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Dellは「ワークステーションのカテゴリクリエイター」

~米Dellのマーケティング担当者に聞く

3月5~6日(現地時間) 開催

米Dell Precision Workstations プロダクトマーケティング ディレクターのPat Kannar氏

 「Dellはワークステーション市場におけるカテゴリクリエイターであると自負している」と、米DellのDell Precision Workstations プロダクトマーケティング ディレクタのPat Kannar氏は語る。

 Dellは、ワークステーション市場に参入して以来、17年間の歴史を誇り、自動車メーカーや航空機メーカーでの導入実績を持つほか、高度なCG処理が話題となっている映画「ゼロ・グラビディ」においても活用されるといった実績がある。また、ここ数年は、モバイルワークステーションと呼ばれる領域の製品開発でも市場をリードしている。

 同社が3月5~6日(現地時間)の2日間、米テキサス州オースティンの本社において開催した「Dell Precision Press Day」で、Kannar氏にワークステーション事業への取り組みについて聞いた。

――DellがPrecisionブランドで展開するワークステーションは、主にどんなユーザーに利用されていますか。

「Precision T1700」

Kannar氏:Dellのワークステーションユーザーの3分の2は、それまでPCを利用していたユーザーです。ビジネスPCからワークステーションへと移行するユーザーが多いと言えます。予算の関係で、高性能なワークステーションを導入できないようなユーザーに対して、より低価格で提供できるのがDellのワークステーションの特徴です。

 その一方で、高性能グラフィック機能を搭載することで、レンダリングのリアルタイム処理にも十分な性能が求められる航空機や自動車メーカーにおける製品開発での活用や、映画「ゼロ・グラビディ」(原題はGravity)でのCG制作などにおいても、Dellの高性能ワークステーションが利用されています。

 我々は、ワークステーション市場におけるカテゴリクリエイターであると自負しています。

 Dellは17年前からワークステーションのビジネスを開始しており、現在の市場シェアは第2位です。2001年には初のモバイルワークステーションを投入。2005年にはデュアルコアの製品を発売。さらに、2008年にはラックワークステーションも投入し、ワークステーションをデータセンターの中に持ち込むといった提案も行ないました。そして、過去9カ月の間に、10機種のワークステーションの新製品を投入しています。

 2013年にDellは非上場化したわけですが、それに併せて製品ラインアップの強化を積極的に進めています。非上場企業であることで、迅速な決断ができること、潤沢なキャッシュフローを活用することで可能になった成果でもあり、これはユーザーにとっても大きなメリットをもたらすと言えます。

 中でも「Dell Precision T1700」は、競合製品より30%も小型化したタワー型のスモールフォームファクタの製品であり、日本市場のニーズを反映した製品だとも言えます。日本では、2013年夏に市場導入したところ、日本が最も高い成長を記録。これによって、前年比25%以上の成長を遂げています。極めて順調な売れ行きを見せている製品と言えます。また、Precision T1700は、日本以外の市場においても好評であり、床面積が小さいことが注目を集め、金融業界などでの導入が促進されています。

――Dellは、モバイルワークステーションという新たな領域を創出したとしていますが、この分野でのDellの特徴はなんですか。

「Precision M3800」

Kannar氏:モバイルワークステーションには、いくつかの課題がありました。1つは、モバイルワークステーションそのものが高価であるため、なかなか導入が進まない点、また、実際には、軽量化して持ち運べるような製品がなかった点。そして、モバイル性を追求すると性能面で妥協しなくてはならない点です。

 Dellでは、モバイルワークステーション市場において、最も薄く、最も軽い「Dell Precision M3800」を投入しています。これは、薄さが18mm、重量が1.88kgというものです。それでいて、性能には妥協していません。

 一方で、このほど新たに「Dell Precision M2800」というエントリーモデルの製品を投入することを発表しました。価格は1,119ドルからで、これまでモバイルワークステーションは高価で購入できなかったユーザーも購入することができるようになります。

 そして、性能面でも妥協をしていないという点では、エントリーモデルのPrecision M2800であっても第4世代Core i5プロセッサを採用。モバイルワークステーションでありながらも、約20個のISVソリューションの動作を認定しています。Autodeskの「AutoCAD」および「Inventor」、「Revit」、Dassault Systemsの「SolidWorks」、PTCの「PTC Creo」などの主要アプリケーションが動作することになり、既存のワークステーションとの互換性を維持します。さらに、特定のアプリケーションを最適化するためのシステム設定を自動で調節する「Dell Precision Performance Optimizer」(DPPO)も搭載しています。

 まさに、Dellが新たな「モバイルワークステーション」というカテゴリを創出しているわけです。我々は、この分野でのリーダーであると自負していますし、この分野において、イノベーティブな存在であることを自認しています。

――今回初めて開催したDell Precision Press Dayでは、ワークステーションの仮想化に関連する発表もしていますね。

Virtual Workstaion on Center of Excellence

Kannar氏:仮想環境に専用化して開発されたリファレンスアーキテクチャである「Dell Wyse Datacenter for Virtual Workstation」の提供と、アプリケーションのパフォーマンス検証施設として「Virtual Workstation on Center of Excellence」の設置を発表しています。

 特に、Virtual Workstation on Center of Excellenceは、業界初の仮想化に関する拠点であり、今後のワークステーションの仮想化を促進することになると考えています。1つの場所に、シトリックス、VMWare、Dell Wyseといった仮想化ソリューションに加えて、主要アプリケーションベンダーにも参加してもらい、データセンターを活用したワークステーションの利用提案、検証などを行なうことになります。世界中のチャネルパートナーやISVパートナー、顧客が利用できるものになります。ワークステーションの仮想化は、今後の大きなトレンドになると考えています。

――ところで、ワークステーション市場におけるシェアナンバーワンはいつ獲得するつもりですか(笑)。

Kannar氏:Dellにとって市場シェアは重要な指標です。確かに、現時点では、マーケットシェアのリーダーではありませんが、最も急成長を遂げているベンダーであることは事実です。2013年度は、全世界のワークステーション市場全体の成長率は4%増となりました。その中で3.3ポイントのシェア向上を図ることができました。また、第4四半期は、Dellだけが成長を遂げたベンダーとなりました。この事実は、組織の高いモチベーションを維持することに繋がっています。非上場化を発表してからの投資が、早くも効果になっていると言えます。そしてこれが利益に繋がると信じています。今後も、市場に対して、最も早く新たなものを投入し、高い成長を維持していきたいと考えています。ナンバーワンシェア獲得の時期には言及できませんが、なるべく早い時期に獲得したいですね(笑)。

(大河原 克行)