平澤寿康の周辺機器レビュー

低価格USBメモリまでUSB 3.0対応にしたバッファローの戦略




 現在市販されているUSBメモリは、大多数の製品がUSB 2.0に対応するものとなっており、USB 3.0に対応するものは、ハイエンド向けのものを中心として、まだ数が少ないのが現状だ。

 そういった中でバッファローは、比較的低価格な、ローエンドからメインストリームをターゲットとするUSBメモリ製品の一部を、USB 3.0に対応させ販売を開始する。そこで、ストレージ事業部 STマーケティンググループ 齋藤琢也氏にその意図を聞くとともに、実際に発売されたUSB 3.0対応USBメモリのパフォーマンスを検証してみた。

●率先してUSB 3.0の普及とコモディティ化を進めるバッファロー
ストレージ事業部 STマーケティンググループ 齋藤琢也氏

 バッファローは、常にに最新インターフェイスに対応する製品をいち早く市場に投入している。USB 3.0対応の周辺機器についても、外付けHDDとUSB 3.0インターフェイスカードを、2009年10月に世界最速で市場に投入しただけでなく、その後も多数のUSB 3.0対応機器を発売してきた。現在では、バッファローをはじめ、多くの周辺機器メーカーがUSB 3.0対応周辺機器を多数販売している。

 ただ、USB 3.0対応機器が発売されて1年半以上経過しているものの、USB周辺機器はまだUSB 2.0対応製品のほうがバリエーションが多いだけでなく、販売数も圧倒的に多いのが現状だ。そういった中でバッファローは、メインストリームからローエンドとして位置付けられているUSBメモリ製品4シリーズをUSB 3.0に対応させ、7月上旬に販売を開始する。これによりバッファロー製USBメモリは、従来までは全90アイテム中4アイテムがUSB 3.0対応だったのに対し、全96アイテム中30アイテムになり、USB 3.0対応製品が一気に拡充されることになる。

 ここ1年ほどの間に発売されたPCでは、USB 3.0に対応する製品がかなり増えてきた。バッファローが調べたところでは、この1年の間に発表されたPCのうち、USB 3.0搭載モデルは39.3%に上昇しているそうだ。また、2011年春以降に発売されたPCでは、メインストリーム以上のモデルでは、ほぼ標準的にUSB 3.0ポートが搭載されるようになっている。

 とはいえ、価格の安いエントリークラスのPCでは、まだUSB 3.0に対応するものは少ない。エントリークラスのPCにUSB 3.0が搭載されないのは、IntelチップセットがUSB 3.0に標準対応していないという点が大きく影響している。USB 3.0に対応させるには、別途コントローラチップを搭載しなければならないため、低価格なエントリークラスのPCにはコスト的に搭載しづらい。そう考えると、今回バッファローがローエンドからメインストリームをターゲットとするUSBメモリをUSB 3.0に対応させたとはいえ、すぐにUSB 3.0対応のメリットを最大限享受できるユーザーはやや少ないと考えられる。

 ちなみに、Intelチップセットでも、2012年初頭頃に登場が予定されている次世代CPU向けチップセットから、USB 3.0に標準対応する予定となっており、2012年以降は、発売されるPCの大半が標準的にUSB 3.0に対応してくるものと予想される。今回バッファローがローエンドからメインストリームをターゲットとするUSBメモリをUSB 3.0に対応させたのは、それを先取りしてるものと考えていいだろう。

 ただ、本当の理由は違うところにある。バッファローは、数年前よりPCだけでなく家電分野も含めたデジタル機器を快適に利用できるようにするという戦略を立て、さまざまな製品を送り出している。そういった中で特に重視しているのが“HD映像”だ。HD映像はデータサイズが大きいため、快適に扱うには大容量かつ高速なストレージデバイスが必須となる。そこで、USB 3.0対応製品をいち早く投入するとともに、USB 3.0対応機器の拡充も進めてきたそうだ。

