日本HP「HP Pavilion Notebook PC dm3a」
~AMD Congoプラットフォームを採用した13.3型ノート



HP Pavilion Notebook PC dm3a

発売中

価格:オープンプライス(実売89,800円前後)



 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)から登場した「HP Pavilion Notebook PC dm3a」(以下、dm3a)は、13.3型ワイド液晶を搭載したノートPCだ。同時に発表された「HP Pavilion Notebook PC dm3i」(以下、dm3i)の兄弟機であり、ボディなどはdm3iと共通である。dm3iでは、Intel製プラットフォームを採用しているのに対し、dm3aは、AMD製プラットフォームを採用していることが特徴だ。

 dm3aに採用されているプラットフォームは、AMD Congo(コンゴ)プラットフォームと呼ばれるもので、CPUにデュアルコアのAthlon Neo、チップセットにAMD M780Gを採用し、Yukonの上位となるプラットフォームだ。現在、AMD製プラットフォームを採用したノートPCはあまり多くないが、日本HPはYukonをはじめ、AMD製プラットフォームを採用したノートPCを積極的にリリースしている数少ないメーカーの1つだ。

●量販店などで発売される店頭モデル

 dm3iは、日本HPの直販サイト「HP Directplus」でのみ販売される直販限定モデルであったが、dm3aは逆に店頭でのみ発売される量販店モデルであり、製品バリエーションも1モデルしか用意されていない。液晶サイズは13.3型ワイド、重量は約1.9kgであり、日本人の感覚ではモバイルノートと呼ぶにはやや重いが、部屋から部屋への移動などは気軽に行なえるし、持ち歩こうと思えば可能なレベルだ。ボディにアルミニウムやマグネシウム合金が使われており、高級感と堅牢性を両立させている。

 dm3aは、CPUとしてAthlon Neo X2 L335(1.6GHz)を搭載する。Athlon Neo X2は、薄型ノートPC向けとして開発された低消費電力デュアルコアCPUであり、日本HPの「HP Pavilion Notebook PC dv2」の秋モデルにも搭載されている。チップセットは、グラフィックス統合型のAMD M780Gが採用されている。AMD M780Gは、ATI Mobility Radeon HD 3200グラフィックスコアを集積しており、統合型チップセットとしては高い描画性能を実現している。メモリは、標準で2GB実装されており、SO-DIMMスロットを2基備えているので、最大8GBまでの増設が可能だ。ストレージとして2.5インチ250GB HDDを搭載する。容量は標準的だが、回転数7,200rpmの高速タイプが搭載されており、ディスクパフォーマンスは高い。

dm3aの上面。トップカバーには、アルマイト処理とヘアライン加工が施されたアルミニウムが使われており、高級感を演出。ボディはIntel製CPU搭載のdm3iと同じだ「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。奥行きはほぼ同じだが、横幅はdm3aのほうがかなり長い
dm3aの底面。底面には軽くて剛性の高いマグネシウム合金が使われている。右下にメモリスロットカバーが、左下にHDDベイカバーがあるメモリスロットカバーとHDDベイカバーを外したところ。SO-DIMMスロットが2基用意されている。HDDの上にはMini PCI Expressスロットの空きがある

●16:9仕様の光沢液晶パネルを搭載

 液晶のサイズは、13.3型ワイドで、解像度は1,366×768ドットの16:9仕様だ。最近のノートPCでは一般的な解像度であり、解像度不足は感じられない。ウルトラクリアビューカラー液晶と呼ばれる光沢タイプの液晶が採用されており、発色やコントラストについては合格点をつけられる。ただし、光沢タイプなので、利用環境によっては外光の映り込みが気になることがある。液晶上部には、640×480ドット(VGA)のWebカメラとマイクが用意されており、ビデオチャットなどに利用できる。

