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新ゲーミングブランドLEETGIONのRTS向けマウス「HELLION」



HELLION

9月19日 発売
価格:オープンプライス


 CPUクーラーで「Thermalright」ブランドで有名な台湾Lea-Min Technologiesから、新たにゲーミングデバイス向けブランド「LEETGION」が立ち上げられることとなった。9月19日にも株式会社ディラックから、RTS(リアルタイムストラテジー)ゲーム向けに設計されたゲーミングマウス「HELLION」が、9,980円前後で市場に投入されることになっている。今回、発売に先立ってLea-Minから製品をお借りすることができたので、その実力を見ていきたい。

●非常に高い質感のパッケージ、CherryのMX青軸採用サイドボタン

 まずパッケージから見ていこう。HELLIONはLea-Minにとって初めて日本市場に投入されるゲーミングマウスだが、パッケージング完成度の高さはほかのゲーミングマウスとは一線を画すものとなっている。

 包装は3層になっており、一番外側は四角い筒で、上部にはマウス本体をあしらったエンボス加工、右側には銀色のLEETGIONのロゴ、左側にはマウスの特徴的な部分である赤い三角形のボタンが覗けるようになっている。

 2層目は、対角線で観音開きする立体的なパッケージとなっており、皮をむくように開くと、3層目の透明なプラスチックの蓋が現れ、本体の姿が見えるようになる。そしてこのプラスチックの蓋を外すとようやく製品を取り出せるようになる。まるで四角い卵から製品が生まれるような演出だ。

 凝ったパッケージとは対照的に付属品は少なく、本体以外に簡易マニュアルと交換用ソールしか付属しておらず、非常にあっさりしている。ドライバCDなどは同梱されておらず、インターネットサイトからダウンロードする必要がある。このあたりはThermalrightでもあったシンプルなブランドイメージを一貫しているように見える。

製品パッケージパッケージ横から覗ける特徴的なサイドボタンLEETGIONのロゴ
斜め上から見たところ2層目は対角線で観音開きするパッケージ簡易マニュアルを取り出したところ
2層目を完全に開いたところ内容物

 それでは本体を見ていこう。本体の前面とサイドは直線的なデザインで、左右のクリックボタンは前側が左右に広がり、イカを彷彿とさせるような形である。その左右クリックの外側にプログラマブルなボタン2つ装備している。後部は曲線で盛り上がるデザインで、手のひらを載せた時の感触や持ちやすさを重視した設計と言える。

 サイトにある広報写真だと大柄のように見えるが、実際の製品は73×123×42mm(幅×奥行き×高さ)、重量は公称値で105gと比較的小型軽量で、日本人の小さめの手にもフィットする。ハカリで実際に計測してみたが、ケーブルをどかした状態で実測104gだった。

 左右クリックやその横の2つのボタンは、オムロン製のマイクロスイッチ「D2F-F」とされている。特に左右クリックの感触が特別で、筆者がこれまで試したゲーミングマウスの中でも唯一無二の軽さだと感じた。この軽快さはゲームにおいて有利に働きそうだ。

 左右クリックボタンに囲まれ、やや外側に位置するサブボタンだが、人差し指と中指で左右クリックをするような“2本指スタイル”の場合、右クリック側は難なくアクセスできたものの、左クリック側は人差し指を伸ばさないとなかなか届かないような感じだ。しかし中指をホイール、薬指を右クリックに置くような“3本指スタイル”の場合どちらもアクセスしやすい位置にある。このあたりは好みがわかれるかもしれない。

 上部から見ると左右対称のデザインだが、本製品は右手専用である。左側面の親指部に赤い三角形で型どられたサイドボタンが1つ用意されており、このサイドボタンが本製品の最大の特徴だ。このボタンのスイッチには、キーボード製品で採用されているCherryのメカニカルスイッチ「MX青軸」が利用されている。MX青軸はストロークが深く、軽く、かなりのクリック感がある。2本指スタイルにおいて、よく使う機能であれば、左クリック側のサブボタンを使うより、このサイドボタンを使ったほうが良いだろう。

 ホイールの感触はスムーズ、それでいてしっかりとしたクリック感もあるため、Webブラウジングにおけるスクロール、FPSにおける武器切り替え、いずれにおいてもストレスになることなく気持ちいい。ただしチルト機構は備えていない。

 本体の尾部には、DPIのアップとダウンを行なえるスイッチを装備している。また、底面をひっくり返すと、5つのプロファイルを切り替えられるダイヤル式スイッチを備えており、視覚的に一発で希望のプロファイルに切り替えられるのは、これまでにない機構だと言えるだろう。

