元麻布春男の週刊PCホットライン

出荷が再開されたIntel 6チップセット搭載機



 米国時間1月31日に発表されたIntel 6シリーズチップセットの不具合とリコールは、PC業界にとって極めてインパクトの大きなものだった。発表されたばかりの第2世代Coreプロセッサー・ファミリーにとって、事実上、唯一のチップセットであるだけに、各社の最新モデルについて、発表が中止される、発表されたものの発売が延期になる、すでに発売されたものは回収や交換を行なう、といった影響が直ちに現れた。しかし、それから半月あまりが経過して、そろそろ次の動きが見え始めている。

P67チップセット

 この問題の影響を受けるのは、Sandy Bridgeに対応したチップセットであるCougar Pointのみで、プロセッサであるSandy Bridgeに問題はないとされる。現時点でIntelの製品データベースに登録されているCougar Pointチップセットは、デスクトップPC用が5種(Q67、H67、H61、P67、B65)、ノートPC用が4種(QM67、HM67、HM65、QS67)、サーバー用が3種(C202、C204、C206)の計12種。ただし出荷中(Launched)はデスクトップPC向けがH67とP67の2種、ノートPC向けがHM67とHM65の2種となっており、残る8種はAnnounced(発表のみで未出荷)となっている。つまり問題の生じたB2ステップのチップセットが出荷されたのは上記4種のみで、残りは問題を修正したB3ステップ以降での出荷となる。

 Intelは今回の問題について、上記4種のチップセットがサポートするSATAポートのうち、影響を受けるのは3GbpsのSATA 2.0に対応した4つのポート(SATA 2〜5)のみであるとしている。つまり6Gbpsに対応したSATA 3.0ポート(上記4種のチップセットは0と1の2ポートを持つ)は影響を受けない。これを受けて、2月の上旬の段階でIntelは、SATA 3.0ポートのみを利用する設計になっていることを前提に、一部のOEM向けにB2ステップのチップセットの出荷を再開している。一時は第2世代Coreプロセッサー・ファミリーの出荷さえ停止しており、Intelの最新プロセッサが完全に干上がる事態になってしまったが、これで2月下旬から再び市場に第2世代Coreプロセッサー・ファミリーを搭載したシステムが供給されることになる見込みだ。

 なお、問題を修正したB3ステップのチップセットの出荷も始まったようである。が、当面はその供給は既出荷分(B2ステップ)の交換に優先的に充てられ、新規製品への採用にはもう少し時間がかかると言われている。

 どうしてこのような問題が生じたのか、あるいは問題の直接の原因が何だったのか、Intelは公式には明らかにしていない。が、インターネット上では、SATA 2.0ポートのPLL部のトランジスタに過電圧がかかってしまった、あるいはPLL部のトランジスタの材料に問題があった、などと言われており、このあたりに問題があることは間違いないようだ。これにより、時間と共にトランジスタが劣化し、やがては(加速度試験によると3年以上の利用で問題が生じるという)SATA 2.0ポート(SATA 2〜5)が利用できなくなってしまう。SATA 3.0ポート(SATA 0および1)はコントローラーも、それにクロックを提供するPLL回路も別であるため、影響を受けない、ということである。それが、一部のOEMに対し出荷を再開した根拠となっている。

●一部の国内メーカーが出荷開始、再開へ

 これを受けて、PCの出荷あるいは出荷の再開を決めるベンダーが現れている。Let'snoteシリーズのパナソニックと、ESPRIMOおよびLIFEBOOKシリーズを持つ富士通だ。(編集部注:21日にNECも出荷時期を明らかにした)。

Let'snote CF-S10
Let'snoteは6GbpsのSATAのみを動作させている

 パナソニックで影響を受けたモデルは、1月27日に発表された春モデルのうち、CF-S10シリーズ(12.1型ワイド液晶、2スピンドル)とCF-N10シリーズ(12.1型ワイド液晶、1スピンドル)の店頭および直販(マイレッツ倶楽部)モデル、CF-J10シリーズ(10.1型ワイド液晶、1スピンドル)直販モデルのプレミアムエディション。いずれも2月10日に発売延期の発表があった。CF-J10シリーズでも店頭モデルは1世代前のプラットフォーム(Calpella)であるため、影響を受けない。また、15.6型ワイド液晶を採用するCF-B10シリーズは、発売日が3月に設定されていたため、影響を受けずにすんだ。

 今回、影響を受けた3モデルのうち、店頭販売されるCF-S10とCF-N10の2モデルは、発売日が当初予定(2月20日)より6日遅れの2月26日となった。直販については、当初から2月26日の発売が予定されていたため、当初の予定通りとなっている。それよりさらに発売日が遅いCF-B10シリーズには、全く影響がない。

 このようにLet'snoteシリーズで影響が少なかった最大の理由は、当初からSATA 2〜5を使う設計になっていなかったことだとされる。IntelのノートPC向けリファレンスデザインでは、SATA 0あるいは1にプライマリストレージ(HDDもしくはSSD)を、SATA 2〜5にセカンダリストレージ(光学ドライブ)をそれぞれ接続することになっていたが、おそらく省電力の観点からSATA 2〜5は使わない(SATA 2.0コントローラを完全に無効にする)設計としたのだろう。プライマリストレージとセカンダリストレージの両方をSATA 2.0コントローラに接続する(SATA 3.0コントローラを無効にする)というオプションもあったハズだが、ポート数の関係か、それとも高速SSDオプションを提供する意図からか、SATA 3.0コントローラを活かす方を選択した。それが功を奏した格好だ。

