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キーボードカバーとデジタイザペンがセットで7万円切りの12.2型着脱式2in1 PC

~ドスパラ「Diginnos DGM-S12Y」

ドスパラ「Diginnos DGM-S12Y」

 ドスパラは、Windows Hello対応指紋認証センサーを搭載したキーボードカバーやデジタイザペンを同梱した12.2型着脱式2in1 PC「Diginnos DGM-S12Y」(以下DGM-S12Y)の販売を開始した。11月21日の製品発表時には11月25日発売予定だったので、約2カ月遅れての販売となった。

 本製品には、メモリとSSDの容量が異なる3モデルが用意されている。キーボードカバーやデジタイザペンを含めて、税別直販価格64,800円(税込69,984円)からと購入しやすい価格設定になっているのが最大のウリだ。下表のようにモデルによって細かなスペックは異なる。

【表1】Diginnos DGM-S12Yのラインナップ
Diginnos DGM-S12Y-4064Diginnos DGM-S12Y-4128Diginnos DGM-S12Y-8256
CPUCore m3-6Y30(900MHz~2.2GHz)
メモリ4GB8GB
ストレージSSD 64GBSSD 128GBSSD 256GB
OSWindows 10 Home
ディスプレイ12.2型光沢液晶(1,920×1,200ドット、186dpi)
バッテリ駆動時間約6時間
USBUSB 3.0Type-C、USB 3.0
カードリーダmicroSDカード
映像出力USB Type-C、Micro HDMI
無線通信IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.0
Webカメラ前面200万/背面500万画素
サイズ約305×210×10.5mm(幅×奥行き×高さ)
重量本体約935g/キーボード部約635g(専用ペン含む)
センサー指紋認証センサー(キーボード部に搭載)
デジタイザN-Trig製デジタイザペン(256~1,024段階)
税別直販価格64,800円69,800円79,800円

 比較対象としては、Core m3/4GBメモリ/128GB SSDという構成の「Surface Pro 4」がOffice付きながら121,824円(キャンペーン価格116,424円)で販売されており、別売りのキーボードカバーが17,712円。つまり、DGM-S12YはSurface Pro 4の約半分の価格で入手できることになる。

 12.2型着脱式2in1 PCとして破格の値段を実現したDGM-S12Yが、どれだけの品質で、使い勝手、性能を実現しているのか、ドスパラから借用した製品版でレビューしていこう。

CPUはSkylake世代のCore m3のみ、メモリ8GB搭載モデルも用意

 Surface Pro 4は、Core m3、i5、i7とCPUラインナップが複数あるが、DGM-S12Yに搭載されるCPUはSkylake世代(第6世代)の「Core m3-6Y30(900MHz~2.2GHz)」のみ。それに4GB/8GBのメモリと、64GB/128GB/256GBのSSDが組み合わされている。

 本体サイズは約305×210×10.5mm((幅×奥行き×高さ)、重量は約935g。Core m3を搭載するSurface Pro 4の本体サイズは約292.1×201.4×8.4mm、重量は約766gなので、DGM-S12Yが一回り大きく、約169g重いわけだ。

 本体サイズが一回り大きいDGM-S12Yだが、ディスプレイは12.2型(1,920×1,200ドット)と、Surface Pro 4の12.3型(2,736×1,824ドット)より小さい。そのためディスプレイのベゼルが上枠約25mm、下/左/右枠約20mmとかなり広めに設けられている。最近のタブレット端末は狭額縁がウリの製品が増えているので、DGM-S12Yの広いベゼルにはどうしても野暮ったさを感じてしまう。

 DGM-S12Yの背面はフラットで、Surfaceシリーズのような自律するためのキックスタンドは装備されていない。またキーボードカバーは、背面側のカバーを三角形に丸めて本体を支えるスタンドのため、ディスプレイ面の角度を変更できない。これらは大幅なコストダウンを実現するために、割り切られた仕様として覚えておこう。

 一方、着脱式2in1 PCとして後発だけにインターフェイスは充実している。USB 3.0 Type-C、USB 3.0、Micro HDMI、ヘッドフォン出力、microSDカードスロット(SDXC対応)が用意されており、USB Type-CとMicro HDMIを映像出力に利用することで、本体と合わせて3画面出力が可能だ。

