NEC「LaVie Touch LT550/FS」
~光学式ドライブ内蔵ドック付属のスレートPC



NECパーソナルコンピュータ
「LaVie Touch LT550/FS」

10月中旬 発売

価格:オープンプライス



 NECパーソナルコンピュータは、ピュアタブレットスタイルのスレートPC新モデル「LaVie Touch LT550/FS」を発表した。LaVie Touchは、この製品を投入するにあたって新たに用意されたブランド。従来のスレートPCとは異なる新しいコンセプトで開発した製品とし、光学式ドライブのドックやワイヤレスキーボード、マウスを添付し、スレートPCの枠を超えた使い方を提案している。今回、いち早く試用する機会を得たので、詳しく紹介していこう。

●本体は、オーソドックスなスレートPC

 ではまず、LaVie Touch LT550/FS(以下、LT550/FS)の本体をチェックしていこう。

 LT550/FS本体は、どちらかというとオーソドックスなスレートPCとなっている。本体のサイズは、263×183×15.8mm(幅×奥行き×高さ)。10.1型ワイド液晶を搭載するスレートPCとしては、特に大きいというわけではないものの、液晶周囲のベゼル部分がやや太く取られており、同じ10.1型ワイド液晶を搭載するAndroidタブレット、Motorola XOOMと比較すると一回り大きい。また、高さもXOOMより3mm弱高いため、全体的にかなり大柄なボディと感じる。

 それに対し重量は、公称で約729g、実測で709gと、スレートPCとしてはかなり軽い部類に入る。ただ、本体サイズがやや大きいこともあってか、実際に持ってみるとかなり軽く感じる。もちろん、軽いとは言っても、片手で持って使っていると疲れを感じる重さではあるが、重量が1kgを超える製品が多いスレートPCの中では、圧倒的に軽快に利用できる製品であることは間違いない。

 搭載する液晶パネルは、1,280×800ドット表示対応の10.1型液晶だ。パネルの方式はIPS方式のため、視野角が広く、本体の向きを変えても画面の見え方はほとんど変化しない。また、液晶表面は非光沢処理が施されているため、外光の映り込みを気にすることなく利用でる。ただ、光沢パネルに比べると、発色の鮮やかさはやや劣るように感じた。

 タッチパネルは静電容量方式を採用し、マルチタッチにも対応。非光沢処理のためパネル表面はサラッとした触感で、タッチ操作も軽快に行なえる。

本体正面。1,280×800ドット表示対応の10.1型液晶を搭載。IPSパネル採用で視野角が広い。表面は非光沢処理のため、光沢パネルに比べると発色の鮮やかさは劣るフットプリントは263×182mm(幅×奥行き)。同サイズの液晶を搭載するMotorola XOOMと比較すると、一回り大きい高さは15.8mm。Motorola XOOMより2.9mm厚い
下部側面。左に電源コネクタやドック接続コネクタが見える左側面。高さは手前から奥まで均一だ上部側面。こちらにはボタンやコネクタは用意されない
右側面。こちらも電源ボタンなどがあるだけですっきりしている重量は実測で709g。スレートPCの中ではかなり軽い部類に入る

●光学式ドライブ内蔵ドック「マルチステーション」が付属

 LT550/FSには、DVDスーパーマルチドライブを内蔵する専用ドック「マルチステーション」が標準で付属している。また、ワイヤレスキーボードとワイヤレスマウスも付属しており、それらを併用することで、LT550/FSをスレートPCとしてだけでなく、通常のPCに近い使い勝手で利用できるように配慮されている。この点が、従来のスレートPCとは大きくコンセプトの異なる部分だ。

 これまでスレートPCでは、キーボードやマウスを利用した操作性はそれほど重要視されてこなかったように思う。それは、これまでのスレートPCはビジネスユーザーをターゲットにするとともに、タッチ操作に最適化された専用ツールでの利用が中心だったからだろう。ただ、一般ユーザーが利用する場合には、一般ソフトの利用はもちろん、Webアクセスなど文字入力を多用する利用シーンも多くなる。その場合は、当然キーボードやマウスが利用できた方が快適だ。そういった意味でも、一般ユーザーをターゲットとするLT550/FSで、マルチステーションやワイヤレスキーボード、ワイヤレスマウスを標準で付属させたのは、当然の流れと言える。

 マルチステーションは、手前側に溝が用意され、そこにLT550/FS本体を取り付けることで、LT550/FSを立てかけて利用できるようになっている。また、右側面にはDVDスーパーマルチドライブを搭載し、左側面にはUSB 2.0ポートが2ポート用意されている。ちなみに、2ポートあるUSBポートのうち1つには、標準で付属するワイヤレスキーボードとワイヤレスマウスのレシーバ用になるため、利用できるのは1ポートのみとなる。

 マルチステーションのフットプリントは、263×200mm(幅×奥行き)と、DVDスーパーマルチドライブを内蔵しているため若干奥行きが長い。また、手前にキーボードやマウスを置く場所も確保する必要があるため、ノートPCを利用する場合よりも設置スペースをやや大きく取る必要がある。

