~11.6型フルHD液晶搭載Windows 8タブレット |
Windows 8の新UIは、タッチ操作に最適化されているため、従来のWindows 7よりもタブレットに適している。Windows 8搭載ノートPCの中には、変形機構を備え、ノートPCスタイルとタブレットスタイルの2つのスタイルで利用できる製品も登場しているが、タブレットメインで使うのなら、やはりピュアタブレットのほうが使いやすい。
Windows 8搭載ピュアタブレットも各社から登場しているが、今回は、日本エイサーの「ICONIA W700」を試用する機会を得たので、試用レポートをお届けしたい。なお、既に販売が開始されており、実売価格は75,000円前後となっているが、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や性能などが異なる可能性がある。
●Core i3搭載で高いスペックを実現Windows 8搭載タブレットは、搭載CPUによって、Core i搭載機とAtom Z2760搭載機に大きく分かれる。パフォーマンスでは前者が、消費電力やConnected Standbyへの対応では後者が優れている。日本エイサーからは、ICONIA W700と同時に10.1型液晶搭載Windows 8タブレット「ICONIA W510/W510D」も発表されているが、ICONIA W510/W510Dは、CPUとしてAtom Z2760を搭載しているのに対し、ICONIA W700はCore i3-3217Uを搭載していることが特徴だ。液晶サイズも一回り大きく、解像度もフルHDと高いので、スペック重視のタブレットと言えるだろう。
本体のサイズは、295×191×11.9mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約950gである。タブレットとしては大きく重いため、片手で長時間持つのは厳しい。筐体には金属が採用されており、表面がサンドブラスト加工されているためベタつかず、手触りは快適だ。
前述したようにICONIA W700は、CPUとしてCore i3-3217U(1.8GHz)を搭載し、メモリは4GB実装している(増設は不可)。ストレージはSSDで、容量は64GBである。
ICONIA W700を付属のクレードルドックに載せたところ | ICONIA W700の背面。表面がサンドブラスト加工されており、細かな凹凸があるので手触りがよい | 試用機の重量は、実測で927gであり、公称よりやや軽かった |
●視野角の広いIPS液晶を採用
Windows 8搭載タブレットの多くが、1,366×768ドット対応液晶を搭載しているのに対し、ICONIA W700は、1,920×1,080ドットのフルHD表示に対応していることが魅力だ。1,366×768ドット対応液晶に比べると、一度に画面に表示できる情報量は約2倍になり、複数のウィンドウを同時に開いても快適に作業が可能だ。
タッチパネルとしても高機能であり、10点マルチタッチに対応する。また、IPS方式の液晶を採用しているため、視野角が広いことも利点だ。背面には500万画素カメラが搭載されており、静止画や動画の撮影が可能である。
インターフェイスとしては、microHDMI出力とUSB 3.0、マイク/ヘッドフォン端子が用意されている。センサーは、照度センサー、ジャイロセンサー、加速度センサー、電子コンパスが搭載されているが、GPSは非搭載だ。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n無線LAN機能とBluetooth 4.0を搭載する。
液晶は11.6型で、解像度はフルHD対応である。光沢タイプの液晶なので、発色は鮮やかだ | 背面に500万画素カメラを搭載している | 左側面には、microHDMI出力とUSB 3.0が用意されている |
右側面には、マイク/ヘッドフォン端子とボリュームボタン、電源スイッチが用意されている | 上面には、ローテーションロックスイッチが用意されている |
底面には、ステレオスピーカーが用意されている | microHDMI-VGA変換アダプタが付属する |
●スタンドとしても使えるドッキングクレードルが便利
ドッキングクレードルが標準で付属しているのも便利だ。ドッキングクレードルは、クレードル部分とスタンド部分の2つのパーツから構成されており、スタンド部分をクレードル部分の背面に、スタンド部分をスライドさせてはめ込むことで、スタンドとしても利用できる。スタンド部分のはめ込み方によって、横置き時の液晶角度を70度と20度から選べるほか、縦置きも可能だ。クレードル部分には、USB 3.0ポートが3基用意されているが、クレードルにACアダプタを接続しないと、このUSB 3.0ポートは認識されず、利用できないので注意が必要だ。Windows 8タブレットなので、Windows 8用ドライバが提供されているUSB対応周辺機器なら、すべて利用できることがメリットだ。キーボードやマウス、USBメモリなどももちろん利用できるので、机の上ではノートPC代わりに使うことも可能だ。
付属のドッキングクレードルは、クレードル部分とスタンド部分の2つのパーツから構成されている | クレードル部分の背面に、スタンド部分をスライドさせてはめ込む | 本体を横置きで使う場合はこのようになる |
横置きにした状態を横から見た様子。もっと寝かせることも可能だ | スタンドをはめ込む溝を変えることで、縦置きが可能になる | 本体を縦置きにした状態 |
縦置きにした状態を横から見た様子 | ドッキングクレードル装着時の重量は実測で1510gであった |
ドッキングクレードルに本体を装着すると、USB 3.0ポートが3基に増える | Windows 8マシンなので、さまざまなUSB対応周辺機器が利用できる |
●無線LAN常時オンでも約9時間の駆動を実現
バッテリは3セルのリチウムポリマー電池で、交換はできないが、公称約9時間の駆動が可能とされている。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、公称とほぼ同じ8時間56分もの駆動が可能であった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。重さ1kg未満のWindows 8搭載タブレットとしては、なかなか優秀な結果といえる。ACアダプタは厚さが薄いタイプで、携帯しやすい。
ACアダプタは薄いタイプで、携帯しやすい | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 | ACアダプタの重量は実測で310gであった |
●高速SSD搭載でシステムパフォーマンスが高い
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。
比較用として、レノボ・ジャパン「IdeaPad Yoga 13」、ソニー「VAIO Duo 11」、東芝「dynabook R542」、ソニー「VAIO T SVT13119FJS」、富士通「LIFEBOOK UH75/H」の値も掲載したが、IdeaPad Yoga 13とVAIO Duo 11以外の3機種のOSはWindows 7なので、あくまで参考程度にしてほしい。
