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山田久美夫が選ぶ
デジタルカメラ・ランキング

動画対応モデル編


'99年7月7日版

【総評】

●動画も撮れるデジカメが増加

 動画撮影が可能なデジタルカメラの数が増えたことを受け、今回から「動画対応モデル」というジャンルを新設することにした。

 このカテゴリーは、1台で静止画も動画も撮影できるモデルの評価を目的とする。選考対象機種は、パソコンで再生できる動画ファイルを、撮影したカメラ内で生成できるモデルとした。基本的には、動画撮影機能を備えたデジタルカメラが中心だが、同等の機能を備えたPDAなども評価に値するものは選考対象としている。
 なお、最近では静止画撮影機能を備えたデジタルビデオカメラ(DVカメラ)も多く登場しているが、現状ではPCで再生可能な動画ファイルをカメラ内で生成できないことから選考対象に入れていない。このあたりは、PC側の動向も含めて見守りたい。
 またランキングは、単純な動画カメラとしての性能ではなく、静止画撮影時の性能も重視したものとなっている。具体的には、旅行や子供の記録などの一般的な用途や、ホームページの作成などの用途を想定している。1台で、十分な静止画と実用レベルの動画が撮影できる、“次世代のファミリーカメラ”としての視点でセレクトした。

 なお、130万画素光学8倍ズーム搭載の製品である「ソニー デジタルマビカMVC-FD88K」、8月に発売予定の「三洋電機 DSC-SX150」は、今回の選考対象に入っていない。

●動画のフォーマットと再生環境

 ほとんどのデジタルカメラの静止画フォーマットがJPEGおよびそれをベースとしたものに統一されているのに対し、動画のフォーマットはさまざまである。JPEGファイルがほとんどのパソコンで表示可能なのに対し、動画はフォーマットによって再生できるプラットフォームが限定される。また、再生可能な場合でも、再生プログラムやコーデックなどをインターネットや雑誌の付録CD-ROMなどから入手する必要があることも多い。
 現在、動画対応のデジタルカメラが記録できるフォーマットは、MPEG-1、MPEG-4、AVI、QuickTimeの4つがある。各仕様の詳細についてはリンクされている鈴木直美氏のキーワード解説を参照していただくとして、ここでは実用面から各フォーマットの特徴を見てみよう。

MPEG-1
 「ソニー DSC-F55K」、「ソニー デジタルマビカ MVC-FD91」、「日立 MP-EG10」などに採用されているフォーマット。圧縮率の高いフォーマットで、現在ではWindows/Macintoshを問わずほとんどのパソコンで再生できる。対応するプレーヤーも多い。ファイルサイズは、5秒程度の標準的な画像データで数十KB~百KB程度。

MPEG-4
 「シャープ インターネットビューカム」が採用しているフォーマット。ただし、インターネットビューカムが採用しているのはMicrosoftのAdvanced Streaming Format(ASF)というストリーミング用データフォーマットに準拠したもので、これに対応したプレーヤーが必要となる。具体的にはマイクロソフトの「Media Player」のVer 6.0以上が必要であり、現時点では再生環境がWindows 95/98/NT 4.0に限定される。また、初めて再生する場合のみ、インターネットに接続してコーデックのダウンロードが必要となる場合もある。

AVI
 「三洋電機 DSC-X110」、「カシオ QV-5500SX」が採用しているフォーマット。AVIというフォーマットは圧縮方式(コーデック)は選択可能となっているが、両機ともOpen DMLが定めたMotion JPEGコーデックを採用している。このコーデックは、Media Playerなどの標準的なAVI再生環境では含まれておらず、再生にはQuickTime 3.0以上のインストールが必要となる。ファイルサイズは、画像サイズや画質の設定で数百KB~数MB程度と大きく変化する。

QuickTime
 8月20日発売予定の「三洋電機 DSC-SX150」が採用しているフォーマット。歴史も古く普及率も高いフォーマットだけに編集をはじめとする環境も整っている。

