~7型で249gの超軽量タブレット |
「MEDIAS TAB UL N-08D」は、OSにAndroid 4.0を搭載したNTTドコモの7型タブレット。「MEDIAS」シリーズとしては「MEDIAS TAB N-06D」に続く2機種目となるタブレットで、「UL(Ultra Light)」の名称が示すとおり、軽量/薄型が最大の特徴となっている。
●7型で249gという軽量化を実現N-08Dの本体は、最新技術のカーボンファイバーを採用することで、重量249g、厚さ7.9mmという軽量薄型化を実現。前モデルのN-06Dが約349g、同時期に秋モデルとして発表された7型タブレット「GALAXY Tab 7.7 Plus SC-01E」が約345gなので圧倒的な軽さだ。コミック1冊分というこの重量は、実際に非常に軽く手への負担が少ない。また、7.9mmという薄さは鞄の中にもしまいやすく、扱いやすいサイズだ。
スペック面では1.5GHzのデュアルコアCPU「MSM8960」を搭載、ストレージは16GB、メモリは1GB。ディスプレイはWXGA(800×1,280ドット)の7型TFT液晶だ。機能面ではNTTドコモの高速通信サービス「Xi」や最大10台までのテザリング、ワンセグに対応するが、おサイフケータイ、赤外線通信、防水は非対応。NTTドコモの放送サービス「NOTTV」にも対応しない。
前モデルと比較するとCPUは1.2GHzからスペックアップしたものの、N-06Dで対応していたおサイフケータイ、赤外線通信、防水、NOTTVは省略された形。赤外線通信やおサイフケータイはタブレットの利用シーンから考えると利用頻度は低そうだが、家庭内での利用を考えると防水対応でなくなった点は残念だ。
Bluetoothは省電力性を高めた4.0をサポート。なお、MEDIASシリーズは、カシオ製腕時計「G-SHOCK」の一部モデルとBluetooth連携する機能を備えており、9月6日には新たにiPhoneもサポートしたG-SHOCKの最新モデル「GB-5600AA/6900AA」が発表されたが、現時点でN-08Dは対応機種に含まれておらず、現状対応は未定だという。
本体インターフェイスは左側面にminiUIM(microSIM)カードスロットとクレードル装着用の充電端子、右側面にMicro USBポートとmicroSDカードスロット、ワンセグアンテナを搭載。microSDカードは最大32GBのmicroSDHCカードをサポートする。
本体上部は中央に電源ボタンとイヤフォンジャック、本体上部左側に音量ボタンを搭載。前面には有効画素数約200万画素のカメラ、背面には有効画素数約810万画素のカメラとスピーカーを備える。
ディスプレイ下部はMEDIASのロゴがあるのみで、ホームや戻るいった操作用の物理ボタンは一切備えていない。指を置くだけの十分な面積があるだけに物理ボタンは欲しい。電源ボタンは本体中央という点では左右どちら方向からも押しやすいが、縦長の7型では片手での操作が難しいため、こまめにスリープ解除したい時は両手操作か本体の持ち替え作業が必要になるのも個人的にはやや難ありだと感じた。
本体正面 | 本体底面はインターフェイスなし | 本体上部にイヤフォンジャック、電源ボタン、音量ボタン |
本体右側面にMicro USBポート、microSDカードスロット、ワンセグアンテナ | 本体左側面にminiUIMカードスロット、クレードル接続用の充電探知、ストラップホール | 本体背面にカメラとスピーカー |
●ホーム画面はdocomo Palette UI。レスポンスは良好
ホーム画面はNTTドコモの「docomo Palette UI」を採用。標準では3画面構成だが、2本指を縮めるスワイプ操作でホーム画面一覧が表示され、最大で12画面まで画面を追加できる。ホームアプリは「ホーム切替」アプリからAndroid標準の「ランチャー」に切り替えることもできる。
ホーム画面 | 最大12個まで画面を追加できる | アプリはグループ単位で表示 |
標準の「ランチャー」へ切り替えも可能 | ランチャー画面 | ランチャーはアプリを名前順に一覧表示 |
docomo Palette UIの場合、アプリケーション一覧は「最近使ったアプリ」、「ドコモサービス」、「基本機能」などのグループで分類されている。グループは任意に追加が可能なほか、設定の「きせかえ」からホーム画面のデザインを切り替えることもできる。きせかえは標準で5種類用意され、サイトから追加ダウンロードして設定することも可能だ。
