■平澤寿康の周辺機器レビュー■
Intelは、MLC NANDフラッシュメモリを採用するSSDの新モデル「SSD 510」シリーズを発表した。接続インターフェイスはSATA 6Gbpsに対応し、公称リード500MB/sec(250GBモデル)と非常に高速なアクセス速度を実現するとしている。今回、同製品をいち早く試用する機会を得たので、ハード面の仕様やパフォーマンスを見ていこう。ただし、今回試用した個体は評価機のため、製品版と仕様やパフォーマンスが異なる可能性がある点はご了承願いたい。
●SATA 6Gbpsに対応、Marvell製コントローラを採用MLC NANDフラッシュメモリ採用のIntel製SSD「X25-M Mainstream SATA SSD」シリーズは、10チャンネル並列アクセスにより、安定して高速なアクセス速度を実現していることから、他社製SSDよりも若干高価ながら、現在でもまだ人気が高い。今回発表されたのも、同じくMLC NANDフラッシュメモリを採用する「SSD 510」シリーズだ。容量250GBの「SSDSC2MH250A2C」と、容量120GBの「SSDSC2MH120A2C」の2モデルがラインナップされている。
SSD 510シリーズは、X25-Mから、さまざまな点で変更が加えられている。手にとってまず気が付くのが、本体デザインだ。X25-Mは、2.5インチHDDサイズながら、厚さが約7mmと薄く、上部に約2.5mmのスペーサーが取り付けられていた。それに対しSSD 510シリーズは、厚さ9.5mmの2.5インチHDDサイズの金属ケースを採用しており、他社製の一般的なSSDとほぼ同等の外観となっている。
アクセス速度は、250GBモデルがリード500MB/sec、ライト315MB/sec、120GBモデルがリード450MB/sec、ライト210MB/secと、従来モデルから大幅に高速化されている。もちろん、接続インターフェイスがSATA II(SATA 3Gbps)ではこの速度が実現できないため、SSD 510シリーズでは、SATA 6Gbpsに対応しており、このアクセス速度を引き出すには、当然SATA 6Gbps対応ポートに接続して利用する必要がある。
【お詫びと訂正】初出時に、250GBモデルがリード450MB/sec、ライト300MB/sec、120GBモデルがリード400MB/sec、ライト200MB/secとしておりましたが、公称値が変更されたため、記事内容を修正しました。
そして、SSD 510シリーズの最大の変更点と言えるのが、コントローラだ。X25-Mでは、10チャンネル並列アクセスを実現した、Intel製コントローラが採用されていた。それに対しSSD 510シリーズでは、Marvell製コントローラが採用されている。採用されているコントローラは「88SS9174-BKK2」で、同じく400MB/sec超のアクセス速度を実現している、PLEXTORの「PX-M2S」シリーズや、CORSAIRの「Performance 3」が採用するコントローラと全く同じものだ。
他社製コントローラを採用している理由は不明だが、このコントローラがIntel製以外のSSDでも採用されていることから、IntelとMarvellが何らかの協力体制のもとで開発したものというよりは、コストダウンのために採用された可能性の方が高そうだ。いずれにせよ、これが大きな変更点であることは間違いない。
ただ、コントローラは同じだが、内部の構造まで他社製品と同じにはなっていない。内部の基板を見ると、PX-M2SシリーズやPerformance 3シリーズでは、1.8インチサイズの基板表裏に、計8個のフラッシュメモリチップが搭載されていたが、SSD 510シリーズでは、従来同様2.5インチサイズの基板となっており、基板表裏に計16個のフラッシュメモリチップが搭載されている。
採用されているチップは、従来モデル同様、34nmプロセスで製造された、Intel製のMLC NANDフラッシュメモリだ。250GBモデルでは、容量128Gbitチップが基板表裏に8個ずつの計16個、120GBモデルでは、容量64Gbitチップが基板表裏に8個ずつの計16個搭載されている。
一方、キャッシュメモリはHynix製の128MB DDR3 SDRAMが搭載されており、PLEXTORのPX-M2SシリーズやCORSAIRのPerformance 3シリーズと同じだ。
●リード実測470MB/secオーバーを記録
では、速度をチェックしていこう。今回は、ベンチマークソフトとしてCrystalDiskMark v3.0.1a、HD Tune Pro 4.60の2種類を利用した。テスト環境は下に示す通りで、不具合の解消されていないIntel H67 Express搭載マザーボードを利用しているが、テスト用のSSDとOS起動用のHDDを、それぞれSATA III 6Gbps対応ポートにのみ接続してテストを行っているため、不具合の影響は受けない。この検証については、インテルより、性能に影響が出ないことを確認している。
