプリ

 DS415playは管理画面や、インストールするサーバー系アプリに、インターネット経由で外部からアクセスが可能だ。外部からのアクセスが簡単になるように「QuickConnect」と呼ばれるアカウントとNASを紐付けする管理サービスが用意されているが、こちらはSynologyが提供するダイナミックDNSを利用する。

 QuickConnectの利用は必須ではなく、自分でルーターのポート転送を設定したり、ダイナミックDNSを組み合わせて使うこともできる。恐らくQuickConnectを利用するのが一番簡単だと思われるが、将来Synology以外のNASを使う可能性がある場合は、QuickConnectに頼ることなく自分で設定するのがお勧めだ。

 LAN内だけでなく、インターネット経由でアクセスする場合についても、iOSやAndroid用のアプリが利用できる。用意されているアプリは8種類で、画像、動画、音声の再生、保存しているファイルへのアクセス、ネットワークカメラへのアクセス、ダウンローダーの管理、端末側へのファイルの同期ができる。全てパッケージマネージャで推奨となっているアプリをインストールすると利用できるもので、自宅でも出先でも端末の種類に関わらずNASの機能が使える。

「DS photo+」。DS415play上のPhoto Stationにアクセスできる
「DS audio」。DS415play上のAudio Stationにアクセスできる

まとめと感想

 試用当初にデスクトップを模した管理画面を見た時、その応答速度に不安があったが、実際使ってみると驚くほど軽快で、ブラウザ上で動いていないのではないかと錯覚するくらいだった。

 転送速度についても冗長性を持たせて使う場合で、Gigabit Ethernet有線LANの上限速度目前の速度が出ており(SHR使用時で839Mbps以上)、LAN環境を10 Gigabit Ethernetに交換する時期にでもならない限り、余裕のある性能だと言えるだろう。それよりも先にストレージの寿命が来そうだ。

 NASは安全にファイルを保存してくれるハードウェアだが、万全を期するならそのバックアップ環境も欲しいところ。その点Amazon Glacierのような安価なサービスが使えるのはうれしい限りだ。

(井上 繁樹)