メーカーさん、こんなPC作ってください!

5,000万画素超時代を見据えたLightroom向けPCを作る【後編】

〜Lightroomに効くのはCPUクロックなのか? メモリなのか?

パソコン工房での検証結果。Lightroomに効くのは何か?

 パソコン工房より、Lightroom向けPCとして3台のマシンが届いた。Core i7-6700Kを搭載したプロフェッショナルモデル「Sen-S19R-i7K-NXZ-DevelopRAW 」、Core i5-6600Kを搭載したスタンダードモデル「Sen-S19R-i5K-NXW-DevelopRAW」、そしてAMD APUのエントリーモデル 「Sen-S2AM-A10K-DZW-DevelopRAW 」といった3種類だ。

 本レポートでは、パソコン工房の検証結果、そして写真家である筆者のインプレションという2つの視点でLightroom向けPCのガイドラインを探っていきたい。

 まず、PCの仕様を決めるにあたってパソコン工房が留意したのは、ひと口にLightroomの快適化といっても作業によって負荷のかかるパーツが異なる点だ。より負荷のかかるパーツには高速なものを、使用頻度の低いパーツはそれなりのスペックを選択することで、価格を抑えながらLightroomに最適化されたマシンができあがる。何を削り、何を盛るか。そしてそれが実用上体感できる効果となって現われるか、という部分が重要になってくるわけだ。

 パソコン工房によると、カタログの作成において一番効果的なのがCPUのクロックだったという。具体的には、下記のようなパターンでの検証を行なったそうだ。

  • CPUのコア数を変更: 2C/2T、4C/4T、4C/8T(i7-6700K)、6C/6T、8C/8T、8C/16T(i7-5960X)
  • CPUの動作クロックを変更: 4.0GHz→4.5GHz(i7-6700K)、3.5GHz→4.0GHz(i7-5960X)
  • メモリクロックの変更: DDR4-2133→1600(i7-6700K)
  • メモリ容量の変更: 16GB→32GB(i7-6700K)

 まず検証で分かったのは、Hyper-Threadingの効果は薄く、かえって物理コアのみの方が高速な傾向となり、サムネイル作成時は、シングルコア動作となっていた。実際、アドビに確認したところ、Lightroom最新版(アップデート LRCC 2015.2./LR6.2)以前はHyper-Threadingに対応しておらず、物理コア処理のみしか使えていなかったほか、マルチコアについては現像モジュールで力を発揮するものの、他の作業ではCPUだけでは十分ではないという。

 最終的に、3,000枚のカタログを作成させた場合、CPUの動作クロックを変更させた場合の効果が最も顕著に見られた。また、プレビューの生成や現像(RAWデータをJPEG形式で書き出すこと)など、RAW現像作業の主要な部分もクロック数が大きいほど快適化した。CPUを変えて3モデル構成にしたのはそのためだ。

 CPUクロックが関係する以上、今回は上位モデルであえてZ170チップセットとKシリーズのCPUを選択している。これは、ユーザーによるオーバークロックを見越してのことだ。この点については、後で検証している。

 ストレージについては、意外だったのだが、SSD採用によるメリットはさほど大きくなかったという。

  • Plextor M.2 SSDを1枚の構成(リード約700MB/sec)
  • 2.5インチSSDを2台のRAID 0の構成(リード約1,000MB/sec)
  • HDDを1台の構成(リード約100MB/sec)

といった3種類の環境を用意したところ、3,000枚のデータのカタログ作成からサムネイルの原寸表示(拡大表示)までの読み込み時間は、HDDで3.9秒、SSD時で3.7秒程度と僅かにSSDの方が高速でしたが予想よりもかなり少ない差だったという。そのため、NVMeのSSDやM.2のRAID 0構成も想定していたが、コストに対して効果は薄いと判断した。ただし、カタログファイルだけでなく、写真データそのものもSSDに格納することで、カタログ構築や各ファイルの等倍表示などの速度が向上することも確認できた。