 スレートPCであれば、ドックがなくてもキーボードやマウス、光学式ドライブの利用は難しくない。しかし、実際に一般的なスレートPCに光学式ドライブやキーボード、マウスを接続して利用しようとしても、本体を使いやすい角度で固定できないと、使い勝手は思ったほど向上しない場合が多い。それに対しLT550/FSでは、マルチステーションを利用することで、若干後方に傾けた使いやすい角度に本体を固定でき、まさに通常のPCと同等の感覚で利用可能となる。もちろん、本体のみを持ち出し、好きな場所でタッチ操作のみで利用することも可能。利用シーンに応じて好きなスタイルで利用できるという点は、一般ユーザーにとって大きな魅力となるはずだ。

標準で付属するマルチステーション。手前の溝の部分に本体を置き、立てかけて利用できる本体を置いた様子。やや後方に傾いた位置で固定される本体背面を支えるスタンドによって、安定して設置できる
マルチステーション右側面には、DVDスーパーマルチドライブが内蔵されている左側面にはUSB 2.0ポートが2ポート用意。うち1つには付属のワイヤレスキーボード・マウス用のレシーバが取り付けられる背面には、ACアダプタを接続する電源コネクタがある
付属のワイヤレスキーボード。キーとキーの間が離れたアイソレーションタイプのキーボードで、テンキーはないがピッチは19mmフルピッチで扱いやすいキーボードは後部が高くなっており、角度が付いて使いやすいワイヤレス光学マウスも標準で付属している

●タブレット向け「Oak Trail」を採用

 CPUには、タブレット向けAtomシリーズ「Atom Z670」を採用している。動作クロック1.5GHzのシングルコアCPUで、Hyper-Threadingテクノロジーに対応しているため2スレッド処理が可能。チップセットは、Intel SM35 Expressを採用。コードネーム「Oak Trail」でおなじみのプラットフォームだ。メインメモリは、PC2-6400 DDR2 SDRAMを2GBオンボードで搭載。増設は不可能。グラフィックス機能は、CPU内蔵のIntel GMA 600を利用。内蔵されるHD動画再生支援機能により、1080p動画もスムーズに再生可能だ。

 内蔵ストレージは、容量64GBのSSDを搭載。デバイスマネージャで確認したところ、東芝製の「THNSNB064GMCJ」が採用されていた。

 側面のポート類は、左側面にヘッドフォン出力とマイク入力、USB 2.0ポート×2、SDカードスロット、HDMI出力を用意。これらポートは、マルチステーションに本体を取り付けた場合にも同時利用が可能。下部側面には、電源コネクタとマルチステーションとの接続用コネクタが用意されている。

 右側面には、電源ボタンとログオンボタン、無線機能のON/OFFスイッチを用意。さらに、液晶面右ベゼル部には、画面回転ボタンを配置。液晶上部中央には、約131万画素のWebカメラとステレオマイクを搭載している。

 無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANと、Bluetooth 2.1+EDRを標準搭載。側面のスイッチで、これら無線機能の動作をON/OFFできる点は便利だ。

 バッテリは、容量3,160mAhのリチウムイオンバッテリを採用。このバッテリは着脱式で、本体背面部に取り付けられている。

左側面には、ヘッドフォン出力、マイク入力、USB 2.0×2ポート、SDカードスロット、HDMI出力を用意下部側面には、電源コネクタとドック接続用コネクタを用意右側面には、電源ボタンとログオンボタン、内蔵無線機能のON/OFFボタンを配置
液晶面右側には、各種インジケーターと画面回転ボタンを配置液晶上部中央には約131万画素のWebカメラを搭載。左右の穴はステレオマイクだ底面部には容量3,160mAhの着脱式リチウムイオンバッテリを搭載する
ACアダプタは比較的小型のものが付属しているACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで実測219.5gだった

●タッチ操作で快適に利用できるツールを多数搭載

 LT550/FSには、タッチ操作でも快適に利用できるように、オリジナルのソフトがいくつかプリインストールされている。その中でも特に注目したいのが、セカンドファクトリー製の「ExTOUCH」というツールだ。

 このツールは標準でデスクトップ右側に常駐しており、登録したアプリケーションを起動するランチャーとして動作するだけでなく、アイコンをタップすることでさまざまな機能を呼び出せる。また、独自の機能として用意されているソフトウェアキーボードは、フリック入力に対応したコンパクトなデザインとなっており、他のソフトのウィンドウの邪魔にならず軽快な文字入力が可能だ。

 他にも、ゲームなどタッチ操作で利用できるソフトが複数プリインストールされている。通常のPCと同様の感覚で利用できるとはいえ、基本的にはスレートPCであり、タッチ操作で快適に利用できるツールやソフトがプリインストールされている点は大いに歓迎できる。

