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日本HP「HP ENVY 13-ad008TU」

~14時間の長時間駆動が可能な薄型軽量モバイルノート

日本HP「HP ENVY 13-ad008TU」

 日本HPは、同社製PCの中で上位のプレミアムセグメントとして位置付けられている、「ENVY」シリーズの新モバイルノートPC「HP ENVY 13」を、2017年7月13日より発売した。

 液晶ベゼル幅を狭め薄型軽量な筐体と長時間駆動を両立した製品。今回は、シリーズ上位モデルとなる「スタンダードモデル」としてラインナップされている「ENVY 13-ad008TU」を取り上げ、ハードウェアを中心に紹介する。シリーズの税別直販価格は99,800円から。

優れたデザインの薄型軽量ボディ

 「HP ENVY 13-ad008TU」(以下、ENVY 13)は、日本HPの製品の中でも上位のプレミアムセグメント「ENVY」シリーズに位置付けられている。

 ENVYシリーズは、性能だけでなくデザイン性も追求されている点が大きな特徴で、ENVY 13も、本体のデザイン性はかなり優れている。

 筐体素材にはアルミニウム合金を採用しており、表面には細かな凹凸をブラスト処理によって施した“梨地処理”が施されている。見る角度によって光沢感が変わるとともに、なめらかな手触りも実現されており、非常に質感に優れる。

 また、天板にはプレミアムセグメントの証となる直線のみで構成された光沢のHPロゴがあしらわれている。

 本体デザインは直線を多用したものとなっている。とくに後方付近は鋭角な切り込みが採用され、非常に先鋭的な印象が強い。このあたりも、プレミアムセグメントの製品らしい特徴と言える。

 本体サイズは、305×215×14~16mm(幅×奥行き×高さ)。液晶ディスプレイの左右ベゼル幅が実測で約5mmに狭められていることもあって、13.3型液晶搭載のモバイルノートPCとしては、フットプリントがかなりコンパクトにまとめられている。また、厚みも14~16mmとかなりの薄さで、薄型の鞄などへの収納性に優れる。

 重量は公称で1.24kg、実測では1,213.5gだった。1kgを切る軽さの13.3型モバイルノートPCが増えていることを考えると、特筆できるほど軽いというわけではないが、この重量なら、毎日の持ち歩きでもそれほど大きな苦にはならず、携帯性はまずまず満足できる範囲内だ。

 堅牢性に関しては、特に言及はないものの、筐体素材にアルミニウム合金を採用していることもあって、必要十分な堅牢性を兼ね備えていると感じる。

 筐体は十分な剛性があり、多少強い力でひねってみてもビクともしない。液晶部は薄型のため、多少のたわみは感じるが、モバイルPCとして必要十分な剛性があるため、こちらも大きな不安はない。そのため、堅牢性に関しても大きな不安はないと言えそうだ。

天板部分。梨地処理を施したなめらかな筐体が特徴。フットプリントは305×215mm(幅×奥行き)とコンパクト
本体正面
左側面。高さは14~16mmと、なかなかの薄さだ
背面
右側面
底面。筐体素材はアルミニウム合金で、堅牢性も申し分ない
重量は実測で1,213.5g。13.3型モバイルノートPCとしてはまずまずの軽さだ

フルHD表示対応の13.3型液晶を搭載

 ディスプレイには、フルHD(1,920×1,080ドット)表示対応の13.3型液晶を採用。パネルの種類はIPSで、広視野角かつ十分な明るさを備えている。

 パネル表面は光沢処理となっているため、外光の映り込みはやや気になるが、発色は十分に鮮やかで、このクラスのモバイルノートPCの中でも、表示品質に優れた部類に入る。なお、ディスプレイにはタッチパネルは搭載しておらず、タッチ操作には非対応だ。

 ディスプレイ部は、底面付近が鋭角に折れ曲がっており、その部分が本体下部にもぐり込み、本体後方を持ち上げる構造となっている。つまり、ディスプレイを開くとキーボード面に角度が生まれるため、キーボードの打鍵性が向上する。これは、キー入力をメインとするモバイルノートPCとして、なかなか魅力的な仕様と感じる。

 その反面、ディスプレイは135度ほどまでしか開かない。ノートPCを持ち出して、外出先でプレゼンを行なう場合などは、液晶面がフラットに開く方が便利なこともある。このあたりは、使い方によっては気にならないかもしれないが、多少の割り切りは必要かもしれない。

