鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第182回:9月10日~9月14日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


9月10日

■■ サーバー用エクスターナルI/O「InfiniBand」が国内初デモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010910/infini.htm

●3GIO(3rd Generation I/O)

 PCI-SIGで策定中のシリアル伝送方式のPCIバスアーキテクチャのコード名。

 PCI(Peripheral Component Interconnect)は、Intelが提唱し、'92年にPCI-SIGによって標準化されたバスアーキテクチャである。PCI-SIGからはその後、ベースとなるPCI(Rev.2.2)をはじめ、サーバー向けのPCI-X、ノートPC向けのMini PCIなどのいくつかの規格がリリースされていおり、PCIの次期バージョン「PCI 3.0」で、これらPCIファミリーの規格が統合される予定である。

 2001年8月、このPCI 3.0に新しくシリアル伝送方式のバスを追加することを発表。 この新しいバスアーキテクチャは、Compaq、Dell、IBM、Intel、Microsoftの5社から成るArapahoe Work Groupが開発を進めていた「Arapahoe(コード名)」と呼ばれていたもので、PCI規格への統合が決まった現在は、「3GIO」というコード名が付けられている。

 初期にはPCのシステムバスとして使われていたこともあったPCIだが、当初からの仕様である32bit/33MHzのバスが現在もそのまま使われており(規格には64bitバスや66MHzの転送モードが追加され、さらに高速なPCI-Xも策定されたが、コンシューマ市場では使われていない)、単なる拡張バスとしても、既に帯域不足を招いている。

 3GIOは、そんな現行のPCIの後継として位置付けられている、新しい物理層の拡張規格で、上位層のインターフェイス(システムなどのソフトウェア側のインターフェイス)は現行のPCIを継承しつつ、物理層をシリアル伝送方式(※1)に刷新。2003年にテスト環境を整え、2004年にはローエンドマシンに、2005年にはハイエンドマシンに実装する予定でいる。

 3GIOの物理層は、送受単方向の信号線2対(4本)で伝送を行なう単純な仕様で、各種制御線は一切無く、データも制御も全てパケットのやり取りで行なう。スペック的には、InfiniBandとよく似ており、接続は、現行のPCIのようなバス型の接続ではなく、I/Oスイッチを使ったファブリック接続。インターフェイス的には、スイッチングハブを使ったEthernetと同じように、ポイントツーポイントで通信を行なう。転送レートも、InfiniBandと同様の一方向2.5Gbps。信号にクロック成分を盛り込むために、8bitを10bitに符号化する「8B/10B」を用いるので、実質的なデータレートは2Gbps。バイト換算では、250MB/sec(1,024単位なら約238MB/sec)となる(送受の双方向で考えるならこの2倍)。送受一組の信号を1レーンといい、複数のレーン(2~32)を束ねて帯域を広げられるのもInfiniBand譲りである。

※1 インターフェイスの高速化には、バス幅の拡大と転送サイクルの短縮(高クロック化)という2つのアプローチがあり、一定のレベル(求めるパフォーマンスとかかるコスト、その時々の技術水準で変動するが)を越えると、両者はトレード関係になる。回路をそのまま延長する発想のパラレル伝送は、単純で扱いやすいため、比較的低いクロックではコストパフォーマンスが高いのだが、信号の干渉や遅延の影響が大きくなるため、高クロック化が難しいのである。これは、ケーブル長の長い外部インターフェイスでは特に顕著で(外部インターフェイスの場合はケーブルのコストもばかにならない)、既に主要なインターフェイスの主流は、従来のパラレルからシリアルへと移行しつつある。

□PCI-SIG
http://www.pcisig.com/
【参考】
□PCI(Peripheral Component Interconnect)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980617/key34.htm#PCI
□PCI-X
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010412/key161.htm#PCIX
□Mini PCI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000310/key111.htm#Mini_PCI
□LowProfile PCI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000511/key118.htm#LPPCI
□64bit PCI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980826/key43.htm#64bitPCIbus
□InfiniBand
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010209/key152.htm#infini
□スイッチングハブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000203/key106.htm#switching_hub