 キーボードは全87キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.7mmだ。キータッチはやや軽めだが、キートップがぐらつくようなことはなく快適にタイピングが可能だ。不等キーピッチもなく、キー配列も標準的だが、上下カーソルキーがやや小さいことが気になった。また、Fnキーと最上段のキーの扱いが一般的なノートPCとは反対であり、単独で最上段のキーを押すことで、バックライトの輝度や音量調整などが行なえ、Fnキーを押しながら最上段のキーを押すことで、F1~F12キーとして利用できるようになっている。

 ポインティングデバイスとしては、マルチタッチ操作やジェスチャー操作に対応したタッチパッドを採用。なお、タッチパッドの表面がツルツルの鏡面仕上げになっているため、指がパッドに吸着される感じがあり、個人的にはやや違和感を思えた。パッドの上部に、パッドの有効/無効を切り替えるボタンとインジケータが用意されているのは便利だ。

液晶は13.3型ワイドで、解像度は1,366×768ドットだ。光沢タイプの液晶なので、外光が映り込みやすい液晶上部にVGA解像度のWebカメラを搭載している
dm3aのキーボードは全87キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.7mmである。アイソレーションタイプで、不等キーピッチもなく、快適にタイピングが可能だ。配列も標準的だが、上下カーソルキーがやや小さいことが気になるポインティングデバイスとしてタッチパッドを採用。タッチパッドの表面が鏡面仕上げになっているので、指がパッドに吸い付く感じがしてやや違和感がある。パッドの上部に、パッドの有効/無効を切り替えるボタンが用意されているのは便利だ

●USB接続の外付けDVDスーパーマルチドライブが付属

 dm3aでは、インターフェイスとして、USB 2.0×4とミニD-Sub15ピン、HDMI出力、マイク入力、ヘッドフォン出力、LANの各端子を備えている。USB 2.0ポートの数が4基と比較的大きく、左右に2基ずつ配置されているので便利だ。また、メモリカードスロットして、5in1メディアスロットを搭載。SDメモリーカード/SDHCメモリーカード/MMC/メモリースティックPro/xD-Picture Cardの読み書きが可能だ。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LAN機能をサポートしている。右側面にワイヤレス機能のON/OFFボタンが付いているのも便利だ。

 dm3aは、dm3iと同じく1スピンドルノートPCだが、USB経由で接続する外付けDVDスーパーマルチドライブが付属しており、アプリケーションのインストールやDVDソフトの再生などが可能だ。

 公称バッテリ駆動時間は約6時間であり、兄弟機のdm3iの約8時間には及ばないものの、このクラスの製品としては十分であろう。ACアダプタのサイズや重量は、このクラスの製品としては一般的だが、ACケーブルのプラグは、2ピンのメガネタイプではなく3ピンのミッキータイプになっている。

左側面には、LAN、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 2.0×2、5in1メディアスロット、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている右側面には、電源スイッチ、ワイヤレス機能ON/OFFボタン、USB 2.0×2が用意されている
USB経由で接続する外付けDVDスーパーマルチドライブが付属する外付けDVDスーパーマルチドライブを取り付けたところ
dm3aのバッテリ。薄型のリチウムポリマーバッテリを採用dm3aのバッテリは、11.1V/57Whの6セル仕様だCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタのサイズはこのクラスの製品としては標準的。ACケーブルのプラグは3ピンのミッキータイプだACケーブルの代わりに装着するACプラグが付属しているCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●CULVノートPCと同程度の性能

 参考ためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用に日本HP「HP Pavilion Notebook PC dm3iハイパフォーマンスモデル」、レノボ「ThinkPad T400s」、NEC「LaVie M」、ソニー「VAIO X」、日本HP「HP Mini 2140 Notebook PC」の値も掲載した。

 PCMark05のCPU Scoreの値は3114で、Atom搭載ネットブックの約1.5倍以上で、CULVノートPCの「LaVie M」をもやや上回っている。しかし、標準電圧版のCore 2 Duoを搭載するdm3iハイパフォーマンスモデルやThinkPad T400sと比べると半分程度しかない。