1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶を搭載。左右ベゼル幅を約5mmと狭めることでコンパクトな筐体を実現
パネルはIPSで、液晶表面は光沢処理。発色は鮮やかで表示品質はかなり優れるが、外光の映り込みはやや気になる
液晶部後方が鋭角に折れ曲がったデザインを採用
液晶を開くと、後部がボディ下部にもぐり込み、後方をリフトアップする構造となっている
後方の仕様から、液晶部は135度ほどまでしか開かない

キーボードはEnter右側にキーが置かれている点が気になる

 キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのキーボードを搭載している。キーピッチは実測で約19mmのフルピッチで、主要キーの配列も不自然な部分はなく、扱いやすさは悪くない。

 ストロークはやや浅めで、1.2mmほどといった印象だが、クリック感はしっかりとしており、打鍵感も良好。打鍵時の操作音もうるさくないため、静かな場所でのタイピングも気にならないはずだ。加えて、キーボードバックライトも内蔵しているので、暗い場所でのタイピングも快適だ。

 ただ、個人的に気になったのが、Enterキーの右側に一部キーが配置されているという点だ。個人的に、テンキーを配置しないなら、Enterキーは右端にあるべきと考えており、この配置は誤操作を誘発する可能性を高めるため、どうしても気になってしまう。慣れれば問題ないという意見もあるとは思うが、できればEnterキーの右にはキーを配置してほしくなかった。

 ポインティングデバイスのタッチパッドは、クリックボタンと一体型のものを搭載。横に広い形状で、面積も十分に広く、ジェスチャー操作にも対応しているため、扱いやすさは申し分ない。

アイソレーションタイプのキーボードを搭載
主要キーのキーピッチは約19mmでフルピッチ
ストロークはやや浅めだが、しっかりとしたクリック感があり、打鍵感は良好
無理な配列はほとんどなく、タッチタイプも余裕だが、個人的にはEnterキー右にキーを配置する点が残念
キーボードバックライトを内蔵しており、暗い場所でのタイピングも快適
ポインティングデバイスのタッチパッドはクリックボタン一体型。ジェスチャー操作にも対応しており操作性は良好だ

薄型筐体ながら標準サイズのUSBポートを備える

 スペック面を確認していこう。今回試用したENVY 13は、上位のスタンダードモデルとなっており、CPUにはCore i5-7200Uを採用。メモリはDDR3L-1866を標準で8GB搭載。内蔵ストレージは、PCIe 3.0x4接続の512GB M.2 NVMe SSDを搭載しており、速度、容量ともに十分に満足できるものとなっている。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LANとBluetooth 4.2を標準搭載。無線LANの速度は11ac接続時で最大866.7Mbps。

 カメラは、液晶ディスプレイ上部に約92万画素のWebカメラを搭載する。なお、指紋認証センサーなどの生体認証機能は搭載しない。

 このほか、Bang & Olufsenブランドの4スピーカーシステムを搭載しており、このクラスのモバイルノートPCとしてはトップクラスの高音質サウンド再生が可能だ。

 側面のポート類は、左側面にUSB 3.0、ステレオミニジャック、USB 3.0 Type-C、microSDカードスロットを、右側面にUSB 3.0 Type-C×1、USB 3.0、電源コネクタを備える。

 薄型筐体ながら、USB Type-Aポートを2ポート備える点は、利便性を大きく高めてくれる。また、USB Type-CポートはDisplayPort Altanate Modeをサポートしており、DisplayPortを備える外部ディスプレイを接続できる。

 なお、OSにはWindows 10 Proを採用しており、シリーズにはWindows 10 Home採用モデルも用意される。

 付属のACアダプタはかなり小型のものとなっており、携帯性に優れる。ただし、電源ケーブルがやや太く重いため、この点は改善を期待したい。なお、電源ケーブル込みのACアダプタの重量は、実測で286gだった。

左側面には、USB 3.0、ステレオミニジャック、USB 3.0 Type-C、microSDカードスロットを用意
右側面には、USB 3.0 Type-C、USB 3.0、電源コネクタを用意
液晶上部には、約92万画素のWebカメラを搭載
付属のACアダプタはコンパクトな仕様
付属電源ケーブルが太く、ややかさばるのが残念
ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで実測で286gだった

