大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

マイクロソフトがXP移行について「何でも相談に乗る」の電話窓口を開設

~4月9日に間に合わない人はどうしたらいいのか?

 Windows XPのサポート終了まで、あと25日を切った。日本マイクロソフトでは、4月9日までにPC利用者全体の1割にあたる750万台規模にまでWindows XPユーザーを減らしたいとしている。

 最新週の集計によると、量販店におけるPCの販売台数は、前年同期比65%増という伸びをみせており、消費増税前の駆け込み需要と相まって、量販店店頭は活況を呈している。Windows XPからの買い替えもピークを迎えていると言えそうだ。

 だが、依然としてWindows XPからの乗り換えに踏み出せない人もいる。そこにはいくつかの傾向があるようだが、中でも多いのが、新たなPCに買い替えたものの、データを確実に移行できるのか、そして、新しいOSを搭載したPCを実際に使いこなせるのかどうかといった不安が先に立ち、PCの買い替えに踏み出せない例だという。

宗像淳氏

 日本マイクロソフトの執行役コンシューマー&パートナーグループ オフィスプレインストール事業統括本部長の宗像淳氏は、「実際に量販店店頭の状況を見てみると、多くの方々が、Windows XPを使い続けることは危ないという認識を持って、PC売り場を訪れている。そして、どんなPCを購入すればいいのかという点でも、さまざまな形状のPCが用意されており、店頭スタッフと相談することで解決もできる。しかし、買った後にこれまでのPCのデータは移行できるのか、使っていたプリンタなどはそのまま利用できるのか、そして新しいOSを搭載したPCを使いこなせるのか、新しいOfficeは使いこなせるのかという点で不安を持っている人が多い」と語る。

 宗像執行役の感触では、「今Windows XPからの買い替えを考えている人の約8割が、こうした不安を持っているのではないか」とする。こうした状況を捉えて、日本マイクロソフトが「最後のひと押し」として用意したのが、3月3日からスタートした個人ユーザー向けの「Office搭載パソコン乗り換えサポート窓口」である。

 これは、Windows XP搭載PCを所有しており、Office 2013をインストールしたWindows 8.1搭載PCおよびタブレットを購入した人を対象に、「何でも相談に乗るための窓口」(宗像執行役)として開設したもので、新たなPCを使うために何を用意するか、セットアップはどうするか、メール環境を新たなPCに設定するにはどうするか、既存のデータを移行させる方法はどうするか、新たなOfficeを利用するにはどうするかといったことなど、新たなPC環境に移行する際に発生するあらゆる問題に対応するための窓口として設置している。アプリケーションソフトに関しては、対応範囲は限られるが「なるべく幅広く対応できるようにはしている」という。

 「Office搭載パソコン乗り換えサポート窓口は、PCメーカーや量販店が展開する独自のサポートを補完するためのサポート窓口と位置付けている。5月31日までの期間限定となるが、不安な点や分からないことをとことんサポートするために、何度でも分かるまで無償で対応する。5月31日までの間は無休で運用。マイクロソフトがここまでの体制で対応するのは、世界的にも例がない」という異例の措置でもある。

 電話番号は0120-256-790。午前9時30分~午後6時までが受付時間となる。

特別予算を計上して開設したサポート窓口

 この窓口の設置のために、日本マイクロソフトでは、特別予算を計上し、80人規模でオペレータを新たに配置。1日500件以上の問い合わせに対応できるようにした。

 消費増税前の駆け込み需要期ということもあり、この時期のコンタクトセンターは大忙しである。そこに「何でも相談できる」というITスキルを持った担当者を80人規模で確保するというのは、並大抵のことではない。しかも、拠点を東京・調布に設置しており、地方都市からサポートするのに比べるとコストが高くなるのは容易に想像できる。それだけの投資を行なったのが今回のサポート窓口だ。元々とサポート体制の構築には多くの費用がかかる。こうした点からも、この「最後のひと押し」にかける日本マイクロソフトの意気込みは並大抵ではないことが伝わってくる。

