■山田祥平のWindows 7カウントダウン■
マイクロソフトからWindows 7の価格と販売施策、パッケージ構成等の詳細が発表された。ただし、発売日に関しては未だ10月22日に確定せず、7月7日の発表を待てとのことだ。期間限定でWindows 7が格安で入手できる「Windows ありがとう」キャンペーンは、アッという間に売り切れご免で、世間一般の関心の高さが伺える。
●ネットブックをどのOSで使うかキャンペーン対象商品が売り切れてしまった今、それに出遅れてしまったユーザーが、Windows 7発売までにとれる手は、現行のWindows Vista搭載PCまたはパッケージ等を購入し、優待アップグレードキャンペーンにより無償~数千円でアップグレード版を入手する方法と、おとなしく発売日を待ち、電気街の深夜販売でも立ち会って手に入れるという方法の2種類がある。
特に、ネットブックでWindows XPを使っているユーザーにとっては、これからどうすればいいのか、実に悩ましいところだ。というのも、この優待アップグレードキャンペーンは、ネットブックなどに搭載されたWindows XPやWindows Vista Home Basicを対象としないからだ。
ネットブックユーザーとしては、現行のXPをそのまま使い続けて、Vistaを飛ばしてWindows 7に移行する方法と、いったんVista、そして7へと2段階で移行する方法がある。
ここでややこしいのは、ライセンス的にはアップグレードができないが、上書きインストールはできるという点だ。つまり、XPから7への上書きインストールはできないが、XPからVistaへの上書きインストールはできる。そして、そのVistaを7に上書きインストールができる。だから、今、ネットブックで使っているXPの環境をそのまま引き継いでVistaにして、その環境をさらに引き継いで7に移行することができるわけだ。
7のHome Premium の通常版の想定価格と、現行でアップグレード権つきのVista Home Premiumの価格差は微々たるものということを考えると、今、Vistaを手に入れて、さらに7が手に入るというのは、けっこうリーズナブルなプロセスだ。
●コストとの兼ね合いを考えるネットブックのハードウェアはとても単純だ。特殊なものはほとんどないといっていいし、各社ともにほとんど同じ構成だ。このことは、OSのクリーンインストール時に、トラブルを起こすことはまずないということを意味する。
つまり、XPにVistaを上書きインストールしたりしなくても、最初からVistaや7をクリーンインストールして、すっきりした環境で愛機を手なずけていくという方法が、大きなトラブルを体験せずに簡単にとれるということでもある。
そうしたことを考えた上で、次に検討しなければならないのは、果たしてXP環境で快適さを感じていたユーザーに、ネットブックで動かすVista Home Premiumの環境がガマンできるかどうかだ。だが、優待アップグレードキャンペーンの恩恵を受けるためには、Vista Home Premium以上を選ぶしかない。
多くのネットブックはその搭載メモリ量が1GBだ。XPはこのメモリ量で快適に使える。でも、贅沢なOSであるVistaは、この量ではちょっとつらい。その一方で、7はメモリが1GBでもRCの振る舞いを体験する限りは不満を感じない。とはいえ、メモリを増設し、優待キャンペーン対応のパッケージを買うためのコストを考えると、5万円以下で買ったネットブックに、それだけの投資をするべきかどうかは迷うところだ。
例えば、2GBのSO-DIMMとDSP版のバンドルで購入できるようなパスがあれば、多少はコストを抑えることができるが、それでも2万円前後の出費を覚悟しなければならない。インストール用に外付けの光学ドライブを購入しなければならないともなれば目も当てられない。
HP miniのVivienne Tam editionでは、Aeroプレビューもそれなりに使い物になる | エクスペリエンスインデックスはお世辞にも高いといえないが、不快な重さは感じない |
典型的なネットブックスペックで、実装メモリも1GBのみだ | タスクマネージャで確認すると、素の状態でほとんどメモリも使われていないことがわかる |
Windows 7の発売と同時に、おそらくは、OEM専用の「Starter」搭載のネットブックがたくさん登場し、現行と似たような価格で発売されることを考えると、どうにも二の足を踏んでしまう。そのときに新しいネットブックに買い換えた方が満足度は高いかもしれないからだ。
これから秋にかけてのネットブックのトレンドは、画面解像度の向上と外付けGPU搭載の方向にある。また、価格の点では廉価なノートパソコンとネットブックの境目が曖昧になってきているというトレンドもある。これらのトレンドを見切れば、今のネットブックはそのまま使い捨てて、頃合いを見て7搭載のネットブックに買い換えという方法が現実的かもしれない。
おそらく、7の登場以降、XP搭載のネットブックはそのままフェードアウトしていくだろう。その存在意義が希薄になるからだ。XP下でしか動かないアプリケーションがあり、新たな環境の厳しい検証が求められる企業ユースはともかく、コンシューマーの市場は、一気に7に移行する。XPはもちろん、Vistaもあとかたもなく消えてしまうだろう。7が出た以上、Vistaにこだわる理由はないに等しい。
●ともかくRCを体験してみよう結局のところ、現行ネットブックユーザーにとって、もっとも幸せなのは、8月15日で配布が終了するとされているWindows 7のRCを、ハードウェアの拡張なしに入れ、そのハードウェアのライフサイクルを終わらせてやることだ。
誤解を怖れずに言うならば、今、ネットブックを持つユーザーは、それが唯一無二のメインPCではないはずだ。マイクロソフトでは、メインのPCに7のRCを入れて使うことは推奨していないが、セカンドマシンで半年先の未来を今すぐ経験するなら話は別だ。特に、ネットブックの用途がメールとWebで十分だと考えているなら、特に不自由することはないはずだ。セキュリティ関連だけに留意すればいい。
そして、秋になり、Windows 7が発売された時点で、その環境に特に不満を感じないのなら正規のパッケージを購入してOSを入れ替えればいい。市販のアップグレード版でネットブックのXPをアップグレードできるので、1万円近く安くなる。もし、新しいネットブックに目移りするようなことがあればハードウェアごと買い換えればいいわけだ。
古いネットブックは、元のプレインストール環境に戻して、家族に譲るなどすればいい。もしかしたら、そのときに、Windows 7を入れてあげたいと思うかもしれない。たぶん、お古とはいえ、半年間、7を体験したユーザーが、XPを入れたネットブックを家族に渡すというのは、ちょっとした罪の意識を感じるに違いない。そのくらい、XPと7のユーザー体験には大きな違いがある。
こうしたことを考えると、これからXP搭載のネットブックを新たに購入するのは、いかに割に合わない選択であるかがわかるというものだ。実に高い買い物になる。その一方で、Vista PCは、秋にアップグレードできる保証がある。気に入ったスペックと値付けのPCがあれば「買い」に値する。
そうはいってもこれから出てくるXP搭載ネットブックの新製品も数多い。それらを買ってしまったユーザーに対する、何らかの救助策があってもいいとは思うし、そうすれば、ものすごい勢いで7移行が進むとは思うが、各ベンダやマイクロソフトはどのように考えているのだろう。
(2009年 7月 1日)