本体正面。上枠中央に約200万画素の前面カメラが搭載されている
本体背面。左下の製品名やシリアル番号などは直接印字されている。右下のリサイクル、製造番号はシールになっている。上部には約500万画素の背面カメラが搭載されている
本体上面
本体底面。中央にあるのはキーボードカバーと接続するための接点
右側面。左からスピーカー(右)、ボリュームボタン、電源ボタン、電源LED。電源LEDは青く点灯する
左側面。左からMicro HDMI、USB 3.0、microSDカードスロット(SDXC対応)、USB 3.0 Type-C、ヘッドフォン出力、電源端子、スピーカー(左)
本体パッケージ
同梱物一覧。左上から、本体、キーボードカバー、取扱説明書、ACアダプタ、デジタイザペン、単6電池、デジタイザペン用替え芯
本体の実測重量は約912g
キーボードカバーの実測重量は約609g
ACアダプタの実測重量は約134.5g
デジタイザペン(電池入り)の実測重量は約16.5g
本体、キーボードカバー、ACアダプタ、デジタイザペンの合計重量は実測約1,673g
付属のACアダプタは、入力100-240V、出力12V、2A、容量24W。ケーブル長は約175cm
200万画素前面カメラで撮影した写真。絞り値:f/2.4、露出時間:1/48秒、ISO速度:ISO-58
500万画素背面カメラで撮影した写真。絞り値:f/2.8、露出時間:1/34秒、ISO速度:ISO-36
キーボードカバーは三角形に丸めて本体を支えるため、ディスプレイ面の角度を変更できない

少々タイピング音が大きいものの、長時間快適に入力できるキーボード

 DGM-S12Yのキーボードカバーのキータッチはいい方向に予想を裏切られた。タイピング音がSurface Pro 4のキーボードカバーより大きく、高く感じるものの、キータッチ自体にはそれほど大きな差はない。長時間の文字入力も十分快適にこなせるキータッチだ。

 ただし何点か注意事項がある。DGM-S12Yのキーボードカバーには、「無変換」、「変換」、「PrintScreen」、「¥」などのキーが独立して用意されていない。これらのキーはファンクションキーと組み合わせて入力する仕様なので、頻繁に利用している方は慣れるのに時間がかかるだろう。

 またコスト的に当然の仕様だが、キーボードバックライトは内蔵されていない。もしバックライトが必須なのであれば、バックライトを内蔵したコンパクトなBluetoothキーボードと組み合わせる必要がある。

 DGM-S12Yのキーボードカバーは「Surface Pro 4 Type Cover」の約2倍の重量がネックだが、持ち運び時にディスプレイ面だけでなく背面もカバーできたり、底面の設置面積が広いぶん膝上で利用する際に安定するというメリットもある。できるだけ荷物を軽くしたい時には、コンパクトなタブレットスタンドと折りたたみキーボードを併用しよう。

キーボード面はディスプレイ側を持ち上げて、傾斜を付けられる
DGM-S12Yのキーボード。無変換、変換、PrintScreen、「¥」などのキーが独立して用意されていないが、その分キーの横幅が全体で揃えられている
キーピッチは実測19mm。窮屈な思いをせず快適に長時間タイピングできる
右のDGM-S12Yのキーボードカバーにはバックライトは内蔵されていない
指紋認証センサーはトラックパッド左上に内蔵されている。Windows Helloに対応しており、任意のキーをタップしてスリープから起こした後、指紋認証センサーに触れるだけでWindowsにログインできる。ちなみにトラックパッドのサイズは約90×60mm(幅×奥行き)で、Windows 10の高精度タッチパッドに対応している
スタンドになる背面カバーは、持ち運び時には背面を保護してくれる
DGM-S12Yのキーボードカバーは底面の設置面積が広い分、膝上で安定する
コンパクトなタブレットスタンドと折りたたみキーボードを併用すれば大幅に軽量化できる。ちなみにこの折りたたみキーボード「Wallet」の重量は約176g
DGM-S12YとSurface Pro 4でキーボードカバーのタイピング音を比較してみた。特にスペースキーの打鍵音がDGM-S12Yの方が大きく、高く感じる

デジタイザペンの書き味は良好、タブレット時はキーボードカバー取り外しが前提

 デジタイザペンの書き味もいい方向に予想が裏切られた。DGM-S12Yには、ハードウェアで256段階、ソフトウェアで1,024段階まで筆圧を検知するN-Trig製デジタイザペンが採用されているが、ディスプレイ面とペン先に適度な摩擦感が生じており、アナログな筆記用具に近い書き味が実現されている。ちなみに筆者の感覚では、ペン先の硬さはSurfaceペンの「H」相当だった。