 結果として、起動ドライブと作業用ドライブにそれぞれSSDを用意する構成となった。作業用ドライブにLightroomのカタログファイル(Lightroomで画像を管理編集するための画像データベースファイル)を置いて作業することを想定している。Core i7-6700K搭載のプロフェッショナルモデルのみは画像保存ドライブもSSDを採用している。ソフトウェア、管理ファイル、画像本体と、全てをSSDで運用できるドリームマシンというわけだ。

 デジタルカメラは日々高画素数化が進み、EOS 5Dsのように5,000万画素を超えるモデルも登場した。画像1枚あたりの容量が大きくなり、PCにもそれ相応の負荷がかかる。メインメモリが大きければよりたくさんの画像を展開できる、というアプローチは誰もが思いつくところだ。

 しかしパソコン工房の検証によると、メインメモリは16GBで十分だという。Lightroomを単体で使う場合、10,000枚のカタログを作成しても、メモリ使用量は多くても5GB程度となり、通常は8GB〜16GBでも問題なく32GBに増やすメリットはなさそうだという。裏でPhotoshopなどメモリを大量に使うソフトを同時起動するような使い方でなければ、メインメモリは16GBで大丈夫だろう。また、メモリの動作クロックについてもほぼ影響がなく、オーバークロックメモリの効果も薄いという。

 Lightroomには「グラフィックプロセッサを使用」というチェックボックスがあり、これを有効にすると現像モジュール(写真編集のメイン画面)で効率の良い作業が可能になる。現像モジュールには、露光量、コントラスト、ホワイトバランス、彩度など、さまざまなスライドバーがあり、このスライドバーの動きと編集内容を反映したプレビューがタイムラグなしに連動している状態こそが理想的だ。

 パソコン工房推奨のグラフィックプロセッサはGeForce GTX 750 Tiで、プロフェッショナルモデルとスタンダードモデルにこれを搭載した。エントリーモデルはAMD APUの内蔵グラフィックを使用している。CPUのSkylakeもある程度の性能のGPUを内蔵しているが、検証時点でのIntelドライバではLightroomのアクセラレーションに対応していないため、GeForce GTX 750 Tiを採用したそうだ。GeForce GTX 750 Tiはミッドレンジのグラフィックプロセッサ。これで編集時に申し分ない性能を発揮してくれるなら、コストパフォーマンスの良さが際立つだろう。

 パソコン工房の検証内容のさらなる詳細は、実験工房のページに掲載されているので、興味のある方はぜひそちらも併せてご覧頂きたい。

3種類の実機を検証

 これらのパソコン工房での検証の結果、今回用意された構成が下記の表だ。プロフェッショナルモデルは、10,000枚以上の閲覧/現像および、Photographyプランに含まれるPhotoshopの使用も想定、スタンダードモデルは、3,000枚以上の閲覧/現像を想定、そしてエントリーモデルは、1,000〜3,000枚程度の閲覧/現像を想定したものとなる。

左からプロフェッショナルモデル、スタンダードモデル、エントリーモデル。プロフェッショナルモデルとスタンダードモデルはフルタワーケース、エントリーモデルはミニタワーケースを採用した。それぞれSDカードリーダーを標準装備している
【プロフェッショナルモデルSen-S19R-i7K-NXZ-DevelopRAWの主な仕様】
OS Windows 10 Home
CPU Core i7-6700K(4GHz/4コア/8スレッド)
チップセット Intel Z170
メモリ DDR4-2133 8GB×2(デュアルチャンネル/計16GB)
SSD 1 250GB mSATA Samsung 840 EVO
SSD 2 256GB 2.5インチ Samsung 850 PRO
SSD 3 512GB 2.5インチ Samsung 850 PRO
HDD 2TB 3.5インチ
GPU GeForce GTX 750 Ti
ODD DVDスーパーマルチドライブ
ケース CoolerMaster Silencio 452
電源 500W 80PLUS SILVER認証 ATX電源
税別価格 229,980円
【スタンダードモデルSen-S19R-i5K-NXW-DevelopRAWの主な仕様】
OS Windows 10 Home
CPU Core i5-6600K(3.5GHz/4コア/4スレッド)
チップセット Intel Z170
メモリ DDR4-2133 8GB×2(デュアルチャンネル/計16GB)
SSD 1 120GB 2.5インチ
SSD 2 250GB 2.5インチ
HDD 1TB 3.5インチ
GPU GeForce GTX 750 Ti
ODD DVDスーパーマルチドライブ
ケース CoolerMaster Silencio 452
電源 500W 80PLUS SILVER認証 ATX電源
税別価格 142,980円
【エントリーモデルSen-S2AM-A10K-DZW-DevelopRAWの主な仕様】
OS Windows 10 Home
CPU A10-7870K(3.9GHz/4コア)
チップセット AMD A88X
メモリ DDRL-1600 4GB×2(デュアルチャンネル/計8GB)
SSD 1 120GB 2.5インチ
SSD 2 240GB 2.5インチ
HDD 1TB 3.5インチ
GPU APU内蔵Radeon R7
ODD DVDスーパーマルチドライブ
ケース CoolerMaster Silencio 352
電源 500W 80PLUS SILVER認証 ATX電源
税別価格 89,980円

