1カ月集中講座

無線LANルーターの基礎から活用までを見直す 第1回

〜ルーターの役割や初期設定をおさらい

 特定のテーマを1カ月に渡って掘り下げ、理解を深める1カ月集中講座。今月は、IEEE 802.11acの正式制定もあって注目が高まっている無線LANルーターについて、その仕組みやセキュリティ設定の基礎解説から、一歩進んで活用するためのノウハウを4回に分けて解説する。

 今や一家に1台はあると思われるルーターの役割は電源タップに似ている。やっていることが通信か電気か、ということで機能も役割も違うが、どちらも多くの家庭で24時間稼働し続けている、働き詰めの電気製品。そして、どちらも一旦動き始めた後は気にされることもない。第1回は、そもそもルーターとは一体どんなものなのか理解しよう。

家庭とインターネットを繋ぐルーター

 ルーターはネットワークの中継装置だ。家庭のネットワーク対応機器をインターネットに繋ぐ場合や、職場の複数のネットワーク間を繋ぐ場合などに使う。家庭でインターネット接続を目的に使うルーター製品は、特にブロードバンドルーターとも呼ばれる。最近では有線ネットワークだけでなく無線ネットワークにも対応した製品が店頭でも大きく陣取っている。

 ルーターの主な役割が「ルーティング」だ。いくつもの拠点を紡いで作られたネットワークの経路情報を集積し、最適な経路で通信を行なう。さらに、「PPPoE」(Point to Point Protocol over Ethernet)接続機能や、「DHCP」(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバー機能、「NAT」(Network Address Translation)機能などが主な機能として挙げられる。

 PPPoEとは2点間でデータ通信するためのプロトコルのことだ。ユーザーはプロバイダから指定されたログインIDとパスワードを、「PPPoE接続設定」などの項目で、自分で入力する場合もある。

 DHCPサーバー機能とは、ルーターへ繋いでいる機器にアドレスを割り当てるものだ。ここで割り当てられるアドレスはルーターに直接繋がっている機器同士が通信をするために有効なもので、プライベートアドレスと呼ばれる。

 NAT機能とは、通常、ルーターの外側のネットワークでも有効な(一意でグローバルな)アドレスはインターネット接続1本につき1つしか割り当てられないが、この1つのグローバルなアドレスを、ルーターに繋がった機器間で共有するための機能である。

グローバルアドレスとプライベートアドレス

 現在の一般的なネットワークで使われるアドレスは「IPアドレス」と呼ばれ、現在主流で使われているIPv4では32bit(2^32)、つまり約43億通りのアドレスが利用可能だ。アドレスのうち多くは、住所のように重複がない一意なグローバルアドレスに、一部が同一組織内での利用を想定したプライベートアドレスに、さらに一部が予約分として割り当てられている。

Windows 8.1のIPアドレスの確認方法1。コマンドプロンプトを起動してipconfigと入力後Enterキーを押す
Windows 8.1のIPアドレスの確認方法2。ネットワークと共有センターを開いて「接続」、「詳細」の順にクリック

 ルーターに直接接続した機器で構成されたネットワークをLAN(Local Area Network)と呼ぶが、このときDHCPサーバーがLAN内の機器に割り当てるのがプライベートアドレスだ。LANと対になる語がWAN(Wide Area Network)で、現在ではインターネットを示す用語としても定着しつつある。

 IPv4に関してはアドレス不足が発生していることから、アドレス不足が実質ないと言われるIPv6への移行準備が進んでいる。IPv6では128bit(2^128)、つまり普段耳にする機会のある最大級の単位である億や兆、その上の京や垓も超える数のアドレスを扱えるようになる。

有線LANと無線LANの規格

 ルーターとネットワーク対応機器を接続する方法は、有線と無線の2種類ある。有線の規格は現在、「100BASE-TX」と「1000BASE-T」がよく使われていて、それぞれ接続速度の上限は100Mbps、1,000Mbps。100Mbps出ればインターネット接続で不足する場面はまずないし、1,000Mbps出ればルーターに接続されたPC同士の転送も高速で、最近のPCの性能も遺憾なく発揮できると言える。

ネットワーク接続のおおまかな状況は、ネットワークと共有センターの「接続」で確認できる
LAN内の転送速度は簡易なもので良ければ、ファイルダイアログの「詳細」で確認できる
同じくLAN内の速度の簡易な確認方法としてタスクマネージャの「パフォーマンス」の項も活用できる

 無線LANは有線LANより歴史は短いが、進歩が早く、最新のIEEE 802.11acに対応する製品は転送速度が1,300Mbpsに達している。同室内での実効速度はその3分の1〜2分の1程度だが、それでもインターネット接続用途には余る性能で、最近のPCの性能でも使い切る場面は多くないはずだ。無線の性質上距離が離れると速度低下が起きるので、そのマージンとして活用するのが現実的だろうか。

 無線LANルーターは日本国内では2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数帯を使用する規格があり、現在よく使われているのは2.4GHz帯のIEEE 802.11gかIEEE 802.11nだと思われる。11acについてはドラフト採用製品の登場から規格が正式されるまでの1年間に対応機器が増え、今後新たに発売される製品でも採用が増えている。

有線LANの繋ぎ方と無線LANの繋ぎ方

Windows 8.1では無線LANの接続設定はリストからSSIDを選択して暗号化キーを入力すればいい

 有線LANであればケーブルを繋げば接続作業は終わりだ。トラブルと言えばケーブルに積もるホコリか、割れてしまったケーブル固定用のツメくらいなもの。最近ではそのツメが割れにくいように工夫された製品も登場してきて手間いらずの状態だ。

