山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

パナソニックのドキュメントスキャナ「KV-S1015C」を試す
〜3つのワンプッシュボタンを搭載した同社初の個人向けモデル



パナソニック
「KV-S1015C」

11月16日 発売
価格:オープンプライス



 パナソニックの「Ractory(ラクトリー)」は、同社初となる個人ユーザー向けのドキュメントスキャナだ。今回紹介する「KV-S1015C」は、この「Ractory」ブランドで投入される2機種のうち、下位モデルに相当する製品である。

 個人向けドキュメントスキャナとしては後発にあたるものの、同社の業務用スキャナのノウハウを取り入れているということで、まったく新規に立ち上げられたわけではない。外観などを見る限り、このジャンルのスタンダードであるPFUのScanSnapシリーズを意識して作られていることがよく分かる。

 今回はメーカーから借用した機材を使い、自炊用途を中心としたレビューをお届けする。

 
●一般的なドキュメントスキャナと同じ仕組み。設置面積は広め

 「KV-S1015C」の仕組みは一般的なドキュメントスキャナと同一で、背面の給紙台に原稿をセットし、スキャンが終わると前方のトレイに排出されるというもの。一度に50枚のA4原稿がセットでき、同時に両面が読み取れる点は、ScanSnap S1500などと共通だ。重送検知用の超音波センサーも搭載している。

 外観については、横幅こそScanSnap S1500よりも広いのだが、背が低い上、本体色が白ということもあり、威圧感を感じない。エプソンの「ES-D350」やブラザーの「ADS-2000」、さらにScanSnapシリーズの新製品である「ScanSnap iX500」といったブラック筐体のモデルがかなり迫力があるのに比べると、よい意味で家庭向けというカラーリングである。雰囲気そのものはFAX機に近い。

 その一方、設置面積の広さは相当なものだ。詳しくは写真をご覧いただきたいが、背が低いということは、限りなくテーブルと平行に紙を送るわけで、給紙台は後方に大きく展開するほか、排紙トレイも前方にほぼフラットに近い角度で展開する。設置スペースがなるべくコンパクトになるよう原稿のUターン機構を備えるキヤノンの「DR-C125」とは正反対のコンセプトだ。ただし給紙トレイを展開しなくても給紙台に原稿を挿せる構造なので、1枚ものであれば、背面のスペースは節約できる。

 なお、本製品はWindows用で、現時点ではMac OSには対応していない。Windows/Mac OS両対応の製品が増えつつある中、競合製品と比べた際にネックになる部分だろう。

給紙トレイおよび排紙トレイを折りたたんだところ。背が低いために威圧感を感じない。家庭内にもよく調和するだろう 側面から見たところ。端子類もなくすっきりとしている 給紙トレイおよび排紙トレイを展開したところ。かなりの設置面積を必要とする。奥行きは実測ベースで60cmを超える
排紙トレイは引き出しのように手前に引っ張り出す方式。このままでもスキャンは可能 排紙トレイを引き出し、折りたたまれていた2段目と3段目を展開した状態。A4スキャンの際はこの状態がベター 給紙トレイ。A4サイズまでの原稿をセットできる
最大50枚の原稿をセットできる。多くの競合製品と同等の仕様 紙が詰まった際や、ローラー部のメンテや交換を行なう際には前方に開ける リタードローラーを上部と下部それぞれに備えるので原稿が分離しやすいという触れ込み
背面。電源コネクタ、USBポートとケンジントンロックを備える ScanSnap S1500(右)との比較。本製品のほうが背丈が低い
ScanSnap S1500(右)に比べるとわずかながら横幅が広い ScanSnap S1500(右)よりも手前の排紙トレイの角度が浅く、そのぶん前方にスペースが必要になる。もっとも厚みのある原稿ではこちらのほうが曲がりにくいので、一概にどちらがよい悪いとはいえない

●スキャン時の挙動や、エラー発生時の処理がやや不親切

 セットアップはまずソフトをインストールし、USBケーブルで接続。本体の電源ボタンをオンにするとドライバがインストールされ、使えるようになるという流れだ。とくに奇をてらったところはない。

 読み取りには「Presto! PageManager 9」を使用する。正確には、このソフトに同梱される「Presto! Scan Jobs」に、各ボタンを押した際のスキャン設定を登録しておけば、本体の3つのワンプッシュボタンで読み取り設定を切り替えつつスキャンできる。個人的にこの機能は本製品の一番のキモになる機能であるように思える。詳しくは後述する。

