山田祥平のRe:config.sys

WANでつながる時代のドコモの戦略




 普段持ち歩くモバイル機器は少なければ少ないほどいい。理想は携帯電話だけですべてがまかなえることだが、さすがにそうはいかない。だからこそ、PCを持ち歩く。そのシームレスな通信のために、いつもの携帯電話をリーズナブルな方法で使いたい。それが「つながる」ということだ。

●WANモデルにはb-mobile3Gで決まり

 前回のVAIO type P WANモデルのレポートで、IIJ Mobileとb-mobile3GのFOMAカードを装着してテストをした結果を書いたが、IIJモバイルでは規約で同サービスの提供端末以外での使用が禁じられていることを読者の方からご指摘いただいた。確認不足で、各方面にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。

 具体的には第18条(機能の制限)として「契約者は、当社が指定する移動無線機器等以外の通信手段を用いたIIJモバイルサービス/タイプDの利用、及びIIJモバイルサービス/タイプDにおいて当社が指定するダイヤルアップ接続の接続先以外への接続による通信を行なってはならないものとします」とあり、明確に禁止が記述されている。

 ちなみに、b-mobile3Gに関しては、規約にも関連記述は見当たらない。日本通信に問い合わせたところ、自己責任となりサポートはないが特に禁じてはいないということだった。だから、WANモデルの購入者は、ぜひ、b-mobile3Gの利用を検討してほしい。

●ドコモの画期的な料金改定

 さて、こうしたことを調べているうちに、VAIO type PのWANモデルの注文受付の開始日時が2月3日の13時に決定、14日からの出荷が発表された。WANモデルを待ちかねていたユーザーには朗報だ。

 さらに今週は、ドコモがびっくりするような内容を発表した。「パケ・ホーダイダブル」の通信に関し、PCやPDAの接続時は上限額なし、つまり青天井の料金体系を、4月1日からは上限を設定し月額13,650円とするという内容だ。

 これまで、ドコモのサービスを使ってPC等をインターネットに接続するためには「定額データプラン」を専用に契約し、別途、専用の端末を用意しなければ、経済的な負担があまりも大きすぎた。でも、4月以降は、手持ちの端末で通信をしても上限が13,650円となり、巨額のパケット料金におびえる必要はなくなる。

 決して安くはないし、値下げや各種割引なども期待したいところだが、これまでに比べればずいぶん安くなった。

 現在の「定額データプラン」は、月額上限額10,500円で、契約期間等に応じた割引がある料金体系になっている。今回の改定は、それより高くなるものの「定額データプラン」とは別に、手持ちの端末で「パケ・ホーダイダブル」を使っていたユーザーにとっては契約を1つにでき、実質的には13,650円からフルブラウザ使用時の上限額である5,985円を差し引いた7,665円がPC接続パケホーダイの付加価値価格となる。2年の継続利用を前提に割引を受けていたユーザーは、9,975円の違約金を払って解約するかどうか、悩ましい問題だ。

●携帯電話とPCがやっとつながり連携する

 7,665円という価格には、さまざまな付加価値がある。まず、必ず持ち歩いている携帯電話とは別に、データ通信専用の端末を持ち歩く必要がなくなること。携帯するデバイスの数が1つ減るということは、その機器の充電等に気を使わなくてすむようにもなる。

 USB端末を使っていたユーザーにとっては関係のない話だが、USB端末をPCに装着して認識させ、基地局の電波をつかまえるまでの時間が長く感じたことはないだろうか。一般の電話機端末を使えば常時基地局を捕捉し続ける。ただし、データ通信にしか使わないとはいえ、週に1~2回は充電が必要だ。そのわずらわしさから開放されるのがうれしいし、充電済みの端末を持ち出し忘れたという失敗もなくなる。

 その一方で、通信のたびに端末をPCになんらかの方法で接続しなければならない点や、VAIO type PのWANモデルのような機器が意味をなさなくなるというデメリットも考えなければならない。端末への接続手段としては、USBケーブルではなく、Bluetoothを使えば、接続のわずらわしさはなくなる。ただし対応端末は限られる。ドコモの最新機種ではBluetoothに対応していても、ダイヤルアップのためのDUNプロファイルを持たない端末も少なからずあるので注意が必要だ。

 まだ、開始前のサービスなので、「定額データプラン」で使われているような専用ソフトが必要になるのか、現状のようにプロバイダー契約をしなくても、ドコモのmoperaを使って無料でインターネット接続ができるのかどうか、速度の制限があるのかどうかなど、不明な点も多い。こればかりはサービスが始ってみないとわからないといったところだろうか。

●WAN元年に何が起こるか

 ドコモがこうした決断をした背景には、今年がWAN元年になる可能性があることも大きな理由になっているだろう。たとえば、UQコミュニケーションズは、2月からWiMAXの試験サービスを開始、年内の商用サービス開始を計画している。これもふたをあけてみないと、どのような使い勝手になるのかはわからないが、サービスの開始を待ち望んでいるユーザーも多そうだ。

 さらにネットブックのようなデバイスが、通信サービスとセットで売られ、ただでさえ廉価なデバイスが、さらに廉価に見えるような状況だ。

 こうした状況を、ただ、見ているだけでは、ドコモのネットワークのトラフィックは遠からず頭打ちになってしまうだろう。データ通信のリッチなトラフィックが、ごっそりと別の事業者にとられてしまうからだ。

 たまの電話と、1日数十通のメールでは、たいした金額にはならない。数千円分の通信料金を追加で払ってもらえるように仕向けるためには、携帯電話端末だけに閉じた世界では難しい。携帯電話だけで十分と思っていた多くのユーザーが、ちっともフルじゃないフルブラウザや、携帯ブラウザの表現力の限界に気がつき始めるのも時間の問題だ。

 デバイスは適材適所が原則だ。このままいくと、半端ではない数のサイトが携帯電話のようなプアな環境に最適化されていくのではないかと憂いていたぼくにとって、今回のドコモの決定は、ちょっと大げさだが、ある意味でパラダイムシフトであるといってもいい。まだまだ料金は高めだが、リーズナブルなサービスがないという理由だけで、ほぼ同じ機能を持つ端末を2種類持ち歩いていた理不尽な状況からは抜け出せそうだし、これを機会に、PCを外に持ち出し、モバイルで活用するユーザーが増えるきっかけになるかもしれない。「つながる」時代は、やっぱりこうでなくっちゃと思う。

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【1月23日】【山田】小さなVAIO type PをWANと7で大きく使う
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0123/config244.htm

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(2009年1月30日)

[Reported by 山田祥平]


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