平澤寿康の周辺機器レビュー

第16回 OCZ 高速SSD「Vertex」シリーズ
~新コントローラとキャッシュでプチフリを解消






OCZ SSD「Vertex」
 MLCフラッシュを採用した低価格なSSDを数多く送り出しているOCZから、新たなMLC SSD「Vertex」シリーズが登場した。コントローラが変更されるとともに、64MBのキャッシュメモリを搭載する点が大きな特徴だ。従来製品で問題視されていた、ランダムアクセスが頻発した際の速度低下が解消されていると期待している。今回、このVertexシリーズの120GBモデルを入手したので、この件を含めてパフォーマンスをチェックする。

●INDILINX製コントローラを搭載

■■ 注意 ■■

・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。
・この記事を読んで行なった行為(分解など)によって、生じた損害は筆者および、PC Watch編集部、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・内部構造などに関する記述は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・筆者およびPC Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

 MLCフラッシュ採用の低価格SSDの多くは、価格の安いMLCフラッシュを利用しながら、非常に高速なシーケンシャルアクセスを実現できたため、JMicron製のコントローラを採用する例が非常に多かった。OCZ製のMLCフラッシュ採用SSDも同様で、JMicron製のコントローラがSSDの低価格化に大きく貢献していたことは間違いない。ただ、JMicron製コントローラを採用するSSDでは、ランダムアクセス(特に書き込み)が頻発した時に速度が大きく低下してしまうため、パフォーマンス面にはやや難があった。

 それに対し、今回取り上げるVertexシリーズでは、新コントローラに加え、64MBのキャッシュメモリも搭載されている。実際に入手した製品を分解し、内部の基板を見てみると、基板上にはINDILINX製の「IDX110」という新コントローラが搭載されているとともに、その横にエルピーダ製の512Mbit SDRAM「EDS51321CBH-6DTT-F」も搭載されていることがわかる。

 この新コントローラの詳細な仕様は不明だが、INDILINXホームページのリリース情報に記載されている「Barefoot」というコントローラであると思われる。また、NANDフラッシュメモリチップは、SAMSUNG製の64Gbit NANDフラッシュメモリ「K9HCG08U1M-PCB0」が表8個、裏8個の計16個搭載されていた。このことから、このコントローラは、8チャンネルまたは16チャンネルのどちらかの並列アクセスを行なっているものと考えられる。

ネジが1本シールで封印されているので、分解すると保証が失われる 基板表面。右に、INDILINX製コントローラ「IDX110」と、キャッシュメモリのエルピーダ製512Mbit SDRAM「EDS51321CBH-6DTT-F」がある。また、SAMSUNG製の64Gbit NANDフラッシュメモリ「K9HCG08U1M-PCB0」が8個搭載されている 基板裏面。表と同様、SAMSUNG製の64Gbit NANDフラッシュメモリ「K9HCG08U1M-PCB0」が8個搭載されている

●見た目は従来までのOCZ製SSDと同じ

 コントローラは新しくなったものの、外見は従来までのOCZ製SSDとほとんど同じだ。厚さ9.5mmの2.5インチHDDと同じ大きさの金属製ケースに基板が納められており、ネジ穴の位置も2.5インチHDDと全く同じだ。外装はカラーも含めて従来モデルと全く同じとなっており、ケース表面に貼られているステッカーのモデル表記がなければ、全く違いがわからないほどだ。

 接続インターフェイスはSATA(3Gbps)を採用。重量は93.5g(実測値)と、従来のOCZ製SSDと同様、SSDとしてはやや重い部類になる。

サイズは、厚さ9.5mmの2.5インチHDDと全く同じで、HDDからの交換用として問題なく利用できる 見た目は従来モデルとほとんど変わらず、ラベル表記を見ないと区別が付かないほどだ
インターフェイスはSATA(3Gbps)を採用している 重量は93.5g(実測値)。SSDとしてはやや重い部類だ