「スキャンボタン設定ツール」では、起動するアプリケーションとして「Presto! PageManager 9」が割り当ててられている。ちなみにタスクトレイからも設定できる デスクトップ右上に表示される「Presto! Scan Jobs」のウィンドウ。クリックするとスキャンが開始される。右クリックして「設定」を選ぶと設定画面が開く 「Presto! Scan Jobs」の設定画面。複数の読み取り設定を登録しておける。これは初期状態の画面

 スキャンの動作で特徴的なのは、絶え間なく紙を送り続けるところだ。詳しくは動画をご覧いただきたいが、動作音を文字で表現するならば、ほかのドキュメントスキャナだと「ガーーッ、ガーーッ」と1枚ずつ間が空くところ、本製品では「ガーーーーーッ」と続けて読み取られる。音の変化が少ないぶん耳障りでなく、また比較的静かなので、他社製品に比べると夜間の作業でも隣室に響きにくい。もっともScanSnapの新モデルである「ScanSnap iX500」もほぼ同じような挙動と動作音なので、本製品だけの特徴というわけでもない。

【動画】本体のワンプッシュボタンを使い、10枚20ページの原稿をスキャンしている様子。PC側からスキャンを開始することも可能だ

 スキャンしていて気になるのは、PC側でプレビューがまったく出ないことだ。せめて何ページ目かの表示が出ればよいのだが、単に「スキャン中」としか出ないので、原稿の減り具合を目視で確認しつつ、どの程度読み取りが終わったのを見るしかない。プレビューが出るのは重送が発生した時だけだ。

スキャン中に表示されるウィンドウ。簡素な作りで、ページ数のカウントすらない こちらはScanSnapでスキャン中に表示されるウィンドウ。設定内容が明示される上、プレビューが出るので分かりやすい 重送発生時の表示。この画面とあわせて、最後に読み取った画像のプレビューが表示される。プレビューが出るのはこの時だけのようだ。スキャナのイラストが同社の業務用モデルそのままなのはご愛嬌

 また、スキャン中にデータの転送が追いつかないためか、スキャンが中断する頻度がそこそこ高い。原稿にもよるのだが、300dpiカラーでA4原稿を50枚スキャンする間に3〜4回止まるケースがあったほどだ。中断している間「お待ちください」といった類のメッセージが何も出ず、再開するのも突然なので、異常があって中断しているのか、それとも待ちなのか、判断がつきにくい。同じPCを使ってほぼ同一設定でScanSnapでスキャンした際は中断の発生は皆無だったので、差があることは明白だ。今後のソフトウェアの改善を望みたい。

 さまざまな裁断本をスキャンしてみたのだが、新しい本はそれほど問題なく、薄手のカラーページが多いビジネス誌なども重送が発生しにくいのだが、紙がやや黄ばみ始めているような本については紙詰まりもしくは重送が発生する率が高い。しかもほとんどの原稿をスキャンし終えて残り2〜3枚になったところで発生するというパターンが異常に多い。

 なにより問題なのは、エラーが発生すると読み取りを終えていたデータも含めて消えてしまうことで、50枚の原稿のうち47〜48枚目でエラーが発生してデータが全部消えるという事故が3回続けて発生した(ちなみにすべて異なる原稿だ)時は、さすがにガックリきた。一応フォローしておくと、そうでない本であれば、こうしたエラーはまず出ない。紙質との相性ということになるだろう。ただ、他のドキュメントスキャナでは発生しない症状であるのも事実である。

●色は鮮やかで黒も引き締まった絵作り。所要時間はやや遅め

 スキャンの所要時間、ファイルサイズ、画質について見ていこう。

 筆者が自炊でよく使う300dpiに解像度を固定し、カラーモードを変更しつつスキャンした結果が以下の通りだ。補正については白紙削除と向き補正のみオン、それ以外は使用していない。原稿には、「DOS/V Power Report」2012年9月号の表紙を除く冒頭100ページを使用している。比較対象はScanSnap S1500である。

【表1】
色数 カラー グレー 白黒
所要時間とファイルサイズ 所要時間 ファイルサイズ 所要時間 ファイルサイズ 所要時間 ファイルサイズ
KV-S1015C 4分37秒 116.4MB 2分33秒 98.8MB 2分29秒 28.6MB
ScanSnap S1500 2分59秒 97.1MB 2分54秒 88.1MB 2分27秒 15.3MB

KV-S1015Cカラー KV-S1015Cグレー KV-S1015C白黒
ScanSnap S1500カラー ScanSnap S1500グレー ScanSnap S1500白黒

