元麻布春男の週刊PCホットライン

Wireless USB用ディスプレイアダプタ「EZR601AV」を試す



 「次世代のUSB」というと、イコールUSB 3.0のことを指すと思ってしまいがちだが、次の普及を狙うUSB関連技術はほかにもある。最近、あまり話題に上らなくなったWireless USBだ。USB 2.0の帯域を拡張するのがUSB 3.0なら、USB 2.0を無線化するのがWireless USBである。が、旗振り役だったIntelがプラットフォームへの統合を断念してしまったため、ハシゴを外されてしまった格好になってしまった。

 しかしIntelが撤退したからといって、Wireless USB、あるいはその基盤技術となっているUWB(Ultra Wide Band)まで完全に消え去ったわけではない。PC周辺機器の無線化のソリューションに、Wireless USBを活用しようという企業は今も存在する。Wireless UWBの黎明期から活動を続けるイスラエルのWisairも、そうした企業の1つだ。

 その日本法人であるウィザージャパンが4月に発売するWireless USB製品が「EZR601AV」である。パッケージには、PCにWireless USB機能を付与するPCアダプタ(PC側Wireless USBドングル)、ディスプレイを接続するためのA/Vアダプタ、A/Vアダプタをワイヤレス接続するためのデバイスアダプタ(デバイス側Wireless USBドングル)、ACアダプタ(A/Vアダプタに給電する)、ドライバCDが含まれる。

 パッケージやカタログには「HDワイヤレスAVキット」と書かれ、ディスプレイやTVがワイヤレスでPCとつながると書かれている。もちろんこれは間違いではないのだが、誤解を招きやすい表現かもしれない。本製品は、PCのディスプレイ出力をワイヤレス化するのではなく、USB接続のディスプレイアダプタをワイヤレスで追加するものなのである。

製品パッケージ パッケージ内容 Wireless USBのアダプタ
ディスプレイを接続するためのA/Vアダプタ デバイス側のWireless USBドングルを刺したところ アダプタに対して垂直だけでなく、ドングルを水平に取り付け可能。背面に壁掛け用の穴もあり、このために用意されたのだろう

 以前この欄で、USB 2.0接続のビデオアダプタ(USB-VGAアダプタ)を取り上げたことがある。アイ・オー・データ機器の「USB-RGB/D」とバッファローの「GX-DVI/U2」の2製品だが、このPC側インターフェイスをWireless USBにしたとでも言えそうなのがEZR601AVだ。ただし、内蔵するチップは新しくなっており、Windows VistaやWindows 7のAeroにも対応する。

 利用法は、まずCDからドライバを組み込み、リブートした後にPCアダプタをPCのUSBコネクタに差し込む。A/Vアダプタにディスプレイが接続され、ACアダプタで給電されていれば、必要なデバイスドライバが組み込まれ、A/Vアダプタに接続されたディスプレイが、PCのセカンドディスプレイとして認識される(図1)。

 PCアダプタとA/Vアダプタ側のデバイスアダプタは出荷時にペアリングされており、ユーザーがペアリングの設定を行なうことなくディスプレイに画面が出力される。初期設定は表示画面の拡張(マニュアル等では移動モードと表記されている)として設定されているが、表示画面の複製(同ミラーモード)とすることも、もちろん可能だ(図2)。なお、この図2には、ミラーモードへの切り替えをタスクトレイアイコンで設定するようになっているが、普通に画面のプロパティから変更することができた(Windows 7の場合)。また、タスクトレイアイコンのうちDisplayLink Managerを右クリックすると図3のようなメニューが表示されるなど、若干マニュアル類とは異なる動作が見られた(常識的に判断できる範囲内ではあるが)。タスクトレイにはもう1つ、Wireless USBの接続を管理するワイヤレスUSBマネジャー(図4)も常駐する。

【図1】EZR601AVを利用する際に組み込まれるドライバ。かなり数が多い 【図2】ドライバの組み込み完了後に表示される注意書きだが、必ずしも利用環境とマッチしない場合があるようだ
【図3】タスクトレイに常駐するアイコンの1つは、ディスプレイ表示管理用のDisplayLink Manager 【図4】タスクトレイに常駐するもう1つのアイコンは接続の管理を行なうワイヤレスUSBマネジャー

