井上繁樹の最新通信機器事情

コレガ「WLR300NNH」
〜5GHz帯11n倍速に対応したNAS機能搭載無線LANルーター



WLR300NNH

発売中
価格:15,225円



 リレーコラム「買い物山脈」でのルーターレビューが好評だった井上繁樹氏の新連載をお届けします。IEEE 802 11n規格の正式規格化で買い時を迎えた無線LAN機器のレビューを中心に、通信機器関連の話題を拾います。(編集部)

●5GHz帯11nが使えてNAS機能付き

 コレガ「WLR300NNH」は、IEEE 802.11a/b/gに/n対応した無線LANルーターだ。2.4GHz帯に加え5GHz帯に対応したアクセスポイントを搭載しており、5GHz帯の11nも利用できる。有線部分は1Gbpsの4ポートのハブを搭載。USBストレージのNAS化機能があり、NAS化したフォルダを使ってiTunesサーバーや、メディアサーバー(DLNA)としても使える。

 セキュリティ機能としては、IPフィルタやアクセスURL制限に加え、スケジュールを設定して無線LANをオン/オフする機能を搭載している。また、低いレベルの暗号化機能しか持たないゲーム機と共存するため、インターネット接続のみ提供する専用のアクセスポイントを搭載している。

同梱物。本体、LANケーブル、ACアダプタ、マニュアル、DSとWiiの接続ガイドなど 正面。状態表示ランプ、USBボタン、USBポートが並ぶ。USB接続のHDDをつなげばNASとしても使える 背面。マルチAP機能スイッチ、ルーター機能スイッチ、Gigabit Ethernet×4およびWANポート×1が並ぶ
天面。WPSランプ、WPSボタン、通気口が並ぶ 底面。縦置き時に回転させて使うスタンドがある。回転角度は90度 右側面。横置き時に底面になるためゴム足が付いている。ほぼ全面通気口

 本機で特に着目したいのは5GHz帯の11nに対応していること。2.4GHz帯との同時使用も可能だ。5GHz帯の11nおよび11aは、電子レンジを始めとしたノイズ源が多い2.4GHz帯の11b/g/nと比べて干渉を受けにくい特徴がある。その反面、周波数が高いぶん障害物に弱く、同じ階層の見通しの良い場所で使うことを推奨されている。

 店頭では広く普及した11g/bと互換性がある2.4GHz帯11n対応機が人気だ。普及している分価格が安いこともある。けれど無線LANでは普及していることが逆にデメリットになることがある。無線LANは共有物である電波を使うため干渉の影響は避けられない。階上階下にも電波がよく飛ぶ2.4GHz帯ともなればその分影響は大きくなる。ユーザー数が多いとなればなおのこと。

 実際ベンチマークをとってみたが、2.4GHz帯と5GHz帯の11nの速度差は小さくなかった。周囲に干渉源がほぼ無い5GHz帯と干渉源だらけの2.4GHz帯との、えこひいきが過ぎる勝負なわけだから当然なのだが、無線LANでは電波環境もスペックのうち。決して卑怯な勝負では無い。

●接続設定にWPSが使える

 WLR300NNHはWPSに対応している。WPSはAOSSとほぼ同様の機能で、セキュリティキーを手入力することなく安全かつ簡単に無線LANの接続設定ができる。要はウィザードに従って押せと言われたタイミングでWPSボタンを押すだけでOK。だからAOSS以外使ったことがないという人でも迷わず使えると思う。

WPSを使った接続設定。本体天面の矢印が描かれたボタンを押せばOK ボタンを押す代わりに本体裏に書かれたキーコードを入力した場合。後はOKボタンを押せばよい

●5GHz帯と2.4GHz帯の11nベンチマーク

 ここでは「CrystalDiskMark 2.2」を使って5GHz帯および2.4GHz帯の11nの速度を測定した。接続元はWindows 7 PC、接続先はWindows Vista(SP2) PC。前者にバッファローのUSB無線LANアダプタ「WLI-UC-AG300N」をセットし、後者はスイッチングハブを経由して1Gbps有線で、それぞれルーターモードのWLR300NNHにつないだ。テスト環境は近隣に11b/g/nユーザーの多いワンルームマンションの一室。セキュリティ機能はいずれもWPA2-PSK(AES)を使用した。

