このところ、USB接続で利用できる小型の液晶ディスプレイが徐々に増えている。従来は、デジタルフォトフレームをPCのサブディスプレイとして活用できるようにしたものが中心だったが、最近では当初からPCのサブディスプレイ用途として登場する製品が増えてきた。しかも、電源を接続する必要なく、USBバスパワーで動作する製品が中心で、とにかく手軽に利用できるサブディスプレイとして、徐々に注目が集まっている。そこで今回は、センチュリーから登場した「plus one LCD-8000U」を取り上げ、使い勝手などを紹介していこう。 ●USB接続だけで、すぐにサブディスプレイとして利用可能 今回取り上げるセンチュリーの「plus one LCD-8000U」(以下、LCD-8000U)は、2008年に発売した「plus one LCD-4300U」(以下、LCD-4300U)の上位に位置付けられている製品だ。 LCD-4300Uも、LCD-8000U同様、USB 2.0接続で利用できるPC用サブディスプレイとして位置付けられている製品だが、搭載される液晶のサイズは4.3型とかなり小さく、また解像度も800×480ドットと、縦の解像度がかなり狭かった。 それに対し、新たに登場したLCD-8000Uは、液晶サイズが8型とかなり大きくなるとともに、解像度も800×600ドット(SVGA)に向上。液晶サイズの大型化と解像度の向上に加え、アスペクト比が4:3となったことで、サブディスプレイとしての使い勝手が大幅に向上している。 液晶サイズの大型化に伴って気になるのが、USBバスパワーで動作するかどうかという点だが、そこは心配無用。LCD-4300U同様、USBバスパワー動作が実現されており、USBケーブルでPCのUSBポートに接続するだけですぐに利用可能となる。 この、USBバスパワーで動作するという特徴によって、利用の幅がかなり大きく拡がっている。例えば、ノートPCと一緒に持ち歩けば、外出先でもデュアルディスプレイ環境が簡単に実現できる。最近では、ノートPCを利用してクライアントに商品の説明などを行なうことは普通に行なわれているが、ノートPCの操作時とクライアントに画面を見せる時にノートPCをくるくる動かすのはかなり面倒。しかしLCD-8000Uがあれば、LCD-8000Uの画面をクライアントに見せておけば、ノートPCの向きをいちいち変更せずとも説明が行なえる。しかも、液晶サイズが8型と大きいため、見やすさという点でも申し分ない。 LCD-8000Uの本体サイズは、210×32×151.5mm(幅×奥行き×高さ)と、ネットブックよりひとまわりほど小さい。重量は実測値で497g。驚くほど軽いということはないものの、持ち歩きもそれほど苦にはならないだろう。 対応OSは、Windows XP(SP2以降)/Vista、そしてMac OS X 10.4.11~10.5.5。Windows XP/VistaだけでなくMac OS Xにも対応している点は魅力だ。また、動画再生にも対応するし、Windows VistaではWindows Aeroの表示も行なえる。ただし、USB接続のため、マザーボードBIOSの表示などは行なえない。また、ハードウェア依存のAPIも非サポートのため、Direct 3DやOpenGLベースのアプリケーションなどは利用できない。 ちなみに、簡易サブディスプレイ機能を持つデジタルフォトフレームでは、Windows XPのみ対応だったり、Windows Vistaに対応していてもWindows Aeroの表示が行なえない、動画が再生できないという製品が多い。さらに、後ほど紹介するが、表示能力にもかなり大きな差がある。こういった点からも、全く新しい性質の製品と言える。
●表示品質はそこそこ 搭載されている液晶パネルは、既に紹介したように、800×600ドット表示に対応する8型のTFT液晶だ。この製品以外でも、小型の液晶ディスプレイなどで広く採用されている。パネル表面はノングレア(非光沢)処理が施されている。 表示品質は、ノートPCの液晶パネルと比較すると、やや劣るという印象だ。筆者が普段利用している富士通「FMV-BIBLO MG/A75N」には、光沢処理が施され鮮やかな発色が特徴のスーパーファイン液晶が搭載されており、それと比較するのはやや酷かもしれないが、全体的にややくすんだ発色という印象を受ける。とはいえ、画像ではなく文字表示中心であれば、表示品質はまったく問題ではない。 輝度は最大250cd/平方mと、必要十分。ちなみに輝度は、側面のスライドスイッチで3段階に調節可能となっている。 視野角は、上下120度(上50度、下70度)、左右140度(左70度、右70度)となっている。実際に上下の視野角はやや狭く、明るさや色合いの変化も顕著に感じられるが、全体的には極端に視野角が狭いということはなく、ほぼ気にならない範囲だ。
●縦置きにも対応 背面には、収納式のチルトスタンドが取り付けられており、基本的にはそのチルトスタンドを引き起こして利用することになる。画面の角度は3段階に調節可能。また、チルトスタンドの取り付け位置を変更することで、縦置きにも対応できる。 このチルトスタンドは、直径3mmほどの針金を折り曲げただけのもので、角度調節もチルトスタンドの固定位置を上下にずらすことによって実現する簡易的なもの。今回は発売前のため入手できなかったものの、3月上旬に専用のホルダースタンドの発売が予定されている。こちらを利用すれば、設置の自由度は一気に向上することになるだろう。 横置き、縦置きどちらにも対応することで、縦置き時には画面表示を回転させる必要があるが、こちらはドライバと同時に導入される設定ツールによって行なえる。タスクトレイに表示される設定ツールのアイコンをクリックするとメニューが表示され、表示画像の回転や表示色数の変更などが行なえる。メニューには解像度を変更する項目も用意されているが、こちらは800×600ドット以外は選択できないようになっている。 メニューには、「移動」、「ミラー」、「無効」という項目もあるが、これは表示モードの切替だ。移動は、デュアルディスプレイそれぞれが独立した領域を持つモードで、ミラーは同じ画面を表示するモードだ。また「移動位置」は、移動モード時の設置場所が、メインのディスプレイに対してどの位置にあるかを設定する項目で、上下左右の4種類から選択する。無効は、LCD-8000Uの動作を無効にするもので、画面のプロパティでディスプレイの接続を切るのと同じと考えていい。 設定ツールは、豊富な機能が備わっているというわけではないものの、必要となる機能は網羅されており、いちいち画面のプロパティを呼び出す必要もないため、十分便利に扱える。