●ランダムアクセス時の速度低下が解消

 では、パフォーマンスをチェックしよう。利用したベンチマークソフトは、「CrystalDiskMark 2.2.0」と、「HD Tune Pro 3.50」の2つで、HD Tune Pro 3.50ではランダムアクセスも含めてリードとライトを計測するとともに、それぞれブロックサイズを64KB、512KB、8MBの3種類に変更して計測した。また、比較用として、SAMSUNGの「MMDOE56G5MXP-0VB」(256GB)とOCZの「OCZ Apex」(120GB)の結果も併せて掲載する。テスト環境は以下に示すとおりだ。

・テスト環境
CPU:Core 2 Quad Q8200
メモリ:PC2-6400 DDR2 SDRAM 4GB
マザーボード:GIGABYTE EP45-UD3R
ビデオカード:Radeon HD2400 PRO
OS:Windows Vista Ultimate SP1

・CrystalDiskMark 2.2.0

OCZ Vertex MMDOE56G5MXP-0VB OCZ Apex
100MBでテスト
1,000MBでテスト

 まずCrystalDiskMark 2.2.0の結果を見ると、シーケンシャルリードで230MB/sec、シーケンシャルライトで138MB/secと、申し分ない速度が計測された。従来モデルのOCZ Apexには劣っているものの、これだけの速度が発揮されていれば、遅いと感じることはまずない。また、ランダムアクセス速度の落ち込みも少なくなっていることがわかる。

・HD Tune 3.50

OCZ Vertex MMDOE56G5MXP-0VB OCZ Apex
8MBリード
8MBライト
512KBリード
512KBライト
64KBリード
64KBライト
ランダムリード
ランダムライト

 次にHD Tune 3.50の結果だ。リードに関しては、CrystalDiskMark 2.2.0の結果を上回っているものもあり、こちらも良好な結果となっている。また、ライトの結果も、他のSSDのような速度のブレが小さくなっており、全域にわたって高速な速度が発揮されていることがわかる。このあたりは、新しいコントローラを採用するとともに、64MBのキャッシュを搭載していることが大きく影響してのことと思われる。

 また、ランダムアクセスの結果も非常に良好だ。特に、ランダムライト時でも非常に良好なIOPSが記録されている。従来モデルのOCZ Apexで、ランダムライト時にIOPSが大きく落ち込んでいるのとは全く異なる結果で、当然これも、新コントローラとキャッシュメモリの搭載によるものだろう。これなら、ランダムアクセス頻発時の速度の大幅な低下もほとんど発生しないと考えていい。

 シーケンシャルのアクセス速度では、従来モデルや他の高速SSDにやや劣っているものの、それでも十分な速度が発揮されていることは間違いない。そしてなにより、これまで低価格SSDの大きな問題とされていた、ランダムアクセス頻発時の速度の低下が解消されている点は大きな魅力だ。

 実売価格は、登場直後に比べて若干値上がりしたものの、それでも従来モデルのOCZ Apexと同等か、若干安いくらいだ。もはや従来モデルを買う意味はないのではないかと思ってしまうほどである。

 SSDは発展途上の製品とは言え、ここ1年ほどの進化は本当に目覚ましく、いつが買えばいいのか迷ってしまうほどだ。それでも、OCZ Vertexシリーズは、価格面も含めて、現時点でもっとも魅力のあるSSDのひとつであるのは間違いないだろう。今回使った120GBモデルは約46,000円だった。

 既に、OCZ以外からも、INDILINX製コントローラとキャッシュメモリを搭載するSSDが続々登場してきている。これまでは、JMicron製コントローラ搭載製品が低価格SSDの主流だったが、今後はINDILINX製コントローラ搭載製品が低価格SSDの主流になっていきそうだ。

□OCZのホームページ(英文)
http://www.ocztechnology.com/
□関連記事
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【2月5日】【平澤】OCZ SSD「Apex」シリーズ
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【2008年8月1日】【特別レポート】128GBで8万円を切るOCZのSSD「Core」を試す
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(2009年4月2日)

[Reported by 平澤寿康]


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