井上繁樹の最新通信機器事情

Cloud Engines「Pogoplug」
〜外からでもアクセスできるNAS機能を試す



CloudEngines Pogoplug v2

発売中
価格:約12,000円



●LANの中からでも外からでも使えるNAS「Pogoplug」

 Cloud Enginesの「Pogoplug」は、本体に接続したUSBストレージを、LANの中だけでなく外からもアクセスできるようにしてくれるデバイスだ。LANの外からアクセスするとなると、ネットワークの設定変更が必要になることが多いが、Pogoplugはネットワークの設定変更は不要だ。その上10分とかからずセットアップが完了する簡単仕様だ。

 今回紹介するのは「Pogoplug V2 “pink”」は2世代目にあたる。初代モデルはACアダプタのような本体デザインだったが、2世代目はピンク色のパーツやクリアパーツを使った派手なデザインになった。さらに、初代モデルでは1つだったUSB 2.0ポートが4つに増え、よりヘビーに使える仕様になった。

 なお、Pogoplug同様LANの中からでも外からでもアクセスできるNAS製品としてSeagateのDockStarがあるが、こちらもCloud Enginesの技術を使っている。

正面。USB 2.0ポートと電源ランプがある 背面。USB 2.0ポート×3、Gigabit Ethernet、電源コネクタが並ぶ 左面。ロゴが刻印されている
右面。左面同様刻印されている 天面。排気口がある。稼働時はほんのり暖かい 底面。滑り止めのゴム足が付いている
同梱物は本体、LANケーブル、電源ケーブル、スタートガイド、サポート情報の計5点 パッケージ前面 パッケージ後面

 Pogoplugは本体にストレージを一切持っていない。また、接続したストレージをフォーマットする機能も持っていない。なので、接続するストレージはPCであらかじめフォーマットしておく必要がある。Pogoplugが対応しているファイルシステムはFAT32、NTFS、HFS+、Ext2/3の5種類。つまり、Windows、Mac、Linuxを制覇していることになる。

 Pogoplugにつないだストレージにアクセスする方法は3種類ある。1つはブラウザベースのインターフェイスを使う方法。もう1つはPCに専用ソフトをインストールしてローカルドライブとしてマウントする方法(Windows、Mac、Linuxに対応)。そして最後の1つがスマートフォンに専用ソフトをインストールしてアクセスする方法だ(iPhone/iPad、Blackberry、Android、Palm Preに対応)。本記事では前半の2種類について紹介する。

●ハードウェアスペック

 Cloud Enginesのサイトにはハードウェアの情報は見当たらないが、プラグコンピュータの開発者向けのサイトにあるのでここではそれを引用する。以下の表はその情報に消費電力の情報を加えたものだ。

【表】ハードウェアスペック
製品名 Pogoplug V2 “pink” GuruPlug Server - PLUS(参考)
CPU Marvell Sheeva 1.2GHz Marvell Sheeva 1.2GHz
メモリ 256MB 512MB
フラッシュメモリ 128MB 512MB
USB 2.0ポート 4 2
ネットワーク Gigabit Ethernet×1 Gigabit Ethernet×2
その他 N/A IEEE 802.11b/g、Bluetooth、eSATA、microSDスロット
(外部×1、内部×1)
消費電力 5W(実測値) 5W(公式サイトより)

 Sheevaの名前に見覚えのある人は気付いたかもしれないが、Pogoplugはプラグコンピュータと呼ばれるジャンルの製品だ。プラグコンピュータはコンセントに挿しっぱなしで使うことを想定した低消費電力設計の汎用コンピュータで、電源スイッチもリセットスイッチも無い。大きさも少し大きめのACアダプタサイズのものが多く非常にコンパクトだ。なお、Pogoplugとは違うハードウェアになるが、プラグコンピュータ自体は既に日本に入ってきていて、玄人志向が「玄柴」の名前で製品を販売している。

 Pogoplugはライバル製品と比べるとハードウェア的には見劣りする。先代のPogoplug「Wall-Plug」と比べても、USB 2.0ポートは3つ増えて計4つになったが、フラッシュメモリは512MBから128MBへと大幅に減っている。先に挙げた「玄柴」とよく似たスペックの「GuruPlug Server - PLUS」はPogoplugとほぼ同じ価格なのだが、USB 2.0ポートの数以外ではPogoplugは完敗だ。 もしDIY用途でプラグコンピュータが欲しいなら、PogoplugやSeagateのDockstar以外の、メモリ容量や機能の豊富な製品を選択するとよいだろう。

●セットアップ

 Pogoplugのセットアップは先に述べたようにとても簡単だ。作業としては、LANケーブルと電源ケーブルをつないで、専用サイトでユーザーアカウント取得するだけでよい。ネットワークの設定を変更してPogoplugがネットワークの外から直接見えるようにする必要は無い。

 ユーザーアカウントを取得すると自動的にアカウントとPogoplugが紐付けされて、LANの中からでも外からでも自分のPogoplugが使えるようになる。なお、実際の作業は以下のスクリーンショットの通り専用サイトのウィザード画面にしたがって行なうことになる。

my.pogoplug.comを開いて「ACTIVATE POGOPLUG」をクリック LANケーブルをルーターに接続する 電源ケーブルをコンセントに接続する
HDDを接続する ユーザーアカウントを設定する。IDはメールアドレスを使う
本人確認のためのメールが送られてくるので、リンクをブラウザで開いて本人であることを証明する アカウントとハードウェアの紐付け作業が自動的に行なわれセットアップは完了となる
セットアップ完了後のSETTING画面。接続したUSBストレージのフォーマット形式を確認できる

