Hothotレビュー

実用度マシマシ2in1。レノボ「IdeaPad Duet 560 Chromebook」

レノボ「IdeaPad Duet 560 Chromebook」

 Androidアプリが標準的に利用できるようになり、高性能なモデルを含めバリエーション豊かなラインアップが揃ってきたChromebook。だいたいが数万円クラスのリーズナブルな価格帯で、セカンドマシン的に使いやすいことから、ビジネス用途でも選択肢に十分に入るようになってきたのではないだろうか。

 少なくとも使い道をある程度絞ったときに、スペックの抑えたWindowsノートPCにするか、Chromebookを選ぶか、悩ましく感じるくらいには競えるところまできている。そんなところへ、さらに悩みが深まりそうなモデルが2021年11月に登場した。レノボの「IdeaPad Duet 560 Chromebook」(以降、IdeaPad Duet 560)だ。直販モデルの価格は7万6,780円より。

物理キーボード&カバーにスタイラスも付属するミドルハイChromebook

 IdeaPad Duet 560は、タブレットとしても、ノートPCとしても使える、キーボード着脱式の2in1デバイス。OSはChrome OSで、13.3型フルHD(1,920×1,080ドット)の有機ELディスプレイを備える。

鮮やかな発色の13.3型フルHD有機ELディスプレイ

 チップセットはQualcomm Snapdragon 7c Gen 2(8コア、2.55GHz)ということで、スペックとしてはミドル~ミドルハイ相当。メモリは4GBまたは8GB、ストレージは128GBまたは256MBのeMMCとなるが、今回試用したのは4GB/128GBのモデルだ。

 手に持って使うタブレットでもあるせいか、本体に備えるボタンやインターフェイス類は最小限。電源キーとボリュームアップ/ダウンキーの3つと、USB Type-Cポートが2つだ。どちらもUSB Power Delivery(PD)およびDisplayPort Alternate Modeに対応する。

 イヤフォン端子はないものの、USB Type-Cから3.5mmオーディオジャックに変換するケーブルが付属する。あとは前面と背面にそれぞれ500万画素と800万画素のカメラがあり、左右側面にステレオスピーカー(1W出力×4ユニット)も設けられている。

左上側面に電源キーとボリュームキー
USB Type-Cポートとスピーカーを左右両側面に備える
アウトカメラは800万画素

 本体サイズは305.86×186.74×7.23mm(幅×高さ×厚さ)で、重量は約700g。片手で持つにはやや大きめでずっしり感のあるボディだ。これに付属の着脱式キーボードとカバーを装着すると、サイズは305.86×192.63×15.83mm(同)で、総重量は約1.2kgとなる。昨今の軽量ノートPCと比較してしまうと、少し重いなあという印象だ。

 この着脱式キーボードと背面カバーは別体になっており、キーボードだけ、あるいは背面カバーだけ、という使い方もOK。背面カバーはスタンドも兼ねており、途中で折り曲げて好きな角度で立てかけられる仕組みになっている。

 さらにもう1つ、付属品としてUSI(Universal Stylus Initiative)方式のスタイラスペンが用意されている。専用ホルダーに収め、その状態で背面カバーにホルダーごと固定して持ち運べるので、少なくとも背面カバーは常にセットで使った方が便利だろう。

本体重量は約700g。片手で長時間保持し続けるのは厳しい重さかも
付属のキーボードと背面カバー
キーボードとカバーを本体に装着した状態
背面カバーはスタンドも兼ねる
無段階で角度設定が可能。ほとんど寝かせた状態でも使える
背面カバーにスタイラスのホルダーを装着可

2基のUSB Type-CでWindowsノートばりの拡張性

 仕事用マシンとして利用することを考えたとき、一番重要なのはやはりキーボードとタッチパッドの使い勝手だろう。付属キーボードはキーピッチ約19mmのフルサイズとなっていて、13.3型クラスながら余裕がある。エンターキーが縦に細長く、左側のCtrlおよびAltキーが横長になっているのが見た目の上では少し気になるが、決して押しにくいわけではない。

IdeaPad Duet 560のキーボードとタッチパッド

 コンパクトなノートPCでは小さくなりがちな上下左右キーのサイズも、極端に小型化はされておらず、意外と使いやすい。全体的なストロークはやや浅め、反発力は少し強め。指なじみがいい感じで、小気味よく打ち込んでいける。耳障りにならない低めのタイプ音のおかげで静音性は高い。

 タッチパッドは少し大きめの実測10.5×6.2cm(幅×奥行き)。使い勝手としても、OSレベルでWindowsノートPCなどと同じような操作性を実現しているので違和感はゼロだ。3本指または4本指操作によるWebブラウザのタブ切り替え、タスク切り替え、仮想デスクトップの切り替えといったジェスチャーにも対応する。

 さらにビジネス用途でうれしいのは、USB Type-Cポートが2つあり、しかもDisplayPort Alternate Modeにしっかり対応しているところだろう。同規格に対応する外部ディスプレイに接続してみたところ、Type-Cケーブル1本ですんなりデュアルディスプレイ環境を構築でき、同時にIdeaPad Duet 560本体に給電された。

Type-Cケーブル1本で外部ディスプレイへの出力と本体への給電が可能
外部ディスプレイの細かい出力設定も行なえる

 また、外部ディスプレイ側のUSBハブ機能も使って、外部キーボードやマウスを接続すると、こちらもきちんと認識。お気に入りのキーボードとマウス、そして作業スペースを広げる外部ディスプレイがセットで使えることで、作業効率は間違いなく向上する。

 この状態でもう1つ本体のType-Cポートが余っているので、外部ストレージなどを接続してもいいだろう。もはや薄型2in1のChromebookとは思えない拡張性だ。

