元麻布春男の週刊PCホットライン

AcerのIONネットトップ「AspireRevo」を試す



 Acerが5月22日に開催した発表会で最も注目を集めたのは、CULVプロセッサを搭載した薄型ノートPC「Aspire Timeline」だった。その陰に隠れてしまった感はあるものの、省スペース型デスクトップPCであるAspireRevoも、なかなか注目に値する存在だ。18cm×18cmで厚みが3cmという小型の1スピンドル機で重量はわずか750g。39,800円という低価格ながらWindows Vista Home Premiumをプリインストールする。

 それをおいても注目されるのは、グラフィックス/チップセットにNVIDIAのIONを採用するからだ。Atomプロセッサを搭載したプラットフォームは、ネットブック、ネットトップを問わず、安価で小型軽量なものが多いが、お世辞にもパワフルというわけにはいかない。NVIDIAのグラフィックスが加わることで、プラットフォームとしての性能がどのくらい向上するのかも気になるところだ。

 さて、手元の届いたAspireRevoは、3種類あるモデル中の一番下、23型液晶ディスプレイのバンドルされていない、搭載メモリ2GBのモデル「ASR3600-A34」だ。ほかに23型液晶ディスプレイをバンドルした「ASR3600-A35」(メモリ2GB、Webカメラスタンドつき)、メモリを4GBに増設しVESAマウントキット(他社製も含めたVESA準拠の液晶ディスプレイの背面に本機を取り付けるもの)とWebカメラスタンドをバンドルした「ASR3600-A36」も用意される。

 スペックを同じAtomベースの省スペースデスクトップPCであるASUSTeKのEee Box B202と比べてみたのが表1だ。同じ1.6GHz動作のAtomでも、Eee BoxのCPUがネットブック向けのAtom N270であるのに対し、AspireRevoのCPUがネットトップ向けのAtom 230となっている(おそらく若干だが安い)。最大の違いはチップセットがIntel純正ではなく、NVIDIAのIONとなっていることで、これにともないHDCP付きのHDMI出力がサポートされている。

 

【表1】Eee BoxとAspireRevo

Eee Box B202 Aspir Revo (ASR3600-A34)
価格 3万円台半ば(発売時、44,800円) 39,800円
OS Windows XP Home Edition SP3 Windows Vista Home Premium SP1
CPU Atom N270 (1.60GHz) Atom 230(1.60GHz)
チップセット Intel 945GSE Express
NVIDIA ION(MCP7A)
グラフィックス GMA950 NVIDIA 9400M G
ディスプレイ出力 DVI-I ミニD-Sub15ピン、HDMI(HDCP)
メモリ 1GB DDR2-533 2GB DDR2-800(最大4GB)
メモリスロット 2(空きスロット×1) 2(空きスロット×0)
HDD 80GB(5,400rpm SATA) 160GB(5,400rpm SATA)
LAN Gigabit Ethernet Gigabit Ethernet
無線LAN IEEE 802.11b/g/n IEEE 802.11b/g/n
USB 4(前面×2、背面×2) 6(前面×2、背面×4)
メモリカードスロット SD/SDHC/MS/MMC SD/SDHC/MS/MMC/xD
その他 S/PDIF eSATA
大きさ 26.9×222×178mm 30×180×180mm
重量(カタログ値) 1.16kg 0.75kg(実測値0.922kg)

 持った感じが意外と重かったので、重量を実測してみると922g(ベーススタンド込み)と、カタログ値(約750g)より2割以上重くなっていた。持ち運びするものではないから、170gほど重くなっても大きな問題ではないだろうが、誤差としては大きな方だ。

 大きさのイメージがつかみにくいかと思ったので、手元にあったMac miniと重ねてみた。底面積はAspireRevoが大きいが、シングルスピンドルであることもあって、大幅に薄い。重量もAspireRevoがハッキリと軽かった。

AspireRevoと付属のマウス、キーボード。小型のレシーバー(本体左上に装着済み)が付属する Mac mini(上)とAspireRevo
本体前面。上からメモリカードリーダ、ヘッドフォンジャック、マイクジャック、eSATAと並ぶ。HDMIのロゴシールが目立つが、その端子は背面で、前面にはない 本体背面。上からUSBポート(×4)、RJ-45(GbE)、HDMI、アナログRGB出力、電源ジャック、ケンジントンロック