 さて、それでは3モデルを実際に使ったインプレッションをお届けしよう。

 始めにCore i7-6700K搭載のプロフェッショナルモデルからだ。普段、Core i5-4690搭載パソコンを仕事で使っているのだが、Core i5とCore i7の違いを実感する結果となった。現像処理がラインアップ中最速であるのは無論、ライブラリモジュールでのプレビューがノンストレスだ。普段の自分のマシンでは拡大表示(ピクセル等倍表示)に切り替えると表示画像生成で結構待たされるのだが、このプロフェッショナルモデルはとにかく待ちが少ない。数百枚、千枚超の画像セレクトも、これならテンポよく作業できるだろう。本機はカタログファイルとRAWデータにそれぞれ個別にSSDを割り当てており、この貢献もかなり大きいはずだ。セレクト作業、編集、書き出し、どの作業工程においてもワンランク上の使い心地を実感できた。

パソコン工房が多角的に検証した結果を反映するスペックだけあって、過剰な仕様/価格になることなく、それでいてキビキビとした動作が心地良い
ライブラリモジュールでピクセル等倍にて画像をチェックする。このピクセル等倍表示に切り替える際、低スペックなマシンだとプレビュー画像生成に時間を要する
現像モジュールでの編集作業は、グラフィックプロセッサの性能に寄るところが大きい。調整結果が即時プレビューに反映される環境が理想的だ

 続いてスタンダードモデルを見ていこう。本機とプロフェッショナルモデルはCPUグレードに加え、SSDの構成が異なっている。プロフェッショナルモデルはカタログファイルとRAWデータ用にSSDを個別に割り当ててあるのに対し、スタンダードモデルはRAWデータをHDDに保存してある。カタログファイルのみSSDに置いてあるわけだ。プレビュー時の拡大表示(ピクセル等倍表示)はプロフェッショナルモデルと比べるとモタつきがある。ただし、そうは言ってもカタログファイルをSSDに置いてあるだけあって、Core i5搭載機としては動作の軽さを感じさせる。現像モジュールでの編集作業については、プロフェッショナルモデルと同じGeForce GTX 750 Tiを搭載しているため、体感的には大きな差は感じられなかった。

 AMD APU搭載のエントリーモデルは、現像処理にかなり時間を要する。これがプロフェッショナルモデル並びにスタンダードモデルとの大きな差だ。プレビューの拡大表示(ピクセル等倍表示)や現像モジュールでの編集も待たされる印象が強い。ただ、こうした待ちは許容範囲であり、プロフェッショナルモデルおよびスタンダードモデルと比べ、極端に劣るというほどではない。通常作業がノンストレスとは言い難いが、実用範囲内の性能である。むしろ、他モデルと比べて現像時間に大きな差があるため、この点に目をつむれるか否かが選択のポイントになるだろう。