 無線LANの場合は、無線LANルーターが対応している接続規格に、繋ぐ側の機器も対応している必要がある。対応していない場合、PCであれば無線LAN子機を増設すればよい。PC以外の機器はUSB接続タイプの一部製品がゲーム機やTVなどに対応している。

 その上で、対応機器に無線LANルーターやアクセスポイント(無線LANブリッジ)のSSIDと暗号化キーを登録する必要がある。以前はこれらを手入力するのが一般的だったが、最近では、AOSS(AirStation One-Touch Secure System)や、WPS(Wi-Fi Protected Setup)といったボタン操作での自動設定、あるいはQRコードをアプリに読ませて設定を登録する方法が多くの製品で用意されるようになった。さらに最近ではNFCタグを活用したものも登場している。

有線LANポートが足りない時にはどうするか

8ポートの有線LAN Hub製品例。8ポートのうち1つ以上はルーターやほかのHubとの接続に使用する

 無線LAN機器はケーブルが必要ないので、ルーターに接続する際にLANポートを必要としないが、有線LAN機器はそうはいかない。PC、ゲーム機、TV、レコーダなどなど、近年LANに繋ぐタイプの製品が増えている。家族で使う機器の接続まで考えると、一般的な家庭用ルーター製品に搭載されている4ポートでは不足気味だ。

 もちろん、無線LAN対応になって必ずしも有線LANを必要としない機器も増えたが、より帯域を必要とするコンテンツも増えてきている。有線LAN接続を確保しておきたい場面は今後増えるはずだ。そのために有線LANのポートを増やす方法は2つある。

 1つが有線LAN Hubをルーターに繋ぐ方法だ。ルーターの空きポートに、十分な数のポートを搭載した有線LAN Hubを、有線LANケーブルで繋げばよい。なお、ポート数を計算する時は、ルーターとHubを中継接続するために、双方から1ポートずつ消費することを頭に入れておく必要がある。当然ながら電源コンセントも1つ消費する。

 もう1つが、ポートの多いルーターに買い換える方法だ。一般的なルーター製品は4ポートだと先に書いたが、最初から8ポート搭載している製品もある。増えるポート数に対して割高になるが、ケーブル類が増えずコンセントの消費もないのがメリットだ。

インターネットを便利にするリモートアクセス系機能

ポート転送の設定画面例。LAN内のPCの80ポートを外部に公開しようとしている

 ルーターに搭載されたNAT機能のおかげで、家庭から複数台のPCがインターネットへアクセスできているのだが、NATを使うと外部からLAN内のPCへ直接アクセス出来ないという問題もある。LAN内を外から守りやすいという利点にもなっているのだが、リアルタイムに相互通信する必要があるボイス/ビデオチャットやゲームを楽しむには、外部からのアクセスが必要になる。

 その欠点埋める機能として、一般的なルーターにはポート転送(ポートフォワーディング)や、ポート転送の自動設定を行なうUPnP(Universal Plug & Play)と呼ばれる機能が搭載されいている。ポートとは通信の種類を表す番号のことで、IPアドレスと組み合わせて使われる。ポート転送は、接続している機器によって使うポート番号を変えることでNATの中と外(インターネット)の直接通信可能にしている。

 ポート転送機能を使えば前記のサービスのようなものばかりでなく、例えば自宅LAN内のPCを1台使って簡単にホームページを公開できる。さらに、ダイナミックDNS機能を使えば、プロバイダから割り当てられる固定ではないアドレスに、固定の名前を被せれば、いつでも同じアドレスでアクセスできる自分だけのWebサイトができる。もっとも、現在ではもっと手軽で簡単なホームページサービスが登場しているので、興味を持つ人は少ないかもしれない。

Webサイトに近づく管理画面

 ルーターの役割を考えると、ユーザーが管理画面に触れる機会は多くない。場合によっては購入直後のパスワード登録と、PPPoE接続設定のみ、なんてこともあるのかもしれない。もちろん、機能も管理画面もあえてシンプルな製品もあるのだが、そのような使い方ではもったいないぐらいにルーターには機能が詰まっている。

 ルーターの管理画面は、開いて見れば分かる通り、Webサイトのような作りなのだが、HTMLのみでシンプルかつ構造的に書いた文字通り「コントロールパネル」型が主流だったデザインも、最近ではマニュアルを開かなくてもその場で解説が読めるようになっているタイプの管理画面が一部メーカーで定着している。さらに、PCとは縦横比や画面サイズが違うスマートフォン対応のためか、デザインの面でも従来とは違う取り組みをするメーカーが登場している。

 デザイン以外で良い傾向だと感じているのがファームウェアの自動アップデート機能だ。「アップデートに失敗した時どうするの?」という心配あるものの、OSやアプリのアップデートではすでに当たり前のもので、一般にも受け入れられている。自動アップデートは何より手軽だということで歓迎できる進化だ。

 ちなみに、管理画面のIPアドレスは「192.168.0.1」になるものが多い。通常、PC上でデフォルトゲートウェイの項目で表示されるものと同じと考えてよい。製品によっては「10.0.0.1」や「172.0.0.1」を使うものもある。後者は見慣れないと面食らうかもしれないが、どちらもプライベートアドレスとして家庭内で使われる場合の役割は同じだ。

(井上 繁樹)