元麻布春男の週刊PCホットライン

無線マウスと有線マウス



 GUIの普及で最も恩恵を受けたデバイスは、間違いなくマウスだろう。大昔はマウスが標準デバイスではなく、必要な人が別途購入するものだったと聞くと、驚く人が多いのではないかと思う。パッドなどのポインティングデバイスを内蔵したノートPCはともかく、マウスが付属してこないデスクトップPCはまずないと言って構わない。

 そのマウスで顕著になりつつあるのがワイヤレス化の流れだ。NECや富士通といったわが国の大手PCベンダーが販売する液晶一体型PCでは、ワイヤレスキーボードと無線マウスが付属するモデルが増えている。Appleもこの秋に発表したiMacでキーボードとマウスのワイヤレス化に踏み切った。だがこれは、今でもケーブル付きのキーボードとマウスを愛用する筆者にとって、あまり嬉しくない傾向だ。

 なぜキーボードとマウスをワイヤレス化するのか。その理由はレイアウトの自由度と、ケーブルが操作の妨げにならないこと、の2点だと思われる。リビングルームに設置するPCのように、キーボード入力の頻度が低く、使わない時はキーボードをしまっておきたい場合、あるいはキーボードやマウスとPC本体の距離が遠い場合、ケーブルは邪魔だ。マウスの場合、長いケーブルの重量が操作の妨げになるかもしれない。

 しかし、一般的な仕事机や学習机のような環境の場合、キーボードの設置場所はおおむね決まっており、レイアウトの自由度はそれほど必要ではない。長く使っているとマウスケーブルが硬化したり、クセがついたりして操作がやりにくくなることはあるが、そうでなければケーブルの存在を意識するほど邪魔になると思ったことは、個人的にはない。

●つきまとうバッテリ寿命の問題

 逆に無線マウスやキーボードには、寿命の限られたバッテリが不可欠、というデメリットが存在する。バッテリ残量を知らせるためのインジケータを備えたマウスは少なくないが、インジケータがあるとかえって残量が気になってしょうがない。例えば3つあるインジケータのうち1つが消灯するだけで充電することや、バッテリを交換することが気になり始め、2つ消えようものならおちおち使っていられない。以前、筆者はスクロールホイールの動作モードをモーターで切り替えるMX Revolutionを使っていたが、どうにもバッテリ寿命が気になって落ち着かず、使うのを止めてしまった(マウスとしては、とても気に入っていたのだが)。かといって、いきなりバッテリ切れでマウスやキーボードが使えなくなるのは、PCがフリーズしたかと思って慌てることになるので、これまた精神衛生上よろしくない。

 一般にデバイスのバッテリ寿命を延ばすには、使っていない時にスリープさせることが重要だが、これがマウスのレスポンスを低下させることがある。このレスポンス低下が一般的なPC用途にどれだけ影響を及ぼすかはともかく、間違いなく存在するからこそゲーム用のマウスはケーブルマウスが多い。最近のハイエンド無線マウスは、この問題を克服したものもあるようだが、ケーブルでつないでおけばそれで済む問題なのに、と思ってしまうのは、ケーブルマウス派だからだろうか。

 このバッテリ寿命の問題を克服したのが、ロジクールのM705だ。マラソンマウスという愛称を持つこの製品は、付属のアルカリ単三乾電池で最大3年間の寿命を持つのがウリ。筆者の手元にあった単三型のニッケル水素をセットしてみたが、電池残量35%で、残り時間383日と表示された。アルカリ電池に比べてニッケル水素電池は電圧が低いことが、このような表示になった理由なのだろうが、35%の残容量で1年以上持つと表示できるのは、たいしたものだと思う。マラソンというのもハッタリではない。

超小型のunifyingレシーバーが付属するM705 マラソンという愛称を持つだけに、M705のバッテリ寿命は長い。unifyingは、1つのレシーバーで最大6つのロジクール製対応デバイスを接続できることを意味する

 これだけの長時間駆動ができるのだからと、バッテリインジケータをマウスからとってしまったのも、筆者のような心配性のことを考えれば、正しい決断だろう。3年というのは、ほとんどPCの買い替えサイクルに匹敵する。新しいPCといっしょにマウスを買って、新しい電池をセットしたら、そのPCをリプレースするまでバッテリを気にせずにずっと使えるというのは分かりやすい。