外部キーボードとマウスをディスプレイ側のUSBハブに接続して使える
もう1つのType-Cポートには高速な外部ストレージなども接続OK。内蔵ストレージの節約にも繋げられる

 そのうえでスタイラスペンも使える。描画の遅延は気にならないレベルで、筆圧検知による線の太さ/濃淡の書き分けも自由自在。画面が13.3型と大きく、長辺はA4サイズに近い(短辺はやや狭い)こともあって、バインダーに挟んだ紙に書いていくがごとく、ガンガン殴り書きしていくような感覚で使えるのもいい。

 ただ、ベゼルが細めなので、手で持ったときに指が画面に触れて反応してしまいがちなのと、13.3型/700g(カバー込みで1.2kg)というサイズ/重量は、手で持って操作するのに向いているとは言いがたい点は頭に入れておきたい。

Google Keepであれば手っ取り早く筆圧検知対応の手書きメモを残せる
サイズ/重量の関係で、手持ちのときは片腕に載せるような格好でメモすることになる。楽ちんとは言えない

 そういったサイズ感を考えると、出先に持ち運んで撮影するような使い方はまれかもしれないが、参考までにアウトカメラで風景を撮影してみた。ややシャープネス強めの絵作りで、景色や食事よりは、ホワイトボードなどできるだけくっきり見えると都合がいい用途に向いているように感じる。

 また、インカメラについてはWeb会議時の画質を確認している。明るさを含め実用上は問題ないものの、精細度はそこまで高くはなさそうだ。

アウトカメラの撮影サンプル
インカメラでWeb会議したときの相手側でのスクリーンショット(720p時)

高いWebアプリの実効性能。ただし本格3Dゲームは得意ではないかも

 端末としての性能はどうだろうか。CPU性能をチェックする「Geekbench 5」と、JavaScript(Webアプリ)性能を測る「Octane 2.0」を実行してみた結果が以下のグラフとなる。過去に本誌で行なったほかのAndroid端末のデータとも比較してみた。

「Geekbench 5」の実行結果
「Octane 2.0」の実行結果
「Geekbench 5」他機種との比較
「Octane 2.0」他機種との比較

 CPU性能はSnapdragon 778Gや865にはさすがに及ばず、690よりはわずかに高性能という結果。GPUによるOpenCLのテストはアプリ上に項目が現れなかったので実行できなかった。一方、Octane 2.0では、778Gを超えるスコアを記録しており、Webアプリはかなり快適に使えそうな雰囲気だ。

 Geekbench 5は振るわなかったものの、Chromebookの場合、特にビジネス用途ではWebブラウザベースのアプリを使うことが多いはずなので、Octane 2.0がまずまずの結果だったのは好都合ではある。実際、この原稿をWeb版「Visual Studio Code」で執筆するのも、Office文書をWebアプリ版Microsoft 365で編集するのも、操作性やレスポンスの面で不満を感じることはなかった。

 強いて言えば、Webアプリ版Microsoft 365だと文書内のオブジェクトの表示ズレなどが発生しやすいのが残念なところだが、このあたりはIdeaPad Duet 560の問題ではない。Chromebook向けのMicrosoft 365のネイティブアプリの登場が待たれるところだ。

 スペックシート上では約15.5時間となっているバッテリ駆動時間も実際のところを確かめてみた。ディスプレイ輝度50%の状態でフルHDの動画を連続再生したところ、18時間余り稼働し続け、電池切れとなった。ビジネスアワーで考えれば、だいたい2日間分は余裕でカバーできそうなスタミナだ。

 最後に、念のためゲームプレイの快適さもチェックした。3D RPGの「原神」はデフォルトの画質設定が「低」となり、この状態であればストレスなくプレイできる。それ以上の画質設定にしても重さを感じることはあまりないが、フレームレートはどうしても落ちる。60fpsのスムーズなグラフィック描画は体感できない。

「原神」のデフォルトの画質設定は「低」。これならストレスはない

 リズムゲームの「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」は、デフォルトの動作設定が最低の「2D軽量」となった。ただし、実際には「3D標準」でもレスポンス上は問題ない。最高の「3Dリッチ」にすると時々画面描画やタッチの反応が遅れてしまうので、さすがに実用的ではないなという印象だ。

「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」はデフォルトが「2D軽量」だが、それ以上の画質でもレスポンスよく楽しめた

ビジネス用途ならストレスフリーな使い勝手、だけれど……

 IdeaPad Duet 560のとにかくうれしい部分が、USB Type-Cポート×2による拡張性の高さ。タブレットとしても使える薄型ボディの2in1でありながら、今どきのWindowsノートと同じように、外部のディスプレイやキーボード、マウスなどを当たり前のように使えて、格段にビジネス用途における実用度が増している。

 さらに筆圧検知機能付きのスタイラスペンを活用できることもあわせて考えると、応用の幅は広く、仕事で活躍する場面は多い。

 実用アプリ、Webアプリはストレスフリーで使える。だが、リッチな3Dゲームをバリバリこなすほどの性能まで期待してはいけない。それでも、有機ELの自然な発色と、伸びやかなサウンドを響かせてくれるステレオスピーカーのポテンシャルを活かして、動画/音楽などのエンタメコンテンツをじっくり楽しむのは大いにアリだろう。

 ただ個人的には、Microsoft 365がWebアプリしか使えないこと、キーボード接続時にATOKなどのサードパーティ製日本語入力システム(IME)が機能しないことといった、Chromebook(Chrome OS)自体がもともと抱える課題点がネックに感じられる。ここさえクリアになれば、IdeaPad Duet 560の拡張性の高さや使い勝手の良さをさらに活かせるのになあ、と思わずにはいられない。