 サポートの対象となるのは、基本的には、3月3日から5月18日までに、Office 2013をインストールしたWindows 8.1搭載PCおよびタブレットを購入した人が対象となり、相談する際には、Office 2013のプロダクトキーが必要になる。新たなPCは購入しなくても、すでにWindows XPを利用しておらず、新たにOffice 2013のパッケージ製品を購入した人も対象になる。

 だが、窓口に問い合わせが集中していない場合には、PC購入前であっても、相談を受けてくれたり、Officeを搭載していないPCを購入した際にもサポートしてくれる場合があるようだ。もちろん、これはサポート対象者外であるため、特例ともいえるものだ。確実に対応していれるというわけではないが、もし分からないことがあったら1度電話してみるのも手かもしれない。

 3月3日からのサポート開始以降、窓口には「ユーザーデータの移行」、「アカウント情報の移行」、「移行作業手順に関する問い合わせ」、「Windows 8.1のセットアップ方法」、「マイクロソフトアカウントの設定方法」などに関する問い合わせが多いという。そして、実際に「買い替えの検討相談」や「Windows 8.1はどこが使いやすいのか」といった、明らかに購入前のユーザーからの問い合わせにも対応している実績がある。

サイトでも移行方法を分かりやすく説明

 一方、日本マイクロソフトでは、電話による問い合わせた窓口に加えて、Webサイトでの対応も行なっている。

 マイクロソフト オフィス 活用総合サイトにおいて、「安心して買い替えよう! 新しいパソコンへの乗り換えサポート」として、「Windows XPからWindows 8.1への移行準備とセットアップ」、「Windows XPで使っていたメールを新しいパソコンへ」、「アプリケーションとデータの移行」、「新しいWindowsの使い方」、「新しいOfficeの使い方」という5つの観点から乗り換え方法を紹介している。

 例えば、「Windows XPで使っていたメールを新しいパソコンへ」といった項目では、「Windows Live MailからOutlook 2013へ」、「Outlook ExpressからOutlook 2013」へといったように、自分が使っているメーラーからの移行方法を紹介しており、それに沿って作業を進めれば、新たなPCへと環境が移行できるようになっている。「文字ばかりで紹介するのではなく、目的に辿り着きやすいメニュー表示やスクリーンショット付きで分かりやすく説明したのが特徴」だとする。

 同社では「まずはWebサイトで確認をしてもらい、もし分からないことがあったら電話窓口を利用してもらいたい」としている。

マイクロソフト オフィス 活用総合サイトで、買い替えをサポートするページを用意
メニュー表示を工夫し、目的別に分かりやすい表示としている
セットアップやメール環境の移行など5つのメニューを用意

無償のデータ移行ツールを提供へ

まもなくデータ移行ツールを無償で提供する

 日本マイクロソフトでは、もう1つ新たなPCへのデータ移行に関しての支援策を追加している。それは、AOSテクノロジーズが発売するデータ移行ツール「ファイナルパソコンデータ引越し」の機能限定版である「ファイナルパソコンデータ引越しeXPress」の無償提供である。

 これは世界的に実施しているプログラムに準拠したもので、Windows XPユーザー向けに提供する専用アプリケーションを無償でダウンロード提供し、これを利用して、新たなPCへとデータを移行できるようにする。

 実は、マイクロソフトでも、Windows環境において、データ移行ツールを提供しているが、Windows XPからの移行の場合、一度Windows 8へとデータを移行後、Windows 8.1へと移行しなくてはならず、Windows XPからWindows 8.1へと直接移行するユーザーには使えないものとなっていた。

 今回、無料で提供される「ファイナルパソコンデータ引越しeXPress」を活用することで、そうした問題も解決できる。提供開始は3月中旬の予定で、まもなく正式に提供時期が発表される。6月30日までの期間限定でダウンロードが可能で、ダウンロードしたツールの使用期限は7月31日までとなっている。