画面下部にはアプリ一覧表示ボタンと4つのアプリが表示され、ステータスバー左下に戻る、ホーム、マルチタスクがそれぞれソフトキーで用意されている。本体ロック解除時の機能もAndroid 4.0標準のフェイスアンロックやパターン、パスワードなどで、独自の解除機能などは搭載されていない。
本体ロックがタッチ操作のみの場合は、ロック解除ボタンのほかにカメラやブラウザ、spモードメールなどのショートカットが用意されているが、これらショートカットはパターンやパスワードなどのセキュリティを設定すると利用できない。こうしたショートカットの仕様は多くのAndroidスマートフォンやタブレットで共通だが、実利用を考えるとセキュリティ設定は必須なだけに、セキュリティ設定していても利用できるショートカット機能でなければほとんど使わない機能になってしまうのが残念だ。
docomo Palette UIのきせかえ機能 | きせかえをダウンロードして増やすこともできる | ロック解除画面 |
1.5GHzデュアルコアの効果もあってホーム画面の動作は快適。docomo Palette UIはこれまでいくつかのスマートフォンで使ってきたが、正直「重い」との印象が強かった。しかし、N-08Dでは非常にスムーズな操作が可能だった。ホームアプリ自体の改善も図られているのだろうが、本体の物理的な軽さもあいまって全体的に軽快と感じる。
性能は各種ベンチマークアプリで計測したところ、「Quadrant Professional Edition」でクアッドコアCPU搭載の「Eee Pad TF201」、「HTC One X」よりも高い数値を残した。AnTuTu Benchmarkでは2D描画、3D描画ではトップクラスの数値となったものの、CPU性能はTF201の半分程度と、結果にバラつきがある。
Quadrandの測定結果 | AnTuTuの測定結果 |
AnTuTu Benchmark | MEDIAS TAB UL N-08D | Eee Pad TF700T | EeePad TF201 | EeePad Transformer TF101 | XOOM Wi-Fi TBi11M |
Android 3.2 | Android 3.2 | ||||
バージョン | v2.9.2 | v.2.9 | v.2.5.4 | v.2.5.4 | v2.5.4 |
RAMのパフォーマンス | 1215 | 2927 | 2217 | 808 | 818 |
CPUの整数性能 | 2241 | 4315 | 3722 | 1404 | 1425 |
CPUの浮動小数点演算性能 | 1087 | 3384 | 2922 | 1065 | 1109 |
2D描画 | 300 | 283 | 291 | 307 | 286 |
3D描画 | 1260 | 990 | 1189 | 872 | 872 |
データベースのIO | 490 | 360 | 345 | 325 | 332 |
SDカードの書込速度 | 150 | 58 | 146 | 150 | 104 |
SDカードの読込速度 | 190 | 68 | 192 | 181 | 158 |
トータルスコア | 6933 | 12385 | 11022 | 5112 | 5104 |
実際の操作感はQuadrantの結果に近く、キビキビと高速に動作。Androidにありがちなタッチしてから待たされる感覚がほとんどなく、クアッドコアCPU搭載タブレットにも劣らないと感じた。
【動画】実際に操作しているところ |
●かすかな振動で操作感を与える「HDハプティクス」
「ソニックCD 体験版」はキャラクターのアクションに応じてHDハプティクスが振動する |
軽量かつ薄型の本体に加え、N-08Dが特徴とするのが「HDハプティクス」機能。アプリやステータスバーなどをタッチするたびに本体が振動することで指先にクリック感を伝え、より直感的な操作が可能だという。
振動はホームボタンをタッチすると1回、ステータスバーでは振動が2回連続するなどタッチする状況によって異なる。HDハプティクス機能に対応したアプリも開発可能とのことで、本体に搭載されている「ソニックCD 体験版」では主人公のソニックがジャンプする、アイテムを取る、最高スピードに達するなどのアクションごとに振動するギミックを備えている。
