ASUSTeK「UX50V」
~価格とパフォーマンスのバランスに優れる薄型ノート



ASUSTeK「UX50V」

発売中

価格:129,800円



 ASUSTeK Computerは、15.6型ワイド液晶を搭載する薄型ノート「UX50V」を発売した。先に取り上げている「U20A」と同様、CULV版プロセッサを搭載する薄型ボディの製品だが、こちらは大型液晶を搭載し、家庭内モバイルをターゲットとした製品となっている。

●スリムでスタイリッシュなボディ

 UX50Vの一番の特徴となるのは、スリムでスタイリッシュなボディだ。本体サイズは、385×257.8×18.6~28.6mm(幅×奥行き×高さ)。液晶サイズが大きいため、フットプリントはかなり大きいものの、厚さに関しては、12.1型液晶搭載のU20Aよりもわずかながら薄くなっている。フットプリントが大きいほど、内部パーツの配置にも余裕ができ、小型のノートPCよりも薄型化が容易になるとは思うが、それでもこのクラスのノートで厚さが30mmを切っているという点は、なかなかの魅力だ。

 本体デザインは、液晶を開いて横から見た姿が「天から舞い降りた蝶」のようなイメージでデザインされているそうだが、確かに洗練されたデザインという印象を受ける。ポート類のほとんどを本体背面に集め、左側面のメモリカードスロットとUSBコネクタをカバーで覆うとともに、右側面にスロットインタイプの光学式ドライブを採用することによって、普段は側面のポート類などが全く気にならないように工夫されており、見た目がスマートだ。また、鏡面加工が施された天板と、ボディ全体がほぼブラックで統一されている点などは、なかなかの高級感を感じさせる。ただ、天板は光沢感がかなり強いため、指紋の痕などがやや気になる場合がある。

 重量は、実測値で2,616g。特別軽いということはないものの、このクラスのノートPCとしてはまずまず軽量な部類に入る。さすがにこの重量では、モバイルノートというカテゴリーに含めるのは厳しいが、家庭内でリビングや書斎など使いたい場所に移動させる場合などは、かなり楽に持ち運べるはずだ。

本体天板。鏡面加工で光沢が強く、高級感があふれているフットプリントは、幅385mm×奥行き257.8mmと、かなり大きい本体正面。ラッチレス構造で先端が薄くなっており、Eee PC 1101HAのSeashellデザインを彷彿とさせる
左側面。厚さが18.6~28.6mmと、このクラスのノートPCとしてはかなりの薄型を実現。また、ポートが蓋で隠され、スマートな印象を受ける背面。ポート類のほとんどはこちらに集められている左側面。スロットインタイプの光学式ドライブ採用で、こちらもすっきりとした印象だ
液晶パネルを開いた状態。この状態が、「天から舞い降りた蝶」のイメージとなる底面。手前右にバッテリが見えるが、メモリスロットアクセス用の蓋などは一切なく、底面もすっきりとしている重量は、実測値で2,616g。飛び抜けて軽いわけではないが、このクラスのノートPCとしては十分軽い

●15.6型のWXGA液晶とGeForce G105M搭載で、優れた描画環境を実現
チップセット内蔵グラフィックス機能とGPUのGeForce G105Mは、電源オプションで切り替えの設定が行なえる

 液晶パネルは、1,366×768ドット表示対応の15.6型液晶を搭載。サイズを考えると、できればもう一段高い解像度のパネルを採用してもらいたかったところだが、使っていて大きな不満は感じない。バックライトはLEDで、輝度も高く、発色や文字の視認性も申し分ない。ただし、上下の視野角がやや狭く感じる点と、液晶表面の光沢感が非常に強く、外光の映り込みが激しい点はやや気になった。

 UX50Vのグラフィックス機能は、チップセットであるIntel GS45 Express内蔵の「GMA 4500MHD」に加え、NVIDIAの外部GPU「GeForce G105M」(ビデオメモリ512MB)を搭載する。GeForce G105Mは、GeForce G100Mシリーズの最下位モデルだが、このクラスのノートPCでは外部GPUを搭載しないことが多く、十分な優位点となる。

 ちなみに、チップセット内蔵グラフィックス機能と外部GPUを切り替えて利用する「Hybrid Graphics Technology」もサポートしており、Windows Vistaの「電源オプション」から、バッテリ駆動時やACアダプタ駆動時など、利用状況に応じてグラフィックス機能を切り替えるよう設定が可能。とはいえ、UX50Vをモバイル用途として活用することは少ないと思われるため、基本的にはGeForce G105Mの利用を優先させればいいだろう。

