大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

パナソニック奥田事業部長インタビュー
〜ガラパゴス的な発想で作られた「Let'snote B10」



Let'snote B10

 パナソニックは、Let'snoteの新製品として、15.6型ディスプレイを搭載した「Let'snote CF-B10」シリーズを発表した。「パナソニックが追求するプロフェッショナルモバイルの観点からアプローチしたA4サイズノートPC。軽量、長時間、頑丈、高性能という、モバイルの本質を追求したという点では、これまでのLet'snoteシリーズとまっくた変わりはない」と位置づける。

 一方、2010年10月に発売した「Let'snote J」シリーズは、発売3カ月の出荷実績は、従来製品であるRシリーズの約3倍に達する出足の良さを見せており、こうした実績をベースに、年間出荷計画も当初予定を上回る見込みだという。

 パナソニック AVCネットワークス社 システム事業グループITプロダクツビジネスユニット・奥田茂雄ビジネスユニット長に、B10シリーズへの取り組みなどについて、話を聞いた。


−−パナソニックが、15.6型ディスプレイを搭載したLet'snote CF-B10シリーズを発売した理由は何でしょうか。

パナソニック 奥田茂雄氏とLet'snote B10

奥田氏 1つは、我々の想定以上に、15.6型ディスプレイを搭載したノートPCを、モバイル環境で利用しているユーザーが多いということです。もともとA4ノートは、デスクトップの置き換え用途と捉えていましたが、当社の調べによると、A4ノートユーザーの約4割がモバイルに利用しているのが現状です。オフィス内を移動したり、家の中を持ち歩いたり、当然、出張に持っていくというユーザーもいる。しかし、これらのユーザーは、我慢してA4ノートを持ち運んでいるともいえます。重たいことや、駆動時間が短いということに強い不満を持っている。

 そこで、今回のB10シリーズは、当社が培ったノウハウを生かして、A4ノートPCをプロフェッショナルモバイルへと進化させた。15型クラスで世界最軽量、最長駆動、そして、大画面による高解像度なモバイルPCとして進化させたものです。

−−Let'snoteシリーズには、持ち運び用のハンドルを付属させ、14.1型ディスプレイを搭載したF10シリーズがありますね。むしろ、これで置き換えることもできたのでないでしょうか。

奥田氏 そうした提案もあります。しかし、15.6型だからこそ実現できる用途もある。例えば、今回の製品では、フルHDとしたことで、Excelの長いカラムを一気に表示できたり、詳細なCADデータも表示できるようになる。画面を分割して利用すれば、業務効率も大幅に向上する。13.3型や14.1型のフルHDでは、文字が小さくなってしまいますが、15.6型ディスプレイなら、そうした問題がなく、その特徴が発揮できる。

 それとF10シリーズは、ハンドルがついていますが、B10シリーズにはハンドルがついていません。これには大きな理由があります。B10シリーズは、一般的なA4ノートPCに比べて、縦方向の長さが2〜3cm程度短い。ハンドルが付属するとこのサイズは実現できません。

飛行機での利用を想定し、一般的なA4ノートより奥行きが短い

 では、なぜ、縦方向の短さにこだわったのか。これは、飛行機のエコノミークラスの席ではA4ノートPCはキーボードを打つ腕を曲げなくてはならない。しかし、2〜3cm短くすることで、キーボードが打ちやすくなる。パナソニックは、あくまでもプロフェッショナルモバイルのためのPCを開発することにこだわっているわけですから、当然、A4ノートPCとはいえ、モバイルでの利用シーンを想定した。そこにF10シリーズとの大きな違いがあります。

−−従来からA4ノートPCの製品化は視野に入れていたのですか。

奥田氏 昨年(2010年)からA4ノートPCにおいてもモバイルニーズがあることには気がついていました。しかし、その一方でパナソニックならではの特徴を発揮できる製品に完成させるための技術進化も重要です。10年前に、A4サイズというと13.3型ディスプレイ搭載モデルを指していましたが、当時はそれでも2kg前後が一般的でした。しかし、今のパナソニックの技術を用いれば、15.6型ディスプレイを搭載しても2kg以下の重量を実現できる。さらに、一般的なA4ノートPCの約2倍にあたる6時間のバッテリ駆動時間の実現も可能になる。このようにパナソニックが目指すプロフェッショナルモバイルを実現するための技術的な要素も揃ってきた。それが今回の製品化につながっています。

−−A4ノートPCは、日本人よりも、むしろ外国人がモバイル環境で持ち歩くことが多いですね。海外市場を視野に入れた製品といえますか。

奥田氏 いいえ、B10シリーズは、日本のユーザーのためのモバイルA4ノートPCです。ガラパゴス的な発想で作ったものですよ(笑)。日本のビジネスマンが苦労してA4ノートPCを持ち運んでいる環境を改善したい、という想いがベースになっています。

−−既存のLet'snote製品と、今回のB10シリーズとに、コンセプトが異なる部分はありますか?