注:各分野の得点はカメラの特徴を分かりやすくするために便宜的につけているものです。順位は製品の質や、使いやすさのような数字に表われない部分も含めて総合的に判断していますので、必ずしも合計点と順位は一致しません。また、今回の得点は動画対応モデルというジャンル内での相対評価です。

【動画対応モデル】 
順位 メーカー名 機種名 記録形式 Mac対応 最長記録時間 画質(動画) 画質(静止画) 機能 操作性 軽快感 デザイン 携帯性 コストパフォーマンス
1 ソニー DSC-F55K MPEG-1 60秒 ★★★1/2 ★★★★ ★★★1/2 ★★★1/2 ★★★★ ★★★1/2 ★★★★ ★★★1/2
2 三洋電機 DSC-X110 AVI(※1) 120秒 ★★★★ ★★1/2 ★★★1/2 ★★★1/2 ★★★★1/2 ★★★1/2 ★★★★1/2 ★★★1/2
3 シャープ VN-EZ1 MPEG-4 × 制限ナシ(※3) ★★ ★★ ★★1/2 ★★★ ★★★★ ★★★1/2 ★★★★1/2 ★★★1/2
4 ソニー MVC-FD91 MPEG-1 60秒 ★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★ ★★★ ★★1/2 ★★1/2
5 日立 MP-EG10 MPEG-1 制限ナシ(※3) ★★★1/2 ★★1/2 ★★★1/2 ★★★ ★★★1/2 ★★★ ★★1/2 ★★★
次点 カシオ QV-5500SX AVI(※1) 9.6秒 ★★1/2 ★★★ ★★★1/2 ★★1/2 ★★★1/2 ★★★ ★★★ ★★★
番外 カシオ カシオペアE-507 CMF(※2) × 内蔵メモリに依存 ★★★ ★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★★ ★★★ ★★★1/2

※1 Open DML Motion JPEGフォーマット準拠(Apple QuickTime3.0以降が必要)
※2 MPEG-1ベースのカシオオリジナル(Windows Media Playerで再生可)
※3 記録メディアの容量に依存

【詳評】

 1位は「ソニー DSC-F55K」とした。本機の最大の魅力は、静止画と動画のいずれも、クラストップレベルの画質と軽快さだ。CCDは211万画素タイプ。動画撮影時の画像サイズは、320×240ピクセルと160×112ピクセルの2種。画像フォーマットはMPEG-1を採用しており、データサイズも小さく、再生環境も幅広いので、ネット上での利用にも適している。
 動画時の画質も良好で、原色系CCDらしいクリアで鮮やかな色調は魅力。動画の動きもスムーズで、音声も明瞭だ。さらに、静止画時の画質も200万画素モデルらしい切れ味のいいものだ。その意味で本機は、これ1台で、動画も静止画も十分に満足できるレベルの画質を実現した、バランスのよいモデルだ。実販価格もキット込みで8万円を切っており、お買い得感もある。
 ただし、動画撮影が最長で1カット60秒までという制限がある点や、メモリースティックの最大容量が現時点では16MB止まりなのは気になる点だ。
【レポート】

 2位は「三洋電機 DSC-X110」。“動画デジカメ”の愛称で知られる、コンパクトで軽快な85万画素モデルだ。動画画像サイズは320×240ピクセルと160×120ピクセルの2種。画像フォーマットは、AVIでコーデックはOpen DML準拠のMotion JPEGとなっている。MPEG-1タイプに比べ画質はいいが、ファイルサイズが大きくなるのは難点だ。そのため、Webやメールの添付ファイルなどの通信用途にはやや重い。画質がいいため、パソコン上で家族の動画アルバムを再生したり、カメラのビデオ出力機能を使ってテレビの大画面で楽しむなどの、簡易ビデオ的な用途に向いたモデルだ。カメラ本体にスピーカーが無いため、カメラでの再生時には画像のみになる点や、記録媒体がスマートメディアのため、メディアの容量が不足しがちになる点は残念だ。
 ボディーサイズはかなりコンパクトで携帯性も良好。また、静止画撮影時の記録時間もきわめて短く、軽快なモデルに仕上がっている。85万画素モデルだけに、そろそろ解像度の面ではやや物足りない感じもあるが、色再現性はなかなか良好。実販価格も4万円台と動画対応機のなかでも安価なうえ、画質の高い動画が撮影できる、コストパフォーマンスが高いモデルだ。
 なお、すでに上位機種「DSC-SX150」が発表されており、ここであげた欠点のほとんどが解決されていることから、登場を待つという選択肢もある。