タッチ操作ごとに振動するという機能は、同じNTTドコモの「らくらくスマートフォン」に近いが、らくらくスマートフォンは軽くタッチしただけではアプリが起動せず、強く押し込むことで振動すると共に機能を確定する、という仕組みであるのに対し、HDハプティクスはタッチした時点で振動する点で操作感は異なる。文字入力アプリの一部が搭載している、文字入力ごとに本体が振動する機能に近い。
従来の文字入力時の振動機能は文字入力のたび本体が大きく振動するため、連続で文字を入力するとバイブがブルブル震え続け、邪魔に感じてしまいやすいのだが、HDハプティクスは振動が穏やかなため振動がさほど気にならず、入力感の手応えを感じるという点ではちょうどよいバランスになっている。普段はすぐに文字入力の振動機能をオフにしてしまうのだが、N-08Dはオンにしておいた方がほどよい入力感で快適な文字入力が可能だった。
●「T9」含めて5種類の文字入力方式をサポート5種類の文字入力方式をサポート |
文字入力はATOKを標準搭載するほか、NEC製の携帯電話に搭載され愛用者も多い「T9入力」もサポート。加えてATOKの「ケータイ入力」、「ジェスチャー入力」、「フリック入力」、「2タッチ入力」と、5種類の文字入力方式を備えている。
ATOKは文字入力方式にT9方式を選択できるなど独自カスタマイズが行なわれているが、機能としては標準のATOKに近い。設定では表示されないものの、ATOKのタブレット向け入力もカスタマイズされた形で搭載されている。
標準のATOKでは画面が広いタブレット用に、テンキーの表示位置を左右どちらかに寄せる設定が可能だが、切り替えは左右のボタンをタッチする仕組みになっており、文字入力の際に誤ってタッチした瞬間にキーボードの位置が変化してしまうことが多々あった。N-08Dでは左右の切り替えがドラッグ操作になっているためこうした誤操作が起きにくい。
また、横表示の場合は右に日本語入力、左に10キー入力など、2つのキーボードを同時に表示することもできる。これは本家のATOKでもぜひサポートして欲しいインターフェイスだ。
文字入力画面 | T9入力画面 |
画面上部の矢印をドラッグしてキーボードを左右に寄せられる | 異なる10キーを左右に表示 |
●800万画素カメラは機能も充実。色味はややクセあり
カメラ機能 |
カメラは独自のカスタマイズが行なわれており、ホワイトバランスや露出補正といった基本機能に加え、手ブレ補正や顔検出オートフォーカス、シーンセレクトといった撮影機能を搭載。タッチ撮影にも対応しており、画面をタッチするだけでオートフォーカスからシャッターまでを行なってくれる。設定はタッチするたびにどのような機能かをガイド表示してくれるため分かりやすい。
800万画素の背面カメラは撮影には十分なスペックだが、色味はややクセがあり、晴天時の撮影では建物がジオラマ撮影のような色合いになった。室内撮影もかなり明るく撮れるため、食事が明るく飛んでしまうこともある。個人的にはもう少し明るさを抑えて撮影したいと感じた。
撮影サンプル。以下のサムネールをクリックすると、3,264×2,448ドットの写真を表示します | ||
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●ecoモード併用で長時間運用を実現
内蔵バッテリは3,100mAhで交換はできない。薄型化のためか前モデル「N-06D」の3,610mAhよりも500mAh近く少なくなっている。とはいえ持続時間は優秀で、画面輝度を最低にしてTwitterを3分単位で更新、さらにフルHD動画を再生し続けたて、5時間でバッテリ残量が残り少ないアラートが表示され、5時間半で空になった。本体サイズを考えれば十分優秀な結果だろう。
ecoモードも搭載しており、バッテリが一定の残量を切ったタイミングで画面の輝度や自動回転、バックライト、ワイヤレス関連機能などをオフにすることで持続時間を向上させられる。ecoモードでオフにする機能をカスタマイズできる「お好みecoモード」や、省電力に関連する機能の大部分をオフにする「しっかりecoモード」の設定が可能で、それぞれ電池残量や時間に応じてどのモードを起動するかを設定できる。
