ソニー「VAIO type P」
~小型モバイルの新たなスタイルを提案




ソニー「VAIO type P」

1月16日より順次発売

価格:オープンプライス



 ソニーの2009年春モデルの中でも、本誌読者が最も気になる製品は、やはり8型ウルトラワイド液晶を搭載した新モデル「VAIO type P」であろう。VAIO type Pは、2008年12月24日にVAIOのサイトでティザー広告が開始され、注目を集めていた。VAIO type P以外の2009年春モデルは1月6日に発表されたが、VAIO type Pのみ、CESの基調講演でそのベールを脱ぐために、発表日が1月8日にずらされている。世界中のIT関係者の注目が集まるCESで、大々的に発表されたことからも、ソニーがVAIO type Pにかける熱意と意気込みが伝わってくる。

 ここでは、モバイラー待望の新製品VAIO type Pを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのはVAIOオーナーメードモデル「VGN-P90HS」の試作機であり、細部の仕上げやパフォーマンスなどは製品とは異なる可能性があることに注意してほしい。

●長形3号封筒サイズで重さ約588gの超軽量ボディを実現

 これまでもVAIOシリーズは、その時代ごとにモバイルのあり方を提案し続けてきた。ソニーが、モバイルPCを持ち歩くモバイラーから高い支持を受けているゆえんだ。'97年に登場した「PCG-505」は、マグネシウム合金を採用したスリムなモバイルノートPCであり、銀パソブームを巻き起こした。翌年の'98年には、重さ1.1kgで1,024×480ドットのワイド液晶を搭載した「PCG-C1」を発表し、話題を集めた。その後も、世界最小/最軽量を実現した「バイオU」や「VAIO type T」など、携帯性の高いモバイルPCを続々と投入してきた。

 VAIO type P(以下type P)は、誰もがケータイやスマートフォンを持ち歩く今の時代にふさわしい小型モバイルとして、ソニーが新たに提案した製品だ。type Pの開発陣は、ケータイと共にPCを持ち出してもらうためには、ケータイでは真似のできないPCならではのメリットである「キー入力のしやすさ」と「情報表示能力の高さ」が重要だと考えた。type Pは、両手で心地よく打てるキーボードと持ち運びやすさを両立させていることが最大の魅力だ。本体のサイズは245×120×19.8mm(幅×奥行き×高さ)で、PCG-C1の240×140×37mm(同)に比べて、奥行きが20mm小さくなり、厚さはほぼ半分まで薄くなっている。type Pの重量は、VAIOオーナーメードモデルの最軽量構成で約588gと、こちらもPCG-C1の半分程度しかない。

 type Pのフットプリントは、ダイレクトメールなどによく使われる長形3号封筒(235×120mm)とほぼ同じだ。ボディがスリムで、出っ張りのないフルフラットデザインを採用していることも嬉しい。底面などにもネジの頭が一切出ておらず、非常にスッキリして美しい。WindowsべースのノートPCで、ここまで徹底したフラットデザインを実現した製品はほとんどない。天板は、職人の手磨きによる深い光沢仕上げになっており、高級感を演出している。ボディカラーは、クリスタルホワイト、ペリドットグリーン、ガーネットレッド、オニキスブラック(VAIOオーナーメードモデル限定)の4色が用意されている。どのカラーも美しいが、光沢仕上げなので、指紋などの汚れが目立ちやすい。筆者のように、脂性の人は、一番汚れが目立ちにくいクリスタルホワイトがお勧めだ。

 最近は、価格が5~6万円前後のネットブックに注目が集まっているが、ネットブックは価格は安いが、ボディがB5判よりも大きく、重量も1kgを超える製品がほとんどであり、type Pに比べると大きくて重い。ソニーは、type Pを“ポケットスタイルPC”という愛称で呼んでいるが、その名のとおり、スーツやシャツのポケットはさすがに無理だが、ジャケットやズボンなどの大きめのポケットなら、本体がスリムで出っ張りがないこともあってすっぽりと収まる。

