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【IDF特別編】Coreの世代が変わるごとにPCを再発明

 Intelの中でクライアントPCは花形事業の1つだ。それを担当するKirk Skaugen氏のMega Sessionでは、我々にもっとも身近なIntelのビジョンを垣間見ることができた。ここでは、その概要を紹介しよう。

Megasessionは2014年の集大成スピーチ

 米・サンフランシスコで開催された開発者会議「Intel Developer Forum(IDF14)」では、例年の基調講演が、1つの短い基調講演と6つのMega Sessionに分散して編成されたのは既報の通りだ。

 その1つとして、会期の2日目に「PC Reinvention and Innovation - Focus Areas for Developers with Kirk Skaugen(Senior Vice President, General Manager, PC Client Group)が設定された。

 すでに前日のCEOによる基調講演で登壇し、ダイジェストがチラ見せされていたが、やはりニュース的なトピックスとしてはBroadwellの後継にあたるSkylakeが2015年後半に投入されることが明らかになったことだろう。

 それ以外の内容については、すでに前週ドイツ・ベルリンで開催されたIFAでの基調講演をなぞるものであり新鮮味には欠けるものだった。ほぼ同じ時期に開催されているとは言え、IFAとIDFでは聴講者層がまったく異なることを考えればそれも仕方がないといえそうだ。

 ここのところのIntelは、年初のCESでその年のビジョンを語り、6月のCOMPUTEX台北で実質的な中間報告、8月のIFAでその達成を披露、IDFでは翌年の情報をチラ見せというプロセスで同社の事業をアピールしてきた。今年は、Broadwellの出荷が遅れたこともあり、その後継であるSkylakeの詳細については先送りにされるといった事情もあり、重複感が否めなかったといえるだろう。

Coreの世代が変わればフォームファクタも変わる

 Kirk Skaugen氏によるMega Sessionは、「今日は、PCの話をしよう」と始まり、PCについて、Intelがこれまでずっと再発明を繰り返したことがアピールされた。

 Coreの世代が変わるごとに新しいフォームファクタが生まれ、今は、2-in-1のフェイズにあることはご存じの通りだ。そのコンセプトは、情報の生産と消費を1つのデバイスで実現するというものだ。

 実際、人々はタブレットも欲しいし、レガシーなクラムシェルも欲しいと思っている。両方欲しいが、両方を持つにはコストがバカにならない。持ち歩きも不便だ。だから、双方を歩み寄らせたらどうかというのが2-in-1 PCだ。つまり、タブレットとしてもクラムシェルとしても使えるいいとこ取りのデバイスができないかと考えたのだ。

 前週のIFAにおいて正式発表されたCore Mプロセッサは、Intelの歴史の中でもかつてない省電力性能を誇るとSkaugen氏。性能、ファンレス、グラフィックス、バッテリ駆動時間をすべて満たした革新的なプロセッサだという。それが、2-in-1 PCの可用性を大きく高めるという。

 同氏は4年前のウルトラモバイルPCとCore M搭載2-in-1 PCを比較し、より薄く、軽くなったことや、2倍の処理性能、7倍のグラフィック性能、倍のバッテリ駆動時間、そして、静かで熱くならないファンレスデザインを強調した。

 さらに、タブレットそのものの再発明についても言及された。壇上では、最新のQualcomm Snapdragon搭載タブレットと、Core M搭載最新2-in-1のタブレットが比較され、Webアプリの性能は3倍、3Dグラフィックスの性能は3倍、マルチタスキングやストレージも充実し、当然、フルPCとしての環境を提供しながら、厚み、重量、バッテリ駆動時間ともに、Snapdragonに匹敵するということが強くアピールされていた。

 Skaugen氏は4年前のノートPCで使われていたマザーボードと、Core M機で使われるマザーボードを両手に持ち、これだけ小さくなったと誇らしげに語り、これから世の中に出てくる各社のCore M機を順に発表していった。その中には、未発表の東芝機も含まれたものの詳細は明らかにされなかった。

 Core Mがこの10月に正式デビューし、ホリデーシーズンに向けて搭載機が発売されるのに加え、第5世代Coreプロセッサとして、BroadwellのCore i3、i5、i7が2015年初頭に出荷開始されることも改めて表明された。Broadwellは、14nmプロセスによる第2世代のTri-gateトランジスタを使ったプロセッサとして注目を集めているが、出荷が遅れに遅れた結果、2015年になってしまったことになる。

 壇上では、Core M搭載機によるゲーミング体験も紹介されていた。そこで使われた実機が、こともあろうに未発表の東芝機だった。スクリーンに投影されるデモンストレータの手元を拡大して見てみる限り、着脱式の2-in-1 PCで、かなりの薄型を実現しているようだ。東芝はCore Mプロセッサが最初に提供される5社の中には含まれないが、日本のベンダーとして正式発表の期待が高まる。

2015年はワイヤーと訣別する年

 Skaugen氏は、No Wire、No Passwords、Natural User Interfaceの3つの観点から、クライアントユーザー体験の革新についても説明した。特に、カバンの中に入れていつも持ち歩いている各種のアダプタやケーブル類を実際に披露し、それが今後、いらなくなる可能性を示唆した。

 Intelはこの10年で、Centrinoによって、ネットワーク接続からワイヤーを排除することに成功したが、それと同じようなことがこれから起こる。

 例えば、2016年の終わりには、WiDi搭載PCが3億台になり、TVなどの大画面への投影にケーブルが必要なくなる時代になるという。その受信機としての無線ディスプレイ受信機も大きなUSBメモリくらいのサイズになり、手軽に身近なスクリーンデバイスにHDMI接続できるようになっている。

 また、Wireless Gigabit(WiGig)についても、無線ドッキング、無線データ転送などの機能が紹介された。

 ポータブルオールインワンも新しいビジネスモデルを築こうとしているという。LenovoのHorizonシリーズなどが紹介され、PCの新たなユーザー体験が提案されていた。

 さらに、Skylakeのリファレンスシステムが、ベストオブタブレットとベストオブPCの融合として紹介され、無接点給電をサポートし、充電にケーブルを使わないことが今後の新しい当たり前になるということだ。来年(2015年)には、空港ラウンジやコーヒーショップなど、いろいろなところで無接点充電ができるようになるようだ。

 煩雑な結線が煩わしいPCの拡張だが、さまざまなものがワイヤレス化されようとしている。こうして、Chromebook、ChromeboxからMac、そして由緒正しきPCまで、あらゆるプラットフォームを支えるIntelは、どんなフォームファクタにでも活かしていけるはずとSkaugen氏。これまでIntelが地道に研究開発を重ねてきた各種の技術が、Core M搭載機とともに、一気に華開くのが2015年のタイミングということになりそうだ。

(山田 祥平)