 同じくN-Trig製の技術が採用されているSurfaceペンをDGM-S12Yで使用してみたが、筆者が試した限りではノック部分の消しゴム機能も含めて問題なく利用できた。せっかく標準でデジタイザペンが同梱されているので無理に買い換える必要はないが、どうしても書き味に不満を感じた場合には2H、H、HB、Bなどの異なる硬さのペン先を選べるSurfaceペンと置き換えてもいい。ただしDGM-S12YでSurfaceペンを使えることを、メーカー、編集部、筆者が保証するものではないので、あくまでも自己責任でご利用いただきたい。

 タブレット利用時にちょっと困ったのがキーボードカバーの取り扱い。DGM-S12Yのキーボードカバーは背面に回してもキーボードが無効にならないため、意図せずキーに触れると誤入力が発生するのだ。パームレスト部を握ればキーに触れることはないが、持つ場所を制限されるのはやはり使いづらい。DGM-S12Yとキーボードカバーの合計重量は実測で約1.52kgもあるので、タブレットとして利用する際には素直にキーボードカバーをバッグなどにしまう方が無難だ。

N-Trig製デジタイザペン。グリップ付近に2つのボタンが用意されている。ハードウェア的に256段階、ソフトウェア的に1,024段階まで筆圧を検知する
もちろんWindows Inkで利用可能。次期大型アップデート「Windows 10 Creators Update」で提供されるペイントソフト「Paint 3D」にも対応する
ペン先に適度な引っかかりがあり、書き味はアナログな筆記用具に近い
保証外の利用となるが、同じくN-Trig製の技術が使われているSurfaceペンも利用できる
DGM-S12YのデジタイザペンとSurfaceペンにペン先の互換性はない
DGM-S12Yのキーボードカバーは背面に回してもキーが無効にならない。キーに触れないようにパームレスト部を握る必要がある

一般用途には必要十分なAV機能、音の広がりには少々不満

 AV機能には突出した特徴はないものの、一般的な用途であれば十分満足いくレベルだ。12.2型で1,920×1,200ドット(186dpi)という解像度については用途によって不満があるかもしれないが、コントラストや輝度は標準的な品質をクリアしている。ただしDGM-S12YとSurface Pro 4を同じ画像で比較したところ、後者の方が階調豊かで、発色も鮮やかに描写していた。

 サウンド面も単体で聴いている限りはそれほど不満を感じることはなかったが、同じくSurface Pro 4と比較するとDGM-S12Yはステレオ音場の広がり感が乏しく、また音量もわずかではあるが小さいようだ。YouTube動画を視聴する程度なら標準のステレオスピーカーでも問題ないが、ミュージックビデオや映画などを本製品で鑑賞するのなら、外付けスピーカーやヘッドフォンなどが欲しくなるかもしれない。

12.2型ディスプレイの解像度は1,920×1,200ドット(186dpi)
左がDGM-S12Y、右がSurface Pro 4。どちらも最大輝度で表示している。並べて比較すると、階調の豊かさや発色の鮮やかさではSurface Pro 4に軍配が上がる
本体側面下部の左右にステレオスピーカーが内蔵されている。ステレオ音場の広がり感はやや乏しい印象を受けた

負荷の低い3Dゲームならプレイ可能、RAW画像の現像や動画の書き出しは力不足

 さて、最後にベンチマークのスコアを見てみよう。今回ドスパラから借用しているのは、4GBのメモリと128GBのSSD(Serial ATA)を搭載した「Diginnos DGM-S12Y-4128」だ。

 ベンチマークプログラムには、「PCMark 8 v2.7.613」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark v2.2.3509」、「Geekbench 4.0.3」、「Geekbench 3.4.1」、「CINEBENCH R15」、「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」、「CrystalDiskMark 5.2.1」を使用した。合わせて、実アプリの性能を計測するために「Adobe Photoshop Lightroom CC」、「Adobe Premiere Pro CC」、連続動作時間を計測するために「BBench」を使用している。