VAIO type Pの上面。天然石のような深い光沢が美しい。試用機のボディカラーは、VAIOオーナーメードモデル限定のオニキスブラックだ VAIO type Pの底面。底面にもネジの頭が一切出ておらず、非常にスッキリしている 本体の厚みは19.8mmと薄いので、カバンなどへの収まりもよい。左はDVDトールケース
「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。type Pの小ささがよくわかる type Pとダイレクトメールなどに使われる長形3号封筒(下)を並べたところ。ほとんど同じサイズだ type Pと長形3号封筒を重ねた様子。奥行きは全く一緒で、幅が10mm、type Pのほうが大きい
type Pをズボンのポケットに入れたところ。ジャケットやズボンなどの大きめのポケットならtype Pが入る ズボンのポケットからtype Pを出している様子
【動画】ズボンのポケットからtype Pを出している様子の動画

●VAIOオーナーメードモデルではAtom Z540や128GB SSDを選択可能

 type Pは、そのスペックからわかるように、いわゆるネットブックの範疇に入る製品ではない。ネットブックは、MicrosoftやIntelによる規格の縛りがあるため、どうしても製品スペックが横並びになりがちだ。たとえば、SSDなら16GB以下、メモリは1GB以下、OSはWindows XP Home Editionといった制限がある。しかし、type Pではそうした縛りがないため、より魅力的なスペックを実現している。

 店頭モデルのCPUは、Atom Z520(1.33GHz)だが、VAIOオーナーメードモデルでは、Atom Z520以外にAtom Z540(1.86GHz)やAtom Z530(1.60GHz)を選択することが可能だ。大部分のネットブックに搭載されているAtom N270のクロックは1.60GHzであり、Atom Z540を選べば、CPU性能は一般的なネットブックを上回ることになる。チップセットは、グラフィックス統合型のIntelシステム・コントローラー・ハブ(US15W)を採用。また、メモリを標準で2GB実装していることも魅力だ(オンボードで実装されており、増設は不可)。ウィルコムのWILLCOM D4がtype Pと同じ、Atom Z520+US15Wを採用しているが、WILLCOM D4の場合、メモリが1GB固定なのでWindows Vistaを動かすにはやや厳しいが、type Pなら同じCPUとチップセットでも、Vistaもより快適に動作する。

 ストレージを選べることも評価できる。店頭モデルでは、1.8インチ60GB HDDが搭載されているが、VAIOオーナーメードモデルでは、60GB HDD以外に64GB SSDや128GB SSDの選択が可能である。SSDは、HDDに比べてランダムアクセスが高速で、機械的に動作する部分がないので衝撃や振動に強く、消費電力(発熱)も小さいという利点があり、モバイル用途には最適なデバイスだ。また、重量もHDDに比べて軽いので、軽量化にも貢献する。64GB SSDを選択すると価格が15,000円、128GB SSDを選択すると4万円アップするが、それだけの価値はあるだろう。今回の試用機は、Atom Z540と128GB SSDというハイエンド構成であり、Vistaの動作も十分軽快であった。

 店頭モデルのOSは、Windows Vista Home Basicだが、VAIOオーナーメードモデルでは、Windows Vista Home PremiumやWindows Vista Businessを選ぶこともできる。今回の試用機には、Windows Vista Home Basicが搭載されていた。

 ほとんどのネットブックは、冷却ファンを搭載しているが、type Pはファンレス設計を実現していることも特筆できる。ストレージとしてSSDを選択すれば、モーター類がないゼロスピンドルマシンとなり、ほぼ無音で動作する。HDDを選択しても、騒音は非常に小さい。

