山田祥平のRe:config.sys

サヨナラWindows Live Messenger

 Windows Live メッセンジャーの廃止が間近だ。MSN Messenger、Windows Messengerそして、Live Messengerと、名前を変え、機能を拡張しながら提供されてきたサービスで、ずいぶん長い間お世話になったインフラだ。

Messengerの時代が終わる

 Messengerのページを開こうとすると、「Messengerは近いうちに廃止されます。Skypeに更新すると、連絡先情報を引き続き利用できます」という内容のページが表示され、すでに、PCではクライアントアプリの入手ができなくなっていることを目の当たりにし、サービスの終了間近を実感する。

 Microsoftからは、「MessengerからSkypeへのアップデートのお願い」というメールも届いた。そのメールは、

・全世界でMessengerサービスの提供を停止し、MessengerとSkypeを統合する
・ただし、中国本土では、引き続きMessengerを利用できる
・Skypeで、MessengerのIDを使ってサインインすると、Messengerのすべてのメンバーに連絡できる

といった内容で、Messengerへのサインインで、アップグレードバナー通知をクリックすると、Skypeがインストールされて、Messengerがアンインストールされる。AndroidやiOSなどのモバイルデバイスでは、最新版のSkypeをインストールしてから、Messengerをアンインストールするように推奨されている。とはいっても、Android用にはMicrosoftの公式Messengerクライアントは提供されていなかった。また、少なくともぼくの手元に届いたメールには、3月15日とされている終了日は記載されていなかった。

Skypeが吸収

 どちらかというと、最近は、Messengerにログインしてメッセージの待ち受けはしているものの、すっかり閑古鳥が鳴いているという状況が続いていた。Messengerでやっていたコミュニケーションの多くは、TwitterのDMやFacebookのメッセージにとってかわられ、今もMessengerを使っているのは本当にごくごく一部の知り合いとコンタクトするときだけだ。

 Messengerは、どの端末でもメッセージを受け取れるので、ついつい、PCからモバイルデバイスまで複数の端末でログインしっぱなしということが多かった。ただ、一度にログインできる端末の数に制限があり、ちょっと不便を感じることもあった。

 その点、Skypeは、ログイン数に制限はなさそうだ。iPadなどではiPhone用とiOS用の2種類のSkypeを入れておいても両方を共存させることができる。Windows 8なら、デスクトップ版SkypeとストアアプリのSkypeの共存ができる。

 Microsoftアカウント、つまり、Messengerで使っていたIDでSkypeにログインすると、Skypeの連絡先と、Messengerの連絡先の両方が統合された状態でコミュニケーションができるようになる。ややこしいのは、この統合が単なるごちゃ混ぜであるという点だ。同じニックネームを使っているユーザーの場合、Messengerの連絡先か、Skypeの連絡先かを注意深く確認し、適切な方の連絡先を選んでコミュニケーションを開始する必要がある。つまり、統合された連絡先には、同じ人物の連絡先が複数あるということだ。Messengerのサービスが廃止される時点までの混乱だと思うが、ここはちょっとややこしい。

 ただ、Messengerのサービスが終了する時点で、これまでの連絡先がすべてSkypeに移行するのかどうかが保証されるわけでもない。相手によっては、これを機会にMessengerをやめて、TwitterやFacebookなどのメッセージ機能に絞り込む可能性もある。人によってはGoogle+のチャットを使うかもしれない。

 TwitterとFacebookは、コミュニケーションの方向性が異なるし、本当はメッセージ機能についても使い分けなければならないとは思う。個人的にはどちらかといえば、リアルな知り合いだけを承認していて、メッセージング専用クライアントも用意されているFacebookのメッセージ機能を使うことが多い。文字数の制限も実用レベルではないに等しい。

 だが、今まで、Messengerでやってきたように、文字でのチャットはもちろん、電話で話しながらや、対面でミーティングをしているときですら、ちょっと見てほしいウェブサイトのURLをその場で送ったり、一緒に参照したい写真やファイルを送ったり受け取ったりといったことをしながらのコミュニケーションには、Skypeを使わざるをえないだろう。だが、文字のみの会話については、TwitterのDMやFacebookのメッセージに置き換わっていくかもしれない。こればかりは相手あってのことなので、様子を見て、多勢に同調していきながらコミュニケーション手段を収束させようと思っている。