 スキャン速度については、本製品の上位モデルである「KV-S1026C」は毎分30枚の読み取りができることから「高速読み取り」という表現がニュースリリースなど随所にあるのだが、これはモノクロ200dpiでの測定値であり、iPadの高解像度化などにより各社が今標準としつつあるカラー300dpiでの読み取りでは毎分13枚と、かえって他社よりも遅くなってしまう。下位モデルであるこの「KV-S1015C」も、カラー300dpiでは毎分13枚、グレー300dpiでは毎分20枚という公称値であり、この測定値もそれを裏付けている。

 ファイルサイズについては、カラーやグレーについてはScanSnapより1〜2割増しなのだが、白黒になるとScanSnapの倍近くに膨れ上がっている。ScanSnapでは背景の網掛けが完全に白飛びするのに対し、本製品では網がある程度残るという絵作りのせいかと思ったのだが、テキスト中心の原稿でも同じくらいのサイズ差があったので、単純に白黒はファイルサイズが大きめ、ということのようだ。

 画質については、彩度が非常に高く、また黒もしっかり出るのが特徴。とくに黒の濃さは、ScanSnapの黒に不満のあるユーザーにとってはメリットだろう。色の鮮やかさについても、多少極端にみえる場合もあるが、全体的にくすんだようになりがちなScanSnapに比べ、絵作りはこちらのほうが好みという人も多そうだ。ただしその反面、暗い部分のディテールは潰れやすい傾向にある。詳しくは以下の画像を見てほしい。

左が本製品、右がScanSnap S1500で読み取った画像(以下同じ)。くすんだように見えるScanSnapに比べて発色が鮮やかで、黒も引き締まっている
上の画像を600%まで拡大したところ。まったく別の画像のようだ。シャープネスもきつめにかかっている
黒がしっかりと出る反面、このページの下部のように暗い部分のディティールが完全に潰れてしまう場合がある。右上の基板上のファンにも注目
上のウィンドウ内のメッセージは、右のScanSnapだと読み取れるが、左の本製品は潰れてしまってまったく読み取れない
赤、緑の発色もかなり鮮やか
基板を比較すると発色の違いがよく分かる。下段の囲みの背景色もかなり違う

 続いて、色をカラー(1,677万色カラー)に固定し、解像度を150/300/600dpiと変更してスキャンした際の所要時間とファイルサイズを見てみよう。

【表2】
解像度 150dpi 300dpi 600dpi
所要時間とファイルサイズ 所要時間 ファイルサイズ 所要時間 ファイルサイズ 所要時間 ファイルサイズ
KV-S1015C 2分30秒 32.1MB 4分37秒 116.4MB 14分16秒 318.6MB
ScanSnap S1500 2分32秒 30.2MB 2分59秒 97.1MB 10分04秒 321.4MB

KV-S1015C/150dpi KV-S1015C/300dpi KV-S1015C/600dpi
ScanSnap S1500/150dpi ScanSnap S1500/300dpi ScanSnap S1500/600dpi

 150dpiでは所要時間・ファイルサイズともに大差ないが、解像度が上がると所要時間はどんどん差が広がっていく、という傾向が見て取れる。本製品では「文書」、「写真」、「混在原稿」といった読み取り設定が用意されており、さらにそれぞれに対して「速度重視」、「標準」、「画質重視」の3択がある。このうち「画質重視」が600dpiに設定されているのだが、これだけ時間がかかるとおすすめしにくい。ScanSnapも600dpiでは速度が低下するが、その比ではないからだ。一方、ファイルサイズについてはScanSnapとほぼ同等であることが分かる。

「文書」「写真」「混在原稿」それぞれに対して解像度の異なる3つのパラメータが用意されている それぞれのパラメータの設定値。「画質重視」では解像度は600dpiに設定されている

 こうした傾向から見る限り、あまり高い解像度で使うのではなく、できれば150dpiや200dpiで使うのに向いた製品と言える。ただ、それでもScanSnapとほぼ同等といったところであり、競合製品と比べた場合のメリットにはなりえない。ちなみに補正オプションのうち、利用頻度の高い「傾き補正」「向き補正」「空白ページ削除」などはオンでもオフでも所要時間に目に見える影響はなかったことを補足しておく。

「環境設定」にもPDFに関するオプションがある。PDF/Aなどで読み取る場合もここで設定する こちらは「Presto! Scan Jobs」内の設定項目。PDFやJPG以外のフォーマットが選択できる

●3つのワンプッシュボタンに読み取り設定をそれぞれ割り当て可能

 ところで本製品については、ScanSnapでは不可能な、とくに自炊ユーザー向けに便利な機能がある。それは本体の3つのワンプッシュボタンに、読み取り設定をそれぞれ割り当てられることだ。