●内部を確かめる

 こうした小型PCでは、やはり内部がどうなっているのか気になるところ。分解にはベーススタンド取り付け部にある保証シールをはがして、ネジを1本取り外す必要がある。が、ここではメーカー保証がなくなることを覚悟の上で、内部を見てみることにした。

 分解の手順としては、上記のネジを外した後、底板(電源スイッチとは逆側)を引きはがす。樹脂製のツメで固定されているから、それを折らないように気をつければ、案外と簡単に分解できる。底板と本体側を接続するケーブル等はないから比較的気楽だが、底板の付近はネジの関係でかみ合わせが少し複雑になっているから最後にした方が良い。

 内部はストレートな構造で、特に変わったところは見られない。チップセットとCPUはファン/ヒートシンクの下で、底板を外しただけでは見ることはできない。その他で目立つものとしては、2.5インチのSATA HDD(HGST製)、Atheros製の無線LANモジュール、2本のSO-DIMMソケットというところだ。メモリはDDR2-800の1GBモジュールが2枚取り付けられていた。

 ファンとヒートシンクを取り外すと、Acerのロゴとともに、チップセット(ION)とCPU(Atom)が現れる。ダイの大きさは一目瞭然で、Atomの小ささが目立つ。パッケージも小型だ。CPUのそばには、Realtek製のGigabit Ethernetコントローラも見える。

 ファン/ヒートシンクを取り外すことで、マザーボードを筐体から分離可能となる。裏面にはRealtek製のメモリカードリーダ用コントローラ(RTS5159)とサウンド用のCODECチップ(ALC662)のほかはレギュレーターが目立つ程度。中央に製造を受け持つFoxconnのロゴが見える。39,800円という価格を実現するために、合理的かつクリーンな構造になっている、という印象だ。

底板を取り外したAspireRevo ヒートシンクの下のチップセット(左)とCPU NVIDIA製のIONチップセット。MCP7Aという型番が見える
IntelのAtom 230プロセッサ マザーボード裏面

●パフォーマンスを確かめる

 さて、中身を確認したので、電源を投入してみることにする。付属のワイヤレスマウスとキーボードに電池(単四電池各2本)をセットし、とりあえずアナログRGB接続で20型液晶ディスプレイ(1,600×1,200ドット)を接続した。電源スイッチを押すと、一瞬だけファンがフル回転し、すぐに静かになる。

 筆者がAcerのPCを購入するのは初代Aspire one以来だが、リカバリがディスク・トゥ・ディスクのみで、リカバリメディアの作成や購入さえもできなかったAspire oneに対し、このAspireRevoにはディスク・トゥ・ディスクでのリカバリに加え、リカバリメディアとアプリケーション/ドライバディスク作成用のユーティリティが添付されており、進歩が感じられた(図1)。

 AspireRevoの性能について、おおまかなイメージをつかむために、Windows Vistaのエクスペリエンスインデックスをまず見てみることにした(図2)。グラフィックスがNVIDIAのGeForce 9400M Gになったこともあり、グラフィックス、ゲーム用グラフィックスのスコアがかなり良い反面、一番低いサブスコアがCPUになっている。

【図1】システムのリカバリメディアの作成にはDVD-R(1層)なら2枚、CD-Rなら9枚が必要になる。ほかにアプリケーション/ドライバディスク用にDVD-R(1層)なら1枚、CD-Rなら2枚が必要になる 【図2】Windowsエクスペリエンスインデックス。CPUの値が最も低い
AspireRevoのパーティション構成。ディスク・トゥ・ディスクリカバリ用の隠しパーティション(14.65GB)を確保した残りを、CドライブとDドライブに2等分してある デジタル出力(HDMI)はHDCPと音声出力をサポートしている

 いくつか簡単なベンチマークテストも行なってみたが、プラットフォーム全体のバランスで見て、CPUが足を引っ張っている感は否めない。同じAtomを搭載したHP Mini 1000(OSがWindows XP Home)に比べれば、グラフィックスの性能が向上している分だけベンチマークのスコアは良いが、画面解像度の上昇分が、体感的な性能向上をかなり打ち消しているようだ。

【表2】ベンチマーク



Aspire Revo HP Mini 1000 ThinkPad X200s
CrystalMark 2004R3 Mark 30,143 25,214 73,935

