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スタートボタンをターミネイトするWindows 7




 Windows 7のタスクバーは、Vistaのそれと比べて10ドット分幅が広くなった。それによって、右端には、時刻だけでなく、日付も表示されるようになっている。また、タスクバーとしての使い方も変更され、従来のWindows使いの作法的なものに、なんらかの影響を与えそうでもある。

●タスクバーの役割

 マイクロソフトが1月末に横浜で開催したtech-days 2009で、いくつかのセッションを受講してきた。その1つに、タスクバーを活用したアプリケーションの開発に関するものがあった。

 そこで、いくつかの興味深い数字が紹介された。

14以下 1セッションで開かれるウィンドウの数
0.21% タスクバーをデスクトップの右端に表示しているユーザー
4.97% タスクバーを自動的に隠す設定にしているユーザー

別の見方をすれば、多くのユーザーは、ほとんどデフォルト設定のままでタスクバーを使っているということらしい。

 Windows 7の新しいタスクバーは、こうした背景に基づき、デフォルト状態でも使いやすく、そして、大きなGUIの変更を意識しなくてもいいように改良が加えられている。

 ぼく自身は、タスクバーをデスクトップの上部に配置している。その理由は、各ウィンドウのメニューやリボン、ツールバーボタンなどがウィンドウ上部に集中しているため、操作に際してポインタの移動距離が少なくなるからだ。

 何かアクションを起こしたいときにはマウスを上に振ればそれでいい。タスクバーが下にあると、ウィンドウ内での操作と、ウィンドウ外の操作で、ポインタを移動させる方向が違うことに違和感を感じるのだ。

 Windows 7でも、タスクバーは上に移動して使い続けているが、今のところ問題は感じていない。

●Windows 7はドキュメントよりプログラムがお好き

 さて、新しくなったタスクバーだが、すぐに気がつくのは、ボタンにドキュメント名が表示されなくなったことだ。また、起動していないプログラムと起動したプログラムが混在している。つまり、タスクバーは、起動済みプログラムの切り替えの役割をすると同時に、未起動のプログラムを起動する役割を併せ持ったということだ。

 未起動のプログラムを起動する役割を持っていたのは、従来はクイック起動だった。その機能を統合したようにも見えるが、実際には完全な置き換えにはなっていない。というのも、クイック起動には置くことができた接続先ショートカットやVBS拡張子のスクリプトなどを置くことができなくなっているからだ。また、プログラムや文書のショートカットを直接置くこともできない。これには、ちょっと困ったが、新規にツールバーを追加すればなんとかなりそうだ。

 さて、Vistaまでは、開いているウィンドウごとにタスクバーボタンが用意され、タスクバーの横幅が足りている限り、ボタンがウィンドウごとに個別に表示され、横幅が足りなくなると、同じプログラムが開いているウィンドウはグループ化されていた。だが、新しいタスクバーは、その横幅が余っていても、プログラムごとに必ずグループ化され、1つのプログラムが複数のボタンを用意することはなくなった。

 これには賛否両論あるだろう。なぜなら、ユーザーにとって大事なことは、今、扱いたいドキュメントが、どのプログラムに関連づけられているではなく、そのドキュメントの内容だからだ。「研修旅行参加者名簿」が、Excelで作られているのかWordで作られているのか、あるいはPDFなのかといったことは、本当はどうでもいいことだ。つまり、新しいタスクバーは、ドキュメントオリエンテッドな考え方を放棄する方向にあるともいえる。

 さて、タスクバー上のボタンにポインタをホバーさせると、そのウィンドウのサムネールが表示される。1つのプログラムが複数のウィンドウを開いている場合は、複数のサムネールが表示される。さらに、サムネールにポインタを移動させてホバーさせると、実際にデスクトップ上のウィンドウが仮表示され、クリックすればそのウィンドウにタスクが切り替わる。

 ここでいうプログラムとは、同じアプリケーションIDを持つプログラムであり、それがマルチプルドキュメントインターフェース(MDI)だろうが、シングルドキュメントインターフェース(SDI)だろうが関係ない。それどころか、開発時に同じアプリケーションIDを意図的に割り当てておけば、異なる複数のプログラムを、1つのタスクバーボタンにまとめることもできる。

 たとえば、Internet Explorer 8はタブとウィンドウを区別することなく、タスクバーボタンとしては1つにグループ化され、特定のページがどのウィンドウ、どのタブで開かれているかを意識することなく、目的のページに切り替えることができる。