 筆者の場合、ふだん使用している「ScanSnap S1500」での読み取り設定は基本的に4種類に分けられる。裁断本の自炊用途にカラーモードが異なる2種類、その他ドキュメント用途で2種類だ。解像度はすべてScanSnapでいうところのスーパーファイン、つまり300dpiである。要するにカラー自動切替を使わず、あとケースバイケースでPDFとJPGを使い分けているわけである。

 ScanSnapの場合、これら読み取り設定の切替はPCのユーティリティ側で行なわなくてはならず、少々操作がわずらわしいわけだが、本製品ではこれら読み取り設定を最大3つまで本体のワンプッシュボタンに割り当てておけるので、PC側で読み取り設定を切り替えなくとも、例えばJPGカラーでスキャンしたい場合はボタン1、PDFグレーでスキャンしたい場合はボタン2、といった具合に使い分けることができる。4つのモードを切り替えて使っている筆者の場合、利用頻度が低い1つの設定だけは別にして、あとはすべて本体のワンプッシュボタンに割り当てられるのだ。

本体に3つのワンプッシュボタンを備える。左側のラベルには設定値をペンなどで書き込めるようになっている 「Presto! Scan Jobs」で、ワンプッシュボタンに割り当てたい読み取り設定をそれぞれ作っておく 「ワンプッシュスキャン」タブから、それぞれのボタンに対してどの読み取り設定を割り当てるかを設定する

 過去にも本体ボタンおよび液晶画面で読み取り設定が切り替えられる機種はあったが、設定が難解で実用レベルには達していなかった。本製品は設定がプリセットされており(デフォルトではボタン1がフォルダー保存、ボタン2がメール添付、ボタン3がプリント)、本体のワンプッシュボタンを長押しすれば設定画面をすばやく呼び出せるので、設定の変更も容易だ。本製品を選ぶ動機となりうる機能だろう。

 もちろんネックもあって、どのボタンにどんな設定が割り当てられているのか、頻繁に設定を書き換えると混乱しやすい。とはいえ、仮に設定が表示できる液晶画面があればよかったかというと、それも煩雑になっていた気がする。現行の仕様のままで、割り当てた設定値はなるべく変更せずに使い、よく変更するのであればボタンはむしろ使わないといった、運用ベースでの工夫がベターであるように思える。

●ボタンを押さずにスキャンできる「おくだけスキャン」が面白い

 このほか、自炊用途とは直接関係のないその他の機能および特徴をざっと紹介しておこう。

 本体上部に原稿を置くだけでボタンを押さずにスキャンが行なえる「おくだけスキャン」は、本製品ならではのユニークな機能だ。1枚だけ手軽にスキャンしたい場合にこの機能をオンにしておけば、トレイを閉じた状態でも原稿を載せればスキャンできる。本製品はトレイを閉じた状態でも給紙台そのものは露出した構造になっており、それを生かした機能ということになる。

 ただし未使用状態が30分続いてスリープモードに入っていると、ボタンを一度押して復帰させなくてはいけないので、機能としてはやや矛盾している感がある。また通常のスキャンとは手動での切替となるので、いざトレイを開いて使おうとしたところ「おくだけスキャン」が有効になったままで、いきなりスキャンが始まってしまうこともしばしばだ。トレイを閉じていると自動的に「おくだけスキャン」が有効になり、スリープモードも無効化される仕組みならよかったかもしれない。ともあれ、1枚だけスキャンするのにわざわざトレイを開けるのは面倒という問題をうまく解決しており、使い勝手が良くなれば積極的に使いたい機能だ。

背面斜め方向から見たところ。給紙トレイを閉じた状態でも原稿をセットできる構造になっており、「おくだけスキャン」が利用できる スキャンボタン設定ツールから「おくだけスキャン」を選択する必要がある。自動的に切り替わるわけではない

 このほかクラウド連携機能も備える。同梱のソフト「Presto! PageManager 9」を通じ、GoogleドキュメントやEvernoteにデータをアップロードできるというもので、これらの操作を前述のワンプッシュボタンに割り当てることも可能だ。また公式に対応とされているわけではないが、任意のフォルダに保存する機能を使えば、DropboxやSugarSyncの共有フォルダにデータを保存することで、これらオンラインストレージにもデータをアップロードできる。ワンプッシュボタンとの連携は別にして、できること自体は競合製品と基本的に相違ない。