●1,600×768ドットのウルトラワイド液晶を搭載、可変トルクヒンジも初採用

 type Pは、ソニーが本製品のために開発した、8型ウルトラワイド液晶を搭載していることも大きな魅力だ。解像度は1,600×768ドットで、アスペクト比は25:12と非常に横長だ。約10年前に登場したPCG-C1も、1,024×480ドットという似たアスペクト比の液晶を搭載していたが、当時に比べて解像度は大きく向上した。ネットブックでは、1,024×600ドット表示対応の液晶が主流だが、type Pでは、1,024×600ドット液晶のちょうど2倍の情報量を一度に表示可能である。また、一般的なノートPCの1,280×800ドット液晶と比べても、type Pのほうが一度に表示できる情報量が2割大きい。現在のWebサイトでは、最低800×600ドットの解像度があれば見やすいようにデザインされているところが多く、type Pなら、Webページを2枚並べてもフルに表示できる。複数のウィンドウを同時に開いても快適に作業ができるし、Excelなどで大きなワークシートを編集する場合にも便利だ。

 液晶パネルいわゆる光沢タイプであり、発色も鮮やかでコントラストも十分だ。精細度が高いので、表示される文字やアイコンなどは小さくなるが、小さすぎて見づらいと感じたら、Windows VistaのDPIスケールの設定を変更すればよいだろう。

 また、新たに搭載された独自ユーティリティの1つ「ウィンドウ整列ユーティリティー」も便利だ。これは、クリックボタンの右側に用意された専用ボタンを押すだけで、開いているウィンドウのサイズと位置を自動的に変更して、画面一杯に整列してくれるユーティリティーである。整列後、再び、専用ボタンを押せば元の状態に戻る。重なっていたウィンドウを並べて見比べたい場合など、手でウィンドウサイズや位置を変更するのは面倒だが、type Pならボタン一発で整列できるので嬉しい。

 type Pは、ハードウェア、ソフトウェアともに使い勝手を高める工夫が多数盛り込まれている。液晶のヒンジに、VAIOで初めて可変トルクヒンジを採用したこともその1つだ。通常のヒンジは、動かすのに必要なトルク(回転力)が一定だが、type Pの可変トルクヒンジは、液晶を閉じた状態では開けるのに必要なトルクが大きく、少し開けるとトルクが小さくなり、適度な角度まで開くと、またトルクが大きくなってグラグラしないというものだ(文章で書くとわかりにくいので、動画を見てほしい)。可変トルクヒンジの採用によって、軽く開け閉めができることと、持ち運びの際にしっかり閉まることを両立させている。また、液晶を閉じるときは、ある程度まで閉めるとパタンと小気味良く閉じるのも心地よい。

type Pの液晶は、1,600×768ドットとかなり横長だ 上下の額縁部分はかなり狭いが、左右はややスペースがある
type Pの画面キャプチャ。1,600×768ドットと横に広いため、Webページを2枚横に並べても快適に閲覧できる ウィンドウ整列前の様子 ウィンドウ整列ボタンを押すだけで、このようにウィンドウが整列される
【動画】ウィンドウが整列する様子。整列はほぼ一瞬で終わる
【動画】閉じている時はトルクが大きく、指1本で開けようとしても開かず、キーボードも一緒に持ち上がってしまうが、両手を使って液晶を少し開くと、トルクが小さくなり、指1本で開けられるようになる

●キーボードとポインティングデバイスの出来が秀逸

 type Pは、はじめに本体のサイズありきではなく、両手で快適にタイピングできるキーボードのサイズから本体のサイズが決められている。本体サイズ一杯にキーボードが配置されており、まさに“ジャストキーボードサイズ”だ。キーピッチは約16.5mmあり、両手で快適に入力できる。キーとキーの間が離れているアイソレーションキーボードを採用しており、爪の長い女性でも入力しやすい。キーストロークは約1.2mmで、一般的なノートPCに比べるとやや浅いが、軽いキータッチで軽快にタイピングできる。「半角/全角」キーが「Esc」キーの右側に配置されていることを除けば、配列も標準的だ。ただし、「け」や「む」などの右側の一部のキーのピッチはやや狭くなっている。なお、試用機のキーボードは日本語配列だったが、VAIOオーナーメードモデルでは、英字配列キーボードも選択できる。英字配列キーボードでは、キーピッチがすべて均等になる。

