平澤寿康の周辺機器レビュー

第14回 Samsung SSD「MMDOE56G5MXP-0VB」
~高速ランダムアクセスで大容量の256GB SSD




Samsung 「MMDOE56G5MXP-0VB」

 Samsungから、MLCタイプのNANDフラッシュを採用する高速SSD「MMDOE56G5MXP-0VB」が発表された。

 シーケンシャルリード220MB/秒、シーケンシャルライト200MB/秒という高速なアクセス速度に加え、ランダムアクセス性能にも優れ、他社製SSDを凌駕するパフォーマンスを実現するとされており、かなり興味深い製品だ。今回、このSamsung製SSD「MMDOE56G5MXP-0VB」を試用する機会を得たので、パフォーマンス面を中心にチェックしていきたいと思う。


●見た目は従来のSamsung製SSDとほぼ同じ

 今回試用できた「MMDOE56G5MXP-0VB」は、MLC NANDフラッシュメモリを採用する、容量256GBの2.5インチSSDだ。見た目は、これまでにパーツショップなどで販売されていたSamsung製2.5インチSSDとほぼ同じで、シルバーの金属製ケースで覆われている。サイズは、もちろん9.5mm厚2.5インチHDDと全く同じで、2.5インチHDDからの交換用途として全く問題なく利用できる。

 接続インターフェイスはシリアルATA IIを採用。重量は82.5g(実測値)と、SSDとしてはほぼ標準的な重さだ。

 このMMDOE56G5MXP-0VBの最大の特徴となるのが、非常に高速なアクセス速度だ。SAMSUNが発表している数値では、シーケンシャルリードが220MB/秒、シーケンシャルライトが200MB/sと、SLC NANDフラッシュ採用のSSDにも迫る速度が公表されている。リード速度に関しては、Intelの「X25-M Mainstream SATA SSD」や、OCZの「Apex」シリーズにやや劣ってはいるものの、ライト速度は大きく凌駕している。また、“全面的な性能でベストなSSD”としていることから、おそらくランダムアクセス性能についてもかなりの自信があるものと思われる。

 ちなみに、SamsungはMMDOE56G5MXP-0VBの仕様について、コントローラおよびNANDフラッシュメモリに至るまで全て自社開発しているという点を除いて、詳しく発表していない。とはいえ、これだけの速度を実現していることを考えると、8チャンネル以上の並列アクセスを行なってることはまず間違いないだろう。

シルバーの金属製ケースが利用されており、見た目は従来のSamsung製SSDとほとんど同じだ サイズは2.5インチHDDと全く同じだ 厚さは9.5mm。ノートPCのHDD交換用として問題なく利用できる
接続インターフェイスはシリアルATA IIだ 重量は82.5g(実測値)と、SSDとしては標準的な重さだ

●搭載チップは全てSamsung製

 次に、内部の基板の構造を見てみよう。

 基板表には、コントローラチップ「S3C29RBB01-YK40」と、キャッシュ用と思われる1GbitのDDR SDRAM「K4X1G323PD-8GC6」、そして刻印のないMLC NANDフラッシュメモリが6個搭載されている。また裏面には、表面と同じMLC NANDフラッシュメモリが10個搭載されている。

 16個のチップで256GBを実現しているので、MLC NANDフラッシュ1チップの容量は128Gbit。Samsung Semiconductorのホームページを見る限り、容量128GbitのMLC NANDフラッシュは「K9MDG08U5M」のみが掲載されており、これが採用されている可能性がある。とはいえ刻印がないことから、新規のチップという可能性も否定できないため、ここではチップの種類について断言しないことにする。

 ちなみに、MLC NANDフラッシュチップが計16個搭載されていることから、並列アクセスは8チャンネルまたは16チャンネルのどちらかと考えていいだろう。

基板表面。左にコントローラチップ「S3C29RBB01-YK40」と、キャッシュ用と思われる1Gbit DDR SDRAM「K4X1G323PD-8GC6」がある。MLC NANDフラッシュチップは6個搭載されている 基板裏面。こちらにはMLC NANDフラッシュチップを10個搭載。表と合わせ計16個搭載する

●非常に優秀なパフォーマンス

 では、パフォーマンスをチェックしていこう。ちなみに、今回からテスト環境を変更している。マザーボードをIntel P45搭載のものに変更するとともに、OSもWindows Vista Ultimate SP1にしている。そのため、過去の記事の結果とは直接比較できない点はあらかじめご了承願いたい。詳しいテスト環境は下に示すとおりである。

 また、利用したベンチマークソフトも、「CrystalDiskMark 2.2.0」と、「HD Tune Pro 3.50」に変更した。さらに、これまでHD Tune 2.55でリードのみを計測していたが、HD Tune Pro 3.50ではランダムアクセスも含めてリードとライトを計測するとともに、それぞれブロックサイズを64KB、512KB、8MBの3種類に変更して計測するようにしている。

 比較用として、IntelのSLC SSD「X25-E Extreme SATA SSD」(32GB)と、同じくIntelのMLC SSD「X25-M Mainstream SATA SSD」(80GB)、そしてOCZの「OCZ Apex」(120GB)の結果も併せて掲載する。

 ただし、X25-Mの結果のうち、ライト速度が以前計測したものと比較して大きく落ちてしまっている。今回からテスト環境を変更したのは、この現象の原因を見極めようとしたためだ。従来の環境で改めて計測したところ、ライト速度が大幅に低下していた。そこで、マザーボードを交換したりOSを再導入して試したところ、マザーボード交換直後では速度が向上したものの、その直後またすぐに速度が低下するという状況であった。また今回は、X25-Mを3個体用意して試したが、全ての個体において同じ結果であった。おそらく、SSD側のコントローラの書き込みアルゴリズムなどが要因で、ある程度の期間使用すると速度が低下する場合があるのかもしれないが、今回は原因の特定には至らなかったため、ライト速度の低下した結果を掲載する。

