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圧倒的なセキュリティ機能を備えたビジネス2in1モバイル「HP EliteBook x360 1030 G2」

日本HP 「HP EliteBook x360 1030 G2」

 日本HPは、液晶部が360度開閉する法人向け2in1モバイルPC新モデル「HP EliteBook x360 1030 G2」(以下、x360 1030 G2)を発売した。

 見た目こそ、最近流行の薄さを極めた2in1モバイルという印象だが、指紋認証、顔認証、ICカード、NFC非接触ICカードなど、複数のセキュリティ機能を搭載し、ビジネスシーンでの利用を想定した非常に高いセキュリティ性を備える点が大きな特徴となっている。すでに発売済みで、直販価格は149,800円から。

天面加圧600kgfや12種類の米軍調達基準をクリアする圧倒的な堅牢性

 ではまず、x360 1030 G2の外観からチェックしていこう。

 x360 1030 G2は、法人向け2in1モバイルということで、本体デザインは比較的オーソドックスなものとなっている。天板部分にHPロゴがある以外にほぼ装飾はなく、非常にシンプルな印象だ。ただ、シンプルななかにも、周辺部にダイヤモンドカット加工を施すなど、細部へのこだわりもあり、質感はかなり優れている。

 また、筐体素材にもかなりのこだわりがあり、アルミニウムにマグネシウムとシリコンを添加したAl-Mg-Si系合金「A6063」を採用している。この金属は、耐食性、強度、軽さを兼ね備えており、船舶や航空機にも広く利用されているという。そのため、約14.9mmという薄さ、約1.28kgという軽さながら、実際に手にすると華奢な印象は一切ない。本体やディスプレイ部をやや強い力でひねってみてもゆがみを感じることはほとんどなく、安心して持ち歩けると感じる。

 そして、その優れた堅牢性は、実際の試験でも確認されている。まず、一般的なモバイルノートPCがクリアする天面加圧試験は100~200kgf程度だが、x360 1030 G2ではなんと600kgfをクリア。それだけでなく、米国国防総省調達基準「MIL-STD-810G」に準拠する、落下、振動、衝撃、高温、低温などの全12項目の堅牢性試験もクリアしている。外に持ち出すモバイルPCは、落下をはじめさまざまなトラブルに遭遇する確率が高く、それによって保存データを失ってしまうといったこともあるだろう。しかし、そういった心配もx360 1030 G2には無縁と言えそうだ。

 本体サイズは、316×218×14.9mm(幅×奥行き×高さ)。フットプリントに関しては、13.3型ディスプレイ搭載モバイルノートPCとして標準的だが、近年は液晶ベゼル幅を極限まで狭めてサイズを小型化した製品が増えていることを考えると、やや大きく感じる。

 重量は、公称で約1.28kg、実測では1,337.5gだった。公称よりもやや重く、13.3型ディスプレイ搭載モバイルノートPCとしてもやや重い部類に入る。それでも、優れた堅牢性を考えると、まずまず納得できる範囲内と言える。

天板部分。HPロゴ以外には目立つ装飾はなく、シンプルなデザイン。フットプリントは316×218mm(幅×奥行き)とやや大きめだ
本体正面
左側面。高さは14.9mmと、ディスプレイが360度開閉する2in1モバイルPCとしてはかなりの薄さを実現
背面
右側面
底面。筐体素材にはたAl-Mg-Si系合金「A6063」を採用し、300kgfの天面加圧試験をパスするだけでなく、米国国防総省調達基準「MIL-STD-810G」に準拠する全12項目の堅牢性試験もクリアする優れた堅牢性を備える
重量は実測で1,337.5gと、13.3型モバイルPCとしてはやや重い印象

豊富な認証デバイスを搭載するなど、優れたセキュリティ性を確保

 法人が利用するPCでは、優れたセキュリティ性の確保が重要な要素となる。最近では、Windows 10で生体認証機能“Windows Hello”が実装されたことに伴い、一般消費者向けのPCでも指紋認証センサーや顔認証センサーを搭載する製品が増えているが、法人向けとなるとそれ以上の高度なセキュリティ機能が求められる。x360 1030 G2では、そういった法人が求める高度なセキュリティ機能をしっかり網羅している。

