MLCフラッシュを採用する低価格SSDは、低価格に大容量を実現できる反面、アクセス速度が遅いというハンデがあったが、マルチチャンネルでフラッシュメモリにアクセスするなどの仕様面の改善が進んだことで、速度面の問題は大きく改善。そして、2008年には多くのメーカーから、MLCフラッシュ採用の高速SSDが続々登場するようになった。 今回取り上げるOCZの「Apex」シリーズも、MLCフラッシュを採用するSSDながら、非常に高速なアクセス速度を実現した製品だ。シリーズには、60GB、120GB、250GBと容量の異なる3モデルがラインアップされているが、その中から容量120GBのモデルを取り上げる。 ●超高速アクセスの秘密はRAID 0 OCZ Apexシリーズの最大の特徴は、シーケンシャルリード270MB/sec、シーケンシャルライト160MB/secという、MLCフラッシュを採用するSSDとして圧倒的に高速なアクセス速度を実現している点にある。Intel製の超高速SSD「X25-M Mainstream SATA SSD」が登場した時も、その速度に非常に驚いたが、OCZ ApexシリーズはIntelのX25-Mシリーズをも上回るアクセス速度が実現されている。ここまでの速度が実現されていると、もはやMLCフラッシュを採用するSSDは遅い、という図式は当てはまらなくなったと考えていいだろう。 この、高速なアクセス速度を実現する仕組みは、いたって単純だ。それは、内部でSSDを2系統(各系統の容量は、全容量の1/2)に分け、それらをRAID 0構成で1つのドライブとして確保するというもの。RAID 0は、ドライブへのアクセスを、接続する全ドライブに対し並列で行なうことで、アクセス速度を高める技術。例えば、ソニーの「VAIO type Z」のように、実際に2つのSSDを搭載し、それをRAID 0構成で運用することで非常に高速なアクセス速度を実現しているノートPCも存在するが、OCZ Apexシリーズでは、それとほぼ同じ仕組みを単体で実現しているわけだ。 とはいえ、利用者は内部がRAID 0構成になっているという点を意識する必要はない。特別なドライバも必要なく、通常のSSDと同様、PCに接続するだけでストレージドライブとして利用できる。また、RAID環境の変更なども行なえない。 ボディの外観は、OCZ製の従来のSSDとほとんど同じだ。本体サイズは、厚さ9.5mmの2.5インチHDDと全く同じ。底面や側面に用意されている固定用のネジ穴も、2.5インチHDDと全く同じ位置に用意されているので、2.5インチHDDの代わりとして違和感なく利用できる。 接続インターフェイスはSATAを採用。「OCZ CORE V2」シリーズなど、OCZ製SSDの一部のモデルでは、SATAとUSB 2.0のデュアルインターフェイスを採用する製品も存在しているが、ApexシリーズではUSBポートは用意されていない。 本体重量は95g(実測値)と、こちらも従来のOCZ製SSDとほぼ同じ。一般的な2.5インチHDDの重量と比較してもほとんど変わらないため、HDDからの交換による軽量化は全く期待できないことになる。
●SSDコントローラ2個に加え、RAIDコントローラも搭載 では、内部の構造を見てみよう。分解自体は、本体底面の4本のネジを外すだけと非常に簡単に行なえる。ただし、その4本のネジのうち1本はシールで封印されており、そのシールをはがすと保証が受けられなくなるので要注意だ。 基板自体は、これまでいくつか紹介してきたMLCフラッシュ採用SSDの基板と同じように、NANDフラッシュメモリチップが、基板表裏それぞれに8個ずつ、計16個搭載されている。採用されているチップは、Samsung製の「K9HCG08U1M-PCB0」だ。 また、低価格SSDで広く採用されている、JMicron Technologyのコントローラチップ「JMF602」が2個搭載されており、それぞれに8チップずつNANDフラッシュメモリチップを接続して2系統のSSDを確保。そして、同じくJMicron Technology製のRAIDコントローラ「JMB390」によって、2系統のSSDをRAID 0構成で1ドライブとしてアクセスできるようにしているわけだ。 ●リード241MB/sec、ライト167MB/secを記録 では、実際のパフォーマンスをチェックしていこう。今回は、ベンチマークソフトとして、CrystalDiskMark 2.2.0と、HD Tune 2.55を利用した。また、比較用として、JMF602を搭載する「OCZ CORE」シリーズの120GBモデルの結果も掲載しておく。ただし、今回用意したOCZ COREは初期モデルで、速度が向上した「OCZ CORE V2」ではない点はご了承願いたい。 まず、CrystalDiskMark 2.2.0の結果を見ると、シーケンシャルリードで241MB/sec、シーケンシャルライトで167MB/secと、OCZ COREと比較するまでもなく、圧倒的な速度が記録された。公称の270MB/secには届いていないものの、これでも十分に高速だ。また今回は、データサイズを100MBと1,000MBの2種類で計測したが、どちらもほぼ同じ結果が得られている。 ただ、OCZ CORE V2でも、リード170MB/sec、ライト98MB/sec出ていることを考えると、リードは300MB/secぐらいまで行ってもおかしくないはずで、完全に性能を引き出せているわけではないとも感じられる。そのため、OCZ CORE V2シリーズのような、ファームウェアを更新した高速モデルの登場も期待できそうだ。 ランダムライトに関しては、ほとんど速度が向上しておらず、ほぼSSD 1台分のパフォーマンスしか発揮されていないといった感じだ。2台のSSDを利用してRAID 0を構築した場合でも同じような傾向となっていることからも、RAIDコントローラが要因ではないはず。MLCフラッシュの書き込み速度の遅さと、JMF602の特性による複合的な要因で、RAID 0環境でもランダムライト性能はあまり向上しないものと考えた方がよさそうだ。 次に、HD Tune 2.55の結果だ。RAID 0環境ということも踏まえて、ブロックサイズを標準の64KBだけでなく、4KB、128KB、512KB、8MBでも測定した。ブロックサイズが64KBの時は、やや速度が遅いだけでなく、途中でガクッと速度が落ちている。また、4KBでは大幅に速度が低下してしまい、波形もノコギリ状となった。それに対し、128KB、512KB、8MBではほぼ同じ波形となり、速度も最大234MB/secを記録している。そのため、ブロックサイズ128KB以上の結果が、本来のパフォーマンスを示すものと考えていい。
・CrystalDiskMark 2.2
・HD Tune 2.55
今回取り上げたOCZ Apexシリーズの120GBモデルは、実売価格が45,000円前後だ。OCZ COREシリーズをはじめ、他社製も含めてJMF602採用SSDの120GB/128GBモデルは、すでに実売価格が2万円台に下落していることを考えると、さすがに少々高いという印象だ。とはいえ、シーケンシャルアクセス時にはIntel製SSD X25-Mシリーズに匹敵、または上回る速度が実現されており、速度を重視したい場合には十分な魅力がある。加えて、250GBと大容量のモデルがラインナップされている点も見逃せない。アクセス速度重視、また容量重視でSSDを選択する場合には、最優先で検討すべき製品であることは間違いないだろう。 □OCZ Technologyのホームページ(英文) (2009年2月5日) [Reported by 平澤寿康]
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