 ベンチマークとして、各機種においてRAWデータ100枚をストレート現像してみた。プロフェッショナルモデルは、作業用SSDにカタログファイルを、データ格納用SSDに画像ファイルを保存して作業している。スタンダードとエントリーモデルは、作業用SSDにカタログファイルを、データ格納用HDDに画像ファイルを保存して作業している。写真データは、ソニーの「α7」(2,430万画素)、同じくソニーの「α7RII」(4,240万画素)、富士フイルム「X-Pro1」(1,630万画素)で撮影したものを用いた。

3機種のデジタルカメラのRAWデータを、それぞれ100枚単位で現像して処理時間を測定した。CPU性能が顕著に表れる作業だ
【現像時間テスト】
α7 α7RII X-Pro1
ハイエンド(Core i7-6700K) 1分53秒69 3分31秒63 2分27秒92
スタンダード(Core i5-6600K) 2分30秒64 4分38秒35 4分9秒65
エントリー(AMD APU) 5分50秒72 11分43秒66 9秒49秒97

 結果は上記の通りそれぞれのモデルの位置付け通りの差が付く結果となった。

 前述の通り、Lightroomのカタログやプレビューでは「クロックが効く」。そこでプロフェッショナルモデルをオーバークロックで動作させてみた。4GHzを4.5GHzで稼働させたところ、現像処理で時間短縮を見て取れる。一方、プレビューや画像編集でオーバークロックの効果を実感するのは難しかった。クロックが効くとは言え、オーバークロックについては興味があれば、ぐらいの捉え方でよいだろう。

BIOS画面。Core i7-6700Kは標準では400MHz×10倍だが、今回45倍の4,500MHzにオーバークロックした。
クロックを下げないようにするにはSpeedStepを無効(Disabled)にする
設定保存時の確認画面
ただし、そのままではSpeedStepが働き、低負荷時にクロックが下がってしまうので、Windowsでも電源オプションを「高パフォーマンス」に変更
オーバークロック後のタスクマネージャー。4.44GHzを確認できる
CPU-Zでは4,501.08MHz
【オーバークロックによる現像時間の変化】
α7 α7RII X-Pro1
Core i7-6700K(4GHz) 1分53秒69 3分31秒63 2分27秒92
Core i7-6700K(4.5GHz) 1分51秒92 3分24秒61 2分19秒31

 写真およびカメラ愛好家にとって、PCを買う余裕があるなら、いっそ新しいレンズが欲しいというのが本音だろう。写真編集向けのPCと言えども、コストパフォーマンスという観点は譲れない。それゆえにパソコン工房が導き出したメインメモリが16GB、GPUがGeForce GTX 750 Tiというガイドラインは貴重な示唆だ。メインメモリとGPUをスタンダードクラスに抑えることができ、実際に試用しても過不足がなかった。

 一方、CPUとSSDはドンと盛る方向が吉だ。普段、Core i5-4690搭載PCを使っている筆者としては、Core i7-6700K搭載プロフェッショナルモデルの快適さはぜひとも手に入れたい環境と感じた。Core i5-6600K搭載のスタンダードモデルにしても、起動ドライブと作業用ドライブにSSDを採用したことが功を奏し、プロフェッショナルモデルに迫る快適環境と言える。現像時間に差こそあるが、ライブラリモジュールでテンポよく画像チェックできるポテンシャルは貴重だ。

 エントリーモデルに関しては、超高画素機でなければ実用的な性能。プロフェッショナルモデルとは14万円の差があるので、PCよりはカメラやレンズに投資したいというユーザーや、入門者向けと言えるだろう。

 なお、今回製作したマシンはオプションでリムーバブルベイを追加できる。画像データのバックアップデバイスという使い方に加え、例えば年単位でHDDに画像を保存しておき、その都度必要なHDDを装着するという使い方も考えられる。画像データの出入り口が確保されているのは、写真編集マシンとして長く使うための大切なポイントである。

動作が軽いということは、その分高負荷な作業がやりやすくなる。補正ブラシ(部分補正)を多様するような使い方でもストレスは少ない
補正ブラシを随所に設定し、中央部の被写体のみを明るく浮かび上がらせた。上が補正前、下が補正後。こうした手の込んだ編集はプレビューにモタつきがあると作業しづらい。写真編集のアイディアを即座に反映できるPC環境が望ましい

(澤村 徹)