山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

大日本印刷「honto pocket」

〜電子書籍コンテンツを収録した状態で販売される電子ペーパー端末

honto pocket。収録されるコンテンツによって価格は9,800円〜74,800円と大きな幅がある

 大日本印刷の「honto pocket(ホントポケット)」は、あらかじめコンテンツを収録した状態で販売される、5型電子ペーパー採用の電子書籍端末だ。コンテンツの追加および削除がいっさいできない反面、ネット接続やストアへの会員登録が不要なため、それらの知識を必要とせず、購入してすぐに読書が楽しめることが大きな利点だ。

 本製品は現時点では一部店頭でのみ販売となっているが、年明け1月からは「honto」での取り扱いが始まることが予告されている。現時点では、アガサ・クリスティー全集などを収録した5つのラインナップが発表されているが、今回はその中でもっとも価格の安い「ホームズ&ルパン 名作競演集」を収録した9,800円のモデルを入手したので、レビューをお届けする。

電池駆動ですぐ利用可能。電子書籍コンテンツは書き換え不可

 電子書籍コンテンツのバンドル販売という、従来の電子書籍端末とはまったく異なるスタイルで提供される本製品だが、まずは他社の電子ペーパー採用電子書籍端末と仕様を比較してみよう。上は現行モデル「Kindle Voyage」「Kobo Aura」との比較、下は過去の5型端末との比較である。後者は発売時点での価格のため、現在とは税率が異なっている点に留意いただきたい。

【表1】他機種比較
製品名 honto pocket Kindle Voyage Kobo Aura PRS-350 Kobo mini
メーカー 大日本印刷 Amazon 楽天 ソニー 楽天
112.5mm 117mm 114mm 104.6mm 102mm
奥行き 144mm 162mm 150mm 145.4mm 133mm
高さ 21mm 7.6mm 8.1mm 9.2mm 10mm
重量 約130g(電池含まず) 約180g 約174g 約155g 約134g
解像度/画面サイズ 5型/600×800ドット 6型/1,072×1,448ドット(300ppi) 6型/758×1,014ドット 5型/600×800ドット
ディスプレイ モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー
通信方式 - IEEE 802.11 b/g/n、3G(3Gモデルのみ) IEEE 802.11b/g/n - IEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ 不明 約4GB 約4GB(ユーザー使用可能領域:約3GB) 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1.4GB) 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1GB)
タッチ操作 - 対応 対応 - 対応
前面ライト - 内蔵(自動調整) -
メモリカードスロット - microSD -
バッテリ駆動時間 約3,000ページ以上(1ページ30秒表示) 6週間(無線接続オフ、1日30分使用時) 約8週間(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時) 約2.5週間、約10,000ページ 約1カ月、約40,000ページ(Wi-Fiオフ)
電子書籍ストア - Kindleストア 楽天Kobo電子書籍ストア Reader Store 楽天Kobo電子書籍ストア
価格(2014年12月23日現在) 9,800〜74,800円(税抜、収録コンテンツにより異なる) 21,480円(広告つき)
23,480円(広告なし)
26,680円(3Gモデル、広告つき)
28,680円(3Gモデル、広告なし)
13,165円 7,980円 6,980円

 画面サイズは5型ということで、今メインストリームである6型の端末に比べると一回り小さい。過去の製品で言うと、楽天Koboの「Kobo mini」、ソニーの「PRS-350」などと同等ということになる。ポケットに入れて持ち歩くには適したサイズだ。

 解像度は600×800ドットということで、最新の電子ペーパー端末と比較すると見劣りするが、収録されているのがテキストコンテンツのみであることを考えると、コミックの表示も視野に入れた汎用タイプと比べて解像度が高い低いを論じるのはナンセンスだろう。

 重量については、公式には「約130g」とされているが、これは駆動に用いる単3電池2本を除いた値で、添付の電池をセットした状態で実測したところ170gだった。Kindle Voyage(約180g)やKobo Aura(約174g)、ソニーPRS-T3S(約160g)などの6型電子ペーパー端末と同等であり、5型であることを考えると決して軽くはない。電池駆動の手軽さは評価できるものの、単3電池ではなく単4電池を採用して薄型軽量をアピールしても良かったのではと感じる。