 まず、生体認証デバイスとしては、右パームレスト部に指紋認証センサー、液晶ディスプレイ上部に顔認証用の赤外線センサーを搭載しており、Windows Helloの指紋認証、顔認証のどちらも利用可能となっている。また、左側面にスマートカードリーダ、タッチパッド右上にNFCリーダ・ライターを標準で搭載しており、接触型ICカードや非接触型ICカードを利用した認証にも対応している。

 このほか、マルウェアにBIOSが攻撃された場合でも、その問題を自己修復してBIOSを復旧させる「HP Sure Start Gen3」、GPTやMBRが攻撃されてOSが起動しなくなった場合でも、簡単な作業で復旧が行なえる「HP BIOSpheare Gen3」、WebセッションをOSから隔離されたマイクロ仮想マシン上で実行することでマルウェアからの攻撃を防ぐ「HP Sure Click」といった豊富なセキュリティ機能を用意している。

 さらに、プリインストールアプリ「HP Client Security」では、指紋、ICカードPINなどのセキュリティ管理だけでなく、光学式ドライブやUSBストレージを利用する場合に認証を必要としたり、Bluetooth、IEEE 1394などのデバイスの利用許可の設定なども行なえる。もちろん、デバイスを利用する場合の認証にも、指紋や顔認証などの生体認証機能を活用できるので、利便性を大きく損なうこともない。

 加えて、特徴的な機能として用意されているのが「HP WorkWise」というアプリ。普段利用しているスマートフォンとリンクさせておけば、PCに近づくだけでログオン認証、離れるだけでロックへ遷移と、ログオンやロックを自動的に行なえるようになる。また、PCから離れている間に不正アクセスが行なわれたかを確認したり、PCの状態をスマートフォンからチェックし管理できる機能も用意されている。

 こういった高度なセキュリティ機能を組み合わせて利用することによって、圧倒的に高度なセキュリティと利便性を両立でき、幅広い法人用途に対応できるはずだ。

ディスプレイ上部には顔認証用赤外線センサーを搭載
右パームレストには指紋認証センサー
左側面にはスマートカードリーダも標準搭載
タッチパッドにもNFCリーダ・ライターを内蔵し、認証用として活用できる
プリインストールアプリ「HP Client Security」で、搭載するセキュリティ機能の管理が可能
リムーバブルメディアや、無線機能をはじめとした内蔵機能の利用権限の設定も可能
USBメモリなどのリムーバブルメディアは、ユーザー認証を経ないと利用できないようにもできる
「HP WorkWise」では、スマートフォンを利用してロック解除やPCの状態をチェックできる
リンクさせたスマートフォンを身につけておけば、PCに近づくと自動でロック解除、離れれば自動でロックへと遷移する
スマートフォンからPCの状態を確認できる
PCから離れている間に不正アクセスが行なわれたかをチェックすることも可能

フルHD表示対応の13.3型液晶にはのぞき見防止機能も搭載

 ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶を採用している。パネルの種類はIPS。視野角が広く、明るさや発色も申し分ないレベル。パネル表面は光沢仕様となっているため、外光の映り込みは気になるものの、全体的な表示品質は申し分ない。このクラスのノートPCとしては、十分に満足できる。

 ディスプレイは360度開閉可能となっており、クラムシェルノートPC、タブレット、スタンド、テントと4種類の形状で利用できる。ヒンジは2軸の回転軸を備える板状のものだが、双方がほぼ同じ割合で開閉するため、2軸の板状ヒンジなからスムーズな開閉が可能となっているうえに、液晶面を水平に開くことも可能。ディスプレイを開いて対面の人に内容を見せる場合でも、この仕様が有利となるはずだ。

 もちろんディスプレイにはタッチパネルを搭載。10点マルチタッチに対応するとともに、オプションのスタイラスペンも利用可能。今回はスタイラスペンは試せなかったが、2,048段階の筆圧検知に対応しており、なめらかな書き味が期待できそうだ。

 ところで、この液晶ディスプレイには、ほかの製品にはない面白い機能が搭載されている。それは、のぞき見防止機能だ。過去、のぞき見防止機能を備えるスマートフォンが存在したことがあったが、それと同じような機能と考えていい。キーボードのf2キー部分に機能が割り当てられており、キーを押す(BIOSの設定によってFnキーとの併用にもできる)ことでディスプレイの視野角を大幅に狭めることが可能だ。

 実際にのぞき見防止機能を有効にすると、斜めから見た場合に画面全体が白く飛んだようになり、表示している内容をほとんど把握できなくなる。これによって、外出時にPCを利用して業務データの編集や参照などを行なう必要がある場合でも、周囲の人に内容を見られる心配がなくなるわけだ。