また、比較用として、X25-Mシリーズの160GBモデル「SSDSA2MH160G2GC」と、PLEXTOR PX-M2Sシリーズの256GBモデル「PX-256M2S」、CORSAIR Performance 3シリーズの256GBモデル「CSSD-P3256GB2-BRKT」の結果も加えてある。
【テスト環境】
CPU:Core i7-2600K
マザーボード:Intel DH67BL
メモリ:PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2
グラフィックカード:CPU内蔵(Intel HD Graphics 3000)
HDD:Seagate ST31000340AS(OS導入用)
OS:Windows 7 Professional 64bit
まず、CrystalDiskMarkの結果を見ると、シーケンシャルリードは250GBモデルで475GB/sec、120GBモデルで428GB/sec、シーケンシャルライトは250GBモデルで328MB/sec、120GBモデルで210MB/secであった。シーケンシャルリードは、天野氏が公開した公称値には届いていないものの、シーケンシャルライトは届いている。ちなみに、この250GBモデルの速度は、PX-M2SシリーズやPerformance 3シリーズの256GBモデルとほぼ同等である。
ランダムアクセス速度は、シーケンシャルアクセス速度と違い、250GBモデルと120GBモデルにほぼ差が見られない。ただし、PX-M2SシリーズやPerformance 3シリーズの256GBモデルの結果と比べて、やや高速になっている。このあたりは、採用するフラッシュメモリチップの違いや、ファームウェアの違いによるものと考えられる。この傾向は、HD Tune Proの結果を見ても同様だ。しかし、X25-Mとの比較では、かなり数値が低下している部分がある。どうやら、ランダムアクセス性能に関しては、X25-Mの方が上回るようだ。
●AMD環境では利用するAHCIドライバに注意
次に、AMD環境でのパフォーマンスをチェックしてみた。PLEXTOR PX-M2Sシリーズでは、AMD環境において利用するAHCIドライバの違いでパフォーマンスに差が出ることが報告されている。そこで、同じコントローラを採用するSSD 510シリーズでも同様の問題が発生するか検証してみた。テスト環境は下に示すとおりで、速度のチェックにはCrystalDiskMark v3.0.1aを利用した。
【テスト環境】
CPU:Phenom II X4 965 Black Edition
マザーボード:ASUSTeK M4A89GTD PRO/USB3
メモリ:PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
グラフィックカード:AMD 890GX内蔵 Radeon HD 4290
HDD:Seagate ST31000340AS(OS導入用)
OS:Windows 7 Professional 64bit
まず、Microsoft標準AHCIドライバを利用した場合には、先ほどのIntelチップセット環境と比較して若干速度が落ちている部分も見られるが、おおむね同等のパフォーマンスが発揮されている。それに対し、AMDが配布しているAHCIドライバ(Catalyst 11.1)を利用した場合には、かなり速度が低下していることがわかる。
なお、今回SSD 510シリーズが筆者の手元から離れた後に、AMDはCatalyst 11.2を公開した。残念ながら、SSD 510シリーズでCatalyst 11.2を導入した状態でのテストは行なえなかったが、同じコントローラを搭載するCORSAIR Performance 3シリーズが手元にあったので、そちらを利用して検証してみたところ、Catalyst 11.1の場合とほぼ同等の結果であった。そのため、おそらくSSD 510シリーズでも同様の結果になるだろう。
もちろん、今後のバージョンアップでAMD製AHCIドライバのパフォーマンスも改善される可能性は大いにあるが、少なくとも現状は、Microsoft標準AHCIドライバを利用した方がいいだろう。
●Intelのブランドを重視する人にオススメ
SSD 510シリーズは、従来モデルであるX25-Mよりも圧倒的なシーケンシャルアクセス速度を実現するとともに、同じコントローラを採用する他社製SSDに対しても、若干のアドバンテージがあり、単体の2.5インチSSDとしてほぼ最高速の製品と言っていいだろう。ただし、その差は利用時に体感できるほど大きなものではなく、圧倒的な魅力があるとは言いづらく、Intelのブランドも重視する人にお薦めと言ったところだろう。
SSD 510シリーズの実売価格は、250GBモデルが56,000円~58,000円ほど、120GBモデルが26,000円~28,000円ほどが予定されている。この金額は、同じコントローラを搭載する他社製SSDとほぼ同等だが、Intel製SSDとしてはかなり安価であり、この点も大きな魅力となるだろう。
とはいえ、ランダムアクセス速度は既存製品より落ち込んでいるところもあるので、購入に際してはそのあたりを天秤にかける必要があるだろう。
(2011年 2月 28日)