 駆動に電池を用いることからも分かるように、USB充電などには対応しない。それどころかUSBを含む外部接続コネクタ類が一切なく、通信機能もない。本製品のベースになったのではないかと言われる海外端末「txtr Beagle」はBluetoothによるデータの転送に対応するが、本製品はそれもなく、データの書き換えは不可能だ。完全にこれ単体で完結しているという、実に思い切った仕様である。

製品本体。正面から見るとやや末広がりなデザイン。画面サイズは5型で、解像度は600×800ドット
下部が電池ボックスになっているため、横から見るとこのように大きく膨らんでいる。ちなみに電池駆動の電子書籍端末としては過去にソニーの「LIBRIe(EBR-1000EP)」やパナソニックの「ΣBook」などがあるが、最近では珍しい
背面。製品ロゴがある。平坦に見えるが、実はロゴのある中央付近がわずかに膨らんでおり周囲に比べて厚みがある
Kindle Voyage(中央)、Kobo Aura(右)との比較。これらは6型であるため、5型の本製品を並べると画面サイズの差が際立つ
Kobo mini(中央)、ソニーPRS-350(右)との比較。いずれも5型ということで、画面サイズだけを見ると同等サイズ。ただし本製品は下部が幅広であるためやや大柄な印象を受ける
ネット接続機能がなくコンテンツがバンドルされた状態で販売されるという点では、過去の電子ペーパー端末でもっとも近いのは、青空文庫をプリインストールして販売されたアイリバーの「Cover Story Basic(右)」かもしれない
文庫本とはほぼ同等サイズ

ページめくりはきびきび、しかし読書中断時の挙動に疑問

 では開封していこう。パッケージはハードカバー本を模したデザインで、実際にカバーも巻かれるなど徹底した装丁である。断面に当たる黒い部分はスポンジ素材で高級感には欠けるが、普通に本棚に立てても違和感がない。色合いも「全集」っぽく、落ち着きがあり好印象である。

パッケージ外観。ハードカバー本を模した装丁
そのまま本棚に立てても違和感のないデザイン
今回購入した「ホームズ&ルパン 名作競演集」は14作品を収録。収録作品はこのパッケージ裏面のほか、本体のホーム画面でも確認できる

 パッケージを開けると本体が姿を表わす。本体はホワイト一色で、単3電池を収納する背面下部が膨らんだデザインになっている。電池ボックスを除けば厚みは実測値で8mmほどで、一般的な電子ペーパー端末とほぼ同等である。

パッケージを開けると本体と単3電池が並んだ状態でセットされている
「honto」の1,000ポイントクーポンが同梱されているが、ネット接続機能のない本製品から直接利用することはできない。提携書店での買い物に使う人が多そうだ
単3電池×2本をセットして利用する。本体下部が左右に若干広がったデザインなのは、電池の幅に関係しているようだ

 ホーム画面に相当する「本棚」画面には収録済みコンテンツの一覧が並び、その中からコンテンツを選ぶことで中身が表示され、ページをめくって読むことができる。タッチ操作には対応しておらず、ページめくりをはじめとする操作はすべて画面下部にある3つのボタンで行なう。左右キーはページめくりで、その間にあるキーがメニュー表示および決定を兼ねたキーになっている。本を読むだけであれば、通常はこの左右キーしか使わない。

タッチ操作には対応せず、操作は画面下部のボタンで行なう。左右キーはページめくり、中央キーはメニュー表示および決定を兼ねる。押し込んだ感触はやや硬め
左側面にはスライド式の電源ボタンを備える。なお電源ボタンをスライドしてすぐ離すとスリープモードになる
画面とベゼルの段差はごくわずか

 端末のデザイン自体はやや野暮ったいが、動作そのものはきびきびしている。処理中を示すアイコンなどはないが、一昔前の電子ペーパー端末のように、処理待ちなのかハングアップしているのか区別が付かないことはまずない。コンテンツがテキストのみで、データ量の多い図版を表示する機会がないこともあるだろうが、ページをめくるという基本操作の部分でストレスがたまらないのは好印象だ。

