山田祥平のRe:config.sys

いつでもどこでも雲の中




 つくづく日本はインターネット大国と呼ばれるにふさわしいインフラが整ってきたと思う。そのコストは、決して安いとはいえないが、少なくとも地下鉄駅間と空の上以外は、複数の事業者による複数のインターネット接続手段を選択できる。

●パケ・ホーダイダブルでPCを使って1カ月の顛末

 ドコモがパケ・ホーダイダブルの料金体系を変更し、PCやPDAなどを接続したパケット通信料の上限を13,000円にしてから、ほぼ1カ月が経過した。ぼくが、この1カ月に使ったパケット量は、PC接続で12,872,652パケット、iモードで134,697パケットだった。1パケットは128byteなので、PC接続で約1.6GB、iモードで約17MBを使った計算になる。動画などを見るわけでもなく、メールとウェブ程度でも、このくらいの量を使ってしまうようだ。

 この1カ月、宿泊を伴う国内出張が5泊分あって、その宿泊時は夜通しつなぎっぱなしだったが、普通に使っていてこんなものだ。また、携帯電話端末では、ぼくはフルブラウザを使わないので、iモードは純粋にiモードだけのパケット消費だ。

 ドコモは、先だって、さらにパケ・ホーダイダブルの料金を見直し、5月1日からは従来の1,029円を、490円に変更するという。でも、これは、たかだか5,838パケット、つまり、約747KBで、あっさりとクリアされてしまうので、ほとんどのユーザーにとっては、ちっとも値下げにならないだろう。こういう見かけだけの値下げは、ちょっとどうかと思う。これをやるならスタートを490円などといっていないで0円にしてしまえばいい。その方がずっとわかりやすいし、使わなかった月が仮にあったとしたら負担はゼロになるのでリーズナブルだ。

 結局、3G通信においては、PCと携帯のデータ通信料金が13,000円となり、個人的にはこれ一本に絞り込むことにするつもりだ。懸念されていた帯域幅の制限や、長時間接続での切断なども経験せず、快適に接続できている。別にもう1つの端末を用意し、そのバッテリの充電などを気にしなくていいので、とても気が楽だ。端末を別に用意しなければならない定額データプランでは、どんなに安くあげても6,000円程度はかかるので、iモードのパケホーダイ4,410円(フルブラウザを使えば5,985円)と合わせれば、コスト的にびっくりするほどの違いはない。当然、PC接続中でも音声通話はできるので、ぼく自身にとっては何の問題もない。それよりも、すべてが1台の端末で済むことの方が重要だ。

 ちなみに、ぼくは、ドコモの公衆無線LANのユーザーでもあり、モペラUのユーザーとして、3G通信時は専用のアクセスポイントを利用している。PC接続時に利用できるプロバイダには、ユーザー名もパスワードも要求されない無償のモペラもあるのだが、スピード測定サイトなどで両方試してみると、モペラUのユーザーだけが使えるAPNの方が通信帯域が広いように感じる。

●ワンストップでシームレスが理想

 今、大手公衆無線LANサービスの中で、もっとも接続がたやすいのはドコモの公衆無線LANだ。802.1x認証をサポートするので、基地局をつかまえたら勝手に接続して、認証までユーザーが意識することなく終わってしまう。自動接続に設定しておけば、地下鉄の駅構内などでは、まるで自宅にいるかのように、ノートPCを開いてスリープから起こせば、それだけでつながる。同じ802.1xをサポートしているNTTコミュニケーションズのHotspotは、必ず、ウェブページでの認証が必要だし、mobilepointも必ずウェブページを開かなければならない。だから、ドコモのサービスは頭1つ抜き出ている印象がある。

 実は、今週、遅ればせながら、無線LANサービスが開始されたN700系の東海道新幹線のぞみに乗ってみた。当然、ぼくはドコモのサービスを使うので、これもまた、席についてパソコンを開いただけで何もしなくてもインターネットにつながってしまった。足下には電源コンセントもあり、電源アダプタをカバンから出して電源を供給し、大阪から東京まで常時接続だ。ひっきりなしに届くメールに、携帯電話だったらあとまわしにするだろうと思いながら返事を書き書き、これでは、ビールを飲んで居眠りもできないなと、ちょっと複雑な気分だった。

