1月16日より順次発売 価格:オープンプライス 封筒サイズでジャケットの内ポケットにも入る、ジャストキーボードサイズのソニー「VAIO type P」は、ハードウェア面でのモバイビリティだけでなく、独自アプリにも力が入れられている。そこで前回とは別に、インスタントモードや動画再生支援機能などに注目したレビューをお送りしたいと思う。試用したものは試作機で、製品とは異なる可能性あがあることを明記しておく。 ●XMBボタンからスタートするLinuxベースのインスタントOS Windows Vistaとは別にtype PはインスタントOSを搭載している。電源OFF時に、キーボード下部にあるXMBボタンをクリックすることでインスタントモードが立ち上がる仕組みで、PSPやPS3などのソニー製品に広く採用されているクロスメディアバー(XMB)を根幹としたUIが表示されるのだ。 ベースはLinuxとなっており、AVプレーヤー、インターネットへのアクセスが特長。少しもっさり感があるものの、必要最小限の機能しか搭載されていないため、出先で何かを確認したいといったときにとても便利かもしれない、というのが第一印象だったが、実際に使い込んでみると室内であってもなかなか便利なものに感じた。またWindows起動時にはVAIO Media Plusへのアクセスキーになる。こちらはDLNA準拠のアプリで、VAIOユーザーにはお馴染みの機能だ。
インスタントモードには、システム設定やインスタントモードからのWindows Vista起動などに加えて、画像ビューアー、ミュージックプレーヤー、ビデオプレーヤー、Webブラウザ、Skype、インスタントメッセンジャーを備えている。ワンセグの視聴はできなかったが、対応を期待したいところだ。 まず「ユーザー」のメニューには「電源オフ」「Windowsスタート」の2つがあり、シャットダウンだけでなく、インスタントモードからWindowsの起動を行なえる。またインスタントモードの起動までは約10秒で、メモリースティックやSDカードを挿した状態などであってもさほど変化はなかった。システムには有線・無線のネットワーク設定やブックマークのインポート/エクスポート、フォト・ビデオ・ミュージックライブラリフォルダの設定などが用意されている。ネットワーク設定はPSPと似ており、インターフェイスもシンプルなものなので、不便なく扱うことができるだろう。なおフォト、ミュージックプレーヤー、ビデオプレーヤーはカードスロットからの読み込みとWindows上の特定のフォルダに保存したデータへのアクセスが可能だ。
フォトはJPEG、BMP、GIFなどに対応しており、液晶の発色がいいため、筆者はしばらくフォトストレージっぽく利用していた。ファインモードといったファイルサイズの大きいJPEGは表示にやや時間がかかるが、コンパクトデジカメやRAW撮影時にセットでファイルサイズの小さいJPEGを出力させている場合に便利な機能である。HDD/SSD上にあるファイルへのアクセスだと多少巨大なファイルであっても読み込みが早いので、アップデートで自動取り込み機能を期待したい。 ミュージックプレーヤーもフォトと同様にHDD/SSD上の特定のフォルダかカードスロットからデータを読み込める。ジャケットのデータも写真のように読み込めるため、放置しつつ音楽を楽しむといったときに便利だ。 ビデオはWMVやMPEGに対応している。残念ながらインスタントモードではハードウェアデコーダに対応しておらず、HDコンテンツの再生はさすがにムリだった。軽い動画の再生にはなんら問題なかったので、移動中にちょっと楽しむ程度ならばストレスを感じることもないだろう。
インターネット回りのアプリケーションは充実している。まずWebブラウザとしてFirefoxが搭載されており、インスタントモード上からでも普段と変わりないブラウジングが可能だ。Skypeはそのままで画面いっぱいにインターフェイスが表示されるため、ブラウジングしながらといったことはムリだが使い勝手はそのまま。もちろん、Webカメラの使用も可能である。インスタントメッセンジャー(IM)はSkypeで、IMとしてのユーザビリティは事足りてしまうため、IMオンリーで使う人は少ないのかもと感じた。