 3DMark03のスコアは、Intelの最新グラフィックス統合型チップセットを採用したThinkPad T400sやLaVie Mを上回っており、内蔵グラフィックスコアの描画性能が優れていることがよくわかる。7,200rpmの高速HDDを搭載しているため、CrystalDiskMarkのスコアも優秀だ。

 総合的に見て、ネットブックよりは高性能だが、A4フルサイズノートよりは下であり、CULVノートPCと同程度のパフォーマンスと考えてよい。また、BBenchによるバッテリ駆動時間のベンチマーク結果は4時間18分であり、ときどき持ち歩いて使うといった用途なら十分であろう。

 dm3adm3iハイパフォーマンスモデルThinkPad T400sLaVie MVAIO XHP Mini 2140 Notebook PC
(1,366×768ドット液晶)
CPUAthlon Neo X2 L335(1.6GHz)Core 2 Duo SP9300(2.26GHz)Core 2 Duo SP9400(2.4GHz)Celeon SU2300(1.2GHz)Atom Z540(1.86GHz)Atom N270(1.6GHz)
ビデオチップM780G内蔵コアGeForce G105MIntel GS45内蔵コアIntel GS45内蔵コアUS15W内蔵コアIntel 945GSE内蔵コア
PCMark05
PCMarks278150424454282612481566
CPU Score311456046204296615831482
Memory Score261450165323306624212350
Graphics Score1355344818021397245546
HDD Score456350514471494835265713
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)2484847821862048365718
CPU Score6481535計測不可495207242
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH21735676394519954361010
LOW39768660計測不可13677661386
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP62.4799.9799.9776.4336.1736.9
HP99.9799.9799.9799.9785.575.97
SP/LP99.9799.9310099.9710099.97
LLP99.9799.9710099.9710099.97
DP(CPU負荷)705049687868
HP(CPU負荷)542722427868
SP/LP(CPU負荷)391914285942
LLP(CPU負荷)351711223932
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード92.55MB/s76.27MB/s43.89MB/s60.31MB/s65.90MB/s未計測
シーケンシャルライト85.19MB/s72.82MB/s41.44MB/s66.25MB/s38.42MB/s未計測
512Kランダムリード36.64MB/s34.69MB/s22.17MB/s27.50MB/s63.23MB/s未計測
512Kランダムライト47.96MB/s32.72MB/s24.77MB/s31.19MB/s3.108MB/s未計測
4Kランダムリード0.489MB/s0.516MB/s0.329MB/s0.369MB/s4.135MB/s未計測
4Kランダムライト1.004MB/s1.025MB/s0.811MB/s0.984MB/s1.523MB/s未計測
BBench
Sバッテリなしなしなし3時間39分2時間57分未計測
Lバッテリ(標準バッテリ)4時間18分5時間1分4時間2分7時間26分6時間2分
Xバッテリなしなしなしなし12時間56分

●製品としての出来はよいが、dm3iとの性能差が気になる

 dm3aはオープンプライスだが、実売価格は9万円前後であり、CULVノートPC(ネットノート)と同じ価格帯となる。ベンチマーク結果から判断して、性能はCeleron SU2300搭載CULVノートPCと同程度であり、ノートPCとしての出来も優秀だ。しかし、兄弟機のdm3iハイパフォーマンスモデルは直販価格99,750円と約1万円高くなるが、通常電圧版Core 2 DuoとGeForce G 105Mを搭載しており、性能はかなり上だ。一般的な用途ならdm3aでも十分なパフォーマンスだが、プラス1万円で、より快適なdm3iハイパフォーマンスモデルが購入できることを考えると、どちらを選ぶか迷うところだ。ポータブルDVDスーパーマルチドライブが付属していることや、量販店のポイント還元などを差し引いても、もう1万円安くなれば、コストパフォーマンス的にも魅力が増すであろう。

バックナンバー

(2009年 11月 30日)

[Text by 石井 英男]