■本城網彦のネットブック生活研究所■
ソニー「VAIO W」 |
ソニーはこれまで、Intel Atomプロセッサを使った「VAIO type P」を出していたものの、カテゴリ的に少し変わった商品であり、一般的なネットブックはラインナップとして無かった。そこに登場したのが「VAIO W」だ。8月8日から一部製品の出荷が始まっている。筆者の手元にも量産試作機が届いたので、試用レポートをお届けする。
ここ1年でネットブックと呼ばれるミニノートPCは、もう筆者も型番が覚え切れないほど大量に出回った。最近ではCPUが1.60GHz/FSB 533MHzのN270から1.66GHz/FSB 667MHzのN280へトレンドが移りつつあるものの、チップセットは相変わらずIntel 945GSE Express、グラフィックスはチップセット内蔵のGMA950。もしくは同じIntel AtomプロセッサでもZ系のCPUでチップセットはIntel US15W、グラフィックスは内蔵のGMA500といったお決まりのパターンだ。デザインやBluetoothの有無など味付けの部分でメーカーは工夫していた。
ところが、最近になって液晶ディスプレイの解像度が元々の1,024×600ドット(WSVGA)を中心に、少し解像度が落ちた1,024×576ドットと、逆に高解像度となる1,366×768ドット(WXGA)と計3種類混在するようになってきた。この新たに登場した2つの解像度、実は曲者で、少し解像度が落ちた1,024×576ドットを搭載しているネットブックはIntel 945GSE Express/GMA950。逆に高解像度のパネルを搭載しているネットブックはIntel US15W/GMA500のものばかり(少なくとも国内において)。IntelやMicrosoftのネットブックに対する制限からこうなっているのかは不明であるが、GMA500は動画支援機構こそあるものの、描画パフォーマンスはGMA950の半分程度。ネットブックとは言え、Windowsの動作がモッサリしてしまい個人的にはあまり好きではなかった。「GMA950でWXGA搭載のネットブックがあればいいのに……。」とずっと思っていたのだ。
このような状況の中、ほぼ1年遅れで発表されたソニー版のネットブック。発表直後は「やっとソニーからもネットブックが出たのか!」と思っていただけだったが、そのスペックを良く見ると「Intel N280に945GSE Express/GMA950で10.1型の液晶パネル搭載」ここまでは普通。ところが解像度は「1,366×768ドット(WXGA)」と書いてある。これは国内では今のところ日本HPの「HP Mini 2140 Notebook PC」しかない。
【お詫びと訂正】初出時に、Intel 945GSEとWXGA液晶の組み合わせはVAIO Wが初としておりましたが、これより先に日本HPの製品があります。お詫びして訂正させていただきます。
その他の仕様は、CPU Intel AtomプロセッサN280(1.66GHz/FSB 667MHz)、メモリ1GB、HDD 160GB、IEEE 802.11b/g、100BASE-TX、Bluetooth 2.1+EDR、31万画素のWebカメラ、アナログRGB出力、SDカード対応スロット、メモリースティックデュオ対応スロット、USB 2.0×2、サウンド入出力などを搭載し、約267.8×179.6×27.5~32.4mm(幅×奥行き×高さ)の重量約1.19kg。バッテリ駆動時間は約3.5時間だ。唯一、メモリースティックデュオ対応スロットが珍しい程度で、ネットブックとしては一般的な仕様となっている。
カラーバリエーションは、量販店用に「White」(8月8日発売)、「Pink」(8月22日発売)、VAIOオーナーメード用として「Brown」の計3種類。ボディカラーにあわせた「キャリングポーチ」と「USB光学式マウス」がセットになった「アクセサリーキット」も用意、VAIOオーナーメード限定「メッセージ刻印サービス」など、本体以外にも楽しめるようになっているのがいかにも同社らしい。