ホーム画面。コンテンツの一覧が表示される。上下キーがないため、項目の上下移動に左右キーを使うという、最近あまり見かけなくなった仕様

 ネックは2つある。1つはメニューを選択する際、上下の項目を選択するのに左右キーを用いること。本製品には上下方向のキーがないため、「下に移動する際は右キー」「上に移動する場合は左キー」で代用しているわけである。タッチパネル普及前はさまざまなハードウェアで見かけた仕様だが、直感的な操作には程遠く、率直に言って使いにくい。ハードウェアボタンは少ないほうが部品代も安くなるほか故障の確率も減るのは分かるが、次期モデルではぜひ再検討して欲しいところではある。

 もう1つのネックは、読書中断時の挙動についてだ。本製品は電源ボタンを2秒以上スライドさせると電源がオンになるのだが、起動処理が終わって操作可能になるまで約20秒も待たされる。本製品は長時間操作がなかった際はスリープモードではなく電源そのものがオフになる仕組みで、かつその条件となる無操作時間が初期設定では1分と短いため、そのたびに20秒ほど待たされることになる。

 ちなみに手動でスリープさせる仕組みも用意されているのだが、スリープ中に指定時間が経過するとやはり電源が自動オフになり、次回は一からの起動になるため、スリープモードを使う意味がほとんどない。こうしたことから、電源オフまでの待ち時間をやや長め、例えば5分などに変更し、なるべくシャットダウンされないようにするのが、利用中のイライラを低減できるという意味で、最良の選択になる。

 もっとも本来は、長時間操作がなかった場合は電源オフではなくスリープに移行し、そのままの状態を維持できてしかるべきだろう。本をちょっと読んでしばらく中断、またしばらく読んで中断、という細切れな読書スタイルで使いにくいのは困りものだ。

しばらく(デフォルトでは1分)放置していると電源がオフになり、この画面が表示される。ちなみに手動でスリープさせた際もしばらく放置するとこの画面になる
毎回起動からやり直しになり、そのたびに20秒以上待たされる

 また、しばらく試用した限りでは、電源が自動オフになるぎりぎりまで放置し、その後ページめくりなどの操作を再開して数秒程度経ったあと、いきなりシャットダウンすることが複数回あった。頻度としてはほぼ気にならないレベルだが、本製品はその構造上OTAでのファームアップが不可能なので、こうした不具合と思しき挙動の存在は、多少気になるところではある。

調節機能は文字サイズのみ。もくじやしおりなどが使用可能

 続いて画面の構成について見ていこう。一般的な電子書籍端末では、明朝/ゴシックなどフォントの切り替え、行間や余白の調整が行なえることが多いが、本製品は文字サイズの変更機能を除き、こうした調整機能は皆無といっていい。既存の電子書籍端末やアプリを知っていると、このあたりはやや物足りなく感じるだろう。表示は縦書きのみで、横書きに切り替えることもできない。

 また文字サイズは7段階で変更は可能なのだが、もっとも大きいサイズだと1画面に10文字×4行しか入らないほど巨大で、それ以外も全体的に大きい方に寄っているので、7段階といっても選択の自由度はあまり高くない。ターゲットとするユーザー層との兼ね合いもあって難しい問題だが、個人的には一般的な文庫本に近い、文字サイズ2と1の中間が欲しいと感じる。

コンテンツを開いたところ。デフォルトの文字サイズはかなり大きめ
中央ボタンを押すとメニューが表示されるので「文字サイズ設定」を選択
文字サイズは7段階で調整できる。行間や余白は調整できない。またフォントの種類も変更できない
文庫本に近いのは2と1のほぼ中間で、もう少し小刻みな設定がほしいと感じる。これは「2」で表示したところ
もくじを表示してジャンプすることも可能。もくじはすべてパーセンテージ表示というのが珍しい
しおりを挟んだり、しおりの一覧を表示してジャンプすることも可能
電子ペーパーに付きもののリフレッシュレートは1/5/10ページごとの3段階で設定可能
前述のとおり、シャットダウン時間はデフォルトでは1分で、そのたびに電源がオフになってしまうので、やや長めにとってやったほうが使い勝手が向上する

 一方で、既読位置の保存機能や、目次を表示してのジャンプ機能、手動でのしおり追加機能はそつなく備わっている。ネットワークに接続できないのでソーシャル関連の機能や検索周りの機能はないものの、電子書籍ならではの機能は一通り揃っている印象だ。このほか電子ペーパーならではの項目として、リフレッシュレートを1/5/10ページの3択で選ぶこともできる。