 のぞき見防止機能を有効にした場合には、正面から見た場合でも全体的にやや白みがかった表示となってしまうため、常時利用はかなり厳しいという印象。それでも、電車やカフェなど不特定多数の人がいる公共スペースで作業を行なうときなどに活用すれば、情報漏洩のリスクを低減できるため、ビジネスモバイルユーザーにとって有効な機能と言えそうだ。

1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶を搭載
パネルの種類はIPS。広視野角で発色も十分に優れており、満足できる表示品質を確保
ヒンジは2軸の回転軸を備える板状で、スムーズにディスプレイを360度開閉できる
ディスプレイを水平に開いて利用できる
クラムシェルモード
テントモード
スタンドモード
タブレットモード。全4形状で利用できる
IPSパネルのため、視野角は十分に広い
のぞき見防止機能を有効にすると、視野角が大幅に狭まり、斜めから表示内容をほとんど確認できなくなる
のぞき見防止機能有効時には、正面からの表示品質も低下するため、常に利用するのは厳しいが、公共スペースでの利用時には情報漏洩のリスクを大幅に低減できる

アイソレーションタイプのキーボードを搭載

 キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのキーボードを搭載。キーピッチは18.7mmとほぼフルピッチで、ストロークは1.5~1.7mmと薄型のモバイルノートPCとしてはまずまず深い。クリック感もしっかり感じられ、打鍵感はかなり良好。タッチタイプも余裕で行なえる。

 また、標準でキーボードバックライトも内蔵しており、暗い場所での利用も快適だ。なお、ファンクションキー列は標準ではメディアコントロールなどの機能が標準となり、ファンクションキーはFnキーとの併用となっている。従来の機種はBIOS上からファンクションキーの入れ替え設定を行なわなければならず、再起動が必要だったが、本機種はOS起動後でもFn+Shiftキーで入れ替えが可能となった。Fnキーに白色LEDが搭載されており、どちらの状態なのか、視認できるようになっている。

【12時20分追記】Fn+Shiftによるファンクションキーの切り替え機能を追記しました。

 ポインティングデバイスのタッチパッドは、クリックボタン一体型のものを採用。タッチパッド自体の面積は十分に広く、ジェスチャー操作にも対応しているため、操作性は申し分ない。なお、このタッチパッドには先に紹介したように、NFCリーダ・ライター機能を内蔵している。

アイソレーションタイプのキーボード。標準的な配列で、タッチタイプも余裕だ
キーピッチは約18.7mmとほぼフルピッチ
ストロークは1.5~1.7mmと十分な深さがあり、クリック感もしっかり。打鍵感はかなり良好だ
キーボードバックライトも内蔵しており、暗い場所でのタイピングも快適
クリックボタン一体型のタッチパッドは、面積が広く、ジェスチャー操作にも対応しており軽快に利用できる

ビジネスモバイルとして申し分ないスペック

 x360 1030 G2には、搭載CPUやメモリ容量、内蔵ストレージ容量の異なるモデルがラインナップされている。今回は、CPUにCore i7-7660Uを搭載するモデルを試用したため、ここでは今回試用したモデルのスペックを紹介する。

 CPUは、紹介したように、Core i7-7660Uを搭載し、メモリは標準で16GBと余裕の容量を搭載。メモリを消費する作業もかなり快適にこなせるだろう。内蔵ストレージはNVMe/PCIe Gen 3x4準拠の512GB M.2 SSDと、こちらもビジネスモバイルPCとして十分な容量となっている。ビジネスモバイルPCでは、ローカルストレージに必要以上のデータを保存せず利用するのが基本ではあるが、x360 1030 G2には先に紹介下用に優れたセキュリティ機能が備わっているため、大容量ストレージも安心して活用できる。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LANとBluetooth 4.2を標準搭載。ディスプレイ上部には92万画素のWebカメラを搭載する。

 側面ポート類は、左側面にUSB 3,0×1、オーディオジャック、スマートカードリーダを、右側面にmicroSDカードスロット、Thunderbolt3×1、HDMI出力、USB 3.0×1をそれぞれ用意。薄さを極めながらも、豊富なポート類を用意して優れた拡張性を確保するだけでなく、そのほとんどが標準サイズのポートという点は、大きな利点となるだろう。このほかには、左側面に電源ボタンとボリュームボタンも配置している。