奥田氏 例えば、S10シリーズやN10シリーズなどは、100%モバイル環境で利用してもらうことを目指して開発した製品です。ですから、15.5時間のバッテリ駆動時間を実現し、軽量化、堅牢性の実現にも取り組んだ。

 しかし、B10シリーズは、100%モバイル環境で利用するということは想定していない。会議室に持ち運んで、2時間ほどバッテリを接続しないで利用し、自席に戻って、そこで充電する。そのときに、1時間程度で80%まで充電が可能な急速充電を組み合わせた。JEITA規格で6時間ということは、実際の利用環境では、もっと短くなりますから、3時間程度利用しても、1時間充電すれば、また持ち出して利用することができるというのは重要な要素です。B10シリーズはこうした利用シーンを想定したものだといえます。

−−B10シリーズを開発する上で、こだわったところはどこですか。

2kg切りを目指して設計されたLet'snote B10のパーツ

奥田氏 重量はとにかく2kgを切ることを前提としました。かつて13.3型を持ち歩いていた人は2kgを切ることが1つの条件となっていましたから、これを15.6型で実現したかった。また、天板が大きくなると、強度は落ちますから、一定の剛性を維持しながら、軽量化を図る努力をした。S10シリーズやN10シリーズで使用している部品やノウハウは、そのままB10シリーズにも活用されています。それと15.6型にするならば、やはりフルHDとしたかった。これにより、業務の効率化が実現できる環境を目指したわけです。

−−B10シリーズでは、フロントローディング型のドライブを採用していますね。また、マイレッツ倶楽部では、Let'snoteシリーズとして、初めてBDドライブを選択できるようにしました。この理由はなんですか。

奥田氏 もちろん、クラムシェル型のドライブを利用すればLet'snoteシリーズとして統一感を持ったメッセージを打ち出すことができる。しかし、クラムシェルは省スペースのパームレスト部分をうまく活用しながら、ドライブを搭載するための仕組みです。クラムシェルならではの特徴はあるが、その一方でデメリットもよく熟知している。パームレストに手を置いたままではドライブを使えないのがその最たる例です。

 B10シリーズでは、A4ノートPCという筐体の大きさがありますから、それならばフロントローディング型ドライブを採用するのが最適だと考えた。右横に飛び出すようにドライブを設置しているメーカーもありますが、そこにはマウスが置かれていることが多い。そこで、我々は前方に飛び出すような仕組みとしています。一方で、BDドライブへの対応は、マイレッツ倶楽部においては個人ユーザーの購入も多いですから、それに対応したものです。15.6型フルHD環境においては、BDドライブの効果もあると考えています。今後、BDドライブを他の機種に展開していくどうかは、B10シリーズの動きを見てから決めたいと考えています。

−−B10シリーズの構成比はどのぐらいを想定していますか。

奥田氏 5〜10%程度を占めるのではないかと思っています。ただ、B10シリーズは、既存のLet'snoteユーザーからの買い換えではなく、新たな需要層を獲得する製品だと考えています。これまでのLet'snoteシリーズにはない、大画面で高解像度を求めるというプロフェッショナルモバイルに対して提案していきたい。

−−方で、2010年10月に発売したJシリーズの売れ行きはどうですか?

奥田氏 大変、好調です。発売3カ月間の出荷実績は、従来製品であるRシリーズの約3倍に達するほどです。また、女性の購入比率も21%に達しており、女性層から高い評価を受けているのも特徴といえる。ぜひ女性の購入比率を25%にまで高めていきたいですね。

−−Jシリーズはどんな点が受けていますか。

奥田氏 最も満足度が高いのが15秒での高速起動です。購入者の約3割が高速起動であることに対して満足しています。これはほかの項目に比べても圧倒的な比率です。また、ジャケットについても、73%のユーザーが着用した形で利用しています。

−−今回、Jシリーズ(マイレッツ倶楽部プレミアムエディション)をはじめ、(一部を)第2世代のCoreプロセッサーに進化させましたね。

奥田氏 Let'snoteシリーズは、軽量、長時間を第1世代、それに頑丈を追求したのが第2世代の進化とし、昨年から第3世代の進化として、高性能を追求している。第2世代のCoreプロセッサーの採用は、それをより具体的なものにしたといえます。もはや、デスクトップPCと同じ高性能が、モバイルノートPCでも実現されるようになったといえます。

−−2010年度の出荷計画についてはどうですか。

奥田氏 Jシリーズの好調ぶりや、ラインアップの拡大による需要増などもあり、当初の計画を上回る形で推移しそうです。