ESPRIMO DH77/C

 一方、富士通はすでに6シリーズチップセットを採用した製品を出荷していただけに、影響は大きい。Intelの発表を受け直ちに出荷を停止するとともに、製品の交換を含めた対策の検討に入ったようだ。その結果、同社では接続の変更で回避可能なモデルについては、接続の変更を行ない、それが不可能なモデルに関しては交換という対策を行なうことにした模様だ。また、これと同様の措置をとり、影響を受けるモデルの再出荷を行なう。

 富士通で影響を受けるとされるのは、ディスプレイ一体型デスクトップPCであるESPRIMO FHシリーズ、省スペース型デスクトップPCであるESPRIMO DHシリーズ、そしてノートPCであるLIFEBOOK NH、AH、SH、PHの各シリーズだ。幸いだったのは、ESPRIMOの両シリーズが、HDDと光学ドライブを各1基だけ搭載可能な一体型と省スペース型であったことだ。HDDと光学ドライブを各1基搭載するノートPC同様、SATA 3.0コントローラだけを使う構成でフル機能が実現できるため、B2ステップのチップセットでも当初のスペックを満足させることが可能だ。

 もちろん、影響を受けるSATA 2もしくはSATA 4ポートに接続されていた光学ドライブを、影響を受けないSATA 1に接続し直すには、マザーボード上に端子が出ていること、人海戦術で接続し直すことが必要になるが、少なくとも後者については出雲における国内生産/組み立てのメリットが出た格好だ。富士通ではESPRIMO DHシリーズについては2月18日に出荷を再開し、その他のモデルについても大半を2月26日から提供再開するとしている。

 パナソニックと富士通のPCが幸いしたのは、国内生産/組み立てを行なっており、フレキシブルな対応が可能だったことに加え、対象製品がいずれも最大で2スピンドルまでのノートPCや省スペースデスクトップPCであったことだ。これが3台目のストレージデバイスを搭載可能なミニタワーPCだったりしたら、B3ステップのチップセットが入手可能になるまでジッと待つしかなかった。

●自作/BTO市場の影響は深刻

 そういう意味において、いわゆる自作PCあるいはホワイトボックスPC向けに利用される単体マザーボードは、それほどラッキーではなかった。一般的なマザーボードの多くは、チップセットが内蔵するSATAポートすべてを利用可能なようにコネクタが用意されるから、影響を回避することができない。6シリーズチップセットを採用したほぼすべてのマザーボードが店頭から撤去され、販売店も深刻な影響を受けることとなった。

 B2ステップの6シリーズチップセットを採用したマザーボードはすでに販売されており、各メーカーとも原則的にB3ステップのチップセットを搭載したマザーボードとの交換を打ち出している。唯一の例外はMSIで、マザーボードの交換というオプションに加え、PCI Express x1に対応したSATAカードを無料で送付するというオプションも選択可能になっている。つまりチップセットのSATAポートの代わりに、SATAカードを使うという問題回避策だ。

 交換を選択するか、SATAカード発送を選択するかはユーザー次第だが、どちらかを選択すると、残る選択肢を選ぶことはできなくなる。マザーボード交換かカード追加の二者択一である。とはいえ、すでに組み立てたPCをもう1度分解してマザーボードを交換するのは、新規に組み立てるより面倒な作業だ。それを回避できるという点では、SATAカードの追加は現実的な対応かもしれない。

●Intelの抱えるリスク、AMDの別の問題

 以前、この問題を取り上げた時、筆者はTick-Tockモデルに潜むIntelにとってのリスクについて触れた。が、もちろんそのリスクは、OEMやユーザーにも降りかかってくる。以前とは異なり、現在はプロセッサだけでなくチップセットも1社供給となっている。毎年、新しいプロセッサがリリースされ、2年でアーキテクチャーが更新されるTick-Tockモデルでは、サイクルが短すぎてサードパーティが独自にチップセットを供給することは難しいし、そもそも今のチップセットは昔で言うSouth Bridgeチップであり、元々サードパーティが得意とするものではない。

 この体制でリスクを回避したければ、複数社の異なるプラットフォームを採用するしかない。ストレートに言えば、IntelだけでなくAMDからもプロセッサを調達した方が良い、ということだ。

 問題は、必ずしもAMD側にその準備が整っているとは言えないことだろう。ようやく製造部門を切り離したAMDだが、CEOであったDirk Meyer氏を突然解任し、最高財務責任者(CFO)のThomas Seifert氏が暫定CEOを務めている状況では、この機に乗じてIntelを追撃する態勢が整っているとはとても言えない。

 チュニジア発の民主化運動が、大スポンサーであるアブダビ近隣の産油国バーレーンにまで飛び火したことも、AMDにとって潜在的なリスクだ。戦火により石油の輸出体制に支障が生じるなどしたら、Intel製チップセットのバグどころの話ではなくなってしまう。AMDはAMDで、別の難しい問題を抱えているように思う。