左側面には、USB 3.0×1、オーディオジャック、スマートカードリーダを搭載。電源ボタンとボリュームボタンも配置している
右側面には、microSDカードスロット、Thunderbolt3×1、HDMI出力、USB 3.0×1、電源コネクタを用意
付属のACアダプタは、特別コンパクトではなく、標準的なサイズ
ACアダプタの重量は、付属電源ケーブル込みで実測338.5gだった

ビジネスモバイルPCとして十分な性能を発揮

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 v1.0.1271」、「PCMark 8 v2.7.613」、「3DMark Professional Edition v2.3.3732」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。比較用として、日本マイクロソフトの「Surface Pro 2017年モデル」の結果も加えてある。

【表】ベンチマーク結果
HP EliteBook x360 1030 G2Surface Pro 2017年モデル
CPUCore i7-7600U(2.80/3.90GHz)Core i7-7660U(2.50/4.00GHz)
チップセット
ビデオチップIntel HD Graphics 620Intel Iris Plus Graphics 640
メモリDDR4-2133 SDRAM 16GBLPDDR3 SDRAM 16GB
ストレージ512GB SSD(NVMe PCIe)512GB SSD(NVMe PCIe)
OSWindows 10 Pro 64bitWindows 10 Pro 64bit
PCMark 10 v1.0.1271PCMark 10 v1.0.1238
PCMark 10 Score35973530
Essentials80866715
App Start-up Score114719160
Video Conferencing Score65375298
Web Browsing Score70536241
Productivity67016210
Spreadsheets Score78807591
Writing Score56995081
Digital Content Creation23322864
Photo Editing Score27903541
Rendering and Visualization Score14151741
Video Editting Score32163811
PCMark 8 v2.7.613
Home Accelarated 3.038173373
Creative accelarated 3.048944897
Work accelarated 2.050054342
Storage49615008
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)48.0865.46
CPU359417
CPU (Single Core)144157
3DMark Professional Edition v2.3.3732
Cloud Gate63318642
Graphics Score835212877
Physics Score34294001
Sky Diver37745103
Graphics Score36555112
Physics Score47775326
Combined score35284743
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)36234466
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)21903244

 結果を見ると、PCMark 10やPCMark 8のスコアの多くがSurface Proの結果を上回っている。これは、静音性重視のSurface ProではCPUの冷却が追いつかない場面があり、CPU処理能力がフルに引きさせていない可能性が考えられる。CPU自体の馬力はSurface ProのCore i7-7660Uのほうが上で、それはCINEBENCH R15.0の結果からも見て取れるが、Core i7-7600U搭載のx360 1030 G2も処理能力は十分に優れると言える。

 それに対し、3D描画関連のテストでは、そのほとんどがSurface Proのスコアを下回っている。これに関しては、Core i7-7660Uが内蔵するIris Plus Graphics 640の描画能力の高さが大きく影響していると言っていいだろう。とはいえ、x360 1030 G2のスコアも特別悪いというわけではなく、ビジネスモバイルPCとしてはとくに不満を感じる場面はないだろう。

 次に、バッテリ駆動時間だ。x360 1030 G2の公称バッテリ駆動時間は約12時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約11時間38分だった。ビジネスモバイルPCでは、駆動時間の長さも重要な要素だが、実測でこれだけの駆動時間なら、この点もまったく不満がない。1日の外出なら、多少ハードに使ったとしても、ACアダプタ不要で乗りきれるだろう。

優れた堅牢性とセキュリティ機能を備えるビジネスモバイルPCを探している人にお勧め

 x360 1030 G2は、最近の流行とは異なりフットプリントが極限まで小型化されておらず、重量も1.3kg超とやや重いため、モバイルPCとして見るとやや見劣りする部分もある。しかし、ビジネスユーザーが利用するモバイルPCとしては、その圧倒的な堅牢性や、豊富なセキュリティ機能を搭載している点など、ほかの製品を凌駕する魅力を備えていると感じる。外出の多い社員向けにモバイルノートPCの新調を考えている法人にとって、x360 1030 G2は選択肢として十分考慮すべき存在だ。

 またx360 1030 G2は、法人向けモデルではあるが、個人でも購入は可能。優れた堅牢性とセキュリティ機能を備えるビジネスモバイルPCを探している個人にも、十分にお勧めできる製品と言える。