全体のデザインはいかにもVAIOだ。裏面を含め少し部分的にプラスチックっぽい雰囲気も残っているのだが、価格を考えると十分。天板にあるVAIOのロゴがいい感じだ。HDDの音やファンの振動は若干あるものの、気になるレベルでは無く、熱も少ない。うまくまとまっている。
次にキーボード。ご覧の様に、キーとキーとの間がはっきり分離しているアイソレーションタイプだ。周囲の空間も含め見た目のバランスが良い。[Enter]側の端が少したわむ程度で、全体的にはガッチリしててフニャフニャした感じも無く、ここまでは筆者の好み。ただキータッチがキーボードを押していると言うより、スイッチを押している感覚となる。この部分が好き嫌いによって意見が分かれるところだろう。
キー幅に関しては、主要なキーは17mm確保されているものの、右端にある、例えば^\[]:_などのキー、↑↓←→キー、AltキーやWindowsキーなどは約14mmと若干狭くなっている。パームレストは十分広い。タッチパッドは滑りも良く、ボタンも重くなく軽くなく丁度いい。
スピーカーから出る音は、音量的には十分。ただし、音質はかなりシャリシャリしている。バランス的に中域から下のボリューム感が欲しいところだ。無理にイコライザーを使ってブーストすると低域が歪む。同じクラスのネットブックでもっと音質が良い機種もあるので、もうひと工夫お願いしたい。
●GMA950とWXGAの使い勝手EeePC 901-Xとの画面比較。ご覧のように圧倒的な情報量の差となる。縦はもちろんとして、横もかなり余っているのが分かる |
さて、一番の売りである10.1型WXGAのパネルとGMA950のコンビネーションは、ベンチマークテストの結果を見ても分かるように、予想通りなかなか良い。GMA500のように切れが悪いわけでもなく、普通にWindowsをオペレーションが出来るのだ。もちろん縦768ドットあると、ネットでもアプリケーションでも画面が狭い感じは全くしない。10.1型にWXGAの解像度は、一般的なパネルの組み合わせで考えると、相対的に文字は小さく見えるが、筆者が見ても字が小さ過ぎて読めないとは思わないので、この点が気になる事はまず無いだろう。ただし、グレア(光沢)液晶パネルなので映り込みはそれなりにある。
輝度やコントラストも十分。写真を見ても動画を見ても綺麗だ。ただネットブック全体に言えることであるが、工場出荷状態では少し青っぽいので、GMA950のコントロールパネルで少し色味を調整した方がベター。いずれにしてもこうなってしまうと「もはやネットブックと呼べないのでは!?」と思うほど。GMA950+WXGAのネットブックがなかなか出なかった理由(=普通のノートPCが売れなくなる)も、ある意味納得してしまった。
160GBのHDDは、リカバリエリアで1つ別パーティションを持っているが、Windowsは残り全てをワン・パーティション。タッチパッドのドライバはお馴染み「Synaptics TouchPad」。スクロールはタッチパッドの端を使うタイプだ。
付属アプリケーションは、「マカフィー・PCセキュリティセンター(90日期間限定版)」、「ATOK 2009 for Windows(30日期間限定版)」、そして「VAIO Media plus」(DNLAクライアント)となる。なお、VAIOオーナーメード/法人向けカスタマイズの場合は、必要に応じて「Microsoft Office」をプリインストール可能となっている。
ちなみに、音量や液晶の明るさを表示するオンスクリーン表示の出方やVAIO Updateなど「まさにVAIOそのもの」だ。ネットブックとは言え、VAIOの冠が付くだけのことはある。
さすがに後発だけあって要所要所でツボをおさえた設計となっている。加えてGMA950グラフィックス+WXGAの10.1型液晶パネルを搭載するVAIO Wはもう普通のノートPCだ。CPUもAtomとは言えクロックは1.66GHz。一般的なアプリケーションなら十分使える。ネットブックだからと言って我慢しなければならない部分は何も無く、その上VAIOのDNAはしっかり受け継がれている。唯一キーボードとスピーカーの音質は気になるが、数あるネットブックの中でもお勧めの1台だ。