 セットアップが完了したら、フォーマット済みのUSBストレージをPogoplugに接続して、my.pogoplug.comにサインインすれば、ブラウザベースのインターフェイスを通じてPogoplugの機能が使えるようになる。


●ローカルドライブにマウントする

 先に行なったセットアップだけでもPogoplugの機能は使えるが、より簡単に使いたいなら専用のユーティリティを使ってローカルドライブとしてマウントするのがおすすめだ。以下のスクリーンショットはWindows版のユーティリティをインストールして撮影したものだ。なお、接続しているネットワークが変わる場合は、タスクバーのアイコンから右クリックでメニューを開いて「Reload」する必要がある。

ユーティリティを使ってドライブをマウントするには、セットアップの際my.pogoplug.comで登録したアカウント情報を使ってサインインする必要がある サインインに成功した時の画面。この画面で起動時に自動的にマウントするように設定することもできる
マウントに成功するとエクスプローラのHDDの項目にPドライブとしてPogoplugのストレージが表示されるようになる Pドライブのルートフォルダを開いたところ。接続しているストレージのドライブ名がそのままフォルダ名として表示される
LinuxでPogoplugをマウントしてルートフォルダを表示した状態。Windowsの時と同じようにフォルダが見えている

 Windows用のユーティリティ以外では64bit版Linux用のユーティリティ(1.0.0.6)も試してみた。Linux用のユーティリティはベータ版ということもありWindows版のようなインストーラー任せのお手軽インストールというわけにはいかなかった。詳細はページ末尾で紹介しているコミュニティサイトの解説ページを参照して欲しい。

 なお、解説ページには明記されていないが、Linux版はインストール後再起動が必要なようだ(再起動しないとファイルの削除ができないなどの問題が起きる)。また、Windows版のユーティリティのように起動後自動的にマウントするには自分で「自動起動するアプリ」に登録する必要がある。

●Pogoplugのその他の機能

 さて、ここまでPogoplugを単にLANの中からでも外からでもアクセスできるNASとして紹介してきたが、Pogoplugの持つ機能はそれだけではない。画像・音楽・ビデオファイルを再生するメディアプレーヤー機能、PS3とXbox360に対応したDLNAサーバー機能、ファイルをインターネット上に公開する機能、フォルダのバックアップを自動的にとるオートコピー機能、SSHアクセス機能など、なかなか便利で使い勝手の良い機能が揃っている。特に音楽ファイル再生機能は、設定画面を開かない限り再生が途切れないようになっていて、なかなか秀逸だ。

とあるアルバムを開いたところ。左下に表示されているスライドバー付きのものがプレーヤー機能だ 画像ビューワを開いたところ
動画ファイルを再生したところ。プレーヤーがポップアップ表示されて、それ以外の部分の明度が落とされる。 PS3からPogoplugのDLNAサーバーを見たところ

 ただし、メディアプレーヤー機能とDLNAサーバー機能については、開発途中なせいか、日本語環境に対応していない問題もある。最大の問題は音楽ファイルのメタ情報をPogoplugがうまく取れないこと。おかげでファイルは存在するのにメディアファイルデータベースには登録されていない(メディアプレーヤーやDLNAサーバーからは見えない)幽霊ファイルが相当数できてしまう。いろいろ試してみたのだが、同じファイルでもメタ情報が取れたり取れなかったりするので、原因がはっきりしない。また、文字コードにShift JISが使われていたりすると文字化けも起きる。

 Pogoplugはプラグコンピュータの中では用途がはっきりしていてDIY用のハードウェアと言うよりは完成品に近いイメージがあるが、やはりまだまだ未成熟だということなのかもしれない。もっとも、そうでなければせっかくのSSHアクセス機能が無駄になってしまう。viが最初からインストールされているのは伊達ではないということなのだろう。

●消費電力の節約にも一役

 以前から古いPCにLinuxをインストールして使ってきたが、大切なファイルを保存しておくファイルサーバーと実験用の環境を同じにしておくのは問題だと感じていた。他にファイルの移し場所も無いため、好きなタイミングでクリーンインストールできないのもストレスだった。また、消費電力が意外に多めで年1万円以上かかっていていたのも気がかりだった。

 そんな折Pogoplugを見つけた。セットアップも簡単でLANの中からでも外からでもアクセスできる上、電気代も年1,000円以下(本体のみ)。実験用の環境は必要な時のみ電源を投入するようにすれば、5年も経てば安価なノートPC1台分の節約になる。良い買い物だったと思う。

 ただし、おまけというわけではないが、新たな「フロンティア」も見つけてしまった。フラッシュメモリの搭載量が少ないため改造の余地が無いように見えるPogoplugだが、実はUSBメモリを使ってPHP等をインストールする方法がコミュニティサイトで紹介されていたりする。もちろんメタ情報まわりの問題の原因も気になる。というわけで、ファイルサーバーと実験環境が再び同居する日はそう遠くないかもしれない。

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(2010年 5月 11日)

[Text by 井上 繁樹]