山田祥平のRe:config.sys

なんちゃってXiで三文の得をかなえるドコモの本気




 ドコモが2011年冬春モデルを発表、2011年11月から2012年春にかけての端末ラインアップが出揃った。加えて、Xiの音声対応サービスやFOMAのパケット定額サービスに関する値下げなど、朗報もあった。iPhone人気の昨今だが、Androidスマートフォンに賭けるドコモの本気を感じる発表だった。

●魅力的なXiのデータ通信プラン

 今回の発表では、FOMAユーザーに対するデータ定額プランにおいて、PCなどの外部機器を接続した通信、すなわちテザリング時の上限額が、従来の10,395円から8,190円に値下げされた。これは実に朗報で、2,205円分の値下げはかなり嬉しい。たとえば、ドコモのスマートフォンを使っているユーザーの多くは、パケホーダイフラットで5,460円/月の料金を払っていると思うが、テザリングを使っても、それに2,730円を上乗せするだけですむようになり、パソコンやiPod touch、タブレットなどの機器をインターネット接続できるわけだ。これはこれで素直に喜びたい。

 ところが、同時に発表された音声通話に対応したXi向けの料金プランは、さらに魅力的なものだった。

 まず、音声部分については、契約期間2年を前提にした「タイプXiにねん」が780円、その縛りがない「タイプXi」は1,580円となっている。また「Xiカケ・ホーダイ」と呼ばれるオプションが設けられ、月額700円の追加でドコモへの国内通話が24時間いつでも無料となる。

 つまり、FOMAの料金プランでは、タイプSS、S、M、L、LLといったプランが用意され、それに応じた基本使用料を支払うことで相当する無料通信分が得られ、さらに30秒あたりの通話料も変わっていたが、Xiでは、これらのタイプ分類はなく、タイプSSと同等の一律21円/30秒になる。

 また、Xiではファミリー割引の概念が変わり、登録はできるが基本料金の割引等はない。無料通信分がないため、あまった無料通信分を家族にわけることもできない(ただし、わけてもらうことはできる)。また、家族への通話が無料となる申し込みができるのは「タイプXiにねん」のみだ。

 そして、データ通信については、Xiパケホーダイフラットが2012年4月末のキャンペーン終了までという条件付きで4,410円、5月以降は5,985円となる。キャンペーン終了後はFOMAに対して525円高くなるが、テザリング時も追加料金はかからないことを考えれば納得できる。

 こうした戦略的なプランを提供するドコモを見れば、いかに同社がXiに対して本気であるかがわかる。それに、先進的なユーザーをXiに誘導することで、逼迫している3Gのトラフィックを少しでも抑えることができるという算段もあるにちがいない。

●XiプランにXi端末は必須ではない

 この新しいXiのプランを使うためだけに、Xi対応機に機種変更するのも悪くないと思った。Xiのデータ通信は、2012年10月以降、1カ月あたりのデータ通信量が7GBを超えると、帯域が128kbpsに落ち、通常のスピードを確保するためには、2GBごとに2,625円を支払う準従量制となるが、個人的には過去のWiMAX利用のパケット利用料を見ても7GBを超えるような月はほとんどないことから、WiMAXと併用する限り、影響はないと判断してよさそうだ。

 だが、その前に、もしかしたらと思って問い合わせてみた。現行で使っているFOMAスマートフォンそのままで、Xi契約への切替ができないかを確かめたかったのだ。将来的にはXi対応機に買い換えるつもりだが、それを先送りにすることができるかもしれないと思ったのだ。つまり「なんちゃってXi」ができるかどうかだ。

 まず、ドコモのインフォメーションセンターに電話をかけてきいてみたところ、それが「できる」という。

 念のためにドコモの広報部に電話して確認してみたろころ、今度は「できない」という回答。インフォメーションセンターの情報は間違っているという。

 もう一度、ドコモのインフォメーションセンターに問い合わせると、やはり「できる」という回答。

 きっとドコモも混乱しているのだろう、再度広報に問い合わせたところ、関連部署に問い合わせてもらうことができ、折り返しの電話で「できる」という回答が戻ってきた。最初のインフォメーションセンターの回答が正しかったわけだ。

 一連の問い合わせでわかった話をまとめて箇条書きにしてみよう。

1. Xiプランの契約において、Xi対応端末の購入は必須ではない。
2. FOMA端末のままでXiプランを使うことができる。
3. Xi対応端末以外ではFOMAと同様の環境になり、Xiの高速快適な環境は得られない。
4. FOMAからXiプランへの契約変更も、その逆もできる。
5.「Xiカケ・ホーダイ」も付加できる。
6. 契約変更ができるのはXi対応音声端末の発売日以降。
7. 月途中で契約変更した場合、パケホーダイフラットなどは、月初めにさかのぼって再計算され、変更後プランの価格が適用される。
8. 契約変更には手数料として2,100円が必要。
9. 新規の契約で端末を購入せずに、Xiプランを選択することもできる。

 驚くべき事実だ。ドコモとしては積極的にアピールしていないのも頷ける。契約変更で電話番号が同じままでSIMカードが別のものにバージョンアップされた場合、オサイフケータイはどうなるのかなど、実際にやってみないと何が起こるのかわからない点もある。それでも現行のFOMAユーザーが、こぞって契約変更したら、たいへんなことになりそうだ。LTEへの移行を誘い、3Gトラフィックをオフロードするもくろみがかなわなくなってしまうからだ。

 でも、その反面、それらのユーザーが次に機種変更する際には、ほぼ間違いなくLTE対応機を選ぶことになるだろう。実質的な従量制へのゆるやかな移行にもなる。魅力的な端末を揃えようとより努力するようにもなる。それによってドコモのLTE展開は、一気に加速するかもしれない。いわば諸刃の剣だが、確信犯という見方もできる。

●いつかはXi

 少なくとも、今、FOMAプランでスマートフォンを使い、テザリング機能を求めているドコモユーザーの多くは、Xiプランに契約変更することで、コストを相当額削減できる。ドコモが大きな声でアピールしないのは当たり前だ。

 また、キャンペーン中の価格は音声通話の780円を付加しても、FOMAのデータプラン「定額データプランフラットバリュー」に「定額データスタンダード割2」を適用したもの(5,460円)よりも安くなる。したがって、ワールドワイド仕様のSIMフリー端末で音声通話も楽しみたいというユーザーの重要な選択肢にもなりそうだ。仮に、そのうち、SIMフリーiPhone 4Sといったものが気軽に購入できるようになって、動作が確認されれば、XiプランでiPhoneを使うユーザーも出てくるかもしれない。

 当然のことながら、Xiプランを契約しても、FOMA端末ではXiの快適な環境は得られない。Xiのすべての機能をフルに堪能するには、Xi対応端末が必要になる。そのことをきちんと理解し、また、来年(2012年)からは従量制へと移行してしまうことや、無料通信分の含まれないプランであること、ファミリー割引の概念の変更などを覚悟できるのなら、検討に値するんじゃないだろうか。

 さて、自分としてはどうするか。いつかはXiと思いをはせながら、とりあえず、追加発表になったGalaxy Nexusを量販店で予約してきた。