山田祥平のRe:config.sys

どうしても見つからないiPadの居場所




 iPadの人気がすごいようだ。今週の月曜日に予約が開始され、昨日時点でソフトバンクショップでの予約受付が停止されたとのことだ。ただ、SIMロック関連では情報が錯綜し、混乱もあった。個人的には、買う気まんまんでいたつもりが、つい、そのままになってしまっている。

●SIMロック是非の騒ぎの中で

 5月9日の夜になって、アップルの直販サイトが「Back soon」状態となり、iPadの予約開始準備が進んでいる様子がうかがえた。でも、午前零時を過ぎても、なかなか予約受付がスタートしない。そして、そのころからTwitterで、どうやら日本のiPadはSIMロックがかかっているらしいという情報が流れ始めた。

 真相は、すでに報道されているように、日本でのiPadはソフトバンクモバイルが扱うことになり、日本で発売される3G版のiPadはSIMロックが施され、他社事業者のSIMは使えないということだ。ただ、予約受付終了後、日本のキャリアはソフトバンクモバイルのSIMのみだが、海外のSIMは使える、使えないといった情報も出てきていて、いったい、どの情報が本当なのか、実際に発売された実機で試してみないとわからないという混沌とした状態が続いている。

 泣いても笑っても5月28日の発売日になれば、いろいろなことがわかるのだろう。もし、噂が本当で、日本国内ではソフトバンクモバイルのSIMしか使えないが、海外の各キャリアのSIMは利用できるというロックなら、それはそれで仕方がないのかもしれないなとも思う。もしそうなら、ソフトバンクモバイルは、iPhoneユーザー向けに、iPhoneのSIMのコピーとしてのiPad用SIMを提供するくらいのサービスをしてもいいんじゃないかとも思う。

 というわけで、結局、あれだけ買う気まんまんだったのに、このSIMロック騒ぎで意欲をそがれて、予約もすることなく、発売日の入手は絶望的な状況になってしまっている。

 個人的には、本当はWi-Fi版で十分かなとも思っている。

 普段、外出先でノートPCなどをインターネットに接続するためには、WiMAXかドコモのFOMAを使っている。ドコモの無線LANが使えることがわかっている場所ではそれを使うし、自宅でも無線LANだ。iPadのWi-Fi版を入手したとして、無線LAN接続時は問題なくても、FOMAの3Gネットワークにはつなげない。手元で使っている携帯電話はかなり古い機種だが、ドコモのパケ・ホーダイダブルに加入し、PCからはBluetooth経由でダイヤルアップさせて使っている。どうせiモードではパケットを消費するのだし、4,410円の上限額にアッという間に達する。フルブラウザを使うことはないが、PCは頻繁に接続するので、すぐに上限の13,650円となり、毎月、この金額を支払っている。実際には、これにISPとしてのmopera U スタンダードプランの利用料に525円、公衆無線LANオプションに315円で、携帯電話経由のインターネットは、月額13,650+525+315=14,490円(5月からはISPセット割り引きで14,175円)となっている。

 個人的には、自分のすべてのインターネット接続をここに集約することができるのが理想だ。WiMAXが今のFOMA網くらいになるためには、もう少し時間が必要だろうから、それまでは背に腹は代えられないといったところだろうか。

 新たに使うノートPCについては、Bluetoothを使ってダイヤルアップさせればそれでいい。でも、iPadはそれができないことはわかっている。また、愛用のiPod touchも同様にできない。

 それをかなえる方法のひとつに、Wi-Fiアクセスポイントになる携帯電話への機種変更がある。たとえば、ドコモのN02Bは、Bluetoothでダイヤルアップできる以外に、Wi-Fiのアクセスポイントになることができる。アクセスポイントをスタートさせるためには一手間必要だが便利には違いない。でも、昨年末に発売されたばかりのこの機種は、すでに製造が中止されカタログからも落ちている。インターネットで流通在庫を探してみると、未使用品の場合4〜6万円はするようだ。発売直後ならともかく、製造を終了した製品にこの値段は出せない。

 ドコモも、iPad用のSIMを出す気まんまんだったようだが、それがかなわなくなった今、来週開催されるという新製品発表会では、Wi-Fiアクセスポイントになる携帯電話の魅力的な新機種を用意してほしいものだ。まともな仕様なら、きっと売れると思う。まさに、iPadが追い風になるだろう。