 A/Vアダプタには、音声とディスプレイ出力の両方を扱えるHDMI端子と、アナログRGB出力を行なうミニD-Sub 15ピン、ミニD-Sub15ピン利用時に音声を出力するステレオミニジャックが用意されている。このどちらかを使って、ディスプレイとスピーカー(オーディオ出力デバイス)を接続する。

【図5】1,920×1,200ドットの解像度を持つディスプレイだが、利用可能な解像度の上限は1,440×900ドットであった

 今回筆者は、HDMI入力を持つPCディスプレイをA/Vアダプタに接続したが、A/Vアダプタがサポート可能な解像度は、ワイド時1,440×900ドット、4:3時1,280×1,024ドットを上限に、1,280×960ドット、1,280×800ドット、1,280×720ドット、1,152×870ドット、1,024×768ドット、832×624ドット、800×600ドットの9種類であった(図5)。外付けディスプレイとしてポピュラーなHD解像度(1,366×768ドット)や1,600×900ドットなどの解像度がサポートされていないため、ディスプレイのネイティブ解像度での利用が難しい。液晶ディスプレイや液晶TVに接続するより、プロジェクターに接続するべき製品なのかもしれない。

 パッケージ等にはHDMI端子経由で上限1,280×720ドット、ミニD-Sub15ピン端子経由で上限1,400×1,050ドットとの表記も見られるが、ワイド時の上限1,440×900ドット、4:3時の上限1,280×1,024ドットというスペックは、本製品がチップとして採用するDisplayLinkの「DL-125」のスペックとも一致しており、こちらが正しいと思われる(おそらく製品化の途中で仕様変更があったのだろう)。

本製品を利用してPCのディスプレイに出力したところ 本製品を利用して大型のTVに出力したところ

 DisplayLinkのDL-1x5シリーズには、最大解像度2,048×1,152ドットを採用した「DL-195」、1,920×1,080ドットをサポートした「DL-165」も用意されており、高解像度ディスプレイをサポートできないわけではない。が、この仕様になっているということは、Wireless USBの帯域の問題なのか、あるいはHDCPのサポートがない時点において高解像度をサポートしてもあまり意味はないという判断なのだろう。

 さて、実際に使ってみての印象だが、解像度が液晶ディスプレイのネイティブ解像度と異なることを除けば、接続は確実で、Aeroがサポートされている点も望ましいと感じる。たまに音がHDMI端子経由で出力されないことがあったが、そういう場合はA/VアダプタからHDMIケーブルを抜き差しする(差し直す)ことで問題は解消した。

【図6】HDCPに対応していないため、保護されたコンテンツの再生はできない

 パッケージ等にも明記されている通り、本製品はHDCPに対応していない。したがって、本機に接続されたディスプレイで保護されたコンテンツを再生することはできない(図6)。地上波放送にまでDRMが付与されるわが国で、AV用途に使うにはちょっと厳しい。YouTube動画の再生など、カジュアルな動画の再生や、プレゼンテーションなどビジネス用途が主流となるだろう。

 動画の再生は、ホスト側のCPUパワーにも依存しており、非力なNetbookやCULV機ではYouTubeのSD動画クラスでも、若干のコマ落ちが気になる。DisplayLink Manager(図3)にあるビデオの最適化にチェックをつけておくと、静止画がプログレッシブGIFのような表示(最初は粗く、徐々に精細になる)になるものの、動画の滑らかさは向上する。アプリケーションに応じて使い分けるのがベストだろう。逆にパフォーマンスに余力のあるCore i7のデスクトップ機であれば、ビデオの最適化をチェックしておかなくても、あまりコマ落ちを気にすることなく動画の再生が可能だった。

 全般に、本機の動作そのものは安定しており、不安を感じる部分は少ない。到達距離は2〜3mほどが実用的で、それより遠くなると障害物等の影響が顕著になってくる。見通しがよければもう少し長距離でもいけるだろう。

 その一方で、ドキュメントや製品の仕様には若干のズレが散見されるなど、コンシューマ向けの製品として、「あらびき」な部分が残されている。特に、本機がサポートするディスプレイ解像度を市場でポピュラーなアスペクト16:9のワイド液晶に揃えることはかなり重要だ。コンテンツへの対応という点でHDCPのサポートもぜひ欲しい。UWBの帯域拡大と、それによるフルHD解像度のサポートと合わせ、次のモデルに期待したいところだ。