 結果は5GHz帯が読み込み約60Mbps、書き込み約83Mbpsだった。また、2.4GHz帯は読み込み約54Mbps、書き込み約52Mbpsだった。5GHz帯が2.4GHz帯に対して、読み込みで約1.1倍、書き込みで約1.6倍上回る結果になった。これだけの差がついたのは、やはり2.4GHz帯が5GHz帯と比べて干渉の影響を受けているからだろう。ちなみに、バッファローの「無線LAN診断」で見る限り近隣に5GHz帯ユーザーは見当たらなかった。

バッファローの11a/b/g/n対応USB無線LANアダプタ「WLI-UC-AG300N」 バッファロー「無線LAN診断」。無線LANアダプタ同梱ソフト。電波の種類別に混雑状況を調べることができる
5GHz帯11nのベンチマーク結果 2.4GHz帯11nのベンチマーク結果

●5GHz帯と2.4GHz帯の11n倍速モードベンチマーク

 WLR300NNHは5GHz帯と2.4GHz帯の両方で11nの倍速モードに対応している。モードの変更は管理画面で行なう。倍速モードで先と同じ条件で計測した結果が以下だ。

 結果は5GHz帯倍速が読み込み約98Mbps、書き込み約154Mbpsだった。通常モードと比べると、それぞれ約1.6倍、約1.9倍にスピードアップした。また、2.4GHz帯倍速は読み込み約83Mbps、書き込み約95Mbpsだった。通常モードと比べると、それぞれ約1.5倍、約1.8倍にスピードアップした。

 5GHz帯の11n倍速と2.4GHz帯の11n倍速の速度差は読み込みで約1.2倍、書き込みで約1.6倍だった。倍速になって5GHz帯が2.4GHz帯にわずかだがさらに差をつける結果になった。

倍速モード設定画面。アクセスポイントごとに設定可能 5GHz帯11n倍速モードのベンチマーク結果 2.4GHz帯11n倍速モードのベンチマーク結果

 以上の倍速及び非倍速モードでの測定結果をまとめたものが以下の表だ。

【表1】アクセス速度測定結果
対Vista SP2(NTFS)ドライブ測定結果
接続規格 速度(Mbps)
読み込み 書き込み
2.4GHz 5GHz 2.4GHz 5GHz
11g 18.12
19.71 n/a
11a n/a 23.57 n/a 23.66
11n 53.77 59.89 52.09 82.96
11n×2 82.8 98.23 95.21 154.18
1Gbps(参考) 294.86 411.71
参考:対Ubuntu 9.10(Ext3)ドライブ測定結果
接続規格 速度(Mbps)
読み込み 書き込み
2.4GHz 5GHz 2.4GHz 5GHz
11g 16.83 n/a 20.39 n/a
11a n/a 22.09 n/a 24.39
11n 44.46 63.48 63.22 90.26
11n×2 47.1 71.09 93.11 138.58
11n×2(ftp) 51.38 61.17 95.28 150.71
1Gbps 411.13 900.1
※ftpサーバーはproftpd、ftpクライアントはftpコマンドを使用

●悪条件下での倍速モード接続

 先の測定は無線LANの親機と子機が同じ部屋にある電波状態の良い状況で行なったが、今度は倍速モードの安定性を見るために、電波状態の悪い状況で測定してみた。電波状態はバッファローの「クライアントマネージャV」の電波状態表示で30%(部屋の中は90%)。

 結果は、5GHz帯の11n倍速モードが通常モード比べて読み込みで約1.6倍速、書き込みで1.5倍速だった。また2.4GHz帯の倍速モードは同様にそれぞれ約1.3倍速、約1.6倍速だった。条件のいい時と比べると速度の伸びが悪いが倍速モードの優位さは変わらなかった。

【表2】悪条件下での対Vista SP2(NTFS)ドライブ測定結果
接続規格 速度(Mbps)
読み込み 書き込み
2.4GHz 5GHz 2.4GHz 5GHz
11n 24.03 28.87 15.12 29.46
11n×2 30.51 46.64 24.3 45.03