 画面構成は、左上に小さくページ番号が表示されるほか、本全体のうちどのくらい読み進めたかを示すバーが画面下に表示されるので、現在地の把握は容易だ。ちなみにもくじでは、各章ごとにページの割合がパーセンテージで表示されるので、例えば8章の手前まで読めば全体の40%を読み終えたことになる、といった把握はしやすい。

 ただし、パーセンテージ表示が徹底されているおかげで、収録されているコンテンツのうちどれが長編でどれが短編なのかが把握しにくいのが困りものだ。各コンテンツを開いて最後のページまでジャンプしてページ数をチェックすればわかることはわかるのだが、できればホームの一覧画面で、各作品のボリュームを把握できる方法はあってほしいところだ。

ページの左上にはページ番号が表示されている。ちなみに文字サイズを変更するとあらためてページ番号が振り直される
右下の黒いマークは、本の中での現在位置を表示しており、読み進めるたびに左に向かって移動していく。進捗表示としては目立ちすぎることもなく、適度に分かりやすいと感じる

 フォントの品質については、同じ5型、かつ600×800ドットである「Kobo mini」「PRS-350」と比較するとかなりくっきりしており、横棒などの細い線がかすれることもない。明朝体しか表示できないぶん、チューニングが細かく行なえているということだろうか。E Inkの世代が新しく、パネルの品質が進化しているのも要因だろうが、昨今の高解像度の電子ペーパー端末に慣れた筆者の目から見ても、かなり善戦していると感じる。

左から、本製品、Kobo mini、PRS-350でのフォントの比較。本製品のフォントの最小サイズである「1」に合わせて比較を行なっているが、本製品はかすれもなく読みやすい
挿絵の画質については判断が難しいが、本製品で今後ラノベなどを展開するのであれば、1つのポイントになりそうではある

本製品の価格と用途について考える

 以上ざっと見てきたが、多少こなれていない機能はあるものの、表示の品質およびページめくりを中心とした基本操作の点で大きなストレスになる箇所は見られず、きちんと使えるレベルに仕上がっている、というのが率直な評価だ。USB給電ではなく乾電池駆動というのも、人によってはメリットと感じる場合もあるだろう。

 その上で本製品の導入にあたってネックになるのは、1つは「価格」。もう1つはコンテンツとバンドルした状態で販売されるというその特殊なスタイルゆえの「用途」ということになるだろう。ニュースリリースを見る限り、本製品は会員登録やネットワークの設定などが苦手なユーザーをターゲットにした製品ということで、論点としてややズレていることは承知の上だが、ここはひとまずフラットな視点で見ていこう。

 まず価格については、今回試用したモデルは14コンテンツ収録で9,800円(税抜)という価格だが、これは汎用の電子ペーパー端末が1台買えてしまう価格である。実際にはここにコンテンツの代金が上積みされるとは言え、汎用端末はコンテンツの追加や入れ替えが自在という利点がある。同じコンテンツを何度も読み返さない前提であれば、本製品は一度読んだら終わりとなるため、どうしてもひっかかる部分ではある。

 ちなみに、汎用の電子ペーパー端末に本製品と同じ収録作品を入れた場合にいくらになるか、価格を計算したのが以下の表だ。hontoは汎用の電子ペーパー端末をラインナップしていないのでここではKindleで比較しているが、電子ペーパー端末としては現時点で最安値と思われる「Kindle(2014)」に、本製品に収録されているアーサー・コナン・ドイル作品9作品(いずれも大久保康雄訳)と、モーリス・ルブラン作品5作品(いずれも平岡敦訳)を購入した場合、通常価格は15,664円(税込)となる。本製品とは約5,000円の差額である。ちなみにコンテンツだけをhontoと比較すると、hontoの方が500円ほど安価であることは補足しておく。

