~光学式ドライブ内蔵ドック付属のスレートPC |
NECパーソナルコンピュータは、ピュアタブレットスタイルのスレートPC新モデル「LaVie Touch LT550/FS」を発表した。LaVie Touchは、この製品を投入するにあたって新たに用意されたブランド。従来のスレートPCとは異なる新しいコンセプトで開発した製品とし、光学式ドライブのドックやワイヤレスキーボード、マウスを添付し、スレートPCの枠を超えた使い方を提案している。今回、いち早く試用する機会を得たので、詳しく紹介していこう。
●本体は、オーソドックスなスレートPCではまず、LaVie Touch LT550/FS(以下、LT550/FS)の本体をチェックしていこう。
LT550/FS本体は、どちらかというとオーソドックスなスレートPCとなっている。本体のサイズは、263×183×15.8mm(幅×奥行き×高さ)。10.1型ワイド液晶を搭載するスレートPCとしては、特に大きいというわけではないものの、液晶周囲のベゼル部分がやや太く取られており、同じ10.1型ワイド液晶を搭載するAndroidタブレット、Motorola XOOMと比較すると一回り大きい。また、高さもXOOMより3mm弱高いため、全体的にかなり大柄なボディと感じる。
それに対し重量は、公称で約729g、実測で709gと、スレートPCとしてはかなり軽い部類に入る。ただ、本体サイズがやや大きいこともあってか、実際に持ってみるとかなり軽く感じる。もちろん、軽いとは言っても、片手で持って使っていると疲れを感じる重さではあるが、重量が1kgを超える製品が多いスレートPCの中では、圧倒的に軽快に利用できる製品であることは間違いない。
搭載する液晶パネルは、1,280×800ドット表示対応の10.1型液晶だ。パネルの方式はIPS方式のため、視野角が広く、本体の向きを変えても画面の見え方はほとんど変化しない。また、液晶表面は非光沢処理が施されているため、外光の映り込みを気にすることなく利用でる。ただ、光沢パネルに比べると、発色の鮮やかさはやや劣るように感じた。
タッチパネルは静電容量方式を採用し、マルチタッチにも対応。非光沢処理のためパネル表面はサラッとした触感で、タッチ操作も軽快に行なえる。
右側面。こちらも電源ボタンなどがあるだけですっきりしている | 重量は実測で709g。スレートPCの中ではかなり軽い部類に入る |
●光学式ドライブ内蔵ドック「マルチステーション」が付属
LT550/FSには、DVDスーパーマルチドライブを内蔵する専用ドック「マルチステーション」が標準で付属している。また、ワイヤレスキーボードとワイヤレスマウスも付属しており、それらを併用することで、LT550/FSをスレートPCとしてだけでなく、通常のPCに近い使い勝手で利用できるように配慮されている。この点が、従来のスレートPCとは大きくコンセプトの異なる部分だ。
これまでスレートPCでは、キーボードやマウスを利用した操作性はそれほど重要視されてこなかったように思う。それは、これまでのスレートPCはビジネスユーザーをターゲットにするとともに、タッチ操作に最適化された専用ツールでの利用が中心だったからだろう。ただ、一般ユーザーが利用する場合には、一般ソフトの利用はもちろん、Webアクセスなど文字入力を多用する利用シーンも多くなる。その場合は、当然キーボードやマウスが利用できた方が快適だ。そういった意味でも、一般ユーザーをターゲットとするLT550/FSで、マルチステーションやワイヤレスキーボード、ワイヤレスマウスを標準で付属させたのは、当然の流れと言える。
マルチステーションは、手前側に溝が用意され、そこにLT550/FS本体を取り付けることで、LT550/FSを立てかけて利用できるようになっている。また、右側面にはDVDスーパーマルチドライブを搭載し、左側面にはUSB 2.0ポートが2ポート用意されている。ちなみに、2ポートあるUSBポートのうち1つには、標準で付属するワイヤレスキーボードとワイヤレスマウスのレシーバ用になるため、利用できるのは1ポートのみとなる。
マルチステーションのフットプリントは、263×200mm(幅×奥行き)と、DVDスーパーマルチドライブを内蔵しているため若干奥行きが長い。また、手前にキーボードやマウスを置く場所も確保する必要があるため、ノートPCを利用する場合よりも設置スペースをやや大きく取る必要がある。
スレートPCであれば、ドックがなくてもキーボードやマウス、光学式ドライブの利用は難しくない。しかし、実際に一般的なスレートPCに光学式ドライブやキーボード、マウスを接続して利用しようとしても、本体を使いやすい角度で固定できないと、使い勝手は思ったほど向上しない場合が多い。それに対しLT550/FSでは、マルチステーションを利用することで、若干後方に傾けた使いやすい角度に本体を固定でき、まさに通常のPCと同等の感覚で利用可能となる。もちろん、本体のみを持ち出し、好きな場所でタッチ操作のみで利用することも可能。利用シーンに応じて好きなスタイルで利用できるという点は、一般ユーザーにとって大きな魅力となるはずだ。