●表示能力は、接続するPCのCPUパワーに左右される 従来からある、簡易サブディスプレイ機能を持つデジタルフォトフレームでは、映像データを直接USBで転送する仕様のため、USBのデータ転送速度の遅さから、ウィンドウを動かすだけでももっさりとした動きになったり、動画が表示できない、表示できてもスムーズに再生できない、などの問題がある。しかしLCD-8000Uでは、SVGA解像度を実現しているにも関わらず、ウィンドウを動かしてももっさりという印象は全くないし、動画も非常にスムーズに表示できる。このような快適な表示能力が実現されているのは、DisplayLink製の「DL-120」というチップを搭載しているからだ。 DL-120のドライバには、USB液晶ディスプレイに表示する映像データを高速に圧縮する機能が盛り込まれており、圧縮された映像データがUSB経由でDL-120に転送される。圧縮されたデータを受け取ったDL-120は、そのデータを伸張して本来の映像データに戻し、液晶パネルに表示する。こういった手法を利用することによって、転送速度の遅いUSB経由でも、もたつきなどを感じさせないスムーズな画面表示を可能としている。ちなみに、DL-120に盛り込まれている圧縮方式は、独自のLossless圧縮方式となっている。つまり、圧縮によって映像データが劣化することもない。
ただ、このような手法を採用しているために、表示能力は接続するPCのCPUパワーに大きく左右される可能性が高い。そこで、いくつかPCを用意して、動画再生時にどの程度のCPUパワーが必要となるのか検証してみた。用意したPCは、テストに利用している自作デスクトップPCと、筆者がメインで利用しているノートPC(FMV-BIBLO MG/A75N)、そしてネットブック(NEC LaVie Light BL100/R)の3台。それぞれのスペックは下に示したとおりだ。テストでは、SDクオリティ(640×480ドット、WMV9、ビットレート1,156kbps)およびHDクオリティ(1,280×768ドット、WMV9、ビットレート4.66Mbps)の動画ファイルを用意し、それらをプライマリディスプレイおよびLCD-8000U上で再生させた場合のCPU使用率をチェックした。動画再生には、グレテックジャパンの「GOM PLAYER」を利用した。また、LCD-8000Uの動作モードは移動モードで行なった。 □テスト環境
結果を見ると、CPUパワーに応じて素直な結果が得られていることがわかる。Core 2 Quadを搭載する自作デスクトップでは、LCD-8000U上でHD動画を再生させた場合でもCPU使用率は25%前後で推移し、実際に表示されている映像もコマ落ちなど全く感じることなく非常にスムーズだった。また、BIBLO MG/A75Nでも、HD動画再生は十分スムーズだったが、CPU使用率は75%前後となっており、パワー的にかなりギリギリという印象。SD動画再生時でも60%弱とかなり高く、やはりCore 2 Quadに比べるとかなり厳しいことがわかる。 それに対し、Atom N270搭載のLaVie Light BL100/Rでは、CPUパワーの低さが影響し、かなり厳しい結果となった。SD動画の再生はスムーズだったものの、その時のCPU使用率は95%から100%ほどを推移し、SD動画の再生が精一杯。一応HD動画も再生させてみたが、プライマリディスプレイでもスムーズに再生できなかったため、テストから省いた。 動画再生自体にもCPUパワーが割かれることを考えると、かなり条件の厳しいテストと言っていいだろう。つまり、ここまでパワーが必要のないアプリケーションであれば、楽に利用できることになる。事実、メーラー、メッセンジャーソフト、Webブラウザ、Office系ソフトなど、テキストや2D画像表示が中心のアプリケーションは、LaVie Lightでも十分快適に利用できた。LCD-8000Uの動作推奨環境が、CPUはCore 2 Duo、メモリ容量は2GBとされていることも合わせると、LaVie Lightでここまで利用できたことは十分評価に値するだろう。 □テスト結果
このようにLCD-8000Uは、BIOS表示を行なうメインディスプレイとして利用できなかったり、ハードウェア依存のAPIに対応しない、表示能力がPCのCPUパワーに大きく左右されるなど、一部制約はあるものの、手軽に利用できるサブディスプレイとしてかなりの魅力がある。また、USB接続ながら、なかなか快適な表示環境を実現している点や、USBバスパワーのみで動作するため、持ち歩いて利用するサブディスプレイとして活用できる点なども見逃せないポイントだ。 もちろん、800×600ドットという解像度は、実際に活用しようとすると狭いのも事実。とはいえ、メインディスプレイとして利用するものではないため、この点も妥協できる範囲内。メッセンジャーソフトやRSSリーダーを常駐させておくスペースとして利用するならかなり重宝するはずだ。手軽に利用できるサブディスプレイを探している人や、従来モデルを、液晶のサイズや解像度の点から見送った人などにおすすめしたい。 ちなみに、DisplayLinkは、2月24日(米国時間)に最新ドライバのベータ版を配布する予定となっている。このベータ版ドライバで、機能面が大きく強化されるようであれば、そちらも追って報告する予定だ。 【2月26日追記】ベータ版ドライバのレポートはこちらに掲載されています。 □センチュリーのホームページ (2009年2月24日) [Reported by 平澤寿康]
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