 では、Samsung 「MMDOE56G5MXP-0VB」のテスト結果を見ていこう。まず、CrystalDiskMark 2.2.0の結果は、発表された数値には届いていないものの、シーケンシャルリードが216MB/秒(100MB時)、シーケンシャルライトが202MB/秒(1,000MB時)と、非常に良好な結果が得られた。リード速度こそ、他のSSDにやや劣ってはいるものの、ライトはSLCモデルのIntel X25-Eに肉薄しており、非常に優秀だ。ただし、ランダムライトの落ち込みはそこそこ大きい。

 次に、HD Tune Pro 3.50の結果だ。リードに関しては、ややブレも見られるが、おおむね200MB/秒を上回っていることがわかる。それに対しライトの結果は、かなり大きなブレが見られる。また、RAID 0の効果が現れているOCZ Apexにアベレージでかなり離されている。このライト速度の落ち込みは、実際に使用する上で弱点になる可能性がある。

 最後に、HD Tune Pro 3.50のランダムアクセスの結果だ。1Gbitのキャッシュを搭載しているとはいえ、X25-Mのようにランダムリードよりランダムライトが優れる場合があるという現象はみられない。また1MBやRandomでは、キャッシュがあふれてしまうためか、大きく落ち込んでいる。とはいえ、OCZ Apexのような極端な落ち込みとはなっていない。もちろんX25-Mに比べると、まだ改善の余地はあるように思うが、書き込みが頻発した場合にレスポンスが一気に落ちると感じることは、あまりないと考えていいだろう。

 ちなみに、前回、OCZ Apexの高速性のみを見て高評価したが、今回のテストでランダムライト性能が大きく低下するという弱点が判明したため、評価は少々変える必要がある。前回の記事で、読者のみなさんにOCZ Apexに関して実際と異なる印象を与えることになってしまったことを、ここでお詫びしたい。SSDの評価方法については、今後もさまざまな手段を試し、正しい評価が得られるように努めたい。

・テスト環境
CPU:Core 2 Quad Q8200
メモリ:PC2-6400 DDR2 SDRAM 4GB
マザーボード:GIGABYTE EP45-UD3R
ビデオカード:Radeon HD2400 PRO
OS:Windows Vista Ultimate SP1

●ベンチマーク結果

Samsung 「MMDOE56G5MXP-0VB」
100MB 1,000MB
8MB Read 8MB Write
512KB Read 512KB Write
64KB Read 64KB Write
Random Read Random Write

Intel 「X25-M Mainstream SATA SSD」(MLC)
100MB 1,000MB
8MB Read 8MB Write
512KB Read 512KB Write
64KB Read 64KB Write
Random Read Random Write

Intel 「X25-E Extreme SATA SSD」(SLC)
100MB 1,000MB
8MB Read 8MB Write
512KB Read 512KB Write
64KB Read 64KB Write
Random Read Random Write

OCZの「OCZ Apex」(MLC、内部RAID 0)
100MB 1,000MB
8MB Read 8MB Write
512KB Read 512KB Write
64KB Read 64KB Write
Random Read Random Write

●全方位で優れた性能

 MMDOE56G5MXP-0VBは、いくつか弱点も見られるものの、全体的には優秀なパフォーマンスが発揮されている。SLCフラッシュ採用のX25-Eは性能的に別格だが、現時点でMLC SSDの中から性能重視で選択する場合の有力候補となるのは間違いないだろう。

 ただし、日本サムスンはSSDについて、日本国内では法人向けにのみ販売しており、個人向けへの販売は行っていない。そのため、MMDOE56G5MXP-0VBについても、Samsungが直接個人向けに販売する予定はないそうだ。加えて、法人向けへの出荷時期や価格についても未発表となっている。これだけ魅力のあるSSDであるだけに、個人向けへの市販の予定がないというのは非常に残念だ。

 とはいえ、秋葉原などのパーツショップでSamsung製SSDがバルクで普通に販売されていることを考えると、MMDOE56G5MXP-0VBもバルクで販売される可能性は十分にあるだろう。その時の販売価格は、海外のWebパーツショップで定価が894.24ドル(US)とあることから、10万円を下回る可能性が高そうだ。そうなると、容量を考慮すれば、IntelのX25-Mに十分対抗できる存在となるはずで、登場が待ち遠しい製品だ。

 また、今回のテストを通して、従来高く評価していたX25-MやOCZ Apexには欠点も見えてきたことも踏まえると、MMDOE56G5MXP-0VBについても、店頭に登場するようであれば、長期間使用するなど、これまでとは異なった方法でも試してみたいと思っている。

 SSD自体は、まだ本格普及が始まる前の、まさに発展途上の段階で、次々に優れた新製品が登場する状況が続いており、デバイスとしては非常に面白い存在だ。ただ、そういう状況だからこそ、買い時が難しい製品であることも事実。そのため、SSDはまだ発展途上の製品ということをしっかり理解した上で購入すべきだろう。

□Samsungのホームページ(英文)
http://www.samsungssd.com
□関連記事
【2月5日】【平澤】OCZ SSD「Apex」シリーズ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0205/hirasawa013.htm
【2008年8月1日】【特別レポート】128GBで8万円を切るOCZのSSD「Core」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0801/ocz.htm

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(2009年2月12日)

[Reported by 平澤寿康]


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