MOS 2013の認定資格取得を支援するキャンペーンも

 一方で、日本マイクロソフトでは、2月28日~4月20日まで、Office搭載PCやタブレットを購入したユーザーを対象に、「Office春のチャレンジキャンペーン」を実施している。

 ここでは、「マイクロソフト オフィス スペシャリスト 2013(MOS 2013)」を受験する際に利用できる1,000円割引クーポンを提供するほか、抽選で10人に同試験対策講座(7万円相当)、80人に同受験の無償チケット(1万円相当)を提供。そのほか10人に自転車などのグッズをプレゼントする。

 MOSは、これまでに332万人が受験している認定資格で、最新のOffice 2013に対応した「MOS 2013」は、今年2月から開始したばかりの認定制度。Office 2013の利用方法について知識を習得することで、自らのPC利用の生産性を上げることができるほか、就職の際にも有利になる認定資格の1つだと言える。これもWindows XP同様に、4月9日にサポートが切れるOffice 2003から、新たなOffice環境へ移行するための支援策の1つと位置付けている。

4月9日に間に合わない人はどうしたらいいのか?

 だが、サポート終了まではあと25日を切った段階で、もはや新たなOS環境には移行できないといった人もいるだろう。予算的にも、夏のボーナスを待たなくては買い換えられないという状況の人もいるはずだ。

 では、4月9日以降もWindows XPを使い続ける場合には、どんな対策が必要なのだろうか? 日本マイクロソフトでは、「あくまでも暫定措置であり、早期に買い替えに向けた計画を前提として欲しい」としながらも、次のような対応が望ましいとする。

 まずは、4月9日に提供されるであろうWindows XP向けの最後のセキュリティパッチを当てるということだ。そして、サードパーティーが発売しているセキュリティソフトウェアを導入し、最新の状態に維持することである。

 また、Windows XPを使用する際には、極力インターネットには接続しないこと、USBメモリを使用する際には最新の注意を払うことも重要だ。インターネットに接続しなくても、USBメモリやSDカードを介してマルウェアが入り込む可能性もあるからだ。

新たな環境によって、PCを楽しむことを訴求する

 「だが、インターネットになるべくつながないこと、USBメモリの扱いにも注意を払うなど、さまざまなことを気にしながらPCを使ってもらうことは、決して楽しいPCの使い方ではない。PCは、楽しく使ってもらってこそ、意味がある。個人ユーザーには、できれば早く、安心して使える最新のOS環境に移行してもらいたい。PCを楽しんで使ってもらうためにも、最新のOS環境、最新のOffice環境に移行してもらうことが最適である」と、宗像執行役は語る。

 例えば、Office 2013を例にとれば、現在、「楽しもう! Officeライフ」のサイトを通じて、約2,000種類のテンプレートが提供されている。ここではOfficeアプリケーションを利用した家族で使えるテンプレート、子供が使えるテンプレートなどが多数用意されている。家族が使うスケジュール表や管理表、図鑑ノートなどのOfficeとして想定できるテンプレートのほか、ペーパークラフトや、アイロンプリント、フォトブック、塗り絵など、テンプレートは多岐に渡っている。

 「Officeはビジネス用途で利用するものという意識が強く、個人向けPCでは不要だと感じている人もいるが、こうしたテンプレートを利用することで、家族で利用できるツールになる。このことを知っている人がまだまだ少ない。新たなOS環境、新たなOffice環境へ移行し、こうした体験を通じて、PCを楽しんでもらいたい」と宗像執行役。

 安全な環境で利用するためにWindows XPからの移行を促すというのがこれまでの業界からのメッセージであったが、それに加えて、PCを楽しむという環境を実現するためにも、Windows XPからの移行を早期に進めることが大切だといえよう。

 いま学校は卒業シーズンを迎えている。まだWindows XPを利用しているユーザーは、早いタイミングで、Windows XPからの「卒業」を迎えてほしいものだ。

(大河原 克行)