~クアッドコアのAMD A6-3400Mを搭載した15.6型ノート |
ASUSTeK Computerから登場した「K53TA」は、CPUとしてAMD A6-3400Mを搭載した15.6型ノートPCである。AMD A6-3400Mは、開発コードネーム「Llano」と呼ばれていたプロセッサであり、CPUとGPUを1つのダイに統合した製品だ。AMDは、CPUとGPUを統合したプロセッサをFusion APUと呼んでおり、AMD Aシリーズは、メインストリーム向け製品として開発された製品である。
AMD Aシリーズは、ノート向け製品とデスクトップ向け製品があり、A6-3400Mは、クアッドコアCPUと320 SPのGPUコアを統合したノート向けシリーズの中ではミドルレンジとなる製品だ。
●統合型CPUと単体GPUを搭載するデュアル・グラフィックス構成を採用K53TAは、Fusion CPUであるAMD A6-3400Mと、単体GPUのRadeon HD 6650Mを搭載したデュアルグラフィックス構成のノートPCでありながら、希望小売価格49,800円と低価格なことが魅力だ。ボディカラーはダークブラウンで、天板とパームレストの表面には、細かなテクスチャが施されており、手のひらを載せたときの感触もよい。本体のサイズは、378×253×33~35mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約2.6kgである。
プロセッサには、前述した通り、AMD A6-3400Mを搭載する。AMD A6-3400Mは、クアッドコアCPUで、定格の動作クロックは1.4GHzとやや低いが、Turbo COREと呼ばれる自動オーバークロック機能を備えており、TDP内で最大2.3GHzで動作する。
一方AMD Aシリーズ用のチップセットは、AMD A60MとAMD A70Mの2種類があるが、K53TAでは、上位となるAMD A70Mが搭載されている。AMD A70Mは、標準でUSB 3.0をサポートしていることが特徴だ。
メモリは標準で4GB実装されているが、SO-DIMMスロットは2基用意されており、出荷時の状態で1基空いている。メモリは、最大8GBまで増設が可能だ。HDD容量は500GBで、TVチューナを搭載していないスタンダードなノートPCとしては十分であろう。
AMD A6-3400Mは、Radeon HD 6520Gと呼ばれるGPUコアを内蔵しており、SP数は320、GPUクロックは400MHzとなっている。統合型CPUとしては高い描画性能を誇るが、K53TAではさらに、単体GPUのRadeon HD 6650Mも搭載しており、内蔵GPUとの負荷分散を行なう「デュアル/グラフィックス」に対応する。なお、Radeon HD 6520GとRadeon HD 6650Mの組み合わせは、Radeon HD 6720G2というブランドで呼ばれる。
また、光学ドライブとしては、DVDスーパーマルチドライブを搭載している。実売5万円を切る製品ながら、基本スペックは充実しているといえる。
光学ドライブとして、右側面にDVDスーパーマルチドライブが搭載されている | デバイスマネージャーを開いたところ。クアッドコアなのでOSからは4つCPUを搭載しているように見える。ディスプレイアダプターの項目にも2つのGPUが表示されている |
●テンキー付きキーボードを採用
液晶は15.6型ワイドで、解像度は1,366×768ドットである。光沢タイプの液晶なので、コントラストは高いが、外光はやや映り込みやすい。液晶上部には、30万画素のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
キーボードはテンキーを含む全107キーで、主要キーのキーピッチは約19mmと十分だが、「る」や「め」などの右側の一部のキーのピッチがやや狭くなっている。また、最上段のキーの縦が短いことがやや気になった。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載。シンプルなパッドで、パッド表面がツルツルしていることがやや気になったが、操作性自体は良好であった。
●USB 3.0やHDMI出力を搭載
インターフェイスもこのクラスのノートPCとしては充実している。USB 3.0対応チップセットを採用しているため、USB 2.0×2とUSB 3.0を備えるほか、HDMI出力やミニD-Sub15ピン、有線LANなども備えている。また、SDメモリーカードとメモリースティックPROなどに対応したカードリーダも搭載する。
ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n準拠の無線LANをサポートする。Fn+F2キーが無線LANオン/オフスイッチになっており、ワンタッチで無線LANを有効/無効にできるのは便利だ。
バッテリは10.8V/5,200mAhの6セル仕様で、公称約6.1時間の駆動が可能だ。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、5時間11分の駆動であった。本製品はモバイル向けのマシンではないが、バッテリ駆動時間は比較的長い。ACアダプタのサイズは、このクラスの製品としては標準的である。
ACアダプタは、このクラスのノートPC用としては標準的なサイズだ | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
●デュアルグラフィックスでこのクラスとしては高い3D描画性能を実現
本製品は、CPUとして最新のAMD A6-3400Mを搭載しており、そのパフォーマンスが気になるところだ。そこで、参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。
比較用として、東芝「dynabook Qosmio T851/D8CR」、日本HP「HP Pavilion g6-1100AU」、レノボ「IdeaPad Y570」、富士通「LIFEBOOK AH52/DA」、NEC「LaVie S LS550/ES」の値も掲載した。
【表】ベンチマーク結果K53TA | dynabook Qosmio T851/D8CR | HP Pavilion g6-1100AU | IdeaPad Y570 | LIFEBOOK AH52/DA | LaVie S LS550/ES | |
CPU | AMD A6-3400M (1.4GHz) | Core i5-2410M (2.3GHz) | AMD A4-3300M (1.9GHz) | Core i7-2630QM (2.0GHz) | Pentium B940 (2GHz) | Core i5-2410M (2.30GHz) |
ビデオチップ | Radeon HD 6720G2 | GeForce GT 540M | Radeon HD 6480G | GeForce GT 555M | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics 3000 |
PCMark05 | ||||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A | 5165 | N/A |
CPU Score | 4612 | 8087 | 4733 | 9268 | 5043 | 7709 |
Memory Score | 3394 | 6965 | 3878 | 8964 | 6743 | 8588 |
Graphics Score | 4142 | 7241 | 4055 | 8157 | 3001 | 4580 |
HDD Score | 4627 | 4845 | 5646 | 17644 | 5614 | 5616 |
PCMark Vantage 64bit | ||||||