 底面中央右には、心臓部となるAvagoのレーザーセンサー「ADNS-9500」を搭載。ADNS-9500の採用は本製品が初というわけではなく、2011年末に発売されたCorsairの「M90」、「M60」などでも採用の実績がある。Corsairの2製品は解像度100dpi~5,700dpiまで100dpiステップで調節が可能だが、本製品は上限が5,000dpiとなっており、ユーティリティから調節できるステップは100/800/1,600/2,000/2,400/3,200/5,000dpiの7段階のみとなる。

HELLION本体上部から見ると左右対称マウスのようにも見える右斜め前からみたところ
右斜め後ろから見たところ本体前面本体左側面
サイドボタンを取り外すとMX青軸が見える本体後部に見えるDPI調節スイッチ本体底面
プロファイル切り替えスイッチケーブルをハカリの上からどかした状態では実測104gだったケーブル込みで136gと、ゲーミングマウスでは軽い部類に入る

 ADNS-9500のデータシートでは解像度以外のデータ、例えば加速度や最大速度などは掲載されていないが、もしCorsairのM90/M60とまったく同等なのであれば、加速度が30G、最大速度が380cm/secになる。性能に関しては一線級と言える。

 このほか、金メッキコーティングでデザインされたUSBコネクタや、ファブリックコーティングのケーブルなど、ゲーミングマウスとしての基本は抑えられている印象だ。便利なのはケーブルについたタイで、持ち運ぶときにサクッとケーブルをまとめることができる。

USBケーブルにはタイが巻きつけられているUSBコネクタもデザインされている

 ここまで来ると、本製品は質実剛健なイメージを持たれるかもしれないが、ゲーミングマウスとして必要な“遊び心”も残されており、それが大胆なライティングである。Razerやロジクールからも、ライティング機構を内蔵した派手なマウスが多数発売されているが、本製品もそれに負けじと、ロゴ、クリックボタンの底部、および本体尾部にLEDが仕組まれ、光るようになっている。

 ロゴとクリックボタンの底部は、5つのプロファイルに応じてそれぞれ赤(デフォルト)、青(Terran)、紫(Zerg)、黄色(Protoss)、水色(カスタム)に光り、その設定は固定だが、尾部のテールランプは自由にカスタマイズができ、またDPI切替時にも点滅するようになっている。

USBに接続すると本体が光るデフォルトプロファイルTerranプロファイル
ZergプロファイルProtossプロファイルカスタムプロファイル

 製品のハードウェアを概観すると、シンプルなパッケージを特徴としながらもユニークなデザインを採用し、スペックにもこだわったゲーミングマウスと見ることができ、LEETGION初のゲーミング製品としては高い完成度といえるだろう。

●軽快で操作感は良好

 LEETGION初の製品で、形状が奇抜ということもあり、不安を抱きながら使ってみたが、使い始めてすぐに良さがわかり、不安がすべて払拭された。

 まず感心したのは、重量105gというのは実にバランスの良い重さであるということ。ゲーミングマウスは基本的に軽いほうが素早く移動できるため良いのだが、高性能センサーや多くのボタン、オンボードメモリ、ライティングシステムの搭載などで、どうしても本体が重くなりがちだ。一般的に120g~140gがメジャーだと思うが、中にはオモリまでつけてさらに重くしようというモデルさえある。その点HELLIONはこれだけ機能てんこ盛りでありながら105gというのは、かなり軽量な部類に入るだろう。

 しかし、本体が軽すぎると、ファブリックコーティングのケーブルを採用したモデルの場合、ケーブルの設置によっては、上に移動した時に押し戻される感じがすることもある。しかし本製品は例えケーブルが窮屈になってもその感触が少ない。ファブリックコーティングが良いのかもしれないが、本体の絶妙な重量バランスが貢献しているように思えた。

 ボタンやホイールは先述の通り、軽快なクリックや回転が基本で、このあたりも操作感が良い。サイドボタンのMX青軸はストロークが深いため、マウスとしては斬新な操作感を覚えたが、1日ほどですぐに慣れてしまった。ちょっと大げさかもしれないが、マウスを操作していることを忘れてしまうほどである。

シグマA・P・Oが提供していたMouseTestの結果

 肝となるセンサーの性能だが、少なくとも筆者が試した限りでは問題がみられなかった。ポーリングレートも最大1,000Hzをきっちりキープし、追従性も上々である。Philips の「ツイン アイ」センサーでみられるような、ゆっくり持ち上げた時にリフトオフディスタンスが長くなる問題もなく、非常に安定している。ロジクールでも採用実績が多いAvago製センサーなので、このあたりは安心していいだろう。