PCMark05のCPU Scoreの値は5672であり、Core i5やCore i7を搭載したUltrabookには及ばないが、HDD Scoreの値は53400と6機種の中で一番高い。搭載しているSSDが高速なのであろう。PCMark 7の総合スコアは3846であり、IdeaPad Yoga 13やVAIO Duo 11には及ばないものの、HDD+キャッシュ用SSDという構成のdynabook R542やVAIO T、LIFEBOOK UH75/Hよりも高い。総合的なパフォーマンスは、一般的なUltrabookとほぼ互角といえるだろう。
機種 | ICONIA W700 | IdeaPad Yoga 13 | VAIO Duo 11 | dynabook R542 | VAIO T SVT13119FJS | LIFEBOOK UH75/H |
CPU | Core i3-3217U (1.80GHz) | Core i7-3517U (1.90GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 |
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A | N/A | 6993 |
CPU Score | 5672 | 8823 | 7885 | 7228 | 7937 | 7658 |
Memory Score | 4803 | 7159 | 7825 | 8528 | 5940 | 6463 |
Graphics Score | 2250 | 2464 | 2527 | 5779 | 4007 | 4807 |
HDD Score | 53400 | 38063 | 48050 | 20204 | 12710 | 12899 |
PCMark Vantage 64bit | ||||||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A | 8577 | 8270 | 9300 |
Memories Score | 6154 | 6642 | 7951 | 5591 | 5156 | 6776 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | 3814 | 3844 | 4300 |
Gaming Score | 8049 | 8237 | 10248 | 7599 | 6975 | 7224 |
Music Score | 11573 | 14338 | 14890 | 9837 | 10643 | 10739 |
Communications Score | N/A | N/A | N/A | 9475 | 9643 | 9438 |
Productivity Score | N/A | N/A | N/A | 9393 | 10298 | 9147 |
HDD Score | 38392 | 28358 | 45577 | 16308 | 18159 | 21564 |
PCMark Vantage 32bit | ||||||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A | 8130 | 7961 | 8811 |
Memories Score | 5794 | 6423 | 7609 | 5428 | 4954 | 6773 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | 4142 | 3776 | 4328 |
Gaming Score | 6794 | 7207 | 9199 | 6754 | 6341 | 6041 |
Music Score | 10888 | 13721 | 14047 | 9528 | 9305 | 9775 |
Communications Score | N/A | N/A | N/A | 9390 | 9173 | 9452 |
Productivity Score | N/A | N/A | N/A | 8576 | 9887 | 8295 |
HDD Score | 44279 | 28508 | 45380 | 15478 | 18091 | 22010 |
PCMark 7 | ||||||
PCMark score | 3846 | 4644 | 4648 | 4298 | 3294 | 3119 |
Lightweight score | 2573 | 3143 | 2818 | 3242 | 3193 | 2061 |
Productivity score | 1587 | 2299 | 1977 | 2972 | 2963 | 1672 |
Creativity score | 8570 | 8598 | 9178 | 6605 | 5095 | 5912 |
Entertainment score | 2839 | 3264 | 3232 | 3658 | 2698 | 3020 |
Computation score | 13675 | 14847 | 16495 | 14449 | 8866 | 15749 |
System storage score | 5279 | 4877 | 5171 | 4051 | 3944 | 2018 |
3DMark03 | ||||||
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 9033 | 9153 | 12635 | 12607 | 7929 | 9565 |
CPU Score | 1240 | 1553 | 1658 | 1615 | 1468 | 1544 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||||
HIGH | 3232 | 4224 | 4206 | 3786 | 3699 | 3685 |
LOW | 4804 | 6372 | 6190 | 5736 | 5685 | 5688 |
●Windowsアプリが快適に動くタブレットが欲しい人にお勧め
Windows 8タブレットには、消費電力が低くコストも安いAtom Z2760搭載機もあるが、本製品はCore i3搭載により、一般的なUltrabookに負けないぐらいのパフォーマンスを実現していることが最大の魅力となるだろう。
また、液晶の解像度も1,920×1,080ドットと高いため、Windowsストアアプリではない、従来のデスクトップアプリを使う際にも快適だ。標準でドッキングクレードルが附属するため、ワイヤレスキーボードやワイヤレスマウスと組み合わせれば、ノートPCや液晶一体型PCのような感覚で使うことも可能である。タブレットとしてはやや大きく重いが、パフォーマンスを重視する人にお勧めの製品だ。
(2012年 11月 27日)
[Text by 石井 英男]