デスクトップ右には、セカンドファクトリーの「ExTOUCH」が常駐。ランチャーとしてだけでなく、タッチ操作で便利に利用できる独自ツールも満載ExTOUCHが用意するソフトウェアキーボードは、スマートフォンなどでおなじみのフリック入力に対応。他のソフトのウィンドウを隠すことなく軽快な文字入力が可能だ
内蔵ストレージの一部領域を共有ドライブとして確保し、ホームネットワーク経由で他のPCと手軽にデータのやりとりが行なえる「Network Duet」も標準搭載するピークシフト設定ツールを利用すれば、あらかじめ設定した期間や時間でAC駆動を抑制することが可能だ

●通常のPC同様にも利用できるスレートPCを探している人にオススメ

 では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類。また、比較用として、富士通の「LIFEBOOK TH40/D」とオンキヨーの「TW317A7」、ASUSTeK Computerの「Eee PC T101MT」の結果も加えてある。

 LaVie Touch LT550/FSLIFEBOOK TH40/DTW317A7Eee PC T101MT
CPUAtom Z670 (1.50GHz動作)Atom Z670 (1.50GHz動作)Atom N450 (1.66GHz動作)Atom N450 (1.66GHz動作)
ビデオチップIntel GMA 600Intel GMA 600Intel GMA 3150Intel GMA 3150
メモリ2GB1GB2GB2GB
OSWindows 7 Home Premium SP1Windows 7 Home Premium SP1Windows 7 Home PremiumWindows 7 Home Premium
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score1542112614321617
CPU Score107798712041420
Memory Score1614148221402419
Graphics Score422372433528
HDD Score10831256949574933
HDBENCH Ver3.40beta6
All48452257293699841339
CPU:Integer74616742489018096256
CPU:Float54452539126356870057
MEMORY:Read44938440665016255263
MEMORY:Write44716435775029555660
MEMORY:Read&Write78013760298851897660
VIDEO:Recitangle2161519675948142
VIDEO:Text2913233491863580
VIDEO:Ellipse2180208023163092
VIDEO:BitBlt448677182
VIDEO:DirectDraw231314
DRIVE:Read133681321706759064321
DRIVE:Write28531262493664960735
DRIVE:RandomRead78108114743645422475
DRIVE:RandomWrite2395313422774924491
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
LOW96993411251250
Windowsエクスペリエンスインデックス
プロセッサ2.12.02.32.3
メモリ4.14.14.64.4
グラフィックス2.92.93.13.1
ゲーム用グラフィックス3.03.03.03.0
プライマリハードディスク5.94.45.25.7

 結果を見ると、テストによって比較機種より優れる部分や劣る部分が入り交じっている。CPUパワーに関しては、動作クロックに優れるAtom N450を搭載する2機種に劣っているが、搭載されているSSDのパフォーマンスが比較的優れるため、PCMark05では総合結果を押し上げている。ただ、ベンチマークの結果は多少違いは見られるが、もともとAtomシリーズはそれほど処理能力が高くはないため、パフォーマンスはほぼ横並びと考えていいだろう。

 実際に使ってみても、やはり動作は軽快と言うほどではなく、ソフトの動作など、やや遅いと感じる場面も少なくない。それでも、メインメモリが標準で2GB搭載されていることに加え、比較的高速なSSDを採用していることで、同クラスのスレートPCの中ではかなり快適に利用できる。OSやソフトの起動は比較的高速で、長時間待たされるといった感覚はない。また、手に持って利用している場合でも、HDD搭載モデルのような、ディスク回転に伴うわずかな振動が手に伝わるということもないし、振動でデータが破損するといった不安もない。持ち歩いて利用する機会の多いスレートPCだからこそ、こういった部分も魅力となるはずだ。

 次にバッテリ駆動時間だ。Windows 7の省電力設定をNECオリジナルの「eco」モードに設定するとともに、無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約8時間35分の駆動を確認した。公称の10.6時間には届いていないものの、十分に長時間の駆動が可能と考えていい。これなら、外出先に持ち出す場合でも1日は十分に利用可能なはずだ。当然、家庭内モバイル用途としても、バッテリ残量をほぼ気にせず利用できる。

バッテリ駆動時間
省電力設定:オリジナル「eco」、BBench約8時間35分

 LT550/FSは、単体のスレートPCとしてはオーソドックスな仕様だが、マルチステーションの存在によって、他のスレートPCに対する差別化がうまく実現できていると感じた。確かに、ドックとワイヤレスキーボード、マウスが付属しているだけという見方もあるかもしれないが、それによって、さまざまな部分に妥協しながら使わなければならないというスレートPCの欠点がうまく解消できている。性能はそれなりなので、同価格帯のノートPCとの比較では見劣りするのも事実だが、本体のみを持ち歩いてタッチ操作で利用できるという点は、ノートPCには真似のできない特徴で、この点に魅力を感じるのであれば、充分にオススメできる。最近では、OSにAndroidを採用するタブレット製品が多数登場しているが、タブレットデバイスでも普段Windowsで利用しているソフトがそのまま動いた方がいいと考えている人にとって、魅力的な存在となるはずだ。

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(2011年 9月 29日)

[Text by 平澤 寿康]