1,366×768ドット表示対応の15.6型ワイド液晶を搭載。アスペクト比は16:9。発色や視認性は申し分ないが、上下の視野角がやや狭く感じる表面の光沢が強く、天井の照明などがはっきりと映り込んでしまう液晶中央上部には、130万画素Webカメラを搭載

●バックライト搭載のアイソレーションキーボードを採用

 キーボードは、U20A同様、キーが独立したアイソレーションキーボードを採用。キーピッチは約19mmと十分な余裕があり、かなり扱いやすい。また、本体サイズが大きいため、右側にはテンキーも搭載されている。ただ、全体的にキーボードのたわみが大きいようだ。

 キーボードにはバックライトが盛り込まれており、暗い場所でも快適な利用が可能だ。このキーボードバックライトは、明るさセンサーによって周囲が暗ければ自動的にONとなる。もちろん、ユーザーが輝度を調節することも可能だ。

 キー配列に特に大きな問題はないものの、テンキーとの間隔がほとんど開けられておらず、カーソルキーの「→」キーがテンキー側に張り出し、テンキーの「0」キーが「2」キーの下に配置されている点は少々気になった。

 タッチパッドは、面積が広く、非常に扱いやすい。ただ、クリックボタンが左右一体型になっているため、クリックボタン中央部分での操作が難しい点は少々残念だ。

 ところで、UX50VではスピーカーとしてAltec Lansing製のステレオスピーカーを採用するとともに、SRS Premium Sound機能も標準で搭載している。外付けスピーカーの音質には負けるが、ノートPCのスピーカーとしては十分に高音質で、なかなか迫力のあるサウンドが再生できる。特にSRS Premium Soundを有効にすると、臨場感が大きく増し、DVDビデオの視聴時などには活躍してくれそうだ。

キーが独立したアイソレーションキーボードを搭載、サイズに余裕があり、右にはテンキーも搭載するキーピッチは約19mmと余裕があり扱いやすい。ただ、ただ、全体的にたわみが大きいキーボードにはバックライトを搭載し、暗い場所でも扱いやすい
キーボードバックライトを最大輝度で点灯させた状態こちらは、バックライトを切った状態タッチパッドは大型で扱いやすい。ただ、クリックボタンが左右一体型となっており、この部分はやや扱いづらい

●高速起動でWebアクセスなどが素早く行なえる「ASUS Express Gate」

 UX50Vには、ASUSTeK製マザーボードの一部に搭載されている「ASUS Express Gate」を搭載。ASUS Express Gateは、DeviceVMが開発したLinux OS「Splashtop」をベースとしており、高速起動でWebブラウザなどのアプリケーションが利用できるという点が特徴となっている。キーボード右上には、メインの電源ボタンに加え、ASUS Express Gate起動用の電源ボタンが用意されており、電源断の状態から約8秒ほどで起動し、各種アプリケーションが利用可能となる。登録されているアプリケーションは、Webブラウザやメディアプレーヤー、静止画ビューア、Skypeなど。マシンを素早く起動して、Webアクセスしたい場合などに重宝する機能だ。

 基本的には、メインで利用するOSではなく、メーラーなども搭載されていないため、簡易的な機能として位置付けられてはいるものの、Webアクセスなどを行なうだけであれば十分便利に活用できるため、マシンをシャットダウンしている状態から、すぐにWebアクセスを行ないたいといった場合に重宝するはずだ。

 ノートPCの場合は、Windows Vistaのスリープ状態を利用することも多く、その場合には短時間で復帰させられるため、ASUS Express Gateを利用するシーンはそれほど多くはないかもしれない。とはいえ、使用後にはシャットダウンしているという人にとって、魅力的な機能であることは間違いないだろう。

キーボード右上には、メインの電源ボタン(右)に加えて、「ASUS Express Gate」起動用の電源ボタン(左)が用意されているASUS Express Gateは、電源断から起動まで約8秒。素早く起動して、Webアクセスなどが行なえるWebブラウザやメディアプレーヤー、画像ビューア、Skypeなどのアプリケーションが登録されている

●コストパフォーマンスに優れ、家庭で利用するメインのノートPCとしておすすめ

 基本スペックは、CPUがCore 2 Duo SU9400(1.40GHz)、メインメモリがPC2-6400 DDR2 SDRAM 4GB、容量500GBのHDD、スロットインタイプのDVDスーパーマルチドライブをそれぞれ標準搭載。ネットワーク機能は、Gigabit Ethernet対応の有線LANと、IEEE 802.11b/g/nを搭載。用意されている端子類は、左側面にUSB 2.0×1とメモリカードリーダ、背面にUSB 2.0×2、HDMI、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、有線LAN、ヘッドフォン・マイクが用意されている。付属のACアダプタは、このクラスのノートPCとしてはかなり小型のものとなっており、本体と同時の持ち歩きもそれほど苦にならない。USB接続の光学式マウスと、専用のキャリングケースも付属する。