 ポインティングデバイスとしては、スティック式マルチポインティングデバイスを搭載。最近は、パッドタイプのポインティングデバイスを搭載する製品が多いが、パッドタイプではキーボード手前にパッドを配置するスペースが必要となる。スティック式デバイスは、ほぼキーボードサイズで実装できることが利点だ。スティックの操作性も良好だ。センターボタンを含めて、3つのボタンが用意されているが、スティック自体を押し込むことで左クリックの役割を果たすのも便利だ。

 キーボード、ポインティングデバイスともに出来は秀逸であり、デスクトップPCやフルサイズノートPCと比べても、遜色のない入力環境を実現している。

キーピッチは約16.5mmで、キーストロークは約1.2mm。配列は標準的だが、「半角/全角」キーが「Esc」キーの右側に配置されているほか、「け」や「む」などの右側の一部のキーのピッチは狭くなっている ポインティングデバイスとしては、スティック式マルチポインティングデバイスを搭載。ホームポジションから手を動かさずにポインティング操作が行なえ、快適な操作が可能だ

●ワンセグ機能も内蔵アンテナでよりスマートに

 VAIOオーナーメードモデルでは、ワンセグチューナやWebカメラの有無も選択できる(店頭モデルでは全モデルがWebカメラを標準搭載しており、VGN-P70Hシリーズはワンセグチューナを標準搭載)。従来のワンセグチューナ搭載VAIOシリーズで、ワンセグ放送を視聴する際には、ロッドアンテナを引き出す必要があったが、type Pでは、VAIOシリーズ初の内蔵アンテナを採用しており、アンテナを引き出すことなく、スマートに視聴できるようになった。約31万画素のWebカメラ「MOTION EYE」は液晶右側に搭載され、ビデオチャットなどに利用できる。

 また、Windowsを起動しなくても、専用ボタンを押すだけで、電源OFFの状態からすぐに起動して、音楽や動画などの再生が可能なインスタントモードも搭載。インスタントモードはLinuxベースで動作しており、WebブラウザやSkype、インスタントメッセンジャーも利用できる。GUIは、PS3やPSPなどでもお馴染みのXMB(クロスメディアバー)で、カーソルキーやEnterキーなどを使って直感的な操作が行なえる。

ワンセグチューナを選択すれば、内臓アンテナでスマートに視聴や録画が可能 液晶右側にWebカメラ「MOTION EYE」を搭載可能 インスタントモードの画面。GUIにPS3やPSPでお馴染みのXMBを採用。カーソルキーとの相性がよい
音楽再生を選んで、フォルダから曲を選択しているところ。ジャケット画像のサムネイルも表示されるのでわかりやすい 音楽再生中の画面。シンプルだが機能は十分 インスタントモードでも、Webブラウザ(Mozilla Firefox)やSkype、インスタントメッセンジャーを利用できるのが嬉しい

●メモリカードスロットやワイヤレス機能も充実

 インターフェイス類は必要最小限だが、USB 2.0ポートが左右に1個ずつ配置されているのは便利だ。また、右側面には、オプションのディスプレイ/LANアダプタ接続用コネクタが用意されている。ディスプレイ/LANアダプタを接続すれば、外部ディスプレイ出力(アナログRGB)やLAN(1000BASE-T)を利用できるようになる。また、メモリカードスロットとして、SDカードスロットとメモリースティックデュオスロットの2つのスロットを備えていることも評価できる。ただし、どちらもフタがダミーカード方式なので、なくしてしまう恐れがある。また、VAIOオーナーメードモデルでは、VAIO type Tでも好評のノイズキャンセリングヘッドフォンの選択が可能で、周囲の騒音を約1/4に低減できる。