●有線の最上位、ロジクール「M500」

今ではかえって貴重になったケーブルマウスのM500

 だが、それでも筆者の常用するマウスは、このM705ではない。これより格下(数字が若い)のケーブルマウスである「M500」マウスだ。格下と書いたがこのM500マウス、ゲーミングマウスをのぞく一般用途向けのケーブルマウスとしては最上位の製品になる。ロジクールにしても、マイクロソフトにしても、ゲーミングマウスはMacをサポートしないから、Macで使えるケーブルマウスとしても最上位、ということになる。ゲーミングマウスをMacにつないでも全く使えないということはないのだが、ドライバのカスタマイズなしではとても使いにくい。

 それでもこのM500が、ロジクールのマウス製品群の中では中位の製品であるのは事実で、たとえば主ボタンのクリック感(ボタンに使われるマイクロスイッチの感触)が、M705に及ばない。やっぱり数字の大きい上位のマウスは、マウスボタンをクリックした時の感触が違う。なんというか、精緻な印象を受けるのだが、M500はそこまで良くない。また上位モデルが備える「隠れ親指ボタン」(親指の付け根近くにある表面からは見えないボタン)がないのも、価格相応という感がする。

 それでもM500を常用するのは、バッテリを一切気にしなくて良いことと、マウスのレスポンスの問題だ。確かにM705はバッテリが3年持つかもしれないが、M500は全く気にする必要がない。その差はゼロではない。レスポンスというのは、マウスの動きだしの問題で、改善されているハズのM705でも、時々鈍いと感じる。

 ただ、これはデバイスのスリープの問題ではないのかもしれない。筆者の仕事部屋は、すぐそばを幹線道路が走るせいか、高圧の送電線があるせいか、以前からワイヤレスデバイスの動作が不調になりやすい。上述したMX Revolutionを使っていた時は、ケーブルでレシーバをマウスパッドのそばまで引っ張っていた。ちょっと前に試用したAppleのMagic Mouse(Bluetoothマウス)も、MacBook Proの内蔵Bluetoothでは不調だったため、MacBook Airを使ったくらいだ(こういうことは滅多にないハズである)。MacBook Proの内蔵Bluetoothでも動作はするのだが、時々マウスカーソルがあらぬ方向に跳んだり、動き出しが鈍いという問題が生じる。

 基本的にマウスとレシーバの距離を1m以上はあけたくない、というのが筆者の仕事場の環境なのだが、本体を机の左側に設置していることもあり、右利きの筆者の手と本体の距離はそれを越えてしまう。最近のマウスに使われている2.4GHzデジタル無線は、以前に比べれば格段に干渉に強くなっている(以前は1mも距離をとることはできなかった)と思うのだが、同じデジタル無線のBluetoothがそうであるように、筆者の仕事部屋ではまだ十分ではない。こうした問題も、ケーブルマウスなら気にしなくて済む。

 というわけで、マウスメーカーにはケーブルマウスの開発を続けて欲しい、できればもう少し高いグレードのケーブルマウスを開発して欲しいと思っている。そして、もう1つお願いしたいのは、多くの高機能マウスが備える「戻る」と「進む」のボタンで、マルチタッチ対応のパッドやMagic Mouseの「スワイプで移動」をエミュレートして欲しい、ということだ。

 マルチタッチ対応のトラックパッドでは3本指、Magic Mouseでは2本指による左右のスワイプで、Windowsにおけるマウスの「戻る」と「進む」に相当する機能が実現されている。逆に言うと、従来のボタン式マウスでは「戻る」と「進む」に相当する機能がなかったものと思われる(少なくともMacに標準添付されるMighty Mouseにはこの機能はない)。

Mighty Mouseには、「進む」や「戻る」に相当する機能はない マルチタッチをサポートしたパッドは、3本指のスワイプで移動ができる Magic Mouseでは移動は2本指でのスワイプとなる

 そこで筆者が使っているロジクールM500では、「戻る」と「進む」のボタンに、Option+カーソルキーを割り当てている。これは、SafariなどMac用のブラウザで「戻る」と「進む」に相当するキーコマンドなのだが、「スワイプで移動」と異なり、FinderやiTunesなど他のアプリケーションでは、戻ったり、進んだりすることができない。これが解決されると、ずいぶん使いやすくなるのではないかと思う。ぜひお願いしたい。

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