 本稿執筆時点ではアプリが公開されていないため未検証だが、スマートフォン連携機能も備える。PC側にインストールした専用ソフトを使ってスマートフォンに転送するという流れからして、基本的には従来のScanSnapでいうところの「ScanSnap Connect Application」による連携機能と同じようなのだが、この分野はScanSnapの新製品「iX500」のように、PCレスでスマホやタブレットから直接スキャンを実行できるのが新しいトレンドになりつつあるので、現状ではあまり特徴的な機能というわけでもない。対応機種が現時点で同社製のスマートフォン3製品(ドコモP-07D、P-04D、ソフトバンク102P)のみとされているのも気になる。

●ソフトおよびマニュアル類の改善による使い勝手の向上が待たれる

 以上、ざっと使ってみたが、ScanSnapにはない機能もあり、個々の設定はScanSnapよりも細かく行なえるうえ、読み取った画像の色合いもなかなか良好なのだが、いかんせん使いにくい、というのが率直な感想だ。実は本稿を書き始めるまで約1カ月ほど使っているのだが、未だに分からない挙動が多く、混乱することもしばしばだ。設定について、ScanSnapやキヤノンのimageFORMULAのように「このユーティリティの中を探せば必ずどこかに設定項目がある」わけではなく、複数のソフトに設定がまたがっていたりするので、原因を突き止めるのが大変という事情もある。

 また、マニュアル類があまりにも簡素、かつ不親切なことも気になる。例えば説明書は、トレイに紙を載せるところまでは丁寧に説明されているのに、次の読み取り操作に関しては「アプリケーションの使用方法は、各アプリケーションのヘルプをご参照ください」と丸投げされていたりする。スキャナの設定と、読み取りのためのユーティリティが完全に分かれてしまっている(別の読み取りユーティリティも選べる)が故にこうなっているようなのだが、逆に複雑怪奇になってしまっている。

 そのアプリケーションの説明書にしても、初めて使おうとしているところで「読取条件でインプリンターの印字文字列にカウンターの印字設定を行なっている場合は〜」と専門用語でまくしたてていたりするので、ある程度こうした製品に慣れているユーザーでも、理解するのは困難だろう。

 このほか、発生した紙詰まりを直したあとスキャンを再開すべくワンプッシュボタンを押しても、PCの画面上でエラーのダイアログが出たままの状態ではスキャンが再開されなかったり、「Presto! Scan Jobs」で保存先フォルダを変更しようとすると、どのフォルダに設定していても必ずマイドキュメントから探し直さなくてはいけなかったりと、細かい使い勝手でストレスになる要因を挙げ始めるとキリがない。どうにもこなれていない印象だ。

 といった具合に、あまりこだわりがない分には「混在原稿(標準)」などのプリセット値を使っていればよいのだが、ちょっと凝ったことをしようとすると途端にひっかかるので、中級者も慣れるのにそこそこハードルが高い製品だ。ソフトおよびマニュアル類の改善で使い勝手が大幅に向上する可能性はあるので、現状ではそれ待ち、というのが本稿の結論になるだろう。今回借用したのが発売前の試用機なので、発売時点である程度改善されていることを期待したい。

 ただ、それらが改善されたとして、「自炊」に限ってはあまり向かないというのが筆者の見解だ。前述したように古い本が読み取りにくいのもそうだが、自炊本などページサイズがわずかに不揃いな原稿を大量にセットしてスキャンすると、スキャンが進むにつれてどんどん傾きがひどくなっていくからだ。

自炊本50枚(=100ページ)セットしてスキャンした状態。左が最初の1〜24ページ、右が最後の79〜99ページだが、スキャンが進むにつれてどんどん傾きがひどくなっていくのが分かる。傾き補正をオンにすれば解消されるが、漫画原稿だとかえっておかしな角度で補正されたりするので、文字原稿にしかこの手は使えない

 これらは傾き補正を常時オンにすると解消するが、そうなると漫画原稿では罫線や効果線を基準に補正がかかってしまい、あらぬ方向に傾いたりする。背景が黒で読み取られるので、傾きが発生した際に隙間が目立ちやすいのも、自炊用途では大きなネックだ。

 どちらかというと自炊ではなく、固有の設定をワンプッシュボタンに割り当てた上で身の回りの紙類やオフィス文書などの利用に使うのが現実的な用途であり、その設定にしても初心者ではなく一定の知識を持った管理者が行なうべき製品だと感じた。そうした意味では、まだ業務用の域を出ていない製品、といえるのかもしれない。ハードウェアとしては悪くなく、ワンプッシュボタンなど魅力的な機能もあるだけに、今後の本製品の評価は、ひとえにソフトおよびマニュアル類の改善にかかっていると言えそうだ。