【表2】検証機の仕様
Diginnos DGM-S12Y -4128
CPUCore m3-6Y30(900MHz~2.2GHz)
GPUIntel HD Graphics 515(300~850MHz)
メモリ4GB
ストレージSATA SSD 128GB
OSWindows 10 Home
【表3】ベンチマーク結果
PCMark 8 v2.7.613
Home Accelarated 3.02,663
Creative Accelarated 3.03,135
Work 2.03,609
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score4,098
3DMark v2.2.3509
Fire Strike Ultra144
Fire Strike Extreme299
Fire Strike615
Sky Diver2,782
Cloud Gate4,306
Ice Storm Extreme27,916
Ice Storm38,077
CINEBENCH R15
OpenGL30.42fps
CPU212cb
Geekbench 4.0.3
32-bit Single-Core Score2,332
32-bit Multi-Core Score4,299
64-bit Single-Core Score2,605
64-bit Multi-Core Score4,649
OpenCL12,714
Geekbench 3.4.1 Intel(32-bit)
Single-Core Score2,159
Single-Core Score Integer2,208
Single-Core Score Floating Point2,169
Single-Core Score Memory2,044
Multi-Core Score4,314
Multi-Core Score Integer4,815
Multi-Core Score Floating Point4,957
Multi-Core Score Memory2,027
Geekbench 3.4.1 Intel(64-bit)
Single-Core Score2,265
Single-Core Score Integer2,372
Single-Core Score Floating Point2,277
Single-Core Score Memory2,031
Multi-Core Score4,475
Multi-Core Score Integer5,127
Multi-Core Score Floating Point5,044
Multi-Core Score Memory2,035
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット2,528
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト
1,280×720ドット4,965
SSDをCrystalDiskMark 5.2.1で計測
Q32T1 シーケンシャルリード516.770MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト335.957MB/s
4K Q32TI ランダムリード110.301MB/s
4K Q32TI ランダムライト116.703MB/s
シーケンシャルリード434.916MB/s
シーケンシャルライト165.478MB/s
4K ランダムリード13.231MB/s
4K ランダムライト46.895MB/s
Adobe Photoshop Lightroom CCで50枚のRAW画像を現像
4,912☓3,264ドット、自動階調4分42秒42
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し
1,920×1,080ドット、30fps10分8秒92
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%)
バッテリ残量5%まで5時間30分6秒

 ベンチマークソフトのスコアを見る限りでは、DGM-S12YはCPUにローエンドのCore m3-6Y30を搭載しているものの、一般的な用途には十分な処理性能を備え、「モンスターハンターフロンティア」や「ドラゴンクエストX」などの比較的負荷の低い3Dゲームであれば特にストレスなくプレイ可能であることが分かった。

 ただし、正直厳しく感じたのが、Adobe Photoshop Lightroom CCとAdobe Premiere Pro CCの処理時間。編集作業自体はなんとかこなせるものの、例えばAdobe Premiere Pro CCでは書き出しに実時間の2倍以上の時間を要している。頻繁にRAW画像の現像、動画の書き出しをするのであれば、別途デスクトップPCなどの専用のマシンを用意し、DGM-S12Yはあくまでもモバイル用として使い分けるべきだ。

 なお、高負荷時の発熱を、サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」でチェックしてみた。室温20°Cの部屋で、「CINEBENCH R15」の「CPU」を連続で5回実行した際のディスプレイ面の最大温度は40.2℃、背面の最大温度は38.6℃だった。DGM-S12Yは吸気口、排気口、冷却ファンなどは用意されていないが、少なくとも本体表面の発熱は低めに抑えられている。

ディスプレイ面の最大温度は40.2℃
背面の最大温度は38.6℃

コストパフォーマンスを最優先させた着脱式2in1 PC

 DGM-S12Yは低価格を実現するため、本体からキックスタンドを廃し、またキーボードカバーの重量増を余儀なくされている。本体、キーボードカバー、専用ペンを合わせた実測重量約1.53kgは正直ずっしり重たく感じる。

 しかし、本稿冒頭で述べた通りDGM-S12Yのコストパフォーマンスは抜群だ。「Office Home & Business Premium プラス Office 365 サービス」を搭載せず、細かな装備は異なるとは言え、ほぼ同スペックのSurface Pro 4の約半分の価格は驚異的とさえ言える。

 重量増は使い方や収納術でカバーし、とにかくコストパフォーマンスを優先させたいという方には、DGM-S12Yは待ちに待っていた1台と言えるだろう。