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Microsoft基調講演レポート
~Windows 7 Betaの公開を発表

Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏

1月7日(現地時間) 開催

会場:Las Vegas Convention Center
   Sands Expo and Convention Center/The Venetian



 CES開幕前夜の恒例行事となっていたMicrosoftのビル・ゲイツ氏による基調講演。ご存じのとおり、ゲイツ氏が昨年6月をもって非常勤職へと退いたことを受け、本年からは同社CEOのスティーブ・バルマー氏へとバトンタッチされた。

●3つのスクリーンを融合~でもPCを通じて素晴らしい体験を

バルマー氏にとってCESの基調講演は初の経験。多くの人のアドバイス、メッセージを受けたので、それらの一部を公開する……というジョークスライド。次期大統領のオバマ氏やYahoo!のジェリー・ヤン氏の名前も

 大恐慌以来ともいわれる昨今の世界経済を受け、各社のカンファレンスでも経済状況を危惧するコメントが聞かれる今回のCES。だがバルマー氏は経済状況に対する不安を払拭すべく、「昨年は80億ドル以上を投資した。経済は悪い状況にあるが、アイデアの力とイノベーションが前へ進ませてくれるものである。我々の前にはさらに多くの機会が待ち受けている。」とし、Microsoftが、これまで以上に投資を続けることを力強く宣言した。

 そのさいに触れられた“先にある多くの機会”への取り組みとして、バルマー氏は3つのエリアを挙げた。

 1つは「3つのスクリーンの融合」で、これはPC、携帯電話、TVのことを指している。Microsoftは元々、PCをすべての家庭に浸透させるビジョンを持っていた。しかし、現実にはPCを持つ人は10億人程度で、50億人はPCを持ったことがない人がいる。例えばネットブックあたりは、次の10億人に対してアプローチするだろうが、もっと広範囲に広げて、毎年10億台以上が販売される携帯電話、やや進化が遅れたものの最近の進化がめざましいTVが、PC、TV、携帯電話の境界線を無くしていくだろうとしている。

 2つめのエリアは「自然なユーザーインターフェイス」である。今後2年のうちに音声による操作ができるようになり、さらに音声だけでなくジェスチャーや手書きなどの自然なユーザーインターフェイスを主流に。また、PC上での作業は今後もマウスやキーボードが使われるが、UIは、より自然なものであるよう変化しているだろうとしている。

 3つめのエリアは、バルマー氏が「Connented Experience」と呼ぶもの。これは以前のビル・ゲイツ氏の講演でもテーマになった言葉で、要するにPC、携帯、TVのようなデバイスがすべてクラウドを通じてスムースに人々をつなぐということである。そして、そのすべてをつなげるものの要はWindowsであるべきだとし、3つのスクリーンで機能するとした。

 今は電話などにも展開しているが、Windowsといえば皆さんは「PC」について考えるはず、とバルマー氏。良い性能、多数の選択肢、産業全体が一体となることで、PCとWindowsの組み合わせはもっとも素晴らしいものであるとした。すなわち同社のキャンペーンである「I'm a PC」である。


●Windows 7 Betaをアナウンス

 このWindowsの次のステップとしては、先の3つのスクリーンに介在する壁を取り壊していくことであって、これからはPCのオペレーティングシステムから電話、TV、クラウドをつなげるプラットフォームになるとしている。

 ここで、バルマー氏はこのプラットフォームを形成する3つの製品を紹介。1つは「Windows 7」である。バルマー氏はWindows 7で成し遂げた進化に自信を持っており、高速なブート、ロングライフのバッテリー駆動時間、新しいメディアセンター、クールなユーザーインターフェイスなどを大きな特徴として挙げた。そして、Windows 7 Betaが9日から一般ユーザーにもダウンロード可能となることを紹介したときには、聴衆から拍手が送られた。ちなみに、MSDN/Tech Beta/TechNetの会員は即日ダウンロード可能になることも併せて紹介されている。また、日本語版については13日からの公開が予定されている。

3つのスクリーンにの壁をWindowsが取り壊していく Windows 7 Betaをアナウンス。一般ユーザーも9日からダウンロード可能になる。日本版は13日から公開予定

 続いて紹介されたのがWindows Liveで、Windows LiveメールとWindows Liveフォトギャラリー、Windows Live Messengerを含む新バージョンがすでに利用可能になっていることをアピールした。この新バージョンでは、例えばメールボックスに検索窓を表示して検索結果をメールに貼り付けやすくしたり、Live Messengerの表示アイコンがビデオ対応となり、フェイスマーク表示に併せて表情を変えるといったことができるようになっている。

 また、Windows Live Messengerの紹介では、Facebookとのパートナーシップ締結も発表され、Facebook上で作成した共有フォトギャラリーが同時にLiveネットワーク上でも公開される、といった機能が付加されるという。また、Dellとのパートナーシップも発表され、DellのPCにWindows LiveとLive Searchがプリインストールされて出荷されることになる。Windows Liveを全製品にプリインストールするメーカーはDellが初めてだという。

 最後の紹介となったのがWindows Mobileであるが、Verizonとの長期パートナーシップが発表され、Verizonの端末上で動作する検索機能を提供できることへの喜びを表した。