 そして今回、ローエンドからメインストリームをターゲットとするUSBメモリをUSB 3.0に対応させたのは、製品の拡充が順調に進み、次のステップへと進む必要があると判断したからだ。そのステップとは、USB 3.0対応機器のコモディティ化だ。

 コモディティ化とは、他の製品に対する付加価値がなくなり、一般的な普及品になるということ。現在USB 3.0対応機器を選択する場合、高速な転送速度が必要という明確な理由がある場合がほとんどだ。価格的にはUSB 2.0対応製品よりも高価なものが多く、USB機器の中でも、USB 3.0対応の製品はどちらかというとニッチな存在だ。しかし、現在では、エントリーユーザーでもHD動画などの大容量データを日常的に扱うようになってきている。そこで、エントリーユーザーでも特に意識することなく、気兼ねなくUSB 3.0対応機器を購入し利用できるよう、USB 3.0製品のコモディティ化を進めるというのが、バッファローの戦略なのだ。

 もともとバッファローは、ネットワーク機器などさまざまな分野で製品の早期投入や価格破壊
を行なってきた。顕著な例が無線LANで、現在では無線LAN機器は完全にコモディティ化が達成されているが、その先導役がバッファローであった。今回のUSB 3.0対応USBメモリの拡充も、それと同じ戦略というわけだ。ユーザーにとって、新規格の製品を安価に手に入れられるようになるという意味で、大いに歓迎できる戦略だ。


●USB 3.0に対応しても実売価格はほぼ据え置き

 バッファローが7月上旬より発売するUSB 3.0対応USBメモリは、全部で4シリーズだ。スライドコネクタタイプの「RUF3-JMS」シリーズと「RUF3-JW」シリーズ、キャップタイプの「RUF3-KW」シリーズと「RUF3-K」シリーズだ。これらは、バッファローが販売するUSBメモリ製品の中でも、価格が安価なバリューからスタンダードモデルとして位置付けられている。

 これら製品は、これまでUSB 2.0対応として販売されてきた製品の後継モデルで、本体デザインなど、どれも従来モデルと全く同じとなっている。また、価格はオープンプライスだが、実売価格も従来モデルとほぼ同等となる。つまり、価格をほぼ据え置いてUSB 3.0に対応させてきたわけだ。従来モデルは存在価値がなくなるため、今回のUSB 3.0対応モデルに完全に置き換えられ終息することになる。

USB 3.0に対応したメインストリーム向けUSBメモリ「RUF3-JMS」シリーズ。コネクタ収納型のスタイリッシュなデザインが特徴。全4色で、8GB/16GB/32GB/64GBの4モデルを用意 こちらは、バリューモデルの「RUF3-K」シリーズ。ホワイトとブラックの2色で、それぞれ8GB/16GB/32GBの3モデルが用意される USB 3.0対応のブルーのコネクタになっていることがわかる
左は、USB 2.0対応の従来モデル「RUF2-JMS」シリーズ。RUF3-JMSシリーズが、従来モデルのデザインをそのまま踏襲していることがわかる バリューモデルのRUF3-Kシリーズも、USB 2.0対応の従来モデルRUF2-Kシリーズと同じデザインだ

 しかもそれだけではない。今回発売されるUSB 3.0対応USBメモリは、全て内部のフラッシュメモリに対し2チャネルアクセスが実現され、アクセス速度の高速化も実現されている。USB 2.0対応のUSBメモリでも2チャネルアクセスを実現する製品が存在するが、基本的にはそれらは高速モデルとして位置付けられ、価格も若干高価となっている。しかし、今回バッファローがローエンドからメインストリーム向けのUSBメモリをUSB 3.0に対応させるにあたり、低価格な製品とはいえUSB 3.0の速度的なメリットを活かす必要があると判断し、あえてコストのかかる2チャネルアクセス対応コントローラを採用したそうだ。これにより、ローエンドからメインストリームをターゲットとする製品ながら、USB 2.0の高速モデルを凌駕するアクセス速度が実現されている。