●タブレット向け「Oak Trail」を採用
CPUには、タブレット向けAtomシリーズ「Atom Z670」を採用している。動作クロック1.5GHzのシングルコアCPUで、Hyper-Threadingテクノロジーに対応しているため2スレッド処理が可能。チップセットは、Intel SM35 Expressを採用。コードネーム「Oak Trail」でおなじみのプラットフォームだ。メインメモリは、PC2-6400 DDR2 SDRAMを2GBオンボードで搭載。増設は不可能。グラフィックス機能は、CPU内蔵のIntel GMA 600を利用。内蔵されるHD動画再生支援機能により、1080p動画もスムーズに再生可能だ。
内蔵ストレージは、容量64GBのSSDを搭載。デバイスマネージャで確認したところ、東芝製の「THNSNB064GMCJ」が採用されていた。
側面のポート類は、左側面にヘッドフォン出力とマイク入力、USB 2.0ポート×2、SDカードスロット、HDMI出力を用意。これらポートは、マルチステーションに本体を取り付けた場合にも同時利用が可能。下部側面には、電源コネクタとマルチステーションとの接続用コネクタが用意されている。
右側面には、電源ボタンとログオンボタン、無線機能のON/OFFスイッチを用意。さらに、液晶面右ベゼル部には、画面回転ボタンを配置。液晶上部中央には、約131万画素のWebカメラとステレオマイクを搭載している。
無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANと、Bluetooth 2.1+EDRを標準搭載。側面のスイッチで、これら無線機能の動作をON/OFFできる点は便利だ。
バッテリは、容量3,160mAhのリチウムイオンバッテリを採用。このバッテリは着脱式で、本体背面部に取り付けられている。
ACアダプタは比較的小型のものが付属している | ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで実測219.5gだった |
●タッチ操作で快適に利用できるツールを多数搭載
LT550/FSには、タッチ操作でも快適に利用できるように、オリジナルのソフトがいくつかプリインストールされている。その中でも特に注目したいのが、セカンドファクトリー製の「ExTOUCH」というツールだ。
このツールは標準でデスクトップ右側に常駐しており、登録したアプリケーションを起動するランチャーとして動作するだけでなく、アイコンをタップすることでさまざまな機能を呼び出せる。また、独自の機能として用意されているソフトウェアキーボードは、フリック入力に対応したコンパクトなデザインとなっており、他のソフトのウィンドウの邪魔にならず軽快な文字入力が可能だ。
他にも、ゲームなどタッチ操作で利用できるソフトが複数プリインストールされている。通常のPCと同様の感覚で利用できるとはいえ、基本的にはスレートPCであり、タッチ操作で快適に利用できるツールやソフトがプリインストールされている点は大いに歓迎できる。
●通常のPC同様にも利用できるスレートPCを探している人にオススメ
では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類。また、比較用として、富士通の「LIFEBOOK TH40/D」とオンキヨーの「TW317A7」、ASUSTeK Computerの「Eee PC T101MT」の結果も加えてある。
LaVie Touch LT550/FS | LIFEBOOK TH40/D | TW317A7 | Eee PC T101MT | |
---|---|---|---|---|
CPU | Atom Z670 (1.50GHz動作) | Atom Z670 (1.50GHz動作) | Atom N450 (1.66GHz動作) | Atom N450 (1.66GHz動作) |
ビデオチップ | Intel GMA 600 | Intel GMA 600 | Intel GMA 3150 | Intel GMA 3150 |
メモリ | 2GB | 1GB | 2GB | 2GB |
OS | Windows 7 Home Premium SP1 | Windows 7 Home Premium SP1 | Windows 7 Home Premium | Windows 7 Home Premium |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||||
PCMark Score | 1542 | 1126 | 1432 | 1617 |
CPU Score | 1077 | 987 | 1204 | 1420 |
Memory Score | 1614 | 1482 | 2140 | 2419 |
Graphics Score | 422 | 372 | 433 | 528 |
HDD Score | 10831 | 2569 | 4957 | 4933 |