左側面には、メモリカードリーダーとUSB 2.0×1を用意。ポートは蓋で覆われ、使用しないときには外部から隠される背面には、ヘッドフォン・マイク端子、USB 2.0×、HDMI、アナログRGB、1000BASE-T対応有線LAN、電源コネクタが並ぶ右側面には、スロットインタイプのDVDスーパーマルチドライブが用意されている
付属のACアダプタはかなり小型で、本体と同時の持ち運びも楽に行なえるバッテリは、容量41Whのリチウムイオンバッテリが付属する
USB接続の光学式マウスも付属付属マウスは、USBケーブルを本体に巻き付け、底面に収納できるようになっている専用キャリングケースも付属している

 では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.0」と「PCMark05 Build 1.2.0」、「3DMark06 (Build 1.1.0)」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、カプコンの「Devil May Cry 4 ベンチマーク」の5種類。グラフィックス機能は、GeForce G105Mを利用した状態で計測している。

 結果を見ると、安定して優れたパフォーマンスを発揮していることがわかる。もちろん、より高性能なCPUやGPUを搭載するノートと比較すると見劣りするものの、外部GPUを搭載しない製品との比較では、特に3D描画能力がかなり優れている。最新の3Dゲームは厳しいが、軽めの3Dゲームであれば十分快適にプレイできるはずだ。また、HD動画再生支援機能の「PureVideo HD」や、GPGPU機能「CUDA」をサポートしているため、HD動画編集や再生などにも威力を発揮するだろう。

 ASUS UX50V
CPUCore 2 Duo U9400(1.40GHz)
チップセットIntel GS45 Express
ビデオチップGeForce G105M
メモリPC2-6400 DDR2 SDRAM 4GB
OSWindows Vista Home Premium SP2
PCMark Vantage Build 1.0.0
PCMark Suite2554
Memories Suite1663
TV and Movies Suite2079
Gaming Suite2250
Music Suite2605
Communications Suite2330
Productivity Suite2187
HDD Test Suite3400
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score4004
CPU Score3690
Memory Score3689
Graphics Score2895
HDD Score4854
3DMark06 Build 1.1.0
3DMark Score1880
SM2.0 Score736
HDR/SM3.0 Score665
CPU Score1288
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
Low6103
High4165
デビルメイクライ4(1280×720ドット 32bit)
RANKD
SCENE120.56
SCENE214.75
SCENE323.23
SCENE413.68
Windows Vistaパフォーマンス評価
プロセッサ4.6
メモリ4.9
グラフィックス3.6
ゲーム用グラフィックス4.7
プライマリハードディスク5.8

 次に、バッテリ駆動時間のチェックだ。まず、GeForce G105Mを動作させるとともに、省電力機能を切り、液晶輝度を最大に設定し、無線LANを動作させた状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)をWindows Media Player 11を利用して連続再生させた場合では、約1時間34分であった。モバイルPCとして考えるとかなり厳しい数字だが、家庭内モバイルであれば、フルパワーでこれだけのバッテリ駆動時間があれば十分で、特に不安は感じない。また、チップセット内蔵グラフィック機能に切り替え、液晶輝度を約40%の明るさに抑えるとともに、省電力機能も有効にした状態で、海人氏製作のバッテリベンチマークソフト「BBench V1.01」を利用し、Web巡回とキー入力をONにして測定してみたところ、約2時間39分だった。この数字から考えても、やはりモバイルPCとしての活用は厳しいと言える。

バッテリ駆動時間
GeForce G105M、省電力設定OFF1時間34分
GMA 4500MHD、省電力設定有効、バックライト輝度40%、BBench利用2時間39分

 価格的には、Core 2 Duo搭載で10万円を切るノートPCも存在しているため、絶対的な価格では他の製品に劣ると感じる部分もある。とはいえ、薄型でスタイリッシュなボディ、このクラスとしては比較的パワフルなスペックなど、他の製品に比べて魅力的な部分も多く、トータルで考えると十分コストパフォーマンスに優れる製品だ。サイズや重量から、本格的なモバイルPCとしての活用は厳しいものの、家庭内モバイル用途や、家庭用のメインノートPCとしておすすめしたい。

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(2009年 9月 7日)

[Text by 平澤 寿康]