 ワイヤレス機能も充実しており、IEEE 802.11b/g/nドラフト準拠の無線LAN機能を標準装備するほか、Bluetooth 2.1+EDRの搭載も可能だ(店頭モデルではBluetoothも標準搭載)。さらに、VAIOオーナーメードモデルでは、NTTドコモのFOMAハイスピードに対応したワイヤレスWAN機能を追加することもできる(店頭モデルのVGN-P80H/WではワイヤレスWANが標準搭載)。ワイヤレスWAN機能を追加すると、同時にGPS機能も追加され、type P単体で精度の高い測位が可能になる。なお、ワイヤレスWAN+GPSとワンセグチューナは排他仕様になっており、同時搭載はできない。

左側面には、USB 2.0ポートとヘッドフォン出力が用意されている 右側面には、USB 2.0ポートとディスプレイ/LANアダプタ接続用コネクタが用意されている 右側面の端子部分のアップ
前面には、ワイヤレススイッチやSDカードスロット、メモリースティックデュオスロットが用意されている カードスロットとワイヤレススイッチのアップ。カードスロットのフタはダミーカード方式だ
オプションのディスプレイ/LANアダプタ。小型軽量で携帯にも便利 ディスプレイ/LANアダプタの端子部分。外部ディスプレイ出力やLANが用意されている ディスプレイ/LANアダプタの底面。type P接続用のケーブルを収納できるようになっている
type Pにディスプレイ/LANアダプタを装着したところ 専用のノイズキャンセリングヘッドフォン

●薄型のリチウムイオンポリマーバッテリ採用で最大約9時間の長時間駆動を実現

 モバイルPCは、軽くて小さいことはもちろん重要だが、携帯性に負けず劣らず重視されるのが、バッテリ駆動時間だ。ネットブックは、価格は安いがバッテリ駆動時間が2~3時間程度の製品が多く、電源のないところで長時間使いたいという要求にはこたえられなかった。type Pは、薄型のリチウムイオンポリマーバッテリを採用しており、標準バッテリで最大約4.5時間、オプションの大容量バッテリを利用すれば最大約9時間もの長時間駆動が可能になる。大容量バッテリを装着すると、本体後部の厚みが10.8mmほど厚くなり、重量が約118g増えるが、それでも最軽量構成なら700gをちょっと超える程度であり、携帯性は十分高い。電源のないところで長時間使いたいという人は、大容量バッテリを装着することをお勧めする。

 付属のACアダプタが非常にコンパクトで、重量も約108g(ACケーブルは除く)と軽いことも嬉しい。壁のコンセントに直接装着できるウォールマウントプラグアダプタも別売りで用意されており、スマートに利用できる。また、ACアダプタとオプションのディスプレイ/LANアダプタは合体できるように設計されており、持ち歩くときにどちらかを忘れてしまう心配がない。もちろん、合体した状態でもそのまま利用できる。

バッテリは薄くて軽いリチウムイオンポリマーバッテリを採用 標準バッテリは、2,100mAh/7.4Vという仕様だ バッテリとCDケース(左)とのサイズ比較
type P専用の超小型ACアダプタを採用。別売りでウォールマウントプラグアダプタも用意される ACアダプタとCDケース(左)とのサイズ比較。サイズは約76.4×36×25mm(同)と非常にコンパクトで、重量も約108g(ACケーブルは除く)と軽い ACアダプタとLAN/ディスプレイアダプタを合体させて使うことが可能

●実用的なパフォーマンスを実現、小型モバイルとしての魅力は大きい

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類だ。比較対照用に、エプソンダイレクト「Endeavor Na01 mini」とNEC「LaVie Light」、GIGABYTE「M912X」、ソニー「VAIO type G」の結果もあわせて掲載している。なお、type P以外のマシンは、すべてOSとしてWindows XP Home EditionまたはWindows XP Professionalを搭載している。type Pのみ、Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアも掲載した。