ALU 5,027 5,347 18,470

FPU 4,100 4,468 17,675

MEM 4,812 4,326 12,099

HDD 5,352 4,238 *2 16,527 *3

GDI 1,543 3,231 5,955

D2D 2,979 2,926 1,387

OGL 6,230 678 1,822
PCMark05 v120 PCMark 1,909 N/A *1 5,264

CPU 1,405 1,476 4,700

Memory 2,357 2,373 4,739

Graphics 1,986 N/A *1 2,000

HDD 4,317 2,829 *2 12,263 *3

*1 内蔵ディスプレイの解像度が1,024×768ドットに満たないため
*2 内蔵HDDが1.8インチタイプ(4,200rpm)のため
*3 SSDを利用しているため

  比較の対象を、筆者が最近常用しているWindowsノートであるThinkPad X200s(Core 2 Duo 1.86GHz、4GB DDR3メモリ)とすれば性能差は明らかだ。チップセット内蔵グラフィックス(GMA4500MHD)の性能だけならIONの方が上かもしれないが、トータルでの体感性能、使っていてのストレスの少なさという点ではX200sの方が確実に上である。この表のX200sは、Samsung製のSSD(64GB SLC)を搭載しているので、特にHDD関連のスコアが良いが、HDDを搭載していても印象は変わらないと思う。

 WindowsエクスペリエンスインデックスでAeroのデスクトップパフォーマンスがいくら良くても、表示する中身を生成するのは多くの場合CPUの役目だ。たとえば画面の任意の部分でマウスを右クリックしてプロパティメニューを表示する際、メニューを表示する前に必ずスピナー2回転分ほど待たなければならないというのは、「サクサク使える」とは言えないと思う。

 3Dグラフィックスを用いたゲームにしても、GPUだけで処理されるのではなく、多くはCPUとGPUの共同作業だ。どちらかだけでは快適にゲームを楽しむことはできない。グラフィックスが向上したことで、一般的な利用に際して、逆にCPUの弱さが目立っている印象だ。プリインストールのOSがWindows Vista Home Premium SP1だったため、ベンチマークテストを行なう前にSP2を適用したが、ダウンロード後のインストールに非常に時間がかかった。どんなにGPUが優秀でも、こうした作業の役には立たない。

 逆にGPUが向上したことの恩恵をストレートに受けられるのがBlu-ray Discの再生だ。残念ながらAcerは、本機用のオプションとしてBDドライブを用意していない。今回筆者は、秋葉原で5,000円〜7,000円程度で売られている安価なIDE接続の薄型BD-ROMドライブ(UJ-120)を、USB接続の外付けケースに収めたものをAspireRevoに接続、再生ソフトのPowerDVD 9 Ultra、HDMIをサポートした24型ディスプレイと組み合わせてBlu-ray Discの再生をテストしてみた。AspireRevoのHDMI出力はHDCPをサポートしているのはもちろん、音声出力も可能で、再生に全く問題はなかった。

 一般に動画のスムーズな再生には、ハードウェアによるアクセラレーションに対応したCODEC、プレイヤーソフトやプラグインといった環境が整っている必要がある。Blu-ray再生は、まさにこの条件を満たしており、このプラットフォームに最も適したアプリケーションの1つかもしれない。言い替えると、Blu-rayの再生が可能だからといって、すべてのHD動画をスムーズに再生できるとは限らない、ということだ。

 チップセットが945GSEからIONに変わったことで、3Dグラフィックスや動画再生支援機構の性能は向上する。しかし、Blu-rayのような例外を除くと、グラフィックスが強化された分だけプラットフォームとしてのバランスが崩れた印象もある。これを踏まえると、ネットブックというプラットフォームがいかに絶妙なバランスだったのかを痛感する。

 GDIというレガシーなAPIを利用するWindows XP、レガシーなAPIのアクセラレーションに対応したチップセット、若干非力だが小容量のバッテリで駆動可能な低消費電力のプロセッサ、非力さをカバーする小さなディスプレイで、1つのバランスが保たれている。おそらくそれはIntelの計算をも上回る天の配剤であり、結果として意図した以上の組合せになったのだと思う。多くのユーザーが不満を持ちつつも使えると感じたのは、このバランスゆえだったのではないだろうか。新たなバランスポイントを探るという点では、IONとCULVプロセッサの組合せを見てみたいように思う。

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