 TwitterのDMやFacebookのメッセージは、新着があるとメールが届くように設定できるし、個人的にはそれを解除していない。だから、メッセージを見落とすことはないのだが、Skypeにはその機能がない。クライアントをインストールした端末を除き、通知を見て新着を知るしかないのだ。

 スマートフォンにタブレット、そしてPCと、1人で複数台の端末を併用しているなら、どの端末を手にしているときでも同一のコミュニケーションをシームレスにしたいと思う。スマートフォンで始めたコミュニケーションが長引く場合は、ノートPCを開いて、その直前までの会話を参照しながら続きをキーボードで高速にタイプしたい。いろいろな便利をとりあえず叶えてくれ、汎用的なコミュニケーションツールとして使うには、やはり、Skypeに軍配が上がるな、というのが今のところの感想だ。

コミュニケーションが変われば道具が変わり、道具が変わればコミュニケーションも変わる

 それでも、Messengerが提供してきたさまざまな使い勝手に対して、Skypeはまだ熟成しきっていないようにも感じている。もともとの出自がインターネット電話サービスであったこともあり、リアルタイムの音声コミュニケーションを前提にしているようにも思う。

 そもそも文字によるインスタントメッセージを使うのは、このコミュニケーション手段が、同期と非同期の中間に位置づけられる曖昧でゆるやかな性格をもっているからだ。

 同じ文字でもメールは完全に非同期だ。リアルタイムのコミュニケーションではなく、そのうち読んでくれるだろうという感覚で文面を書く。だから、おはようございます的な文言を、ぼく自身が書き込むことはない。

 それに対して電話での通話は完全に同期だ。夜中であろうと相手を叩き起こし、会話を成立させる強制力を持つ。

 通話すれば手っ取り早いのに、なぜ、わざわざ文字をタイプするといったまどろっこしいことをしながらインスタントメッセージを使ってコミュニケーションするかというと、それは、「ながら」が許されるからだ。もちろん、自分のタイプ速度、相手のタイプ速度に依存するのだが、ほとんどの場合、相手の言葉が届くまでには一呼吸ある。その間に、別の仕事もできるし、ブラウザで情報を参照したりもできる。過去のメールの検索もできる。極端な話、2つの別のコミュニケーションを同時に進行することだってできる。

 リアルな会議で同じようなことをしてしまうと、相手の重要な言葉を聞き逃し、生返事をしてしまうようなことだってあるかもしれない。でも、インスタントメッセージでの会話なら、目で言葉の履歴を確認できるので、聞き逃しもなければ、誤解も起こりにくい。だからいい加減な反応をすることはありえない。でも、これは、長文の会話文を、ちゃんとしたキーボードで流暢に入力できるという環境が前提での話だ。モバイル端末で高速タイプができない場合は、会話もちょっと趣が変わってくるだろう。少なくともPC用デスクトップクライアントの完成度が低すぎる。

 Messengerのサービス終了が、IMの時代にとどめをさすというのは大げさかもしれないが、Skypeが完全な代替を目指しているようにはみえない。

 いいこと、楽しいこと、嬉しいこと、あるいは、ちょっと腹が立ったりくやしかったり、悲しかったりした時には、それを誰かに話したくなる。特におもしろかったことは誰彼かまわずにだ。リアルなコミュニケーションでは、その話、この間聞いたよとか言われたりすることもあったりするし、特に歳をとると誰に何を言ったか忘れることも多くなるわけだが、SNSでは一度の書き込みで多くの人に言葉が届くので、そうしたことがなくなる。場合によっては不特定多数の人々に自分の話を聞いてもらえる可能性を期待することもある。

 端末の向こうにいるあの人が、もはやデスクでPCに向かっているとは限らない時代だ。多様なデバイスが共存し、しかも同一人物が複数のデバイスを同時に併用する。個人対個人のコミュニケーションにもある種の変化が訪れたとしても何の不思議もない。それに呼応してサービスも変わらなければならないということなのだろう。

(山田 祥平)