井上繁樹の最新通信機器事情

エプソン「EP-804A」
~スマートフォンでも利用可能なインクジェット複合機



EP-804A

発売中
実売価格:20,000円前後



 エプソンの「EP-804A」はA4サイズ対応の複合機だ。PC以外にもスマートフォンやタブレット端末を使って印刷やスキャンが可能で、単体でメールを受信して添付ファイルを印刷できたり、Google Cloud Printに対応するなど、OSやLANの垣根を越えて使える。

●エプソン「EP-804A」の主な仕様

 EP-804Aは印刷、スキャン、コピーができるA4サイズ対応のインクジェット複合機だ。PC以外の機器にも幅広く対応していて、AndroidやiOSを搭載したスマートフォンやタブレット端末、PS3(ゲーム機)やデジカメと直接つないで印刷やスキャンができる。

本体前面。操作パネルがある。画面の周囲にあるタッチセンサー方式のボタンで操作する本体側面(前方から見て右)。内部カバーを開く際指をかける溝がある本体背面。左側にUSB端子とLAN端子、右側に電源コネクタがある。中央の黒い部分にオプションの自動両面ユニット「EPADU1/W」を装着できる
排紙トレイは展開すると約205mm伸びる。また、下部フロントパネルは開くと約60mm伸びる内部カバーを開いた状態。つまった紙の取り出しや、インクカートリッジのセットができるインクカートリッジは初回起動前にセットする。インクカートリッジが入っていない状態ではセットアップは開始しない
下部フロントパネル裏にメモリーカードスロットがある。コンパクトフラッシュ(TYPE II)、メモリースティック/PRO、SDメモリースティック、xD-Picture Cardが使えるBlu-ray/DVD/CDレーベル印刷用カセットは普段は本体内部奥に収納されているので見えない。操作パネルのボタンを押して呼び出す
用紙カセット。2段構成で上段にハガキや写真用の用紙を、下段にハガキや普通紙をセットして使う本体上部のフラットベッドスキャナ。用紙は横置きで、左側が上で右側が下になる

 インターフェイスはUSB 2.0、有線LAN(10/100BASE-TX)、無線LAN(11b/g/n)と赤外線。USB 2.0端子は前面と背面に計2つあり、前面の端子はPictBridgeに対応している。また、クレードルが必要だがTransferJetにも対応する。さらに、メモリーカードスロットを搭載しており、ファイルから直接印刷ができる他、共有ドライブとしても利用もできる。

 大きさは445×386×150mm(幅×奥行き×高さ)。使用時には排紙トレイと下部フロントパネルが展開して最大約205mm前方に向かって伸びる。重量は約9.1kg。本体色は黒白赤の3色から選べる。本体デザインについてだが、トレイやフロントパネルを収納すると箱に近い形状になるので棚類に収納してもきれいに収まる。奥行き40cm以内ということもあって設置場所には不自由しないだろう。

 プリンタ部の出力解像度は5,760×1,440dpi、インクは染料系でブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタの6色。対応インクカートリッジは6色セットの場合で5~6千円前後(「IC6CL50」の場合)。オプションの自動両面ユニット「EPADU1/W」(白と黒の2色)を使えば両面印刷に対応できる。

 給紙カセットにはA4普通紙で120枚、ハガキで70枚収納できる。また、給紙トレイとは別に、Blu-ray/DVD/CDのレーベル印刷専用トレイを本体内部に収納しており、フロントパネルのボタンで引き出せる。

 スキャナ部の入力解像度は2,400×4,800dpiで、読取階調はRGB各色16bit、センサーはCIS方式で光源はLED。スキャナ用のオートドキュメントフィーダは搭載していない。スキャナ用のオートドキュメントフィーダについては上位モデルの「EP-904」シリーズが搭載している。

●接続は無線LANがおすすめ

 EP-804A用に現在提供されているドライバは、Windows 2000/XP/Vista/7とMac OS X 10.4.11以降に対応している。特にWindowsに関しては幅広いバージョンに対応していて、プリンタもスキャナも動作する点はポイントが高いかもしれない。

Windows 7での無線LAN接続設定画面。AOSSやWPSも使えるEP-804Aのプロパティ画面。印刷設定やインク残量を確認できるPS3のプリンタ設定画面。登録がうまくいかない時はEP-804Aを再起動(電源オフの後オン)するといいようだ。PS3ではデジカメ画像やスクリーンショットを印刷できる
同梱ソフトのBlu-ray/DVD/CDのレーベル印刷ソフト「Epson Print CD」同梱ソフトのOCRソフトの「読んde!!ココ パーソナル」

 PCとの接続に関して注意しておきたいのが、EP-804Aは同梱しているケーブルが電源ケーブルのみだということ。今時USBケーブルやLANケーブルの入手に困ることは無いと思うが、必要であれば別途入手しておくことを忘れないようにしたい。

 ちなみに、PCとのおすすめの接続方式は無線LANだ。というのも、USBでつないでしまうと共有利用の際不便だし(USBでつながっているPCの電源をオフにしづらい)、スマートフォンやタブレット端末で使うにはLAN接続が必須な上、何より無線であればケーブルの配線に気を使う必要がないからだ。

 今回Windows 7 PCを使って無線LANでの接続設定をやってみたが、特につまることもなくすんなりと終わった。ドライバや管理ソフト、同梱のアプリケーションソフト、EPSON Connectのアカウント登録、電子マニュアル等々インストール作業が盛り沢山な上、ファームウェアのアップデートもあったのですぐに終わるというわけにはいかなかったが、手間がかかったのは無線LANの暗号化キーの入力くらいで、後はほぼウィザードに従って「次へ」ボタンを押していただけだった。