 ここで、いったんバルマー氏は壇上から去り、シャーロット・ジョーンズ氏によるWindows 7、Windows Liveのデモが実施された。これらは写真で紹介する。

デモで使われているWindows 7のBuildは“7000” 2つのウィンドウを並べて表示することが簡単に行えるようになっており、このような商品比較に便利 タスクバーから、ダイレクトにアプリケーションの機能へアクセスできる「ジャンプリスト」
ホームネットワークへの対応として紹介された機能で、Windows Media Playerから操作してリビングルームのXBOX360へメディアファイルを出力するデモ サーフェイス・グローブと呼ばれるタッチスクリーンを利用したアプリケーションのデモ。Windows 7のタッチパネル機能はマルチタッチに対応している
Windows Liveメールのメール作成画面に検索窓を表示させることができ、その結果を簡単に貼り付けられるようになった 新しいLiveフォトギャラリーはSilverrightを使ったスライドショーが可能 Live Messengerの表示アイコンが動画に対応したほか、顔文字の表情に併せて表示内容を変えることができる

●Microsoftが提供する新しいエンターテインメント

 バルマー氏、ジョーンズ氏に次いで登壇したのは、エンターテインメント&デバイス部門のプレジデントであるロビー・バック氏である。バック氏が担当するエンターテインメント分野で重要な役割を持つのがXbox 360であるが、2008年には世界中で2,800万台を出荷。Xbox Liveサービスのメンバーも1,700万人を突破したことをアピール。今後登場するエンターテインメントサービスを紹介した。とはいえ講演の多くは、現在提供中のサービスの実績を紹介することに割かれており、ここでは新サービスに絞って紹介することにしたい。

 まず「Halo」の続編に関する話題である。「Halo Wars」は2月28日発売で、2月5日にはデモ版のダウンロードサービスも開始されることが発表された。さらに、次のタイトルとなる「Halo 3 ODST」にも触れられ、こちらは2009年中に発売されるとした。

 Xbox Liveにおいては、昨年11月にNew Xbox Experience (NXE)が提供されているが、これを機に映画や音楽、TVのダウンロードが60%増加。そして、フレンドとともにエンターテインメントを楽しむのをみて、それをエキサイティングなチャンスととらえた。

 そこで提供を開始するのが、Xbox PrimeTimeというサービスである。これは、オンラインメンバーとともにリアルタイムに楽しむもの。講演では1vs100と呼ばれる、クイズ番組形式のゲームがデモされた。

 また、ユーザーがゲームを開発し、それを販売できるようにするKoduと呼ばれるプログラムも紹介された。このプログラムが子供たちにプログラムを勉強するのに役立つとし、実際にゲームを開発した少女がステージ上で紹介するデモもあった。

エンターテインメント&デバイス部門プレジデントのロビー・バック氏 Halo続編に関する話題。「Halo Wars」と「Halo 3 ODST」が2009年に登場する 「Halo Wars」のデモビデオ。2月5日にデモダウンロード、2月28日に製品の販売が開始される
Xbox Liveの新サービス「PrimeTime」。多くのオンラインユーザーが集まってゲームなどを楽しめるもの
Xbox Liveで展開されるゲーム開発・共有(販売)サービスであるKodu。12歳の女の子が実際に作成したゲームをデモした

●研究開発中の技術を紹介

 基調講演の最後にはバルマー氏が再登場し、新技術について触れた。現在、10年または15年に1度起きる技術転換の時期が迫っているとし、そのキーポイントして、ムーアの法則によるプロセッサパワーの向上、いたるところにスクリーンが存在すること、PC・TV・電話上でインターネットが利用できるという3点を挙げた。今後はコミュニケーションも一新され、個人が望むものを得ることができるソフトウェアが提供されるとし、同社の研究チームが開発中の技術を一部紹介した。

 このように、最後に未来的な話が取り上げられたものの、ゲイツ氏の講演が常にDigital Decadeをテーマにした未来的なビジョンを語っていたことに比べると、今年の講演は非常に現実的な製品/サービスを紹介するものだったと思う。

 バルマー氏は会見の最後に、我々の前に大きな機会があることに業界の同意を求め、この状況にエキサイティングしていると述べた。もちろん昨今の経済不況もあるのだろうが、まずは目の前の大きな機会を逃さない、Microsoftがいま取り組むべきことを端的に明示した講演といえるのではないだおるか。

研究開発チームが紹介した、学校教材のデモ。あらゆる情報をクラウドから持ってくるほか、教授やパートナーとのコミュニケーションもとれる さまざまなドキュメントの内容を解析、その関連性を模式化する機能 ドキュメントの自動翻訳システム。こうした機能により、言語の壁などを越えて、知りたい情報を透過的に得ることができるとする
テーブル型のディスプレイでは、デバイスを置かれたことを検知し、そのデバイスから情報を引き出す。さまざまなデバイスからの情報をテーブル上でまとめて扱える 下敷きのような形状のディスプレイデバイスで、折り曲げたりできるというもの

□Microsoftのホームページ
http://www.microsoft.com/
□基調講演ムービー(英文)
http://www.microsoft.com/Presspass/events/ces/default.aspx
□基調講演内容抄訳
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3612
□関連記事
【2008年1月8日】【CES】ビル・ゲイツ氏基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0108/ces06.htm

(2009年1月8日)

[Reported by 多和田新也 ]

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