 3位は「シャープ インターネットビューカム VN-EZ1」。世界初のMPEG-4カメラだ。本機の場合、ベースは動画カメラであり、静止画撮影機能は付加的なもの。また、“インターネットビューカム”という名称通り、基本的にはネット上での動画利用がメインであり、本体にはビデオ出力さえないという、かなり割り切ったモデルだ。
 CCDは35万画素タイプ。動画撮影時の画像サイズは160×120ピクセルがメインで、用途に応じ4段階のビットレートを選ぶことができる。画像通信を意識したストリーミング再生に対応したLPモードを備えている点も特徴だ。また、240×320ピクセルモードも備えているが、こちらはビットレートも低めでメインでは使えない。静止画撮影は640×480ピクセルのVGAサイズで、メモ用途と割り切った方がよい。
 記録形式はASFフォーマットのMPEG-4だ。先に述べたように再生環境はまだ限られており、現時点ではMacintoshでは再生ができない。そのため、インターネット上で公開する場合には視聴者を選んでしまう欠点がある。
 正直なところ、レンズ性能もあって画質面ではあまり期待できないが、PC上での簡単な動画スナップやWeb上で動画を利用したい場合には必要十分なレベルだ。また、長時間の動画記録ができるため、取材や講演などでは動画入りのサウンドメモ的な使い方もできる。
 サイズはきわめてコンパクト。実販価格も5万円を切るので、手頃な価格の動画スナップ専用機として魅力的な存在だ。
【レポート】

 4位は「ソニー デジタルマビカMVC-FD91」。このモデルは、FD記録式の85万画素機だ。動画フォーマットはMPEG-1。サイズは120×160ピクセルと240×320ピクセルで、記録時間はそれぞれ約60秒と15秒となっている。
 レンズは光学手ブレ補正機能付きの光学14倍ズームと本格的で、超望遠撮影が気軽に楽しめるという点では、現行機のなかでもきわめて貴重な存在だ。さらに、ファインダーは2.5インチ液晶のほか、液晶ビューファインダーも装備している。この液晶ビューファインダーは、一眼レフ感覚での撮影ができるうえ、日中の明るい場所でも視認性は良好。さらに、マニュアルフォーカス時のピント確認もしやすいなど魅力的な機能だ。
 私自身、インターネット上でのイベント取材や簡単な商品撮影に頻繁に利用する機材であり、豊富な機能や使い勝手のよさは相当なレベルにある。もっとも、記録媒体が1.44MBの3.5インチFDのため、容量が絶対的に不足してしまうのが難点。また、スローシャッターがなく、暗いシーンではゲインアップによる感度不足を補うタイプで、かなりノイズっぽくなるのも気になるところ。そして、高機能とはいえ、138,000円という価格(実売価格でも9万円台)は一般的ではないため、今回はあえて4位とした。