性能面はスペック相応

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。

 利用したベンチマークソフトは、Futuremark「PCMark 10 v1.0.1275」、「PCMark 8 v2.7.613」、「3DMark Professional Edition v2.3.3732」、Maxon「CINEBENCH R15.0」、スクウェア・エニックス「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。比較用として、日本HP「HP EliteBook x360 1030 G2」の結果も加えてある。

製品HP ENVY 13-ad08TUHP EliteBook x360 1030 G2
CPUCore i5-7200U(2.50/3.10GHz)Core i7-7600U(2.80/3.90GHz)
GPUIntel HD Graphics 620Intel HD Graphics 620
メモリDDR3L-1866 SDRAM 8GBDDR4-2133 SDRAM 16GB
ストレージ512GB SSD(NVMe PCIe)512GB SSD(NVMe PCIe)
OSWindows 10 Pro 64bitWindows 10 Pro 64bit
PCMark 10
製品HP ENVY 13-ad08TUHP EliteBook x360 1030 G2
ベンチマークバージョンPCMark 10 v1.0.1275PCMark 10 v1.0.1271
PCMark 10 Score3,0783,597
Essentials7,1558,086
App Start-up Score8,99711,471
Video Conferencing Score6,4366,537
Web Browsing Score6,3287,053
Productivity5,4766,701
Spreadsheets Score6,5007,880
Writing Score4,6145,699
Digital Content Creation2,0222,332
Photo Editing Score2,3522,790
Rendering and Visualization Score1,3121,415
Video Editting Score2,6803,216
PCMark 8 v2.7.613
製品HP ENVY 13-ad08TUHP EliteBook x360 1030 G2
Home Accelarated 3.03,5793,817
Creative accelarated 3.04,4004,894
Work accelarated 2.04,4595,005
Storage4,9624,961
CINEBENCH R15.0
製品HP ENVY 13-ad08TUHP EliteBook x360 1030 G2
OpenGL (fps)46.7148.08
CPU322359
CPU (Single Core)125144
3DMark Professional Edition v2.3.3732
製品HP ENVY 13-ad08TUHP EliteBook x360 1030 G2
Cloud Gate6,2176,331
Graphics Score7,9558,352
Physics Score3,5243,429
Sky Diver3,6903,774
Graphics Score3,5773,655
Physics Score4,5644,777
Combined score3,5223,528
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
製品HP ENVY 13-ad08TUHP EliteBook x360 1030 G2
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)3,1683,623
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)1,8582,190

 結果を見ると、いずれのテストでもスペック相応のスコアが得られていることが分かる。上位CPUとなるCore i7-7660U搭載のHP EliteBook x360 1030 G2に比べて、ほとんどの項目でスコアは下回っているが、これはCPUの処理能力が素直に反映されているためだ。

 細かくスコアを確認してみても、不自然にスコアが低くなっている部分もなく、スペック相応のスコアが得られている。実際に利用する上で、処理能力が低く不満に感じる場面はほとんどなく、モバイルノートPCとして申し分ない性能が発揮されると言って良いだろう。

 次に、バッテリ駆動時間だ。ENVY 13の公称バッテリ駆動時間は約14時間(MobileMark 2014での計測値)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「HP推奨(バランスとほぼ同じ)」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、「BBench」でキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約12時間55分だった。

 公称には届いていないものの、これだけの駆動時間があればモバイルノートPCとして十分満足できるはず。1日の外出程度なら、ACアダプタを携帯せずとも問題なく作業をこなせるだろう。

スタンダードなモバイルノートPCとしてお勧め

 ENVY 13は、デザイン性に特徴はあるものの、仕様面はモバイルノートPCとして比較的オーソドックスで、実際に試用した印象は、どちらかというと地味な部類だった。ただ、薄型軽量でコンパクトなフットプリント、実測13時間弱の長時間バッテリ駆動に申し分ない性能と、全体的に非常にまとまりが良い。

 飛び抜けた特徴はないものの、モバイルノートPCとして求められる部分はしっかりと網羅されており、幅広い用途にスマートに対応できるだろう。

 しかも、価格も税抜99,800円から、今回試用したモデルでも同137,800円と、価格的にも大きな魅力がある。コストパフォーマンスに優れる、スタンダードなモバイルノートPCを探している人におすすめの製品と言えよう。