 PCMark05のCPU Scoreは、Atom N270を搭載した3製品よりもクロックが高い分、上回っており、Core Solo U1300を搭載したVAIO type Gに迫るスコアになっている。また、SSDモデルであるため、HDD Scoreは、HDDを搭載した他の製品の2~4倍以上と非常に高い。その反面、グラフィックスコアが異なるため、Graphics Scoreは、Intel 945GSEを搭載したネットブックのほうが高くなっている。3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアも、Intel 945GSE搭載ネットブックのほうが高い。実際にtype PでWindows Vistaを使っていて、描画性能が低いと感じる場面はほとんどないのだが、type Pで最近のゲームソフトを動かすのはさすがに厳しいだろう。

 type PのWindowsエクスペリエンスインデックスのスコアについては、プロセッサやメモリの値は順当だが、グラフィックスが5.9と最高のスコアを記録している。この値は、どうもWindowsの問題のようで、最近MicrosoftからもKnowledge Baseが公開されている(実際はここまで高くはないはず)。

 type Pのパフォーマンスは、Core 2 Duo搭載のB5サイズノートPCなどにはかなわないが、Vistaを実用的に動かすには必要十分であり、サイズと性能のバランスのよい製品だといえる。

  VAIO type P Endeavor Na01 mini LaVie Light M912X VAIO type G
CPU Atom Z540(1.86GHz) Atom N270(1.6GHz) Atom N270(1.6GHz) Atom N270(1.6GHz) Core Solo U1300(1.06GHz)
ビデオチップ US15W内蔵コア Intel 945GSE内蔵コア Intel 945GSE内蔵コア Intel 945GSE内蔵コア Intel 945GMS内蔵コア
PCMark05 Build 1.2.0
PCMarks 1476 N/A N/A 1483 1340
CPU Score 1659 1472 1454 1472 1746
Memory Score 2438 2374 2348 2339 1919
Graphics Score 262 N/A N/A 536 647
HDD Score 11271 4335 4246 4639 2245
3DMark03 Build 3.6.0
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) 427 N/A
(1,024×600ドットでは741)
N/A
(1,024×600ドットでは720)
684 661
CPU Score 156 N/A
(1,024×600ドットでは245)
N/A
(1,024×600ドットでは238)
236 328
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH 363 N/A N/A 998 1319
LOW 718 1466 1378 1438 1955
Windowsエクスペリエンスインデックス
プロセッサ 3.4 N/A N/A N/A N/A
メモリ(RAM) 4.2 N/A N/A N/A N/A
グラフィックス 5.9 N/A N/A N/A N/A
ゲーム用グラフィックス 3 N/A N/A N/A N/A
プライマリハードディスク 5.7 N/A N/A N/A N/A

 価格についても、店頭モデルの実売予想価格は約10万円前後、VAIOオーナーメードモデルの直販価格は79,800円からとされており、ネットブックに比べれば価格は高いが、携帯性や液晶解像度、SSD容量、バッテリ駆動時間など、多くのスペックで上回っていることを考えれば、十分リーズナブルといえる。また、ハードウェア面での完成度が高いだけでなく、自宅やオフィスのメインPCとの間で、Outlookのメールや予定表、連絡先、Cookie、マイドキュメントや任意のフォルダなどのデータを同期するための同期ソフト「Accusync」や、GPSおよびPlaceEngineをハイブリッドに利用して現在地情報を取得し、現在地周辺の地図やスポット情報を一覧できる「VAIO Location Search」など、type Pをさらに便利に使うためのオリジナルソフトがプリインストールされていることもウリだ。

 type Pには、仕様が横並びで、価格競争に突入しているネットブックにはない魅力がある。小型モバイルの新たなスタイルを切り拓いた製品として、高く評価したい。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.vaio.sony.co.jp/P/
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(2009年1月8日)

[Reported by 石井英男]


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