●シンプルにまとめられたソフトウェア

 最後にソフトウェアの設定方法を見て行こう。本製品はWebサイト上でユーティリティ「LEETGION HELLION SOFTWARE」が用意されており、これをインストールし、設定するようになっている。なおマウス接続時は常時タスクトレイに常駐するので、容易に呼び出しが可能だ。執筆時点のバージョンは1.01だった。

 起動直後のメイン画面は、「BUTTON ASSIGNMENT」のタブが開き、その名の通りプロファイルごとにボタンが割り当て可能になっている。マウスの写真で対応するボタンに番号が振られており、番号から機能を選ぶようなシンプルなデザインとなっている。

 設定し始めて気がついたのだが、本製品は5つのプロファイルのうち、1番のデフォルトプロファイルはグレーアウトしており、一切の変更ができない。つまり2番~5番のみがカスタマイズ可能である。また、このうち5番のみがオンボードメモリに保存されるプロファイルであり、2~4番はソフトウェアによってカスタマイズを実現する。

 2~4番のプロファイルはソフトウェアベースのため、他のPCに持っていくとプロファイルが再現されない。一方5番であればソフトウェアをインストールせずとも、マクロなどを再現できる。このあたりは注意が必要だろう。プロファイルは「NEW PROFILE」で名前を設定した後、自由に複数個追加できるが、設定できるプロファイルスロットも5番のみである。

 プロファイルの横に4つアイコンが並んでいるが、左から順に選択したプロファイルの削除、オンボードメモリで使用するメモリに設定、プロファイル名のリネーム、そしてデフォルトへの復元という4つの機能を果たす。先述の通り5番目のカスタムプロファイルのみが自由に設定できるため、リネーム/削除もカスタムプロファイルのみに限られる。

 説明がやや前後するが、プリセットの「Terran」、「Zerg」、「Protoss」はいずれもBlizzard EntertainmentのRTSゲーム「StarCraft」に出てくる架空の“種族”だ。筆者は残念ながらこのゲームをプレイしたことはないのだが、あらかじめ割り当てられているキーはこのゲームのための種族ごとのショートカットとみて間違いないだろう。

 「ADUJUST PERFORMANCE」のタブでは、DPIの調節、X/Y軸ごとの速度、ポーリングレート、スクロール速度、ポインタ速度、ダブルクリック速度などを調節可能だ。このあたりはよくあるゲーミングマウスと同等である。

 「MACRO MANAGEMENT」のタブでは、マクロの作成や管理が行なえる。キーボードのキーが押された/離された順番を記録する機能のみというシンプルなもので、インターフェイスもそれほど複雑ではないため説明は不要だろう。キーのディレイも記録/挿入可能だが、最小単位が50msという点は留意したい。記録後ならキーの順番を入れ替えることもできる。設定したマクロはBUTTON ASSIGNMENTで割り当てできる。

 最後に「LIGHT MANAGEMENT」はだが、これは単純にテールランプの色を変更するものである。先述の通りカスタマイズ可能なのはテールランプのみで、ロゴとクリックボタン底部のライトは、プロファイルに応じて変化する固定仕様。また、1番のデフォルトプロファイルは赤固定で変更できない。せめて2~5番では一体感を出せるようロゴなども変更して欲しかったところだ。

 色は1,677万色から自由に選択は可能なものの、それほど再現度は高くない。このあたりは他社でも共通であり、致し方がないところだろう。

メイン画面。プロファイルごとのボタン設定が可能ADJUST PERFORMACEのタブでは解像度などが調節できるMARCO MANAGEMENTのタブは読んで字の如く、マクロを編集できる
LIGHT MANAGEMENTのタブではテールランプの色を変更可能プロファイルの5番のみ、オンボードメモリに転送できる設定したマクロはボタン割り当て画面で選択できる

●割り切ったところもあるが、基本性能は合格
HELLIONサンプルとともに届いた販促品

 以上HELLIONを軽く見てきた。プロファイルやライテイングの設定が一部固定で設定変更できなかったりと、この手のデバイスでカスタマイズを好むユーザーにとって、首を傾げたくなるような点があることも事実だ。また、何よりも9,980円というやや高い実売価格もネックになるかもしれない。

 ただ、ADNS-9500センサーをはじめとし、オムロンスイッチ、これまでにないMX青軸の採用、バランスの良い105gという重量設定、そしてシンプルでコレクション価値の高いパッケージなど、ゲーマーに求められる基本的な部分はしっかりと押さえている印象だ。LEETGIONもまだ新興のブランドであり、第1弾製品としては合格だろう。LEETGIONの今後が楽しみである。


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(2012年 9月 10日)

[Text by 劉 尭]