 そこで、実際にRUF3-JMSシリーズとRUF3-Kシリーズのパフォーマンスを検証してみた。利用したのは、RUF3-JMSシリーズの16GBモデル「RUF3-JM16GS-BR」と64GBモデル「RUF3-JM64GS-BL」、RUF3-Kシリーズの16GBモデル「RUF3-K16G-BK」の3製品。比較用として、それぞれの従来モデルに相当する、RUF2-JMSシリーズの16GBモデル「RUF2-JM16GS-BK」と、RUF2-Kシリーズの16GBモデル「RUF2-K16GE-BK」も用意し、同様のテストを行なった。検証には、CrystalDiskMark v3.0.1bを利用。テストに利用したPCの環境は表にまとめたとおりで、USB 3.0拡張カードにはASUSTeK Computerの「U3S6」を利用した。

【表1】テストPCの環境
CPU Core i5-750
マザーボード Intel DP55KG
メモリ PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
ビデオカード Radeon HD 5770(MSI R5770 Hawk)
USB 3.0拡張カード ASUS U3S6
HDD Western Digital WD3200AAKS(OS導入用)
OS Windows 7 Ultimate 32bit

・ベンチ結果

RUF3-JM16GS-BR(USB 3.0) RUF3-JM64GS-BL(USB 3.0) RUF3-K16G-BK(USB 3.0)
RUF3-JM16GS-BR(USB 2.0) RUF3-JM64GS-BL(USB 2.0) RUF3-K16G-BK(USB 2.0)
RUF2-JM16GS-BK(USB 2.0) RUF2-K16GE-BK(USB 2.0)

 まず、各製品をUSB 3.0ポートに取り付けた場合の結果を見ると、USB 3.0対応製品はシーケンシャルリードが79MB/sec以上と、従来のUSB 2.0対応製品に比べ2倍以上の速度が発揮されていることがわかる。また、容量64GBのRUF3-JM64GS-BLでは、87MB/secと、さらに高速だった。それに対しシーケンシャルライトは、RUF3-JM64GS-BLでは68MB/secと非常に高速なのに対し、容量16GBの2製品は21MB/secほどだった。16GBの製品では、シーケンシャルライト速度の向上幅があまり大きくないが、それでも速度が向上していることは間違いない。

 ランダムアクセス速度は、シーケンシャルアクセス速度同様、ランダムリードが大きく向上していのに対し、ランダムライトの向上幅は少ない。USBメモリはPC内蔵ストレージに比べランダムアクセス頻度は低いと思われるが、用途によってはこのランダムアクセス速度が向上しているという特徴が活きる場面もあるはずだ。

 次に、USB 3.0対応製品を、USB 2.0ポートに取り付けて速度を検証してみた。さすがに、USB 2.0ポートに接続すると、かなり速度が低下してしまう。それでも、シーケンシャルリードは31MB/secと、従来のUSB 2.0対応モデルの26MB/secに比べ速度が向上していることがわかる。これは、フラッシュメモリへの2チャネルアクセスを実現したことによる影響と思われるが、USB 2.0に接続した場合でも速度的なメリットが得られることを考えると、USB 3.0に対応していないPCを利用している人にとっても、十分に魅力のある製品と言っていいだろう。

 USB 3.0対応のUSBメモリは、これまでハイエンドモデルに位置付けられるとともに、価格も高かったため、比較的利益率の高い存在だったかもしれない。しかし、今回バッファローからローエンドからメインストリーム向けの低価格製品が登場したことで、USB 3.0対応USBメモリの低価格化が一気に進むものと思われる。しかも、単なる低価格化だけでなく、アクセス速度も高められているという点は、他メーカーにとって脅威となるはずだ。ユーザーにとってみれば、高性能な製品が安価に購入できるようになったわけで、大いに歓迎できる。今回のUSB 3.0対応USBメモリにとどまらず、今後ともユーザーにとって魅力のある製品をどんどん送り出してもらいたい。

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(2011年 7月 6日)

[Text by 平澤 寿康]