●NAS機能とベンチマーク

 WLR300NNHのNAS機能は、本体正面のUSB端子に接続したストレージをNAS化するものだ。接続ストレージはセルフパワード推奨で、ハブ経由は対応しない。同時に接続できるのは1つまで。ホットプラグ対応なので接続機器の切り替えも簡単にできる。フォーマットはFAT16/32に対応するほか、読み込みのみNTFSに対応する。NTFS形式での書き込みに対応していないのは少々残念だが、うっかり大切なファイルを消してしまう危険も無いわけで、意外に使える場面もあるのではないだろうか。

エクスプローラーのアドレスバーに円記号を2つ入れた後にWLR300NNHのIPアドレスを入力 publicフォルダが見えるはずなのでそのままネットワークフォルダとして登録。以上の操作でNASフォルダが使えるようになった

 続いてNASのベンチマーク。USBメモリとUSB HDDを使って速度を測定した結果が以下の表だ。

【表3】USBメモリとHDDのアクセス速度測定結果
NAS(USBメモリ)の測定結果
接続規格 速度(Mbps)
読み込み(FAT32) 読み込み(NTFS) 書き込み(FAT32)
2.4GHz 5GHz 2.4GHz 5GHz 2.4GHz 5GHz
11n 34.09 48.86 41.83 51.1 21.27 28.1
11n×2 35.74 43.49 44.62 49.72 19.84 29.86
NAS(USB接続HDD)の測定結果
接続規格 速度(Mbps)
読み込み(FAT32) 読み込み(NTFS) 書き込み(FAT32)
2.4GHz 5GHz 2.4GHz 5GHz 2.4GHz 5GHz
11n 33.54 48.34 29.81 46.33 25.18 37.21
11n×2 36.96 43.18 40.58 50.24 25.77 38.97
※NTFSは「転送速度計算」(K-10氏)と1GB超のファイルを使って測定

 細かく数字を見ていくと確かに違いはあるのだが、よく見ると通常モードと倍速モードの差があまりない。これはおそらく、通常モードの時点で接続速度がNASのスペックを上回ってしまっていているためだと考えられる。

●iTunesサーバーとDLNAサーバー

 WLR300NNHはiTunesサーバー機能とDLNAサーバー機能を搭載している。どちらもNASに作成したフォルダを使うもので設定は管理画面で行なう。ライブラリの自動更新機能は無いので、該当フォルダにファイルを追加/削除するたびにライブラリの更新作業を行なう。もっとも、作業と言っても同じ管理画面で「設定」ボタンをクリックするだけでOKだ。

 WLR300NNHのサーバー機能を使わず、ネットワークドライブとして登録したNASフォルダを、iTunesやWMPなどアプリケーションから直接呼び出す方法もある。その時注意しなければならないのがネットワークドライブのドライブレターの扱い。これをうっかり違うものに変えてしまうと正常に動かなくなる。同じものを使い続けられるように工夫しよう。

「USB設定」がiTunesサーバーとDLNAサーバーの設定画面。ここではmusicとmediaフォルダを作って分けているが分けなくても構わない NASのフォルダがそのままメディアファイルの保管庫になる iTunesサーバーをiTunesから見た様子。共有の項目のWLR300NNHがiTunesサーバー
DLNAサーバーをWMPで開いたところ。画像、映像、音楽をまとめて管理 PS3からDLNAサーバーを見たところ

●まとめと感想

 ちょっと分かり辛かったのが、デフォルトの本体IPアドレスが192.168.1.1なこと。インターネットを使う場合、デフォルトのIPアドレスが192.168.1.1なモデム兼ルーターにつなぐことになるので、そのままだとインターネットにはつなげない。必ず管理画面の「簡単設定」機能を使うなどして設定変更をする必要がある。

 ルーター機能をオフにしてブリッジモードにすればそのままつなげても使えるのだが、デフォルト設定ではルーター機能はオンなのだ。最も、最初に一度設定を済ませておけばいいだけの話なので、使う側の慣れの問題である。そのあたり分かってしまえば、WLR300NNHは高速でレスポンスの良い無線LANルーターとしてあなたの役に立ってくれることだろう。なお、最後に、管理画面も非常に高速でサクサク動作することを付記しておく。

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(2010年 3月 29日)

[Text by 井上 繁樹]