 昨今のノートパソコンは、その気になれば大阪-東京くらいは平気でバッテリが持つのだが、本音を言えば移動中に消費したくはない。新幹線の中で電源が確保できれば、目的地に到着したときにフル充電状態という点で、精神衛生上とてもいい。今週の関西出張では、往路に初めて飛行機を利用したのだが、この距離に空の便を利用する旅客が意外に多く、満席状態だったのにちょっと驚いた。でも、飛行機の中ではインターネットどころか、電源だって確保できない。東京から関西の距離の場合、飛んでいる時間は1時間未満だが、空港への移動や出発までの待機時間等を考えると、やはり、自分では、今後、新幹線を使うのだろうと思う。

 結局、3G通信からWi-Fiまでをドコモのサービスの契約1つにまとめて、ワンストップとなり、それなりの満足感が得られているのが現在の状況だ。

 一方、サービスを開始して2カ月が経過したUQのWiMAXはどうだろう。やはり、サービスエリアの狭さはいかんともしがたい。また、つなごうとしてみない限り、その場所がつながるのかどうかわからないため、確実につながる3G通信を使うことがどうしても多くなる。また、USB端末を装着するめんどうさがつきまとうのもうっとおしい。でも、これらは今のWiーFi並にWiMAX内蔵PCが普及すれば事情も違ってくるのだろう。ズボンのポケットには、常にWiMAX端末を突っ込んであるのだが、今は、そこがつながるとわかっている場所で、テーブルなどにPCを置くことができるようなところでしか使わない。わかっていれば、3G通信よりも高速だし快適だ。勝手につながるシームレスさもうれしい。

 UQでは、1契約での複数端末サポートなどを前向きに検討しているようなので、サービスエリアの充実はもちろん、数年先を見越したサービス面での手厚いビジネスを望みたい。

●グラムとの戦い

 さて、これだけどこでもインターネットにつながるようになると、当面は安心だと思っていたPCそのもののバッテリの運用時間が気になってくる。たとえば、常時持ち歩くようになったVAIO type Pだが、標準バッテリだけでは2時間程度しか使えない。やはりこれでは話にならないので大容量バッテリを購入した。

 標準バッテリの重量は実測で136gだが、大容量バッテリは248gある。カタログスペックより実測値はかなり低く、その差は112g。たかが、携帯電話端末1個分の重量増だが、単体で持つとかなりズッシリ感じるようになる。特に、最近は、ウェストポーチで常時身につけているので、腰への負担がちょっと心配だ。136gで何が変わるのかといわれたらそれまでなのだが、けっこう違いを感じるものだ。

 大容量バッテリを装着した状態のVAIO type Pは700gちょうど。それに対して、普段使いのLet'snote R7は958g。その差は258gある。大容量バッテリ装着時のVAIO type PとLet's noteのバッテリ運用時間は、ほぼ同じなので、258gの差は圧倒的な処理性能の違いということになる。その日の用事によって、持ち出すPCを選択するようにはしているが、なんだかんだで、両方を持ち出すことが多くなり、かえって荷物の総重量が増えてしまうという、本末転倒な結果を招いている。でも、電車での移動時に使うには、VAIO type Pのコンパクトさは実に魅力的なのだ。

 余談だが、VAIO type Pは、手元に届いて1週間で地面に落下させてしまい修理サービス行きとなってしまった。閉じた状態の右上角からコンクリート面に落下し、ディスプレイ側の樹脂が欠けてしまったのだ。ボディ側にも大きなへこみができた。ズボンのお尻のポケットに入れるという広告と同じような持ち運び方をしていたのだが、自然にずり落ちてしまったのだ。

 幸い、作動には何の問題もなかったので、そのままにしておこうかとも思ったのだが、いちおう修理を依頼することにした。5万円を超えるその見積もりにびっくりしたが、購入日から90日以内のお買い物安心保険(動産総合保険)というのがクレジットカードに付帯していて負担が3,000円ですんだのは不幸中の幸いだった。

 持ち運ばれるデバイスにはつきものの、こうした事故だが、こういうことがあると、SSDなど、ショックに強いデバイスがますます魅力的に感じられるようになる。それに、SSDが前提になれば、モバイルPCは、もっと華奢に作っても今と同様の堅牢性、信頼性を得られるんじゃないだろうか。コストの点ではHDDにかなわないし、ノートPCのSSD搭載が頭打ちという分析もあるようだが、ここはひとつ、なんとかがんばってほしいものだ。