 印字品質についてだが染料系ということもあってか、やはり普通紙ではにじみやすい印象だ。特に、カラーの写真印刷では普通紙ではなく、写真用紙を使う方がおすすめだ。

 主な同梱ソフトはBlu-ray/DVD/CDレーベル印刷ソフトの「Epson Print CD」と、写真印刷ソフトの「E-Photo」、そしてOCRソフトの「読んde!!ココ パーソナル」。いずれもWindows、Mac両対応となっている。

●PC以外の機器から手軽に印刷

 EP-804Aは「Epson iPrint」「メールプリント」「AirPrint」「Google Cloud Print」の4つのサービスに対応しており、PCだけでなくAndroidやiOSを搭載したスマートフォンやタブレット端末を使って印刷やスキャンができる。以下4つのサービスについて順に見ていこう。

メールやスマートフォン、タブレット端末から印刷を行なうには「Epson Connect」のアカウント登録が必要だ登録が完了するとEP-804Aにメールアドレスが割り当てられる。このメールアドレス宛に印刷したいファイルを添付して送信するEPSON Connectでアカウントを登録するとメールプリントの進行状況も確認できるようになる。スパム対策としてお勧めなのは「受信許可リスト」でホワイトリストを作成しておくこと
Epson iPrintではLAN内から印刷とスキャンができる。Dropboxやbox.netなどオンラインストレージと連携できるので出先から利用するのにも便利Eposn iPrintでスキャンしている様子。プレビューが確認できる。EP-804A単体でもスキャンはできるが、スマートフォンやタブレット端末を使えば即座に原稿のズレを確認できるスキャンした画像はオンラインストレージのEpson iPrintフォルダに送信される。画面はDropboxのもの
box.netでも同様にEpson iPrintフォルダにスキャン画像が送信される。ちなみに、Google DocumentではEpson iPrintフォルダにPDFファイルとして保存されるほか、Evernoteでは「Epson iPrint」ノートの添付ファイルとして保存されるAndroid端末からGoogle Cloud Printを使っている様子。印刷を開始するにはファイルを開いてメニューから「印刷」ボタンをクリックすればよいGoogle Cloud Printでは印刷するのに使うプリンタを毎回選択する。使用できるプリンタはあらかじめGoogle Cloud Printに登録したもの
現在PC上でGoogle Cloud Printを使うには「Upload file to print」を使うのが一番簡単だGoogle Cloud Printの「印刷ジョブ」リスト。進行状況が確認できる
iOS上では、例えばSafariでWebページを開いて「印刷」ボタンを押すと、あらかじめ登録しておいたAirPrint対応プリンタで出力する

 「Epson iPrint」と「メールプリント」はエプソンが提供しているサービスだ。「Epson iPrint」ではLAN内のAndroidやiOS端末で専用アプリ上から印刷とスキャンができる。便利なのがオンラインストレージと連携できることで、ファイルの印刷やスキャン内容の保存がローカルストレージの場合と同様の手順でできる。連携可能なオンラインストレージは「Dropbox」「box.net」「Evernote」「Google Document」の4種類。「メールプリント」では送信したメールの本文と添付ファイルの印刷ができる。FAX感覚で使える簡単さとインターネット経由でどこからでも使えるフットワークの軽さが魅力だ。

 「Google Cloud Print」(現在はベータ版)はWebページ上からインターネット経由でプリンタを使えるようにすることを目標にしているサービスだ。Chrome OSが標準でサポートしているほか、AndroidやiOSではGoogle Documentアプリなど対応アプリをインストールすれば使える。EP-804AはGoogle Cloud Printをネイティブサポートしているので、インターネットにさえつながっていれば単体で世界中のどこからでも使える。

 「AirPrint」はiOS搭載端末で使えるサービスで、無線LAN経由でAirPrint対応プリンタとの接続設定と印刷ができる。他のサービスよりも対応しているファイル形式が多いのでiOS端末を使っているならおすすめだ。

 4つの機能の使い分けについてだが、実際に使ってみた感じでは、手軽に使うならメールプリント、出力形式を調整したりスキャンを使うならEPSON iPrint、普段からGoogle Documentを使っているならGoogle Cloud Print、iOS端末を使っているなら「AirPrint」がおすすめだ。

●スマートフォン時代の家庭向け複合機

 EP-804Aは一言で言うならスマートフォン時代の家庭向け複合機だ。印刷、スキャン、コピーがひと通りこなせて、PCの電源を入れなくてもAndroidやiOSを搭載したスマートフォンやタブレット端末から簡単に使える。凹凸の少ないすっきりした箱型デザインなので設置場所の選択肢も多く、自己主張し過ぎず地味すぎもしない本体色のお陰で、オフィスよりも色彩豊かな家庭に置いても浮きにくい。

 インターフェイス類はほぼフル装備状態でむしろつなげないことの方が珍しく、まだ新しい分野であるスマートフォンやタブレット端末への対応についても自社のサービスだけでなくGoogleやAppleの新サービスにも対応済みで「寿命が終わる前に使えなくなってしまうのでは?」と思わせる不安要素が一切見当たらないのは好感が持てるところ。

 なお、本機はスキャナ部にオートドキュメントフィーダが無いので、大量スキャンが目的の人には向かない。また、FAX機能が無いので、FAXが必須な人には向かない。ただし、たまにFAXを使う程度であれば、オンラインストレージ等に乗り換えるなどの選択肢も用意されている。

 万能ではないが、隙が無くバランス良く仕上がった選びやすい1台だと言えるだろう。

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(2011年 11月 16日)

[Text by 井上 繁樹]