9月11日

■■ サイバーリンク、DVDプレーヤーソフト「PowerDVD XP Pro」(AV)
   ―ドルビープロロジック II、TrueSurround XTにも対応
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20010911/cyber.htm

●ドルビープロロジックII(Dolby Pro Logic II)

 Dolby Laboratoriesが2000年に発表した、プロロジックサラウンドの新しいデコード方式。

 複数のチャンネルを使った立体音場再生のことをサラウンドという。ドルビープロロジックは、同社が'87年に開発したこのサラウンド方式の1つで、通常の2チャンネルのステレオ信号に、サラウンド信号を重畳(エンコード)。これを、プロロジック対応のサラウンドプロセッサを使って分離再生(デコード)する仕組みになっている。

 従来のプロロジック再生は、フロントセンターとリアセンターを加えた4チャンネル仕様で、サラウンドチャンネルには、7kHzまでという制限があった。プロロジックIIでは、リアが左右のステレオ仕様となり、帯域制限も撤廃。5チャンネルの全帯域をフルに活用し、より優れた音場効果と鮮明な定位が実現できるとしている。

 なお、このプロロジックII自体は、プロロジックのデコード処理を改良したデコード専用の技術であり、プロロジック用にエンコードされたソースはもちろん、通常のステレオソースに対しても有効なサウンドコントロールが行なえる。

□Dolby Laboratories, Inc.
http://www.dolby.com/jp/
【参考】
□Dolby Surround Pro Logic
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000302/key110.htm#ProLogic
□DolbyDigital(AC-3)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980303/key20.htm#AC-3
□DTS
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990701/key82.htm#DTS
□ドルビーヘッドホン
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000511/key118.htm#DolbyHeadphone


■■ AKIBA PC Hotline! Hothotレビュー by Ubiq Computing
   Pentium 4用SDRAM対応チップセットIntel 845の実力
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010911/hotrev125.htm

●4層基板(4 layer PCB[Printed Circuit Board])

 4層構造のプリント配線板(プリント基板)。

 樹脂の板に銅で配線パターンを形成したものを正式にはプリント配線板、これに半導体などの部品を取り付けたものをプリント基板というが、一般にはこれらをひっくるめてプリント基板と呼ぶことが多い。

 オーソドックスなプリント配線板は、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などで作られた板の上に銅箔を貼り、フィルムにした配線パターンを写真と同じように感光・現像して銅箔上に転写(フォトレジスト)。不要な銅を除去(エッチング)して、パターン部分だけを残すやり方で作られている。

 この配線パターンを、基板の片面だけに形成するタイプを片面基板、両面に形成するタイプを両面基板といい、パターンが交差する場合には、2層が使える後者でなければならない(後からジャンパー線を渡す手もあるが)。さらに回路が複雑に交差する場合には(電源やアースの取り方や高密度化の目的でも)、このような基板を貼り合わせたり、パターンの上に絶縁層と配線層を生成する(ビルドアップ)といった方法で多層化して行く。一般的なマザーボードでは、4層ないし6層。携帯機器などでは8層以上のものもあり、層が増えればそれだけコストもかかる。


9月12日

■■ HP、コピー/スキャナ機能搭載の複合プリンタ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010912/hp.htm

●サーマルインクジェット方式(thermal inkjet)

 インクジェットプリンタの印字方式の1つで、ノズルを加熱してインクを噴射するタイプ。

 ノズルからインクを吹き出して記録するインクジェット方式は、静かな動作音や高品位なカラー印刷がウケ、ホームユース向けプリンタの主流となっている。

 このインクジェット方式には、大きく分けるとコンティニュアス方式(continuous inkjet)とドロップオンデマンド方式(drop-on-demand inkjet)とがある。コンティニュアス方式は、インクの粒を常に高速噴射しておくタイプで、電荷の制御でインク粒を偏向して付着させる。産業用の製品にはよく使われるが、一般的な印刷用途にはあまり用いられず、富士写真フイルムなどの一部の業務用製品に限られる。一方のドロップオンデマンド方式(あるいは単にオンデマンド方式)は、必要に応じてインクを噴射する方式で、オフィスや家庭で使われている一般向けのインクジェットプリンタは、ほとんど全てがこの方式である。