●iPadはノートPCの代わりにはなれない

 とまあ、いろいろなことを考えてはいたのだが、実際問題として、iPadが手元にあったとして、自分はそれを何に使うのだろうという、本当に基本的な疑問にぶつかってしまった。

 iPadの本体そのものは、米国で発売されたものをいちはやく手に入れた知り合いにさわらせてもらってはいるのだが、ぼく自身の判断としては「大きいiPod touch」だ。世の中を変える可能性を持った新しいカテゴリのデバイスという論評もあるようだが、そこまでのものかどうかはまだ疑問だ。

 カバンからサッと取り出せてすぐに使えるという点では魅力的だ。その論評の背景には、PCは起動に時間がかかるという声が聞こえるのだが、その人たちは携帯するPCを、いちいちシャットダウンしているのだろうか。スリープさせておけば瞬時に使えるのだから結局は同じことだ。スリープではセキュリティが心配という話も聞く。でも、それは、iPadでも同じじゃないかと思うし、4桁の数字でしか認証できないiPadは、もっと脆弱だ。

 ビールのレギュラー缶2本分という重量はどうか。これも魅力的だ。ぼくが持ち歩くPCは、Let'snote Rの900g弱か、VAIO Pの600g弱のどちらかなので、ちょうど、その中間に位置する。双方ともに、処理能力こそ違えど、ほとんど同じことができるようにセットアップしてある。でも、使ったときの快適さは、Let'snote R>iPad>VAIO Pの順になりそうだ。この点では非力なプロセッサでも遅さを感じさせないiPadはえらい。やはりVAIO Pは遅くて遅くて不快感を感じることさえある。

 仕事の道具として使えるかという観点からは、iPadは考えられない。これで原稿を書くのは無理だろうし、インタビューなどでメモをとるのも難しい。

 資料のビューワとしてはどうかというと、さすがにiPadは秀逸だ。GUIも優れている。使っていて気持ちがいい。自炊した(最近は自分で書籍や書類をスキャンしたりすることを自炊というらしい)PDFを見たり、MPEGファイルを見たりするには悪くない。バッテリでの稼働時間も合格点だろう。でも、それはノートPCでも代替はできる。iPadはノートPCの代わりにはならないが、ノートPCはiPadの代わりになれる。少なくともぼく自身の使い方ではそうだ。

●iPadがかなえるモバイルPCの夢

 こうしていろいろなシュチュエーションを考えてみると、外にでかける際に持ち出す機器を1つに限定するとすれば、iPadは選ばれないであろうことがわかった。かといって、追加の700gは付加価値を考えても無駄だ。

 それでは自宅環境はどうかというと、仕事部屋にはPCがたくさんあるし、TVなどを見るリビングルームにはソファの脇にノートPCが置いてある。寝室でも枕元にはPCがある。狭い家なので、5m歩けば、必ずPCに手が届くといったところか。そこにiPadが追加されたとして、何に使うのか。ここでも迷いが生じてしまった。

 今、考えられるとしたら、近所のジムに持って行って、ランニングマシンの前に置き、トレーニングしながら楽しむことくらいだろうか。Bluetoothヘッドフォンを使えば、ケーブルで引っ張られて落下という心配もない。今は5型液晶のメディアプレーヤーを使っているが、画面は大きい方がいい。昨今のノートPCは、液晶のヒンジが180度開かず、そういう使い方ができないのだ。

 20年近く、ノートPCを持ち歩き続けていて、やはり、こんなに便利なものはないと思っている。どうしてみんなはこんなに便利で楽しいものを持ち歩こうとしないのだろうと思ってきた。だから、世の中の人々に、その便利さを伝えたいと思ってこの仕事を続けてきた。でも、なかなかそういう時代はやってこなかった。

 iPadは「ノートPCのようなもの」として、持ち歩きたくなるデバイスだ。今までPCを持ち歩こうとは思わなかった人々が、初めて接する持ち歩きたくなるデバイスではないか。ネットブックが出てきたときに、もうちょっとそのトレンドが強くなるかとは思ったのだが、ちょっと無理だったようだ。でも、iPadはやってくれるかもしれない。発売日以降、電車の中でiPadを使う人の姿をどれだけ見ることができるかが楽しみだ。

 iPadは、持ち歩いて人前で使うインテリジェントデバイスとして、携帯電話に続く1つの分野を形成する可能性を持っている。そういう意味では新しいカテゴリのデバイスだという意見にもうなずける。モバイル指向のラップトップPCやノートPCが20年かかってできなかった夢を、わずか数カ月で叶えるかもしれないのだ。

 個人的には、しばらく様子見という結論になってしまったiPadだが、心の中では、できるだけ多くの人に体験してほしいと思っている。ライバルの登場にも期待したい。最終的にはそのことが、外出時に使うデバイスの多様化につながっていくと信じているからだ。