 5位は「日立 MP-EG10」。世界初のMPEGカメラとして話題になった「MP-EG1」のマイナーチェンジモデルだ。もともと本格的なMPEG-1カメラのため、動画撮影機能の充実度には目を見張るものがある。なかでも、大容量HDDカードの対応でかなり長時間の動画記録ができる点や、ビデオカメラなどで撮影したアナログビデオ信号をMPEG-1形式で保存するコンバート機能を備えている点なども魅力だ。
 CCDは39万画素タイプ。動画撮影時の画像サイズは352×240ピクセル。記録形式はもちろん、MPEG-1を採用している。動画の連続撮影時間は、ハード的な制限はなく、記録メディアに依存するタイプだ。記録媒体はType3のPCカード型HDDを推奨している。
 MP-EG10になってマクロ機能が追加されたが、それでも通常撮影は固定焦点式である点は残念。せっかくの光学3倍ズームもその機能をフルに生かしきれない。また、静止画撮影時には、長方画素CCDの関係で縦横比がおかしなデータになっているため、ユーザー側で補正する必要がある。
 最近では店頭で見かける機会がかなり減っているが、実販価格は10万円強と、機能や画質を考えると意外にお買い得感のあるモデルだ。しかし、そろそろ、IBMのMicroDriveを採用した小型のニューモデルが登場してもおかしくない時期でもある。【MP-EG1レポート】

 次点は「カシオ QV-5500SX」。このモデルは131万画素の軽快な単焦点モデルで、同シリーズとしては初めて、カメラ内で最終動画ファイルを生成できる点が特徴だ。
 動画撮影時の画像サイズは、160×120ピクセルと320×240ピクセルの2種だが、連続記録時間は3.2秒、6.4秒、9.6秒の3種類しか選べず、最長でも10秒足らずという点は残念。画像フォーマットはAVIで、コーデックはOpen DML準拠Motion JPEGを採用している。
 本機は昨年発売された「QV-5000SX」をベースにしており、大容量バッファーの採用で静止画撮影には約0.5秒間隔での連続撮影を実現している。機能も豊富で、130万画素単焦点モデルのなかでもトップレベルだ。また、インターフェイスの面でも液晶モニター上に仮想の電子ダイアルを表示させることで、感覚的な操作ができるよう考えられている。
 画質面では、色や階調性はいいが、解像度がこのクラスのモデルとしては不足気味な点が気になる。また、ボディーサイズも単焦点モデルとしては大きめで、もう少し高級感が欲しいところ。実販価格が安く、機能も豊富だが、やや決定打に欠けるモデルのため、今回は次点とした。

 また、今回は番外として、ややジャンルは異なるが、あえて「カシオ カシオペアE-507」を選んだ。本機は基本的にWindows CE搭載のPalm-Size PCだが、35万画素でレンズ回転式のデジタルカメラユニットが標準セットになっている。
 本機のカメラ機能は、なかなかよくできており、このセットのみで640×480ピクセルの静止画と動画の両方が気軽に撮影できる。動画撮影時の画像サイズは320×240ピクセルと160×120ピクセル。画像フォーマットは、CMFと呼ばれるMPEG-1ベースのカシオの独自形式を採用。Windows Media Playerで再生可能だが、ASF形式のMPEG-4同様、初回のみコーデックのダウンロードが必要な場合もある。また、Macintosh環境では再生できない。
 画像の記録は内蔵メモリ専用。もちろん、Palm-PCのためCFカードが利用できるわけだが、撮影時にはCFスロットにカメラを装着するため、内蔵メモリに保存せざるを得ないわけだ。
 撮影感覚は独特。なにしろ、液晶サイズが大きいため画像が見やすく、ビデオカメラの大型液晶ファインダーで撮影しているような感覚で、なかなか気持ちよく撮影できる。また、MPEGベースなのでファイルサイズも小さく、意外なほど内蔵メモリを圧迫しない。
 動画時の画質は意外に良好で、MPEG-4カメラである「インターネットビューカム」を上回るほど。静止画時の画質は往年のQV-100を連想させるようなレベルだが、メモ用と割り切れば実用レベル。Palm-PCのコンセプト通り、デスクトップPCとの連携を重視した出先での情報収集携帯端末として実によく考えられたモデルだ。
 125,000円という価格は決して安いものではないが、カラー液晶搭載のPalm-PCとしての使い勝手の良さと、いつでも気軽に動画と静止画が撮影できる点で、通常の動画対応機にはない魅力を備えた異色の動画対応モデルとなっている。


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[Reported by 山田 久美夫]


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