PCMark Score | 3591 | 5157 | 3676 | 9886 | 4618 | 5736 |
Memories Score | 2789 | 4261 | 2447 | 5337 | 3043 | 4088 |
TV and Movie Score | 2684 | 4010 | 2440 | 5495 | 3071 | 4271 |
Gaming Score | 3733 | 5902 | 2987 | 10114 | 3261 | 4409 |
Music Score | 3585 | 5127 | 3746 | 10463 | 5006 | 6394 |
Communications Score | 3435 | 5035 | 3886 | 8129 | 4493 | 6305 |
Productivity Score | 2041 | 3016 | 3101 | 8125 | 3250 | 3117 |
HDD Score | 2635 | 3077 | 3190 | 9964 | 3523 | 3669 |
PCMark Vantage 32bit | ||||||
PCMark Score | 3226 | 4989 | 3604 | 9284 | 4235 | 5317 |
Memories Score | 2630 | 4104 | 2507 | 5186 | 2903 | 3902 |
TV and Movie Score | 2619 | 3945 | 2443 | 5442 | 3066 | 4297 |
Gaming Score | 3099 | 5023 | 2530 | 8958 | 2687 | 4121 |
Music Score | 3304 | 5183 | 3743 | 9545 | 4513 | 5884 |
Communications Score | 3047 | 4992 | 3768 | 7469 | 4202 | 6218 |
Productivity Score | 1693 | 2732 | 3145 | 7427 | 3488 | 2901 |
HDD Score | 2627 | 3059 | 3151 | 9948 | 3523 | 3662 |
PCMark 7 | ||||||
PCMark score | 1367 | 1830 | 1335 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Lightweight score | 1207 | 1625 | 1308 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Productivity score | 832 | 1110 | 894 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Creativity score | 1692 | 2203 | 1558 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Entertainment score | 1450 | 2120 | 1336 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Computation score | 1532 | 2703 | 1321 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
System storage score | 1433 | 1338 | 1383 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
3DMark03 | ||||||
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 13839 | 20356 | 9545 | 23571 | 7673 | 9325 |
CPU Score | 1010 | 2085 | 1166 | 1988 | 1120 | 1533 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||||
HIGH | 3683 | 7915 | 4173 | 7706 | 2640 | 3586 |
LOW | 5501 | 10464 | 6374 | 8791 | 4062 | 5273 |
CPUの基本的な処理能力を計測するPCMark05のCPU Scoreは4612であり、ノートPC向けの通常電圧版Core i7やCore i5の半分程度だが、Core i3の下位に位置するPentium B940のCPU Scoreは5043で、ほぼ同等の性能といえる。AMD Aシリーズの中で、下位に位置するAMD A4-3300Mを搭載したHP Pavilion g6-1100AUのCPU Scoreは4733で、AMD A6-3400Mのほうがやや低くなっているが、AMD A6-3400Mはデュアルコアだが、その分動作クロックが1.9GHzと高いため、4スレッドでのテストの比重が比較的低いPCMark05のCPU Scoreでは、結果が逆転しているのであろう。
3D描画性能を計測する3DMark03のスコアは13839で、第2世代Core iシリーズの内蔵GPUに比べるとスコアは高い。FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアは、AMD A4-3300Mのほうが高くなっているが、FINAL FANTASY Offcial Benchmark 3は、CPU性能によって値が左右されやすく、コア数は少なくてもクロックが高いAMD A4-3300Mのほうが有利なのであろう。
Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア。一番低いスコアが5.3で、バランスがよい |
Windowsエクスペリエンスのスコアは5.3から6.6とバランスがよく、5万円未満の製品としては優秀だ。
「切り替え可能なグラフィック」画面で、アプリケーションごとのGPU設定を変更できる |
デュアル・グラフィックスは、NVIDIAのOptimusに似たテクノロジで、実行するアプリケーションによって、CPUに統合されているGPUのみを使うか、単体GPUを併用するかを選べる。デフォルトでは、単体GPUを使わない設定になっていることも多いが、単体GPUも利用したい場合は、デスクトップを右クリックしてプロパティメニューを開き「切り替え可能なグラフィックを設定する」を選んで、「ハイパフォーマンス」に指定すればよい。
例えば、ゲームベンチの「ストリートファイターIVベンチマーク」(1,280×720ドットで計測)と実行させてみたところ、内蔵GPUのみ利用時(デフォルト)では45.39fpsだったのに対し、ハイパフォーマンス指定時は76.37fpsにフレームレートが跳ね上がった。同様に、「バイオハザード5ベンチマーク」(1,280×720ドット、ベンチマークテストBで計測)の場合、内蔵GPUのみ利用時(デフォルト)では22.8fpsだったが、ハイパフォーマンス指定時は35.5fpsとなった。ハイパフォーマンスを指定すれば、比較的軽めのゲームなら快適に遊べるだろう。
●コストパフォーマンスが高く、幅広い層にお勧め
K53TAは、AMD A6-3400Mと単体GPUのRadeon HD 6550Mを搭載したことで、ネットブックと同程度の価格帯を実現していながら、メインストリームノートPCとして十分な性能を誇る製品だ。コストパフォーマンスは高く、USB 3.0にも対応しているため、初心者から中上級者まで幅広い層にお勧めできる。
(2011年 9月 6日)
[Text by 石井 英男]