HDBENCH Ver3.40beta6 | ||||
All | 48452 | 25729 | 36998 | 41339 |
CPU:Integer | 74616 | 74248 | 90180 | 96256 |
CPU:Float | 54452 | 53912 | 63568 | 70057 |
MEMORY:Read | 44938 | 44066 | 50162 | 55263 |
MEMORY:Write | 44716 | 43577 | 50295 | 55660 |
MEMORY:Read&Write | 78013 | 76029 | 88518 | 97660 |
VIDEO:Recitangle | 2161 | 5196 | 7594 | 8142 |
VIDEO:Text | 2913 | 2334 | 9186 | 3580 |
VIDEO:Ellipse | 2180 | 2080 | 2316 | 3092 |
VIDEO:BitBlt | 44 | 86 | 77 | 182 |
VIDEO:DirectDraw | 2 | 3 | 13 | 14 |
DRIVE:Read | 133681 | 32170 | 67590 | 64321 |
DRIVE:Write | 28531 | 26249 | 36649 | 60735 |
DRIVE:RandomRead | 78108 | 11474 | 36454 | 22475 |
DRIVE:RandomWrite | 23953 | 13422 | 7749 | 24491 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
LOW | 969 | 934 | 1125 | 1250 |
Windowsエクスペリエンスインデックス | ||||
プロセッサ | 2.1 | 2.0 | 2.3 | 2.3 |
メモリ | 4.1 | 4.1 | 4.6 | 4.4 |
グラフィックス | 2.9 | 2.9 | 3.1 | 3.1 |
ゲーム用グラフィックス | 3.0 | 3.0 | 3.0 | 3.0 |
プライマリハードディスク | 5.9 | 4.4 | 5.2 | 5.7 |
結果を見ると、テストによって比較機種より優れる部分や劣る部分が入り交じっている。CPUパワーに関しては、動作クロックに優れるAtom N450を搭載する2機種に劣っているが、搭載されているSSDのパフォーマンスが比較的優れるため、PCMark05では総合結果を押し上げている。ただ、ベンチマークの結果は多少違いは見られるが、もともとAtomシリーズはそれほど処理能力が高くはないため、パフォーマンスはほぼ横並びと考えていいだろう。
実際に使ってみても、やはり動作は軽快と言うほどではなく、ソフトの動作など、やや遅いと感じる場面も少なくない。それでも、メインメモリが標準で2GB搭載されていることに加え、比較的高速なSSDを採用していることで、同クラスのスレートPCの中ではかなり快適に利用できる。OSやソフトの起動は比較的高速で、長時間待たされるといった感覚はない。また、手に持って利用している場合でも、HDD搭載モデルのような、ディスク回転に伴うわずかな振動が手に伝わるということもないし、振動でデータが破損するといった不安もない。持ち歩いて利用する機会の多いスレートPCだからこそ、こういった部分も魅力となるはずだ。
次にバッテリ駆動時間だ。Windows 7の省電力設定をNECオリジナルの「eco」モードに設定するとともに、無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約8時間35分の駆動を確認した。公称の10.6時間には届いていないものの、十分に長時間の駆動が可能と考えていい。これなら、外出先に持ち出す場合でも1日は十分に利用可能なはずだ。当然、家庭内モバイル用途としても、バッテリ残量をほぼ気にせず利用できる。
バッテリ駆動時間 | |
省電力設定:オリジナル「eco」、BBench | 約8時間35分 |
LT550/FSは、単体のスレートPCとしてはオーソドックスな仕様だが、マルチステーションの存在によって、他のスレートPCに対する差別化がうまく実現できていると感じた。確かに、ドックとワイヤレスキーボード、マウスが付属しているだけという見方もあるかもしれないが、それによって、さまざまな部分に妥協しながら使わなければならないというスレートPCの欠点がうまく解消できている。性能はそれなりなので、同価格帯のノートPCとの比較では見劣りするのも事実だが、本体のみを持ち歩いてタッチ操作で利用できるという点は、ノートPCには真似のできない特徴で、この点に魅力を感じるのであれば、充分にオススメできる。最近では、OSにAndroidを採用するタブレット製品が多数登場しているが、タブレットデバイスでも普段Windowsで利用しているソフトがそのまま動いた方がいいと考えている人にとって、魅力的な存在となるはずだ。
(2011年 9月 29日)
[Text by 平澤 寿康]