山田祥平のRe:config.sys

家電制御はスマホを使ってロボットにお願い、ついでに掃除も




 シャープが「家電コントローラー RX-CU1」を発表、ロボット家電COCOROBO RX-V100 にスマートフォンアプリを使って指示を与え、家庭内の電化製品を遠隔制御できる仕組みを提供するそうだ。こうしてスマートフォンでできることがどんどん増えていく。どうして、これがPCではできないのだろうかという疑問も残るのだが、まずは、スマートフォンからということらしい。

●人間が指示してロボットが家電をコントロール

 仕組みとしてはシンプルだ。ロボット家電「COCOROBO RX-V100」は、掃除機能を持ったロボットであり、USBポートを装備している。ここに今回発売された家電コントローラー RX-CU1を装着する。このコントローラは、赤外線リモコン信号を発射できるので、ロボット家電にスマートフォンから指示をすることで、ロボットが家電を制御するという仕組みになっている。この「ロボットが家電を制御」というところがミソである。

 というのも、以前、パナソニックが行政からの指導で、同様の機能を断念した経緯があるからだ。理由は、電気用品安全法によって、エアコンの電源を本体のスイッチ、またはリモコン以外の遠隔操作でオンにすることが違法とされているためだ。

 今回のシャープの仕組みは、家電であるエアコンそのものにこの機能を持たせるのではなく、あくまでも別システムとして、ロボットが家電を制御する。そのため、エアコンそのものは旧来のもの、そのままで大丈夫ということで、電気用品安全法の規制には該当しないという解釈のようだ。

 結果としては同じことなのに、仕組みでクリアできるということに、釈然としない面もあるのだが、そういうことらしい。

 ただ、始めたばかりのサービスということで、セキュリティ面などを考慮し、ロボットとペアリングできるスマートフォンは1台だけだったり、学習リモコン的な機能も持ちながら、制御できる相手となる家電製品をシャープ製の一部のものに限定するなどの配慮はある。最初から大風呂敷を広げないところが奥ゆかしい。

 ロボットはWi-Fiで宅内のLANに接続しておき、それとスマートフォンはインターネット経由でコミュニケーションすることになる。スマートフォンのアプリでは、部屋の間取りを指定し、家電の位置やテーブル、イスなどの障害物などを登録しておく。登録したオブジェクトごとに、エアコンや照明器具なら上方、TVなら下方といった判断がなされるようにしてあるということだ。こうして登録した情報はクラウド上に保存されて、スマートフォンからそれを参照するようになっている。

 ロボットには写真を撮る機能も備わっているので、間取り上の任意の位置に移動させて写真を撮ることもできる。もちろん、掃除機としても機能するので、留守中に外出先から部屋の様子をチェックし、ペットがいたずらしていないかどうかといったことを確認しつつ、ついでに掃除もしてもらえるというわけだ。

●聞くだけではなく、しゃべり始める家電

 家の中には多くの家電製品がある。そして、赤外線方式のリモコンで操作できるようになっている。このリモコンがクセモノで、もう、何がどうなっているのかわからない。TVにつながっている各種の機器も複数あると、やはり、複数のリモコンを操作する必要がある。

 こうした不便を解消するのが学習型リモコンなのだが、インターフェイスとしてはやはり人に優しくない。設定はもちろん、操作自体も洗練されたものにするのが難しい。だから、結局、本体のスイッチを直接さわるようにもなったりする。本体だけではすべての操作ができないものも少なくないのが困ったところだ。

 今、多くの人々がデバイスを快適なタッチ操作で使うようになり、タッチというインターフェイスが市民権を持ち始めている。また、4型程度のスクリーンを持つポケットサイズのスマートフォンのみならず、7型前後、10型前後など、スマートデバイスのスクリーンサイズもバリエーションが出てきた。そんな中で、機器をコントロールするための、もっとリッチなインターフェイスが求められるのは、ごくごく自然な成り行きだ。

 電波、赤外線と、光ファイバー、メタルと、伝送路は何であれ、ハードウェア同士がインターネット的なコミュニケーションできるようになってきているのだから、人間の要求を機器に伝えるためのインターフェイスは、今のうちに、もっと真剣に考えなければなるまい。

 今回のシャープの製品にしても、部屋の間取り図を作るには、小さなスマートフォンの画面でアプリを操作する必要がある。傍らには20型を超えるスクリーンを持ったPCがあったとして、それを使ってできれば、もっと簡単にできるはずだ。どうせ、データはクラウドに置くのだから、こうした連携ができるようになっていればいいと思う。

 今はまだ、制御される側の家電が、自分のステータスを他者に伝えることができない。リモコンでエアコンの電源をオンにしようとしたときに、エアコンはすでにオンの状態になっていたとしても関係なく、オンにするような制御信号が発せられるだけだ。

 もう、これだけ世の中が進化したのだから、例えば、カメラを内蔵して、スマートフォンで中味が確認できる冷蔵庫や、調理中の料理の様子がわかるレンジくらい出てきてもよさそうなものなのに、まだお目にかかれない。人がこうしたことを望んでいるのかどうかはわからないのだが、次の一歩のために、家電は互いにつながることを考えてほしいとも思う。

●汎用コンピュータで専用コンピュータを制御する

 Googleがドラえもんの生誕前100年を記念してのサービスで、現在の「ひみつ道具」として、Googleマップの「ストリートビュー」が「どこでもドア」だとされていた。この発想には、ちょっと無理があるなとは思ったのだが、冷静に考えれば、インターネットとWebこそが、現代のどこでもドアなんじゃないかと思う。リンクをクリックするだけで、はるか遠くにあるコンピューターが応答し、望んだオブジェクトを目の前に届けてくれるのだ。

 スマートフォンの登場で、携帯電話がコンピュータになってしまったのと同様に、今後は、さまざまな機器がコンピュータになっていくだろう。今でもそれに近い状態だが、スタンドアロンであり専用機だ。その専用機が汎用機化して、ネットワークにつながっていくにちがいない。そして、ユーザーインターフェイスは別の機器にゆだねられるようになる。

 今回のシャープの試みは、専用機のインターフェイスを強引に汎用的なもので制御している点が素晴らしい。過渡期とはそういう知恵と工夫がなければ乗り切れない。その先にある世界を早くこの目で見たいと思った。