種別 品名 通常価格 セール価格
端末本体 Kindle(2014) 6,980円 4,980円
アーサー・コナン・ドイル作品 緋色の研究 331円 331円
アーサー・コナン・ドイル作品 四つの署名 400円 400円
アーサー・コナン・ドイル作品 バスカヴィル家の犬 550円 550円
アーサー・コナン・ドイル作品 恐怖の谷 450円 450円
アーサー・コナン・ドイル作品 シャーロックホームズの冒険 950円 478円
アーサー・コナン・ドイル作品 シャーロック・ホームズの回想 600円 600円
アーサー・コナン・ドイル作品 シャーロック・ホームズの復活 650円 650円
アーサー・コナン・ドイル作品 シャーロック・ホームズ最後の挨拶 550円 550円
アーサー・コナン・ドイル作品 シャーロック・ホームズの事件簿 600円 600円
モーリス ・ルブラン作品 怪盗紳士ルパン 756円 368円
モーリス ・ルブラン作品 奇岩城 514円 331円
モーリス ・ルブラン作品 水晶の栓 864円 441円
モーリス ・ルブラン作品 カリオストロ伯爵夫人 821円 405円
モーリス ・ルブラン作品 ルパン、最後の恋 648円 397円
合計 15,664円 11,531円

 もっとも本稿執筆時点のKindleストアのセール価格で計算するとガクンと下がって11,531円(税込)となり、差額が1,000円をわずかに切ってしまう。ここまでくると、会員登録やネットワークの設定などに抵抗がないユーザーであれば、汎用端末の方を選択するだろうし、単純に収録コンテンツの冊数で販売価格を割っても、本製品は9,800円÷14冊で700円、アガサ・クリスティー全集は74,800円÷100冊で748円と、その多くが1冊700円台に設定されており、紙の本と比較しても、やや割高な印象は拭えない。

 また、もしハードウェアが故障もしくは紛失の憂き目を見た場合、Kindleストアをはじめとしたオンラインストアであればクラウドから再ダウンロードすれば済むが、本製品は端末が故障もしくは紛失すればそれまでというのもひっかかる。搭載コンテンツの数が多ければ多いほど、これは不安要素になる。

 せめてhontoのライセンスに切り替えて継続利用できるなど、万一の場合を想定した施策は欲しいところだが、現状ではとくにそうした担保が用意されていないようである。そもそもネット接続や会員登録などが不要であることが売りであり、hontoのアカウントにも紐付いていないので、難しいであろうことは容易に想像できる。

どのような用途に向く製品か

 こうした点を踏まえて本製品の生きる道を考えた場合、ニーズがありそうなのは「ギフト」ではないだろうか。シリーズが全巻まとめて収録されているとなれば、特定の作家や作品を“布教”するにはぴったりだ。もちろん自分向けに買う用途も否定しないが、これまで読む機会がなかった作品をまとめて手に入れるというモチベーションよりは、親しい仲間や友人に読んでもらうためにプレゼントするというモチベーションのほうが、より動機付けとしては強く働くように感じる。価格がもう少しこなれる必要はあるものの、ラインナップ次第ではニーズはあるかもしれない。

 自分向けに買うという点においては「保存用」、つまりコレクションとしての購入が考えられる。本製品はその特性上コンテンツの追加ができないため、完結していないシリーズは製品化するのが難しい(本製品がフェアで初展示された際にプリインストールモデルが展示されていた「涼宮ハルヒ」シリーズが現時点でラインナップに存在しないのは、こうした事情も少なからずあるものと考えられる)が、完結済の作品をセットにし、装丁にもそれなりに工夫をこらした上で、なんらかの限定コンテンツをセットすれば、永久保存版としてアピールできるかもしれない。

 とくに今回のラインナップの中でもっとも収録数が多い「アガサ・クリスティー全集」100冊セットのように大量のコンテンツが収録されていれば、置き場所をコンパクトにするという利点もあるし、紙の本をいったん手放してしまったユーザーに、再び手に取ってもらうことも可能かもしれない。ただしコレクション用途の場合、上で述べたように、端末が破損した際もライセンスが担保されることが必須になるだろう。所有欲をくすぐる端末そのものの高級感も、もう少し欲しいところだ。

 本製品発表時のニュースリリースでB2B向けサービスの展開が示唆されているように、今回の製品を始めとするラインナップはおそらくは「採用例」にしかすぎず、例えば経営者の著書をまとめて収録して新入社員に配布するなど、一般の流通ルートには乗らない派生モデルが登場することも考えられる。書き換えができないなどの制約をむしろプラスに活かす形で、コンテンツを保有する企業と組んでどれだけ魅力的かつ説得力のあるパッケージが用意できるかが、本製品の1つの鍵となりそうだ。

ホーム画面右下にはファームウェアのバージョンと思われる表示がある。この数字がイコール日付だと仮定すると、かなり前にできあがっていたと見てよさそうだ

(山口 真弘)