ecoモード | カスタマイズ可能な「お好みecoモード」 |
電池残量や時間によってecoモードの起動を設定できる | 電池残量設定 |
そこでecoモードを標準状態のままオート設定で測定したところ、6時間半近くでバッテリが空になった。ecoモードにすることで機能も制限されるため一長一短ではあるが、効果的に使えばバッテリ持続時間はより高められる。
充電は本体のMicro USBケーブル経由か、別売のクレードル「卓上ホルダN41」でも可能。別売の「ACアダプタN04」は急速充電に対応しており、NTTドコモの標準オプションである「ACアダプタ03」の1,000mAHよりも大きい1,800mAhでの出力が可能になっている。
別売のクレードル「卓上ホルダN41」 | 卓上ホルダN41接続時のイメージ | 背面にはMicro USBポート |
●「デュアルタブブラウザ」など独自アプリをインストール
N-08D向けの独自アプリとしては「デュアルタブブラウザ」、「メディアシェア」を搭載。どちらもプリインストールはされておらず、Google Playにログインした上で手動ダウンロードする必要がある。
デュアルタブブラウザはその名の通り、2つのWebサイトを同時に開くことができるブラウザだ。基本的な機能はAndroid標準ブラウザがベースとなっているが、右上のアイコンをタッチすることで表示中のサイトをもう1つのブラウザで立ち上げ、同時に表示できる。
2つのブラウザはそれぞれタブブラウザ機能を持っており、2画面それぞれで新たなタブを開いていくことも可能。タブを長押しして表示されるメニューから、タブをもう1つのブラウザへ移動することも可能だ。
7型のディスプレイは2画面のブラウザを表示しても十分に視認性が高く、TwitterやFacebookを利用しながらWebサイトを同時に閲覧するなど利便性は高い。ただし、2画面表示は縦表示のみとなっており、横表示では2画面表示を利用できない。2画面を同時に見比べる、という点では縦の視線移動よりも横の視線移動のほうがしやすいだけに、横画面での2画面表示も対応して欲しかった。
2つのサイトを同時に表示できるデュアルタブブラウザ | 機能はAndroid標準ブラウザベース |
サイト全体のプレビューも可能 | 横画面では2画面表示できず、2画面表示から切り替えた場合は自動で1画面に統合される |
メディアシェアは、N-08Dで撮影した画像や動画を無線LAN経由で他のユーザーと共有できる機能。残念ながらN-08Dが1台のため本機能を試すことができなかったが、Android 4.0搭載Wi-Fiダイレクト対応機種であればメディアシェアを利用できるという。ダウンロードできるアプリはクライアント機能のみで、画像を送るホスト機能はプリインストールされたN-08Dでのみ利用可能となっている。
N-08D独自アプリではないが、DLNAアプリ「DiXiM Player」もプリインストール。DTCP-IPに対応したHDDレコーダなどに録画したテレビ番組をネットワーク経由で再生できる。
便利ながらも今まではいくぶん地味な印象も強かったDTCP-IPだが、ソニーコンピュータエンタテインメントのネットワークレコーダ「nasne」の発売により、nasneに録画した番組再生など活用の幅も広がっている。とはいえ冒頭で触れた通り防水は非対応。お風呂テレビとしての利用法を考えると防水対応は欲しいところだ。
本体の画像や動画を共有できるメディアシェア | DTCP-IP対応の「DiXiM Player」 | nasneで録画した番組をDiXiM Playerで再生 |
●軽量かつ高い操作性で使いやすさは抜群
本体の軽量化、薄型化を追求しつつも、HDハプティクスによる操作感やタッチ操作のレスポンスといった操作性の良さも備えたMEDIAS TAB UL。7型は片手で使うには少々大きいサイズではあるものの、そのサイズでは圧倒的な軽さと操作性の高さで使いやすいタブレットに上がっている。
おサイフケータイや赤外線通信、防水、NOTTVなどが前モデルから省略されているが、こうした機能が不要であればMEDIAS TAB ULは非常に魅力的な選択肢だ。一方、こうした機能が必要であれば、CPUスペックは落ちるものの、「全部入り」端末でもある前モデルのN-06Dも良い選択肢になるだろう。
(2012年 9月 26日)
[Text by 甲斐 祐樹]