バッテリ駆動時間は試用したモデルの標準バッテリで放置状態で約2.5時間。Windows起動時の駆動時間よりも短い理由は、おそらく電源管理マネージャが非搭載であるためで、動画を見たり、長々とブラウジングをした場合はさらにバッテリ駆動時間は短くなる。ただWindowsを起動させるまでもないとき用と割り切ってしまえば、あまり気にはならないが、この点も今後のアップデートに期待である。 ●ウィンドウを動かす手間を省く「ウィンドウ整列ボタン」 特殊な形状ということもあり、筆者の体感では正直なところ、ファイルの移動はショートカットで済むが、ウィンドウのドラッグが不便に感じた。そこにアプローチしたのが「ウィンドウ整列ボタン」。1,600×768の解像度を活かすもので、自動的にウィンドウを整列して表示してくれるというものだ。とくに片手持ちで複数のウィンドウを参照しなくてはならないときに便利で、実用性はともかくとしてウィンドウが100個開いていたとしても整列をしてくれる。 手順は次の通り。テキトーに複数のウィンドウが並べられた状態で「ウィンドウ整列ボタン」をクリックするだけ。3つのウィンドウがある場合は横軸均等の配置される。比較写真を用意したので、そちらを見てもらったほうがわかりやすいと思う。複数の資料を見ながら作業という場合にとくに力を発揮してくれるし、ブラウジングをしながら動画を見るといった場合も事前もウィンドウをちまちま動かす必要がなく、快適だった。
注意点は整列後に新たなウィンドウを開くと、それがデフォルト状態と記憶されるため、新しいウィンドウを開く前のごちゃった整列状態に戻すことはできない点だ。電話越しでの打ち合わせに利用してみたが、8型液晶だとウィンドウの数は4つが限界といったところ。外部ディスプレイ出力時は視認性が高まることもあり、8ウィンドウでも問題なさそうだった。 ●動画再生支援機能でHD動画もサクサク
ミニノートで動画再生支援機能を搭載しているモデルは、あまり例がないが、type Pはハードウェアデコーダを搭載している。AVCHDやWMV、MPEG-2、MPEG-4、H.264などに対応しており、今回のテストではグランツーリスモ・ドットコム上にあるWMVを使用した。 それぞれ微妙にビットレートに違いはあるものの、ネットブックでの再生には厳しいものばかりである。動画再生中のCPU負荷は35~45%程度で、確実に動画再生支援機能の効果が発揮されていた。他のウィンドウがプレイヤーに被ると機能が停止するといったシーンも見られたが「ウィンドウ整列ボタン」でわけておけばよく、ながら作業はとても快適なものだった。もちろん、フル画面での再生にも対応しているので、電車での移動中やリビングなどで、動画を楽しむときも困ることはない。 ただWMVの再生についてはブラウザ上からだと再生支援が有効にならない、WMP11でMPEG-2を再生するときフルスクリーンでないと有効にならないなどやや制限があるようだ。またH.264に対してはCPUが高負荷時になると機能するようで、分岐点は不明だが、重いH.264動画でもストレスなく見ることができた。 ●GPS機能もアリ ワイヤレスWANを搭載するVGN-P80ではGPS機能を利用したアプリケーションの利用が可能だ。GPSとは別にPlace Engineにも対応しており「x-Radar」や「PetaMap」で活躍する。 試用したtype PにはGPS機能は非搭載だったので、体感などはお伝えできないが「PetaMap」はブラウザ上から主に使用可能で、口コミ情報がGoogle Map上にずらりと並ぶサイトに直接アクセスして、自分の位置から見た情報を得ることができる……という仕様はtype PにデフォルトでインストールされているPetaMapのメニューバーから想像しやすい。 また「x-Radar」はノートPCをレーダー代わりにして、半径3km圏内にあるラーメン屋やカフェなどのスポットを検索できるもの。ソニースタイルの体験空間にアップロードされているアプリなので、実際に触ってみるとユニークな見せ方をするナビアプリだとわかるだろう。「x-Radar」は「PetaMapスポットビューワ」にも対応しているので、よりモバイルをするなら、GPS機能内蔵のVGN-P80を選択肢に入れたいところだ。 ●モバイルとしての使い勝手の熟考を感じる 2001年に登場したPCG-U、2006年のVGN-UXといいVAIOのモバイルモデルは一定周期で驚かせてくれる。見た目だけでなく、モバイルをする上での必要な要素をしっかりとフォローしつつ、独創的なアプリを追加して「使える」モデルとして世に出してくるからだ。ジャストキーボードサイズでモバイル時の作業性を向上させつつ、XMBボタンやウィンドウ整列ボタンで煩わしい操作を簡素化し、わざわざOSを起動させるまでもないことにはインスタントモードで対応と心配りが各所に光っている。見た目で選ぶのも当然アリだが、機能面でも優秀なtype Pはモバイルユーザーやサブノートを必要する人にオススメできるノートPCだ。 □ソニーのホームページ (2009年1月9日) [Reported by 林 佑樹]
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