 インクを噴射する方式は、さらにピエゾ方式(piezoelectric inkjet)とこのサーマル方式に分類される。

 電圧をかけると変形し、外力を加えると帯電する現象をピエゾ効果、あるいは圧電効果という。ピエゾ方式は、このような性質を持つピエゾ素子(圧電素子)を振動させ、ポンプのような仕組みでインクを噴射させるタイプで、セイコーエプソンのMach Jetがこの方式である。サーマル方式は、ヒータを使って加熱するタイプで、沸騰したインクから発生した気泡がインクを押し出す仕組みから、バブル方式と呼ぶこともある。こちらは、HP(Hewlett Packard)やキヤノンが採用しており、キヤノンでは、バブルジェット方式と呼んでいる。

【参考】
□熱転写方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971216/key11.htm#thermal
□昇華型熱転写式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971105/key5.htm#thermal_prn
□インクジェット方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971216/key11.htm#inkjet
□LED方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981203/key57.htm#LED
□サイカラー方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980903/key44.htm#Cycolor
□TA(Thermo-Autochrome)方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980415/key26.htm#TA_method


9月13日

■■ 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
   InfiniBandにPCIを被せた? 次世代I/O技術「3GIO」を図解で紹介
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010913/kaigai01.htm

●エンベデッドクロック(embedded clock)
●8B/10B

 エンベデッドクロックは、データ信号に埋め込まれたクロック成分という意味で、記事では「自己同期方式」のことを指す。「8B/10B」は、データ信号からクロック成分が検出できるようにするための符号化方式の1つ。

 デジタル信号は、信号線にかける電圧の高低などにビットの状態を割り当てて伝送しており、正しく受信するためには、信号を検出するタイミング情報が必要となる。パラレルインターフェイスでは通常、そのためのクロック信号を別途供給しているが、シリアルインターフェイスの場合には、受信側が自分でタイミングクロックを生成し(※1)、それを受信したデータ信号のタイミングに同期させる手法が用いられる(※2)。一般に、独立したクロック信号を供給する方式を「外部同期方式」、データ信号からクロックを検出する方式を「自己同期方式」という。

 ビットの「0」と「1」を、単純に電圧の高低に割り当てた場合(NRZ~Non Returnto Zero)、0や1が連続すると信号が全く変化しないため、受信側で同期がとれなくなってしまう。そこで、自己同期方式では、一定の周期内で必ず信号の状態が変化するように、信号を符号化して送ることが多い(※3)

 例えば、10BASE系のEthernetで使われているマンチェスター符号(バイポーラ符号)は、1bitのタイミングの前半と後半で信号を反転させ、ビット区間内で必ず信号が変化するようにしている(※4)。「8B/10B」は、ギガビットイーサネット(Gigabit Ethernet[GbE])やファイバーチャネル(Fiber Channel[FC])、シリアルATA(Serial ATA[SATA])、IEEE 1394b、InfiniBand、3GIO(3rd Generation I/O)などの多くのシリアルインターフェイスが採用している符号化方式で、8bit(1byte)のコード256個を10bitのコードで表すことにより、同じ状態が連続せずに、適度な頻度で均等に入れ替わるようにする。

※1 外部同期式の場合にも、回路的には内部で発生したクロックを、外部から供給されるクロック信号に同期させる仕様のものが多々ある。が、このタイプは伝送系でいう自己同期方式には含まれない。

※2 シリアルインターフェイスの多くは自己同期式だが、IEEE 1394aのようにクロック信号を用いるタイプもある。

※3 ブロック単位のデータに、同期用のパターンを付けて伝送するケースもある。

※4 この場合、「0」や「1」が続くと伝送路には2倍のクロックが流れる。

【参考】
□ソースシンクロナスクロッキング(Source Synchronous Clocking)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000406/key115.htm#SSC
□EFM(Eight to Fourteen Modulation) -- CDに使われている符号化
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000713/key127.htm#EFM

[Text by 鈴木直美]


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