 困るのは、サムネールの内容の更新タイミングが、アプリケーションによって異なる点だ。IE8のような新しいプログラムでは、ダイナミックにサムネールの内容が更新されるようだが、たとえば、Outlookのようなプログラムでは実際にタスクを切り替えてウィンドウをアクティブにしないと、現時点でのウィンドウ内容がわからない。たとえば、実際には数十通の新着メールが届いているのに、サムネールやデスクトップ上の仮表示は、ウィンドウを最小化させたときのままなのだ。きっと、ウィンドウの内容が変わったときには、そのことを知らせるメッセージを出すようにプログラムが作られていなければならないということだろう。プログラムがそんな風に作ってあれば、タスクバーボタンにオーバーレイアイコンやプログレスバーを出すといったことができる。

 たとえば、タスクバーボタンのアイコンに重ね合わせるように×印や、感嘆符などのアイコンを付加することができる。また、長時間処理に際して、その進捗度をアイコン上にプログレスバーとしてオーバーレイすることもできる。将来登場するであろうWindows 7対応アプリケーションは、こうしたタスクバーの新機能をうまく使うようなコードが実装されることになるはずだ。その結果、現在、通知領域を使って常駐しているようなプログラムも、タスクバーに引っ越すものが多くなるはずだ。つまり、新しいタスクバーはクイック起動とともに通知アイコンの一部も引き受けることになるのだろう。

●新タスクバー=クイック起動+通知領域+旧タスクバー−α

 タスクバーには未起動のプログラムを配置しておけると書いた。それがクイック起動的な使い方になるわけだが、この操作は「ピン留め」と呼ばれることになるようだ。特定のプログラムを起動すると、タスクバーボタンが表示されるが、そのボタンを右クリックすると、ジャンプリストと呼ばれるショートカットメニューが表示される。そこでピン留めを指示すれば、ボタンはプログラムを閉じたあともタスクバーに残り、恒久的に表示されるようになる。

 さらに、ジャンプリストには多くの機能が用意されている。たとえば、IE8であれば履歴、ワードやエクセルであれば最近使った文書、エクスプローラであれば、頻繁に開くフォルダなどがジャンプ先のリストとして表示され、必要な文書に素早くアプローチできる。また、アプリケーション側でコマンドのリストを表示し、ユーザーがダイレクトに実行するような使い方も想定されている。

 でも、ここで大事なことは、いくらジャンプリストが有用で便利なものであったとしても、それを使うには、ユーザーが、その文書がどのプログラムで作られたものなのかを知っていなければならないということだ。ファイルを扱うアプリケーションは少なくないだけに、ちょっと気になる点でもある。ここでもまた、ドキュメントオリエンテッドな考え方が軽視されている。

●スタートボタンは終了ボタン

 いろいろ文句は書いたものの、新しいタスクバーはけっこう気に入っている。たとえばバーの右端、日時表示の右側部分にポインタをホバーさせれば、開いているウィンドウが透明になってデスクトップが素通しで見えるようになり、クリックすればすべてのウィンドウが最小化される。ちょうど、現在のWindowsキー+Dで起こっていたことがより洗練されたGUIで提供されている。

 これらの拡張デスクトップの機能はAeroがオンでないと使えない。今まではフリップ3Dくらいしか、その機能をアピールすることができなかったAeroも、サムネール表示とウィンドウの仮表示などで大活躍だ。これらを体験してしまうと、もう、Aeroがオフの環境には戻れなくなってしまう。

 こうして新しいタスクバーを駆使するようになると、スタートボタンをクリックしなければならないことがほとんどないことに気がつく。シャットダウンや再起動はスタートボタンを経由することになるが、そんなことは週に一度あるかないかだ。スリープとそこからの復帰を繰り返して使う日常的な運用においてはスタートボタンをほとんど使わない。よく使うプログラムをタスクバーにピン留めしておけば、スタートボタンを使う機会がなくなってしまうのだ。

 せっかくタスクバーが10ドット広がり、はみ出さなくなったというのに皮肉な話だ。スタートボタンは、Windows 95がリリースされたとき、ビル・ゲイツ氏がすこぶる気に入っていた機能だと聞いたことがある。氏の引退とともに、そのお気に入りのスタートボタンも役割を終えようとしているということなのだろうか。

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【1月16日】【山田】かつてない完成度のWindows 7ベータ
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(2009年2月6日)

[Reported by 山田祥平]


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